毎月恒例の月1社内研修が令和4年6月14日にありましたので、内容を備忘録としてブログに残しておきます。過去の社内研修内容を確認したい場合は下記からご覧ください。


今回の研修では、


の復習になります。
下記からは当時の社内研修の文章をそのまま使っている為、文章が言い切りの形となっております。ご了承ください。
では行きますね~。



1. 言語行動の2つの定義

言語行動には2つの定義がある。

  1. スキナーによる言語行動の定義
  2. 関係フレーム理論による言語行動の定義



2. スキナーによる言語行動

スキナーによる言語行動の定義は下記となる。

  • 同じ言語共同体に属する他の成員のオペラント行動を介した強化によって形成・維持されているオペラント行動=日本語を話せる人がいて、その人が強化することによって自分の行動が増えたり減ったりする。例:親が子どもを褒める、叱るなど
  • そして、他の成員による強化をもたらすオペラント行動は、その言語共同体特有の行動随伴性のもとでオペラント条件づけされたものである=言葉で約束事やルールなどがあり、その中でこれをやったらこういう結果になる、これができなければこういう結果になるという特有の行動随伴性がある。例:日本人でやることやらないこと、外国人でやることやらないことが違ってくる。日本は茶碗を持つのがマナー、韓国は茶碗を持たないのがマナーなど

また、スキナーは言語行動を、

  • マンド(要求言語行動)
  • タクト(報告言語行動)
  • エコーイック(オウム返しのこと)、読字行動(読んだものを書くこと)、書き取り(言ったものを書くこと)、書き写し(書いたものを書くこと)
  • イントラバーバル(「1、2の」と言ったら「3」がでてくること)
  • オートクリティック(おいし「そうです」や「もちろん」食べたい、リンゴ「かもしれません」みたいな「」の文をつけること)

に分類した。
スキナーは言語行動を話し手の行動として捉えた(言語行動に聞き手が入っていない)。つまりルール支配行動はスキナーの定義によれば言語行動ではない
スキナーの言語行動では、マンドとタクトが基本になる。



3. マンド(要求言語行動)とタクト(報告言語行動)

(1) マンド(要求言語行動)

マンド(要求言語行動)とは特定の強化子によってコントロールされ、その同じ強化子を指定するような言語行動をいう(例:「お水ちょうだい」という)。
自分で物理的に行動することなく受け取ることを可能にする機能を持つ(例:自分が動かなくても誰かが水をもってきてくれる=誰かが強化してくれる)。
先行事象は聞き手の存在(弁別刺激)と、結果を話し手にとって好ましいものにするような確立操作(例:喉の渇き)


(2) タクト(報告言語行動)

タクト(報告言語行動)とは観察・報告行動に関係が深く、先行する刺激によってコントロールされる言語行動をいう。
先行刺激(弁別刺激)そのものがタクトされる対象になり、ほめる、関心を向けるなどの社会的な般性強化子(様々な行動に対して全般的に機能する強化子のこと)が後続する(例:水が置いてあって「水」と言うと水と言えたことで周りが喜ぶ


(3) マンドとタクトの特徴

マンドとタクトは言葉が使えない、覚え始めた、言語訓練をしているクライアントに役立つ。そして、同じ水という表現でも、「これは水という名前です」という水(タクト)と「水が欲しい」という水(マンド)では違う。そのため、機能的には別の行動である。また、片方のみしかできない方もいる。更に、水を欲しい事を要求できても、誰かの要求に対して水を渡すことができるかも別となる。
上記から単語あるいは文自体に意味がある訳ではない(例:「水」と言われてもマンドかタクトか分からない)。また、単語あるいは文の意味は、その単語あるいは文を生み出した言語行動とその制御変数である行動随伴性を知ることなしには決定できない(例:「水」というのがマンドの行動随伴性なのかタクトの行動随伴性なのか分からないと「水」の意味が分からない)。そのため、上記や言語行動の意識についても常識とはズレがある(マインドフルネスとは共通点がある)



4. 関係フレーム理論(RFT)による言語行動

関係フレーム理論(RFT)による言語行動の定義は、出来事または刺激を、3つの基準(相互的内包、複合的内包、刺激機能の変換)に従って、関連づけること(=出来事または刺激同士を結び付けてその刺激が持っている機能を変換する行動のこと=刺激と刺激を結び付けてその刺激が持っている機能を変える行動のこと)を言う。また、認知も行動(言語行動)とみなす
スキナーの言語行動は行動の形態と機能のみで説明するが、関係フレーム理論の言語行動は行動の機能のみでは説明できない「象徴性(=言葉自体が意味を持っている)」や「生成性(=一を聞いて十を知る)」という顕著な特徴を持つ



