前回の続きです。
引き続き2019年のカリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究を参考にしつつ、最近の若者は~のメカニズムについて見ていきます。



実験4

実験4では、実験3の状況を再現しつつ、最近の若者は…のメカニズムを調べてみたそうです。
まず最初に以下の3つのことを参加者に聞いてみたんだとか。

  1. 大人になった今、読書はどれくらい好きですか…?
  2. 子どもの頃、どれくらい本を読むのが好きでしたか…?
  3. あなたの幼なじみは、子どもの頃、どれくらい本を読むのが好きでしたか…?

その後は実験3と同じで今の若者は昔に比べて本を読むかどうかを聞いてみたらしい。これにより、記憶バイアスの影響を少なくしたってことですね。
結果は、

  • 実験3の結果同様、本をよく読む人ほど、今の若者は読書が好きではなくなっていると思っていた…!
  • 更に、本をよく読む人は、今の大人も読書が好きではなくなっていると思っていた…!

とのこと。
つまり、過去の自分や他人への読書の考えを思い出すと、尚、最近の若者は…ってなるし、それどころか、最近の大人は…にまで広がっちまったってことですね。う~ん。面白い…。
そして驚くべきことに、ある事柄が長けている人ほど、最近の若者は…、最近の大人は…ってよりなったみたい。
以上を踏まえると、

  • 最近の若者は…って現象は、過去の記憶から媒介されるのが原因なんじゃないか…?

って感じになったそうです。



実験5

実験5では、人々がどの程度本を読んでいるかについての認識を意図的に操作し、過去の記憶から媒介する仮説が正しいのか、因果関係はどうなのか調べてみたそうです。
最後の実験に参加したのはアメリカ人の成人1500人でまず参加者全員の自分の年齢と性別を記入してもらったそうな。続いて、著者を知っているかどうかテストを画面を見て解いてもらったらしい。その後、成績が画面に出るんですが、実際の成績となんも関係がなくて、ランダムに、

  1. テストの成績は平均を35%も上回っていました。非常に良かったです。あなたの読書能力は人口の上位15%にランクしています…!
  2. テストの成績は平均を35%も下回っていました。非常に悪かったです。あなたの読書能力は人口の下位15%にランクしています…。

のどちらかのパターンが表示されたみたい。
後は実験4と同じ感じで、過去の自分や他人への読書の考えを思い出してもらいつつ、今の若者は昔に比べて本を読むかどうかを聞いてみたそうです。
結果、

  • 読書能力が人口の下位15%だと思った人は、最近の若者は…と思うことが減少した…!

とのこと。
自分が秀でていないってなると、最近の若者は…って言うことが少なくなるのはダサいですな(笑)



個人的考察

それでは最後に5つの実験結果から最近の若者は…の現象が起こるメカニズムをまとめておきましょう。

  • 最近の若者は…と思う人はやっぱり多かった。
  • 但しどのようなことでも最近の若者は…と思うわけではない(例:知能の高さ低さ)
  • 自分が特に秀でている事柄において、特に最近の若者は…と思う傾向が高かった…!
  • 自分が特に秀でていない事柄において、特に最近の若者は…と思う傾向が低かった…!

上記により分かった、最近の若者は…のメカニズムは、

  1. 自分が特に秀でている事柄は、他人が詳しくない事に気付きやすい
  2. また、自分自身や過去の自分、過去の友人の記憶がごちゃごちゃになり、今、私は読書が好きだから、私が子どもの頃はみんな読書が好きだった…!みたいな錯誤に陥る
  3. 結果、最近の若者は…となる…!

って感じで、どうやら最近の若者を見る時、現在の秀でた能力と過去の偏った記憶(記憶バイアス)で比較しちゃって起きるみたいです。こいつが何千年も前から繰り返し繰り返し起こっているから、いつの時代も最近の若者は…ってなっているみたい。いや~メカニズムを知るとめっちゃ恥ずかしいですねー。



参考文献