当ブログではたまに慢性炎症ってのが出てくるんですが、まだしっかり書いていなかったんでご紹介しておきます。



炎症・急性炎症・慢性炎症ってなに…?

炎症・急性炎症・慢性炎症を知るうえで参考になるのが2013年のサウサンプトン大学レビュー論文になります。
元々この研究はヒトにおける炎症評価のバイオマーカーについて先行研究を見直しした物なんですが、炎症の基礎について丁寧に記載があり、非常に勉強になるんですよね。
それではまずは炎症の概要について見てみましょうか。
炎症とは、感染やその他の損傷から守る正常な防御反応の事を言います。具体的には、病原体の殺菌や組織の修復、感染部位や損傷部位の回復なんかをしてくれるんですよね。そしてこの炎症が起こる原因は非常に様々でして、例えば、微生物なんかの存在や組織の損傷、代謝ストレスって感じです。
そんな炎症は、大きく2つに分類できるんだとか。それが急性炎症と慢性炎症となっております。
急性炎症は、感染因子や炎症誘発に関係する事に対する最初の体の反応のことを言います。感染や損傷したところに血漿と白血球がたくさん移動することによって起こるんですな。そして感染症を防いだり、傷を治したりしてくれるんですよ。ありがたいですね~。このことからも分かる通り、問題がなくなったら炎症は治まります。そのため、急性炎症は限定的に起こるものであり、原因が抑制・除去されると治まります。
一方で、炎症が治まらず、長期にわたる、あるいは慢性的になることを慢性炎症と言います。慢性炎症になると、炎症部位に存在する細胞が徐々に変化し、組織の破壊と治癒が同時に行われるんですな。そしてこれが続くと、結果、組織に修復不可能な損傷が生じ、疾患を引き起こすことになります。
例えば、

  • 関節リウマチ(RA)
  • 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎とクローン病)
  • アトピー性皮膚炎
  • 乾癬
  • 喘息(アレルギー性喘息)
  • 神経変性疾患(アルツハイマー病やパーキンソン病)
  • 代謝性疾患(動脈硬化、2型糖尿病、肥満など)

ですね。
では実際に慢性炎症かどうかを調べるにはどうしたらいいのか…?ってことで、様々な炎症評価のバイオマーカー(炎症マーカー)がございます。
具体的には、血中の白血球が増加し、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1β、IL-6、インターフェロン-γなど)とケモカイン(IL-8、単球走化性タンパク質1(MCP-1)など)の血中濃度が高くなる感じとのこと。
但し、炎症性の疾患が出たころは炎症マーカーが高レベルになっている場合が多いものの、慢性炎症は低レベルとなることもあり、この場合、症状は最小限か、全く現れない場合もあります。一気に物価が高騰するとパニックになるけど、すこ~~しずつ物価が高騰すると気付かない感じとでも申しましょうか…。因みに低レベルの典型例は肥満ですね。肥満は慢性炎症の代表例なんで。
また急性炎症も慢性炎症も炎症マーカーが同じなんで2つを区別することは難しいとのことです。
最後に慢性炎症が高くなる様々な要因について見ておきます。

  • 年齢(高齢者の方が慢性炎症が多い)
  • 体脂肪(高い方が慢性炎症が多い)
  • 普段の運動量(少ない方が慢性炎症が多い)
  • 性別(研究数が多くよく分からん)
  • 遺伝(関係ありそう)
  • 喫煙の有無(吸う人は慢性炎症が多い)
  • 腸内細菌・腸内環境(悪いと慢性炎症が多い)
  • 食事(西洋スタイルの食事・加工食品超加工食品などが多いと慢性炎症が多い)
  • 特定の医薬品の使用(抗生物質の使用が多いと慢性炎症が多い)
  • 精神的なストレス(慢性ストレスが多いと慢性炎症が多い)
  • 汚染への曝露(大気汚染などの暴露が多いと慢性炎症が多い)
  • 睡眠(睡眠問題が多いと慢性炎症が多い)

対策可能なものからそうでない物まで様々ですね。
因みに研究者曰く、対策可能な項目を認識し、制御することが大事だとおっしゃっております。



慢性炎症ってなに…?