5. 象徴性

象徴性とは、言葉自体が意味を持っているということである。
例えば、

  • 「レモン」と聞くと頭の中で黄色い果物のレモンが浮かぶ。
  • 小説を読むとハラハラ、ドキドキ、一度も見たことがない世界を楽しむことができる。

しかし、目の前にレモンはなく、小説の世界はどこにもない。つまり、バーチャルな現実を作り出す力が言葉(言語)にはあるということである。そして、自分で考えることでも同様のことが起きる。これが癖(習慣)になることがある。
また、「レモン」と聞いてレモンの映像が頭に浮かぶのは言語の双方向性と言われる人間にしかない能力があるからである。例えば、「レモン」の画像を見て「ランカ」のように別の呼び方をすると音の刺激機能が変わる(=「ランカ」と聞くと「レモン」が浮かぶ)。これが言語行動である。具体的にはランカ(刺激)とレモンの画像(刺激)を結び付けてランカ(その刺激)が持っている機能を変えた(ランカと聞くとレモンを思い出せるようになった)ということである。
なぜ言語の双方向性が成立するのかだが、これは物に名前を付けるということ=名前が物を意味しているという双方向の大きなパターンを学習していくからである。更にいったんパターンが身に付くと学習が自動的にできるようになる。これを複数の範例による訓練(マルチプルイグザンプルトレーニング(Multiple exemplar training))という。
ルール支配行動は、聞き手の行動であるため、スキナーの言語行動ではない。ルールが反応強化子随伴性の有無に関わらず効果を持つという事実は、ルールという言語行動が持つ象徴性に着目して初めて説明可能になる。
そして、ルール支配行動の種類は、

  1. プライアンス(プライ。マンドと対応している。誰かに喜んでもらうために何か行動をするということ。例:こういう時は勉強した方が良いなど)
  2. トラッキング(トラック。タクトと対応の深い行動。例:雨の日は傘を持って行った方が良いなど)
  3. オーグメンティング(オーグメンタル。動機づけを高めるようなルールのこと。例:風呂上りにはビールが旨いという話を聞くと飲みたいという動機づけが高まり風呂上りにビールを飲むという行動が出る)

の3つがある。
プライとトラックは弁別刺激として捉えると考えやすい。オーグメンタルは確立操作として捉えると分かりやすい。



6. 生成性

生成性とは、一を聞いて十を知るということである。
例えば、ネコの画像を見る⇔対称律(一方の方向が分かるともう一方の方向も分かる事)⇔「ネコ」と言う⇔対称律⇔ネコを漢字で書くと「猫」と書く。これが成り立つとネコの画像を見る→推移律→←等価律←「猫」と分かる。つまり2つの関係を学習するだけで学習していない4つの関係が自動的に成り立ってしまう。これを刺激等価性という(下図参照)


色々な物と刺激同士が結びつくので、言語行動は色々な考えが結びついていってしまう。結果、聞いていないようなことまで思い込んでしまったりなどが起きる
動物では対称律は成立しない(反対側もやれば成立する)。但し、対称律より推移率の方が動物は成り立ちやすいというデータもある。理由は不明。
関係フレーム理論は「関係」なので「等価」以外も含まれる(下図参照)


  • 1円よりも10円の方が大きい=10円よりも1円の方が小さい=相互的内包
  • 10円よりも50円の方が大きい=50円よりも10円の方が小さい=相互的内包
  • 1円よりも50円の方が大きい=50円よりも1円の方が小さい=複合的内包

上記のように、大小関係、前後関係、階層関係など様々な関係について派生的関係が成り立つ。そして、恣意的に(例:物理的な大きさは50円より10円の方が大きいが、価値は50円の方が大きいというように自分たちで決められる)適用可能なのが(全部、恣意的に決まっていない、決められないのが)言語行動である。



7. 象徴性と生成性は非常に汎用性の高い行動原理

関係フレーム理論における言語行動は、複数の刺激を関係づけ、その刺激の機能を変える行動(関係フレームづけ)と定義され、刺激は「言葉」である必要はない(写真や痛み、不安なども刺激に含まれる)。そのため、刺激機能の変換によって、意味が発生する=象徴性(例:腹痛と不安が結びつくと単なる腹痛が、腹痛があるということは不安があるのかもしれないと考えるようになってしまう)。また、相互的内包(対称律)、複合的内包(推移律・等価律)によって、多数かつ多様な派生的関係が成立する=生成性
そして、象徴性と生成性は、刺激等価性・関係フレーム理論によって説明可能になる、非常に汎用性の高い行動原理と言える



8. スキナーによる言語行動と関係フレーム理論による言語行動の使い分け

関係フレーム理論による言語行動の言葉の意味には、文脈と独立に決まる部分がある(例:ここでもリンゴはリンゴ。月にいってもリンゴはリンゴ。同じものを想像する)。また、言葉が生まれた瞬間から後のことを扱っており、より日常体験に近い言語行動の性質を捉えるのに適していると言える。それに対して、スキナーの言語行動は言葉が成立する過程に対して当てはまるものである。そのため子どもの行動や重度の発達障がいではスキナーの言語行動を重視しており、大人の臨床的問題は関係フレーム理論の言語行動を重視している。



9. パニック障害

パニック障害とは何も理由がないのに急に発作が起こる病気のことである。自発性のパニック発作が2回以上ないと診断がつかない(1回だけ経験する人は結構いるため)
パニック障害の人に寝ている間にパニック発作が起きるか聞くと3人に一人はありますと答える。また、その時、夢は見ていないと答える。理由はパニック障害が二酸化炭素に対する過敏性のある病気だから。ノンレム睡眠(夢を見ていない、深い睡眠)では代謝が落ちていくので呼吸がゆっくりとなる。すると、体内の二酸化炭素量が増え、結果、発作が起きるといった流れとなる。目を覚ましているときに濃い濃度の二酸化炭素を吸うと健常者の発作率は10%ぐらいなのに対して、パニック障害の方は60~70%ぐらいで発作が起きると言われている。



個人的考察

以上、「言語行動と関係フレーム理論」でした…!
是非、自分や支援で実践し、結果を実践報告書にまとめてみてください。



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もし、自分の事業所で使いたい…!って方はご活用ください。


参考文献