ここ数年、ようやく市民権を得てきたマインドフルネス。
怪しさ満点だった初期とは違い、結構、浸透してきているのかな~っと。また認知行動療法の中で出てくることが多いですし、コーピングレパートリーにも組み込みたいものの一つなんで抑えておきたいですよね。
なんで当ブログでもマインドフルネスを紹介しているんですが、色々なマインドフルネスの研究を見ていくと、冒頭の方(イントロダクション)で、マインドフルネスの基本や歴史みたいなのが載っていてそれが面白いんですよー。
そこで今回は、それらの情報をまとめて行こうかと思います。



マインドフルネスストレス低減法(MBSR)の歴史

2003年の書籍2004年のフライブルク大学の研究によると、マインドフルネスとは、古代の東洋の瞑想とヨガの伝統に由来しているそうで、一般的には、身体感覚、感情、思考、環境からの刺激など、現在の瞬間の経験を意図的かつ非批判的に観察することを特徴とする、特別な注意の払い方とされております。つまりマインドフルネスは仏教に起源を持っているってことですね。
そして東洋から西洋へと伝わり、ジョン・カバットジン博士がその哲学を医療問題への行動介入に応用したという感じです。それがマインドフルネスストレス低減法(MBSR)でした。
1982年のジョン・カバットジン博士の研究によると、マインドフルネスストレス低減法は元々慢性疼痛対策のために考案された方法だったらしく、そこに禅やヴィパッサナー瞑想といったアジアの瞑想やヨガの伝統にヒントを得て改良、心と体のつながりについて伝えていくことになったとのこと。
因みに当初は「ストレス軽減・リラクゼーションプログラム」として始まったそうです。理由はジョン・カバットジン博士がマインドフルネスと瞑想の実践を西洋の医療現場に導入したかったためであり、受け入れやすさを高めるために意図的に仏教的なルーツを強調しなかったんだとか。まぁ、いきなりこんなん言われたらあやしさ満点ですからね。
またジョン・カバットジン博士の1990年の「Full Catastrophe Living」によると、当時、医療分野ではすでに「ストレス」という単語は普及していたものの、仏教における「苦しみ」という言葉の定義はそれほど明確ではなかったみたい。
その後2011年のジョン・カバットジン博士の研究によれば、1990年代になって、初めてこのプログラムに「マインドフルネスストレス低減法(MBSR)」という名称が正式に使用されたとのこと。
因みにジョン・カバットジン博士の1994年の「Wherever You Go, There You Are」を見てみると、マインドフルネスは、ジョン・カバットジン博士によって「特定の方法で、意図的に、今この瞬間に、判断を下さずに注意を払うこと」と定義されております。
その後、ジョン・カバットジン博士の1990年の「Full Catastrophe Living」が邦訳されて、2007年に「マインドフルネスストレス低減法」として出版されたって感じです。
ということでマインドフルネスストレス低減法はマインドフルネスエクササイズ、瞑想、ヨガを活用しつつ、注意力の調整に重きを置き、「気づきを得る」能力を養っていきます。



