障がい者支援で起こり得る「バーンアウト」について改めて考えてみる!
福祉の分野ではバーンアウトに気を付けろ…!なんて話をよく聞きます(対人職全般にも言われますが)
バーンアウトってなに…?
バーンアウトは、燃え尽き症候群なんて呼ばれておりまして、仕事で精神がすり減っちゃって燃え尽きたような状態になってしまうことを指しております。今まで普通に仕事をしていたのに急にモチベーションが低下し、その結果、休職や離職、その業界自体から去るといったことが起こるんですよね。
そして、バーンアウトになる人はどちらかというと、仕事のモチベーションが高くバリバリこなしていたような人に多かったりします。モチベーションが高いからこそ、行くところまで行き燃え尽きる…そんな感じとでも申しましょうか…。
そんなバーンアウトの起源を遡ってみると、心理学者ハーバート・フロイデンバーガーの1974年の研究に行きつきます。ここで初めて「バーンアウト」って言葉が出てくるんですよね。
その後、カリフォルニア大学バークレー校の社会心理学者クリスティーナ・マスラックの1982年の研究によって、Maslach Burnout Inventory(MBI)というバーンアウトの重症度の判定基準が発表されます。要はバーンアウトの基礎マニュアルですね。
バーンアウトの症状が大きく分けて3つある…!
Maslach Burnout Inventory(マスラック・バーンアウト・インベントリー)によると、バーンアウトの症状は大きく分けて3つあるそうです。1. 情緒的消耗感(emotional exhaustion)
情緒的消耗感(emotional exhaustion)は、仕事をバリバリ行っていった結果、「情緒的に」燃え尽きてしまうことを言います。要は仕事で感情が燃え尽きた状態でして、バーンアウトの3つの症状の中で一番ポイントになると言われております。日々の業務で様々な感情を要求、制御が必要となる仕事では、どんどん消耗していきますんでこれはよく分かる話かと…。
特に対人援助職の一つである障がい者支援では、障がい者の気持ちや思い、発言や行動の受容などしつつ、更に私的な問題など深い部分に介入して問題解決をすることになります。そして、これらを行うためには相手方(障がい者)との信頼関係の構築にも膨大なエネルギーと時間を使うため、バーンアウトのリスクがかなり上がっちゃうんですよね。
そのため、モチベーションが高く、思いが強い支援者ほど、感情の消耗が著しく、疲弊していくと言えます。う~ん。気を付けたいですねー。
2. 脱人格化(depersonalization)
脱人格化(depersonalization)は、支援者の情緒的エネルギーが減っちゃって、これ以上なくなっちゃうとヤバい…!って時に起きます。脱人格化が起きると支援者は情緒的エネルギーが減らないよう、守りに入ります。そして相手方(障がい者)に気遣う余裕がない状態なので、結果、人格を無視した発言や気持ち、思いなんかをぶつけちゃうってことになってしまうんですよね。例えば、相手(障がい者)を目の前にして我を忘れてガーっと怒ってしまうとかがこれです。
以前に、支援者の思いが強すぎると虐待を行ってしまうケースがあるよ~って話を書きましたが、実は意外と虐待って思いが強い人でも起きやすいんですよね。そして原因がこの脱人格化だったりします。自分も気を付けたいですね~。
3. 個人的達成感の低下(personal accomplishment)
個人的達成感の低下(personal accomplishment)は、上記で紹介した情緒的消耗感と脱人格化が起きた状態で支援の質が落ち、思うような結果や成果、達成感が得られない事を言います。そしてこれも元々支援者の思いが強い、モチベーションが高い人に起きやすいので要注意です。
どういう感じかと言いますと、
- 支援者の思いが強い、モチベーションが高い人が深い部分に介入して問題解決をガンガンしていく
- 情緒的消耗感を感じて、無気力になる
- 余裕がなくなり脱人格化が起きる
- 情緒的消耗感による無気力感と、脱人格化による人格を無視した発言や思い等の中で、仕事をするので支援の質(サービスの質)が急激に下がる(個人的達成感の低下)
- 個人的達成感の低下の落差が非常に大きいため悩む
- 結果・成果・達成感・有能感・やりがい・自信を感じられない、強い自己否定が起きる、休職・離職をしてしまうなどのバーンアウトに…!
みたいな感じですね。
以前の自分のできた時や相手方についやってしまった罪悪感から負のスパイラルに陥っていくって感じがなんとも言えない悲しさですね…。
日本語版MBIで燃え尽き度をチェックしてみよう…!
ここまでお読みの方は、自分の今の燃え尽き度ってどのくらいなんだろう…?ってのが気になりますよね。
実は日本語版MBIってのを同志社大学の久保真人教授などが作成してくれているんですよね。因みに久保教授曰く、原著のMBIをそのまま翻訳したわけではなく、日本のヒューマンサービス職に合うよう20項目に再編、その後、アップデートを繰り返して現在の17項目に至ったんだとか。
燃え尽き症候群の重症度をチェックする指標として役立ちそうなんで、気になる方は目安として以下を行ってみてください。
それでは、以下の17の問いにいくつ当てはまるか答えてみましょう…!
- こんな仕事、もうやめたいと思うことがある。(E)
- われを忘れるほど仕事に熱中することがある。(PA)
- こまごまと気くばりをすることが面倒に感じることがある。(D)
- この仕事は私の性分に合っていると思うことがある。(PA)
- 同僚や顧客の顔を見るのも嫌になることがある。(D)
- 自分の仕事がつまらなく思えてしかたのないことがある。(D)
- 1日の仕事が終わると「やっと終わった」と感じることがある。(E)
- 出勤前、職場に出るのが嫌になって、家にいたいと思うことがある。(E)
- 仕事を終えて、今日は気持ちの良い日だったと思うことがある。(PA)
- 同僚や患者と、何も話したくなくなるようなことがある。(D)
- 仕事の結果はどうでもよいと思うことがある。(D)
- 仕事のために心にゆとりがなくなったと感じることがある。(E)
- 今の仕事に心から喜びを感じることがある。(PA)
- 今の仕事は私にとってあまり意味がないと思うことがある。(D)
- 仕事が楽しくて、知らないうちに時間が過ぎることがある。(PA)
- 体も気持ちも疲れ果てたと思うことがある。(E)
- われながら、仕事を上手くやり終えたと思うことがある。(PA)
文章の最後の
(E)は、情緒的消耗感で5点満点
(D)は、脱人格化で6点満点
(PA)は、個人的達成感の低下で6点満点
の全17点となります。
それぞれの合計を数えてみましょう。
最後に再度書いておきますが、あくまで目安なのでひとつでも当てはまったからヤバい…!ってことにはなりません。
今の自分の振り返りの指標としてお使いください。
個人的考察
具体的にバーンアウト対策はどうすれば良いのか…?ってのはなかなか難しいですが、個人的におすすめなのが、
- 完璧主義と自己批判をやめる
- 課題の分離を意識する
- セルフコンパッションを行う
- 認知行動療法を行う
- コーピングレパートリー(ストレス対策)を作って実践する
となります。