上で色々書いちゃったんで、もうちょい分かりやすく書いておきますね。
まず炎症ってなに…?って話から。炎症とは体を守るための防御機能でして、主に免疫が自分を守ろうとする働きのことを言います。例えば、やけどをした場合に赤くなりますがあれは炎症が原因となります。
そして、炎症=皮膚の表面で起こるもの、というイメージがありますが、決してそんなことはなく、炎症は体内でも起きます。これを体内炎症なんていったりします。つまり、胃や腸なんかでも炎症は起きる…!ってことですね。
んで、炎症状態が長期間ずっと続くことを慢性炎症と呼びますが、これが非常にまずいんですよね。例えばあまり知られていませんが肥満、特にお腹周りの脂肪(内臓脂肪)は慢性炎症が起きている証拠だったりします。お腹周りの脂肪の蓄積により、免疫が24時間活動中となりますが、一方で、生死にかかわる大きな問題ではない為、特に意識しない(できない)程度の炎症がずっと続くんですよ。その結果、体全体に炎症が発生してしまいます。表面に出てくるのはかなり後で、例えばアレルギー反応なんかがその代表例だったりします。



慢性炎症によるバッドステータスが起きる仕組みとバッドステータスの種類

慢性炎症は免疫の過剰反応が原因だと思われております。
どういうことかというと、

  1. 体内炎症が起きる
  2. 免疫が炎症を鎮めようと活動する
  3. でも、ずっと炎症が起き続けるので(慢性炎症のため)、免疫もずっと活動し続ける
  4. そのうち、守るはずの体内(血管など)にも流れ弾が当たってしまう
  5. 体がダメージを受け不調が起きる…!
  6. 放っておくと、更に深刻になる…!
  7. 最後は炎症が脳まで行く…!
  8. 病気になったり、脳機能の低下、精神病が発症する…!

という嫌~なステップを踏むことになるんですよね。
いや、ほんと踏みたくないわ~。
次に具体的にどのようなバッドステータスを喰らうのかですが、慢性炎症状態になると、

  • 肥満
  • 糖尿病の発症・悪化
  • 心血管疾患などの発症・悪化
  • アレルギーの発症・悪化
  • 脳機能の低下
  • うつ病などの精神病、精神障害の発症・悪化

と、こんな感じであらゆる不調が起こったりするんですよね。
怖すぎ…。
特に、うつ症状と炎症性サイトカインの関係については以下の研究を見てみると良いです。



炎症性サイトカインでマウスがみるみるうつ状態に…。

2011年のプリンスエドワードアイランド大学の研究によると、大うつ病の患者さんやうつ病の動物は、炎症性サイトカインの濃度が高いと報告されているけど、実際関係があるのかレビューしてみたそうです。このレビューに出てくる炎症性サイトカインとうつ病の関係を調べた動物実験によると、マウスに炎症性サイトカインを投与してうつ病との関係を調べたみたい。すると、マウスはみるみるうつ状態に陥っていったそうな。
具体的には、

  • 食欲減退
  • 無気力
  • マウスの集団に入らない

のような症状が出たとのこと。
う~ん。怖いですねー。



抑うつ症状がある人は、炎症レベルが高く、体内の酸化レベル・抗酸化レベルのバランスが崩れていた…。

2014年のポンセ健康科学大学の研究によると、うつ病は炎症性サイトカインレベルの上昇と体内の酸化レベル、抗酸化レベルのバランスによって変化するのではないか…?ということを調べてみたそうです。
研究は21歳以上の男女を対象に、まずはそれぞれのうつ病の度合いをアンケートでチェック、続いて参加者全員の血液を採取したそうな。最後にアンケート結果と炎症性サイトカインレベルや体内の酸化レベルなんかを比べてみたらしい。
アンケート結果で抑うつ症状があると評価された参加者たちは、

