昨日の続きです
今回は、ダウン症の方を20年間追い続けて認知症リスクを調べてみたよーって研究をご紹介します。



ダウン症の方の認知症の特徴や発症する年齢を20年間追跡調査してみた…!

2017年のトリニティ・カレッジ (ダブリン大学)の研究によると、ダウン症の方の認知症の特徴や発症する年齢を調べてみたそうです。
…っとこう書くと、これと似た研究はもう紹介しているじゃん…!と思いたくなるんですが、この研究の強みはその期間。なんと20年間も追跡調査してくれているんですよね。この手の研究でこの期間の長さは非常に貴重と申せましょう。因みに14年間の追跡調査の時点で一度まとめて研究を発表しているんですが、その後も追跡調査は続けていまして、そのアップデート版が今回ご紹介している研究です。
この研究は、35歳以上のダウン症の方77名を対象としておりまして、スタートは1996年になります。その後、2015年までの20年間、追跡調査し続けたとのこと。んで、この期間に参加者が認知症の診断を受けたかどうか、何歳で受けたかなどをチェックし続けたらしい。
その結果がこちら。

  • 20年間で77人中75人、つまり97.4%の方が認知症を発症していた…!
  • 認知症と診断された時の平均年齢は55歳、中央値は56歳だった…!
  • 50歳までの認知症リスクは23%だった…!
  • 65歳以上の認知症リスクは80%だった…!
  • 知的障がいの程度による違いは見つからなかった…!

20年間でほぼ全ての方が認知症を発症しているってのはまことに残念ですね。しかも認知症の発症は平均55歳で、50歳の時点でのリスクが23%ってのも高いですな。



個人的考察

それでは、今まで見てきた研究結果をまとめてみましょうか。

  • 日本の研究では、65歳以上の知的障がい者の約20%(5人に1人)は、認知症のような症状があり、認知症の疑いのある人を含めると65歳以上の知的障がい者全体の約45%(2人に1人)に認知機能の低下がみられた。また65~69歳の知的障がい者のうち16.4%に明らかな認知症の症状が出ており、健常者の場合は80~84歳の人のうち16.8%の方が認知症を発症していたので、15歳ぐらい認知機能低下が早いことになる。更に知的障がい者の場合、40~50代になると認知症などの認知機能の低下がみられるようになり、身体機能の低下は10年程早く、40~50代から老化の兆しが出てくる。以上から、知的障がい者の高齢化は大体45歳ぐらいからは始まると思われる。
  • 台湾の研究でも知的障がい者の早期老化はある様子。
  • ダウン症の方を除いた65歳以上の知的障がいの方の認知症発症率は、一般の高齢者と比較して約5倍(4.98)であり、60歳以上のダウン症の方のうち、大体50~70%の方が認知症の症状があった(因みに一番多い診断はアルツハイマー型認知症)。ダウン症のない知的障がいの方は一般集団と比較して、認知症の発症率が平均で10歳程若い。知的障がいの方は50歳ぐらい、ダウン症に方は30歳ぐらいから徐々に上がっており、知的障がいの方の老化・認知症は健常者に比べ10~20歳ぐらい早そう。
  • ダウン症の方の認知症(アルツハイマー病認知症)は40歳ぐらいから始まる様子。例えば、40歳以上のダウン症の方の脳を見てみると3分の1には認知症が見られたという研究や発症率をみた研究では、35歳~49歳で9%~23%、50歳~59歳で55%、60歳以上で75%~100%といった結果が出ていた。但し認知機能の低下は40歳ぐらい始まっている感じで、最初に低下するのは記憶力と注意力、次いで実行機能や運動計画などと思われる。20年間追跡調査した結果も上記と似ており、参加者のほぼ全ての人が認知症を発症してしまったこと、認知症と診断された時の平均年齢が55歳だったことを踏まえると、この当たりが一つの基準と思われる。

もうちょいざっくり結論をまとめますと、

  • ダウン症のない知的障がい:認知機能低下は15歳(45歳)、認知症は10歳(50歳)ほど早く来る。そのため、老化・認知機能低下・認知症は健常者に比べ10~20歳ぐらい早そう。
  • ダウン症のある知的障がい:ダウン症がある場合、更に老化・認知機能低下・認知症は早そう。30歳ぐらいから認知症になることもあり、40歳ぐらいではっきりと出始め、平均で55歳の時に発症する様子。また最終的にほぼ全ての方が認知症を発症する様子。

といったところ。
いずれにしても、ダウン症の有無に関わらず、知的障がいを持つ方の認知機能低下・認知症発症が早いのは間違いなさそうなんで、踏まえて支援していきたいですねー。



参考文献