マインドフルネス認知療法(MBCT)の歴史

そもそも「うつ病は再発しやすい!は本当なのか?再発率・寛解率はどれぐらいなのか?」の記事でも書いた通り、うつ病はうつ病エピソードの繰り返しにより再発率が高まる傾向がありました。そしてその原因はスキーマにある…!と考えられていたんですな。そのため1989の書籍(COGNITIVE BEHAVIOUR THERAPY ROF PSYCHIATRIC PROBLEMS)でもあるように、当初スキーマを変えることを目的としていたとのこと。
んがしかし、1998年の研究2000年のラドバウド大学の系統的レビューと、うつ病患者に対してスキーマ修正の認知療法を行ったんですが、依然としてうつ病の再発率が30~40%と高かったんだとか。
そこでこの再発率を更に下げるために新しい戦略として考えられたのが、思考から距離を置く脱中心化とのこと(1986年の研究)。脱中心化を育てることに焦点を当てた治療法の開発がマインドフルネス認知療法の開発につながったそうです。
そして1995年のケンブリッジMRC応用心理学ユニットの研究によると、マインドフルネス認知療法(MBCT)の当初の名称は、注意制御訓練(Attention Control Training)として発表されたそうな。なんでも2009年の書籍(Cognitive and Behavioral Theories in Clinical Practice)によると、元々注意力の分散方法を学ぶことが、うつ病の再発予防における中心的なプロセスであると考えられていたかららしい。
そして2012年の書籍(Mindfulness-based cognitive therapy for depression Second Edition)によれば、当初、注意制御訓練の一環として、マインドフルネスストレス低減法を改良した20分間のマインドフルネス訓練を行ってみたんだとか。結果は失敗だったそうなんですが、研究者たちは、マインドフルネスストレス低減法の「ポジティブもネガティブも受け入れるよう求める」というのが、脱中心化を進めることに気付き、最もネガティブな経験さえも脱中心化に利用するようになったそうです。これは、思考を変えて問題を解決することでネガティブ感情を減らそうとした認知療法(第二世代の認知行動療法)から、思考とあらゆる経験に対して態度を変えることを目的にしたアプローチへの大転換だったとのこと。
こんな感じなんで実はマインドフルネス認知療法の起源は、マインドフルネスストレス低減法(仏教に基づく起源)ではなく認知理論なんだそうです(2012年の書籍)。
因みに、ジョン・カバットジン博士の1994年の「Wherever You Go, There You Are」にマインドフルネスは「特定の方法で、意図的に、今この瞬間に、判断を下さずに注意を払うこと」と定義されておりましたが、この定義はマインドフルネス認知療法マニュアルの初版である2002年の書籍(Mindfulness-Based Cognitive Therapy for Depression First Edition)にも採用されたそうです。但し、ここは後に修正が入りまして、2012年の書籍(Mindfulness-based cognitive therapy for depression Second Edition)によると「意識」も含めたらしく、最終的に「意図的に、今この瞬間に、判断を下さずに注意を払うことから生じる意識」となったんだとか。
つまり、注意制御訓練ってのがあり、それにマインドフルネスストレス低減法の主要な要素が採用された結果、マインドフルネス認知療法が開発されたってことですね。

因みに、2002年の「Mindfulness-Based Cognitive Therapy for Depression First Edition」は抄訳されて、2007年に「マインドフルネス認知療法 うつを予防する新しいアプローチ」として出版されております。
また、2012年の「Mindfulness-based cognitive therapy for depression Second Edition」は邦訳されて、2023年に「マインドフルネス認知療法 原著第2版 うつのための基礎と実践」として出版されております。
気になる方はご覧いただくとよろしいかと。



マインドフルネスと認知行動療法の概要と違いについてレビューしてみた…!

2024年のケネソー州立大学レビュー論文によると、マインドフルネスと認知行動療法の概要と違いについてまとめてみたそうです。
そもそも近年マインドフルネスへの関心が急増しておりまして、医療、心理学、教育、警察、軍隊、企業の現場にまで取り入れられております。但し一気に広まったから弊害も出たみたい。例えばマインドフルネスをめぐる誤解の拡大とか、認知行動療法などにどう関係するかなどですな。一方で研究者曰く、マインドフルネスと認知行動療法の理論的基盤に焦点を当てた研究はあんまなかったんだとか。
そこで今回、マインドフルネスと認知行動療法を定義しつつ、両者の似ているところと違いについてまとめてみることにしたそうな。


マインドフルネスにおける仏教的ルーツと心理学モデル

あらかじめ注意点を書いておきますと、この項目は宗教的な要素満載でして、またスピリチュアル感もございます。なんで苦手な方は読み飛ばし推奨です。
2013年の研究2011年の研究によると、紀元前5世紀にインド亜大陸の王の息子であったゴータマ・シッダールタ(お釈迦様・ブッダ)は、統治していた父の意に反して、国を離れ、現実と苦しみの構造に関する真理を探し求めたと言われております。何年もの探求の中で病人や老人、死人などなど、様々な形の苦しみを見たんだとか。そして贅沢な生活を捨てて悟り、つまり苦からの解放を目指したとされております。
その方法の一つとして用いたのが瞑想なんですな。曰く、シッダールタは苦しみを終わらせる方法を見つけるまで、菩提樹の下で瞑想することを決意し、この瞑想中に悟りが訪れたらしい。
もうちょい詳しく見てみると、2011年のブリティッシュコロンビア大学の研究によれば、シッダールタはこの瞑想中に苦しみの根源は無常なものへの執着にあることを悟ったとのこと。具体的には、あらゆる人や物、思考や感情、その他の心の状態などは、全て意識や認識における一時的な現れに過ぎないことを理解したって感じ。そして自分や自我でさえ、思考、イメージ、感情、希望、その他の心の動きにより、瞬間的に現れそして最後は消えたり形を変えたりしてしまうと。これらを深く理解し、絶えず「記憶」する手段として、マインドフルネスが重要だとしたそうです。