  • 炎症レベルが高かった…。
  • 体内の酸化レベルと抗酸化レベルのバランスが変化していた…。

とのこと。
やはり人を対象にした研究でも炎症が進んでいる人ほど、うつ病の発症、症状の悪化が進んでいたみたいですね。
特に慢性炎症と腸内環境は切っても切れない関係なんでぜひメンタル安定のためにも意識していきたいですねー。



慢性炎症の原因色々

慢性炎症が起きる原因は様々なんですが、ここでは代表的なものをピックアップしてご紹介していこうと思います。


慢性ストレス

まず、最初に挙げて起きたいのが慢性ストレスです。ストレスは大きく分けて慢性ストレスと急性ストレスがあります。そしてストレスホルモンであるコルチゾールは短時間専用のシステムとして構築されておりますので、これが常に分泌し続けてしまうと慢性炎症にまっしぐらとなってしまいます。
ストレスが体に良くないってのは常識ですが、意外となんでストレスって悪いのか…?とか、実は良いストレスもあるって話はされないので、その当たりも押さえておくと上手く慢性炎症を回避できるのではないかと…。
余談ですが、運動は急性ストレスを与えるのでストレス発散効果がありますが、長時間行ってしまうと慢性ストレスとなって逆にストレスが溜まってしまいます。結果、慢性炎症になってしまうので注意が必要です。何度かご紹介している通り長時間の有酸素運動をおすすめしない理由はこれが原因となっております。


加工食品

加工食品は、オメガ6脂肪酸トランス脂肪酸などがたんま~り含まれております。そのため、腸内細菌にダメージを与え、ひいては腸内環境・腸内フローラが悪化してしまいます。こうなると、リーキーガットが起きて体内に毒素がわんさか入ってくるわ、それによる炎症が一気に加速するわで慢性炎症にまっしぐらってな感じです。


糖質を摂りまくる

何事も過ぎるは良くないってことで、極端な糖質制限も問題ですが、かといって、糖質を摂りまくるのも問題です。糖質の過剰摂取は悪玉コレステロールを増やす原因になりますし、炎症マーカー・炎症性サイトカインの分泌により血管などを傷つけ炎症を起こさせます。
そのため、糖質についてはマイルドな糖質制限に抑えるか、1日の摂取量の目安を基準に食べて行くとよろしいかと思います。また糖質はオススメな食材と避けるべき食材がありますんで合わせて意識しておくと良さげです。
因みに炎症マーカー・炎症性サイトカインには、


などがあります。また、抗炎症性サイトカイン(例:インターロイキン10(IL-10)など)もあるので、気になる方は検索をかけてみると良いかもしれません。


グルテンを摂りまくる

上記とかなり近い内容ですが、グルテンを摂りまくるのもやめておいた方がよろしいかと思います。以前に書いた通り、グルテンは、人体にとって異物として認識され免疫が暴走、メンタル悪化や体調悪化を引き起こす可能性があったりします。特にグルテン不耐性の方は注意が必要です。


脂肪を摂りまくる

上記で糖質を摂りまくると慢性炎症になる…!って話を書きましたが、どうやら脂肪を摂りすぎても慢性炎症になるみたい。
ここらへんについては、

と、様々な研究でみられたとのこと。
これらによれば、高脂肪食は急性炎症と慢性炎症の双方のリスクを高めるみたいです。
理由については糖質の時と仕組みが似ていて、脂肪を大量に摂取すると、リーキーガットが起きてしまい、結果、血中の毒素量が増えてしまうからみたい。気を付けたいですね~。

特に注意が必要なのが高脂肪食ダイエットや糖質制限ダイエットを行っている方々。高脂肪食ダイエットはそのまんまなんですが、糖質制限ダイエットを行っている方も糖質の代わりに脂肪を多く摂取していることが多いんですよね。どちらのダイエット効果も大きくはなさそうですし、それよりも上記のデメリットの方が上回るんじゃないかな~と思います。


