【加筆内容】障がいとBDNFの関係について考える その7「統合失調症・双極性障害・統合失調感情障害編1」
これまで、
って感じ。
統合失調症・双極性障害・統合失調感情障害はBDNFと関係あるのか…?
2022年のオックスフォード大学などの研究によると、統合失調症・双極性障害(躁うつ病)・統合失調感情障害とBDNF・認知機能の関係について系統的レビューとメタ分析を行ってみたそうです。
まず統合失調症・双極性障害・統合失調感情障害ってのを軽く復習しておきますと、
って感じ。
んで、これら3つの精神疾患を持っている患者さんと健康な方とでBDNFレベルや認知機能に違いが出るのかを調べたのが今回の研究になります。
まず研究者たちは2000年1月1日から2021年6月1日までの間に発表された査読済み論文をEmbaseとMEDLINEで検索して見たそうな。結果815件の研究がヒットしたとのこと。続いて対照群が存在しなかったり、質の低い研究を除外していったそうで、最終的に基準を満たしていた論文は32件だったらしい。この32件で系統的レビューを行ってみたそうです。因みに32件のサンプル数は、
- 統合失調症の患者さん:4,754人
- 双極性障害の患者さん:476人
- 対照群(健康な方):3,526人
といった形でエビデンスレベルは中くらいのものが多かったそうな。またランダム化された研究はわずかしかなかったそうでこの辺は、まぁ、仕方ないですね。
因みにメタ分析は32件からさらに絞った24件で行われておりまして、統合失調症の患者さんに関する研究が19件、双極性障害の患者さんに関する研究5件といった感じだったそうです。
それでは系統的レビューとメタ分析の結果のポイントを確認していきましょう…!
- 血漿BDNFレベルは9件の研究でチェックしていた。
- 血清BDNFレベルは23件の研究でチェックしていた。
- 患者さんと健康な方を比較した25件の研究(統合失調症の患者さん21件、双極性障害の患者さん4件)で統計的な有意差が見られた…!
- 24件の研究で患者さんの方が健康な方よりもBDNFレベルが低下していた…!
- 効果量は15件の研究(統合失調症の患者さん14件、双極性障害の患者さん1件)が大程度の効果量、5件の研究が中程度の効果量、11件の研究が小程度の効果量だった…!
- 統合失調症の患者さん2,970人と健康な方1,920人を比較した研究19件をメタ分析にかけてみたところ、統合失調症の患者さんは健康な方よりもBDNFレベルが中程度に低下していた…!
- 双極性障害の患者さん392人と健康な方293人を比較した研究5件をメタ分析にかけてみたところ、双極性障害の患者さんは健康な方よりもBDNFレベルがわずかに低下していた…!
- 認知機能の評価は研究によって異なっていたが、ほぼ全ての研究(32件中29件)で、患者さんと健康な方との間には有意差があった(患者さんはいくつかの認知機能が低下していた)
- 統合失調症の患者さんは健康な方よりも認知機能が低下していた…!
- 統合失調症の患者さん871人と健康な方610人を比較した研究5件をメタ分析にかけてみたところ、統合失調症の患者さんは健康な方よりも認知テスト(RBANS)の成績が大幅に低かった…!
- 双極性障害の患者さんは、全ての状態(躁状態、うつ状態、正常な状態)で、認知機能が低下していた…!
- 双極性障害の患者さんを対象としたメタ分析はデータがバラバラでできなかった。
- ほとんどの研究(19件)で患者さんのBDNFレベルと認知機能には有意な相関関係がある…!と示されていた…!
- 但し、BDNFレベルと認知機能の関係は無視できるレベル~低いレベルの正の相関関係しかなく、中程度の相関関係があったのは3件の研究のみだった…!
- 32件中4件の研究で、統合失調症の患者さんを対象に治療前後のBDNFレベルと認知機能の変化をみていた。介入、特に薬物治療は認知機能を改善し、BDNFレベルを増加させていた…!
ざっくりいうなら、統合失調症・双極性障害・統合失調感情障害の全てでBDNFレベルは低下していたし、認知機能も低下していたみたい。また、これらが薬物治療で改善されていたってことで、従来の結果通りですな。但し、BDNFレベルと認知機能の関係は無視できるレベル・小~中程度しかなかったみたいでして、研究者も、
ってことでした。
原因は一つってわけじゃなく、複雑に絡み合った結果の可能性がありそうですね。
個人的考察
ということで、どうやら統合失調症・双極性障害・統合失調感情障害の全てでBDNFレベルの低下は関係ありそうな感じ。
次回も引き続き、ここんところを見ていきます。