…って感じで、ここまであやしさ満点で、苦手な人は多いでしょう。ただ、ネガティブのスパイラルに陥る状況を上手く説明してくれているのもまた事実なんで、もうちょい見ていきます。
そもそも苦しみは、不幸だと思ったり、不快な感覚(悲しみや不安感などネガティブな感覚)を嫌悪したりすることで生じます。またどちらも最終的には一時的な状態なんですな。ただそれに対して何かしらの反応をしてしまうので(例えばこの感覚が続いてほしい、続いてほしくないなど)、苦しみが続いちゃうわけです。そしてそれが更なる苦しみへと繋がっちゃうって感じなんだとか。んでずるずると悪循環に陥ってしまうみたい。
この苦しみの悪循環の解毒剤になると考えられたのがマインドフルネスなんですな。そしてマインドフルネスで重要なのは、脱中心化と思考や感情に囚われない心の状態であり、これらを行うことで客観的な視点を持てるようになるとのこと。これが苦しみの認知的及び感情的な循環を断ち切る可能性があると考えられております。また感情に対する心の反応とそれに続く苦しみを受け入れて認識すれば、このパターンから抜け出せるとしております。


認知行動療法

今まで何度も見てきましたが、認知行動療法は、行動療法暴露療法行動活性化療法系統的脱感作など)と認知療法認知再構成法ソクラテス式問答法など)を含む総称でして、行動療法を認知行動療法の第一波(第一世代)、認知療法を認知行動療法の第二波(第二世代)と呼びます。そして、マインドフルネスを含む認知行動療法を第三波(第三世代)と呼びまして、主に受容と共感のアプローチをポイントにしているんですな(詳しくは「認知行動療法を一から学ぼう!その1「オリエンテーション・認知行動療法の多様性」」と「認知行動療法を一から学ぼう!その5「新世代の認知行動療法」」を参照)
そんな認知行動療法なんですが2015年のエルパソコミュニティカレッジの研究によると、認知行動療法、特に認知療法における認知技術と介入はストア派(ストア哲学)の影響を受けており、出来事それ自体が苦痛を引き起こすのではなく、その出来事をどのように解釈するかが問題であるとしております。また感情(気分)や身体の反応を変えることは難しいが、認知や行動は変えることができるとしております。そしてこれらはアーロン・T・ベックの認知モデル(2014年の研究)が基本となっているとのこと。
更に詳しくは、


マインドフルネスと認知行動療法の違い

こう見ていくと、色々重なる部分もありますが、一方で違う部分もありますね~。
大きな違いはアプローチの仕方でしょう。
ちょっとまとめてみると、

  • マインドフルネス:認知を刺激する負のスパイラルを断ち切ることで認知を無力化することに重点を置いている。原点は仏教(ゴータマ・シッダールタ・お釈迦様・ブッダ)
  • 認知行動療法:合理的・理論的な考えで否定的で偏った認知(認知の歪み)を正す(変えていく)ことに重点を置いている。原点はストア派(ストア哲学)

って感じ。
またマインドフルネスは、仏教的なルーツを極力減らして、認知行動療法などの西洋の心理学的枠組みに合うように組み込まれたってところも大きいですね。実際、ジョン・カバットジン博士も意図的にそこんところを隠せるよう「マインドフルネス」なんていう新しい呼び方をしていますから。にもかかわらずマインドフルネスは仏教と東洋の瞑想哲学に深く根ざしたままっていうから面白いもんです。
そしてマインドフルネスと認知行動療法は似ていることも相まって、合わさったことで治療効果が高まった方法がいろいろ考案されることになりました。それが第三波・第三の波・第三世代・新世代と呼ばれる認知行動療法ですね。



個人的考察

こうみると異色のコラボがまさかのメンタル安定法に超使えるぞ…!ってなったのは面白いですねー。よくこの化学反応を思いついたもんですなー。



参考文献

https://psycnet.apa.org/record/2003-03824-001