睡眠不足

睡眠不足もかなり注意が必要です。2010年のエモリー大学の研究によると、睡眠の質が低いと、フィブリノーゲン、IL-6(インターロイキン6)、CRP(C反応性タンパク)のレベルが高かったとのこと。また、睡眠時間が6時間未満だと体内炎症レベルが大幅にアップしたみたいなんで、6時間以上の睡眠は死守するのが得策。


運動不足

運動不足も同様に注意が必要です。2010年のコペンハーゲン大学病院の研究によれば、日頃から運動不足な人は、全身に軽度の炎症が起きてしまうらしいんですよね。
ということで、慢性炎症対策にも運動はやっておいた方が良さそうです。



やっぱり慢性炎症には抗炎症食・抗酸化食が効くみたい…!

2014年のマサチューセッツ大学の研究によると、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎とクローン病)の患者さん40名を対象にして、抗炎症食・抗酸化食の効果を調べてみたそうです。
4週間以上、抗炎症食を試した結果、

  • 全ての患者さんは少なくとも炎症性腸疾患の薬が1種類以上減った…!
  • 全ての患者さんは排便回数など症状が改善した…!

とのこと。
やっぱり日々の食事で積極的に抗炎症作用・抗酸化作用のものを摂取すると腸内環境が改善し、慢性炎症が改善するみたいですね。



食事性炎症指数(DII)と健康リスクの関係についてアンブレラレビューを行ってみた…!(ディーキン大学バージョン)

2021年のディーキン大学などの研究によると、食事性炎症指数(DII)と健康リスクの関係についてアンブレラレビューを行ってみたそうです。
そもそも慢性炎症は、様々な健康リスクを上げる要因でして、特に炎症が全身にいっちゃうと、

  • 全死亡率の上昇
  • ガンリスクの上昇
  • 2型糖尿病リスクの上昇
  • 神経変性疾患(アルツハイマー病やパーキンソン病など)リスクの上昇
  • 心血管疾患(CVD)リスクの上昇

などなど、慢性疾患リスクが上がっちゃうんですな。
更に慢性炎症は、

  • うつ病リスクの上昇
  • 統合失調症リスクの上昇
  • 双極性障害リスクの上昇

などの精神疾患にも関係ありそうとなっております。
そんな慢性炎症ですが、食事が重要なポイントの一つとのこと。具体的には、抗炎症性と炎症誘発性の食品の摂取量でして、例えば抗炎症性の多い食事の代表的な物としては地中海式ダイエットが挙げられるでしょう。逆に炎症誘発性の多い食事の代表的な物としては超加工食品の摂取量が多い西洋スタイルの食事となります。
そして、食事性炎症指数(DII)は、食事全体における抗炎症性と炎症誘発性を数値化したものなんで、これらを基にすることによって健康リスクをチェックすることが出来るんですな。
ただ、先行研究で食事性炎症指数(DII)と健康リスクの関係のメタ分析は行われてきたものの、それがどの程度信頼できるエビデンスレベルなのか、チェックしたアンブレラレビューは行われていなかったそうです。そこで今回調べてみることにしたんだとか。
まず研究者たちは、2020年6月までに発表された該当する観察研究のメタ分析をMEDLINE(PubMed経由)、PsycINFO(Ovid経由)、EMBASE(Ovid経由)、コクラン(Ovid経由)で検索してみたそうな。すると合計333件の研究がヒットしたとのこと。次にこの中で被っている物や質の低い研究を除いていったらしい。
最終的に残った観察研究のメタ分析は15件でして、各メタ分析の特徴は、

  • 各メタ分析に含まれる研究数の中央値:6件(範囲2~44件)
  • サンプル数の中央値:36,592人(範囲1,966~1,299,621人)

