一ヶ月ほど前、ランダム化比較試験のメタ分析・系統的レビューでHIIT系のBDNFレベルアップ効果を調べてみた…!って内容をご紹介しました。
どうやらHIIT系の運動により、まず間違いなくBDNFはアップするみたいでして、これがランダム化比較試験のメタ分析・系統的レビューっていう質の高い研究で証明されたのがポイントとなっております。
それでは、持久力トレーニング、つまり一般的な有酸素運動でも同じくBDNFはアップするのか…?今回はここんところをランダム化比較試験のメタ分析・系統的レビューで調べた研究を見てみたいと思います。



持久力トレーニングでBDNFはアップするのかランダム化比較試験のメタ分析・系統的レビューで調べてみた…!

2023年の上海体育学院の研究によると、ランダム化比較試験のメタ分析・系統的レビューを用いて、持久力トレーニングでBDNFがアップするのか調べてみたそうです。
そもそも持久力トレーニング(一般的な有酸素運動)を行うことによって、脳の健康を効果的に促進し、加齢に伴う認知機能の低下を防ぐことができるということが何度も先行研究で証明されております。そしてこのプラス効果の理由の1つがBDNF(脳由来神経栄養因子)の発現の増加です。BDNFが増加することによって脳の構造そのものが変わったり、機能がアップしたりするみたいなんですよね。
では、たった1回の持久力トレーニングでもBDNFの発現がアップするのか…?ってことで、神経疾患のない若年や中年、高齢者など様々な年齢の方を対象にランダム化比較試験のメタ分析・系統的レビューを行ったのが今回の研究になります。

まず研究者たちは2000年1月~2022年6月までに発表された1回の持久力トレーニングとBDNFの関係を調べた先行研究をPubMedやElsevier、Web of Scienceを使って検索してみたそうな。
上記3つのデータベースで検索した結果、335件の研究がヒットしたとのこと。次にこの中から、重複している物や質の低い研究などを除外していったそうで、最終的には8件のRCTが基準を満たしていたとのこと。この8件のRCTを用いて系統的レビューとメタ分析を行ったみたそうです。
因みに総サンプル数は323名でして、持久力トレーニンググループが170名、対照群が153名という内訳でした。また、女性の割合が46.43%で、平均年齢は54.41±16.30歳(20~73歳の範囲)という感じだったので、老若男女のデータをまとめた感じとなっております。

次に今回持久力トレーニングとして行ったトレーニングジャンルについて見てみましょう。
今回ピックアップされた8件の研究で行われた持久力トレーニングは、


だったそうです。
また1回の運動時間については4分~60分の範囲だったとのことで、強度については最大心拍数の50%~100%の範囲だったみたい。一般的な方法、時間、強度の持久力トレーニングって感じですな。
では、結果をバーッとご紹介。

  • 全体的にみると、持久力トレーニングをたった1回行っただけで、BDNFの発現が明らかにアップしていた…!
  • 1回の持久力トレーニングによるBDNF発現のアップ効果は血清のBDNFでも確認された…!
  • 1回の持久力トレーニングによるBDNF発現のアップ効果は血漿のBDNFでは有意ではないが傾向が観察された…!
  • 血清・血漿のBDNFレベルは、年齢に関係なく明らかにアップしていた…!

一応、血漿と血清の違いを書いておくと、

  • 血漿(けっしょう:血液に抗凝固剤を混ぜて遠心分離器で分離した際にできたもの。フィブリノゲン(血液凝固に関わるタンパク質)を含む)
  • 血清(けっせい:血液をそのまま放置して分離してできたもの。フィブリノゲンを含まない。つまり血清=血漿-フィブリノゲン)

感じなんですが、まぁ、細かいことはどうでもいいでしょう(笑)
兎に角、ここで分かったことは、持久力トレーニングをたった1回行うだけで、BDNFの発現が軽度~中程度アップするということ、そしてこの効果は、年齢に関係なく受けられるってことですね。いや~実にすばらしい結果ですな…!



個人的考察

ということで、頭を良くしたい人、認知症予防をしたい人は、たった1回から効果が出る持久力トレーニングを試してみるとよろしいのではないでしょうか。



参考文献