当ブログでは水分補給にまつわるお話をいくつかしております。
そして今回もまた水分補給のお話です。
んで具体的にどのような話かと言いますと、食事中の水分補給は問題ないのか…?ってことです。
例えば皆さんは、食事中に水分を取ると胃酸の濃度が薄まってヤバい…!とか、その結果、太る…!って話を聞いたことがございませんか…?
アレが本当なのか今回考えていきたいと思います。



水分補給をして3時間後の胃液(胃酸)の量や濃度(pH)を調べてみた…!

1990年のイースタンオンタリオ小児病院(CHEO)の研究によると、手術前に水分補給をしたとき、胃液(胃酸)に影響が出るのか調べてみたそうです
この研究は、2~12歳までの子ども121人を対象としたそうで、RCTの単盲検でチェックしてみたそうな。
実験がどのような感じだったかと言いますと、

  1. 手術の3時間前まで、自由に水分補給をしてもらう(平均203±109ml飲んでいた)
  2. その後、胃液の量とpH(濃度)をチェックする

の手順だったそうです。
結果は、

  • 長時間の絶食後(平均絶食時間14時間後)の胃液の量は0.39±0.37ml.kg-1、胃液の濃度(pH)は1.7±0.4だった…!
  • 水分補給をして3時間後の胃液の量は0.34±0.28ml.kg-1、胃液の濃度(pH)は1.8±0.7だった…!
  • 胃液の量は年齢が上がるにつれて増加していた…!

とのこと。
あんま変わらないですね~。
ということで、水分補給をして3時間後までは特に胃液の量や胃液の濃度(pH)に影響はない…!と言えます。



水分補給をして2時間半後・2時間後の胃液(胃酸)の量や濃度(pH)を調べてみた…!

また上記研究チームは同じような研究をしております。
1990年のイースタンオンタリオ小児病院(CHEO)の研究によると、手術前に水分補給をしたとき、胃酸の量やpH(濃度)に影響はあるのか調べてみたそうです。
この研究は手術を控えた2~12歳の子供228人を対象に行ったそうで、最初の実験では、以下の2グループに分かれて水分補給をしてもらったそうな。

  • 手術の3時間前まで、自由に水分補給をしてもらった。
  • 手術の2時間半前まで、自由に水分補給をしてもらった。

その後、胃酸の量やpH(濃度)をチェックしてみたらしい。
結果、

  • 手術の2時間半前まで、自由に水分補給をしてもらっても、悪影響はなかった…!

とのこと。
んでこの結果を踏まえて、次の実験に進みました。
二つ目の実験でも、以下の2グループに分かれて水分補給をしてもらったそうです。

  • 手術の3時間前まで、自由に水分補給をしてもらった。
  • 手術の2時間前まで、自由に水分補給をしてもらった。

つまり、今度は2時間半前までだったのを2時間前までに変えてみたってことですね。因みにその他の変更はなしとのことです。
その後、同じように胃酸の量やpH(濃度)をチェックしてみた結果がこちら。

  • 手術の2時間前まで、自由に水分補給をしてもらっても、悪影響はなかった…!

以上から、水分補給をして2時間後までは特に胃酸の量やpH(濃度)に影響はない…!と言えましょう。



大人でも水分補給による胃液の量やpH(濃度)に変化はない…!

2004年のカルガリー大学RCT・単盲検によると、手術前に水を飲んでもらい、胃液の量やpH(濃度)に変化が出るのか調べてみたそうです。
今回実験に参加したのは、18歳以上の成人患者126名でして、皆BMIが30以上の肥満な方々だったそうな。
まず参加者全員に手術日の前日の夜から断食してもらい、次に以下の2グループにランダムに振り分けたそうです。

  1. 水分なしグループ:水分補給せずそのまま手術を行う。
  2. 水分ありグループ:手術の2時間前に300mlの水を飲んでもらう。

その後、全身麻酔し、胃液の量やpH(濃度)をチェック、最後にデータを比べてみたそうです。
結果は、

  • 胃液の量:水分なし26ml・中央値3~107ml、水分あり30ml・中央値3~187ml
  • pH(濃度):水分なし1.78・中央値1.31~7.08、水分あり1.77・中央値1.27~7.34
  • つまり、グループ間に統計的な有意差はなかった…!

とのこと。
子どもの時と同様、大人でも水分補給をして2時間後は特に胃液の量やpH(濃度)に影響はないみたいですね。



水を飲んでもすぐに胃酸の濃度が上昇し標準に戻る…!

2008年のアテネ大学RCT・クロスオーバー試験によると、健康な方を対象に、コップ一杯の水を飲むとpH(胃酸の濃度)がどう変化するのか調べてみたそうです。
この研究は健康な男女12名(男性6名女性6名、平均年齢26歳)を対象に行われたそうで、以下のどれかを飲んでもらったそうな。

  1. コップ一杯の水(200ml)
  2. 制酸剤(胃酸を中和する薬)
  3. ラニチジン(胃酸の分泌を抑える薬)
  4. オメプラゾール(胃酸の分泌を抑える薬)
  5. エソメプラゾール(胃酸の分泌を抑える薬)
  6. ラベプラゾール(胃酸の分泌を抑える薬)

合わせて上記の摂取後から6時間、胃のpH(濃度)をチェックし続けたらしい。
その後ウォッシュアウト期間を設けつつ、他のパターンも全員に試してもらったそうです。
結果、

  • コップ一杯の水(200ml):12名中10名が1分後には胃のpH(濃度)>4が上昇していた…!3分後にはpH>4になった…!
  • 制酸剤(胃酸を中和する薬):12名中名が2分後には胃のpH(濃度)>4が上昇していた…!12分後にはpH>4になった…!
  • ラニチジン(胃酸の分泌を抑える薬):(中央値)50分後には胃のpH(濃度)>4になっていた…!12名中4名が実験終了の6時間後までpH>4をキープしていた…!
  • オメプラゾール(胃酸の分泌を抑える薬):(中央値)171分後には胃のpH(濃度)>4になっていた…!12名中12名が実験終了の6時間後までpH>4をキープしていた…!
  • エソメプラゾール(胃酸の分泌を抑える薬):(中央値)151分後には胃のpH(濃度)>4になっていた…!12名中12名が実験終了の6時間後までpH>4をキープしていた…!
  • ラベプラゾール(胃酸の分泌を抑える薬):(中央値)175分後には胃のpH(濃度)>4になっていた…!12名中11名が実験終了の6時間後までpH>4をキープしていた…!

だったそうです。
つまり、水や制酸剤を飲むとすぐに胃酸の濃度(pH)が上昇して標準になるように体は調整するみたいですね。また、胃酸の分泌を抑える薬を使った場合も時間はかかるけどやはり同じくpHが上昇して標準になるよう調整するみたい。
セットポイントのようなことが胃酸でも起こるみたいなんで普通に食事をするとき水分を補給してもまず問題なさそうですねー。



個人的考察

水分を取ることによって食べ物がのどに詰まる事を防止してくれたり便秘を防いでくれたりするんで、食事中は普通に水分を取って良さそうですね。
となると冒頭に書いた、食事中に水分を取ると胃酸の濃度が薄まってヤバい…!とか、その結果、太る…!って話は嘘ってことになりますね(もちろん健康な方の場合ですが)
う~ん。また一つ水分補給の誤解がありましたね…。



参考文献

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2197001/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2268019