って感じ。
因みに総サンプル数は4,360,111人ということでした。
それでは結果を見てみましょう。

【説得力のあるエビデンス】
  • 心筋梗塞リスク

【非常に可能性のあるエビデンス】
  • 全死亡率
  • 全てのがんリスク
  • 大腸がんリスク
  • 膵臓がんリスク
  • 呼吸器がんリスク
  • 口腔がんリスク

【可能性のあるエビデンス】
  • 食道がんリスク
  • 肺がんリスク
  • 乳がんリスク
  • 卵巣がんリスク
  • 咽頭がんリスク
  • 前立腺がんリスク
  • うつ病リスク
  • HbA1c(血糖値の高さ)
  • ウエストの長さ

上記以外は低いエビデンスやエビデンスなしだったそうです。
これらを見ると、炎症誘発性が高い食事は、心疾患、全死亡率、様々ながん、うつ病、糖尿病、肥満の健康リスクを上げるみたいですね。

因みに同時期に似たようなアンブレラレビュー2021年のテヘラン医科大学から発表されております。
こちらは2020年11月までに発表された該当する観察研究の系統的レビュー・メタ分析をPubMed、Scopus、ISI Web of Scienceで検索し、各研究を精査して11件の研究に絞り込んだんですが、結果、食事性炎症指数(DII)と心血管疾患リスク、全死亡率、大腸がんリスクには中程度のエビデンスレベルがあったそうです。但しがんについてはエビデンスレベルが低い物や非常に低い物だったそうな。
細かい違いはありますが、被っている部分もあり、少なくとも体内炎症が健康リスクを上げるのは間違いなさそうな感じです。



食事性炎症指数(DII)と健康リスクの関係についてアンブレラレビューを行ってみた…!(中国医科大学バージョン)

2021年の中国医科大学の研究によると、食事性炎症指数(DII)と健康リスクの関係についてアンブレラレビューを行ってみたそうです。
以前にも登場しましたが、食事性炎症指数(DII)は、食事の炎症性を反映するために開発された新しい食事指数でして、抗炎症性と炎症誘発性をスコア化したと言うものです。この食事性炎症指数のスコアが高い程、炎症作用が強い食事となりまして、逆にスコアが低い程、抗炎症作用の強い食事と言えるんですな。
そして先行研究により食事性炎症指数が様々な健康リスクと関係ありそうなんですよ。ただ、その効果のエビデンスレベルがイマイチはっきりしていないものもあったんで、今回ガッツリ掘り下げてみることにしたみたい。
まず研究者たちは、2020年8月8日までに発表された該当する観察研究の系統的レビューとメタ分析をPubMed、Embase、Web of Scienceで検索してみたそうな。すると合計10,154件の研究がヒットしたとのこと。続いてこの中で重複している物や質の低い研究を除外していったんだとか。
最終的に残った研究は16件でして、総サンプル数は560万人を超えていたそう。また各メタ分析の研究数の中央値は7件(3~44件の間)とのことで、症例数が1,000件を超えたメタ分析が30件あったらしい。
それではこれらをまとめた結果を見てみましょう。

【説得力のあるエビデンス】
  • なし。

【非常に可能性のあるエビデンス】
  • 消化管がん
  • 大腸がん
  • 全てのがん
  • 咽頭がん
  • 上部気道消化管がん
  • 心血管疾患による死亡率

【可能性のあるエビデンス】
  • ホルモン依存性腫瘍
  • 直腸がん
  • 結腸がん
  • 婦人科がん
  • 乳がん
  • 卵巣がん
  • 大腸がん
  • 前立腺がん
  • 全死亡率
  • うつ病

残りの健康リスクは低いエビデンスやエビデンスなしって感じだったそうです。
こう見ると、炎症(体内炎症・慢性炎症)と抗炎症(抗酸化物質・抗酸化作用)って、色々ながんリスクに関係があるんですね。それと炎症とうつ病はやっぱり関係あるみたい。

食事性炎症指数(DII)は、その後に行われたアンブレラレビューで、健康に良い食事法にも選ばれていたり、うつ病に効果的な食事法にも選ばれていたりしますんで、食事の炎症・抗炎症はやっぱり気にしておくと良さげです。
因みにそれらのアンブレラレビューは以下の記事に載っています。




CRP(C反応性タンパク)と健康リスクの関係についてアンブレラレビューを行ってみた…!

2020年のヨアニナ大学の研究によると、CRP(C反応性タンパク)と健康リスクの関係についてアンブレラレビューを行ってみたそうです。
慢性炎症(低レベルの炎症)は様々な慢性疾患と関係しておりまして、その炎症マーカーとしてよく使われるものの一つがCRP(C反応性タンパク)となっております。そんなCRPですが、1930年の研究で初めて見つかったそうで、2013年のアメリカ退役軍人省医療センターの研究なんかを見てみると、当時は感染症のバイオマーカーとして使用されていたらしい。また、2003年のロイヤルフリーユニバーシティカレッジの研究2001年のブリガム・アンド・ウィメンズ病院の研究によると、1990年代に高感度のCRP測定法が登場したらしく、数年後には心血管疾患と炎症の関係を調べた研究が行われたんだとか。その後CRPと心血管疾患リスクやがんリスク、代謝性疾患リスク、筋骨格系障害リスク、自己免疫疾患リスクなど様々な健康リスクとの関係が調べられたらしい。んがしかしCRPが本当に指標として役立つのか依然として不明とのこと。そこで今回研究者たちは、既存の研究結果をまとめてみることにしたみたい。
まず最初に2019年3月31日までに発表された該当する観察研究のメタ分析メンデルランダム化研究をPubMed、Scopus、コクランで検索してみたそうです。すると4,100件の研究がヒットしたそうな。続いてこの中で重複している物や質の低い物を除いていったとのこと。
最終的に選ばれた観察研究のメタ分析は55件でして、メンデルランダム化研究は37件だったそうです。
それでは結果の前に、観察研究のメタ分析でチェックしたCRPと健康リスクについての概要を抑えておきましょう。

  • 55件の研究には113個の関連性があった。
  • がん関係の関連性は52個だった。
  • 心血管関係の関連性は31個だった。
  • 腎臓関係の関連性は7個だった。
  • 骨格関係の関連性は6個だった。
  • 神経関係の関連性は3個だった。
  • 妊娠関係の関連性は2個だった。
  • 呼吸器関係の関連性は2個だった。
  • その他の関連性は10個だった。
  • コホート研究がかなりの割合(823件、86.5%)を占めていた。
  • コホート研究のうち前向きコホート研究は497件だった。
  • コホート研究のうち後ろ向きコホート研究は264件だった。
  • デザイン不明のコホート研究は62件だった。
  • 次に多かったのはケース・コントロール研究(115件、12.1%)だった。
  • 113個の関連性のうち95個(84.1%)は統計的に有意だった…!
  • 23個の関連性は結果が非常に大きくバラバラで質が低かった(20.4%)
  • 31個の関連性は結果が大きくバラバラで質が低かった(27.4%)
  • 113個中45個(39.8%)は小規模研究だった。
  • 113個中47個(41.6%)は過剰に有意な結果だった。

パッと見良さげな結果が多いけど良く見たら質の低い物が多かったみたいですね。
次にメンデルランダム化研究でチェックしたCRPと健康リスクについての概要を抑えておきましょう。

  • 37件の研究には196個の関連性があった。
  • 平均サンプル数は26,405人でサンプル範囲は134人~184,305人の間だった。
  • 最もチェックされていたものは心血管疾患(冠状動脈性心疾患と脳卒中)(19件、9.7%)で、次が2型糖尿病(8件、4.1%)、統合失調症(8件、4.1%)、BMI(6件、3.1%)と続いていた。

それでは結果です。
全体で見てみると、観察研究のメタ分析とメンデルランダム化研究の両方からエビデンスが得られたのは14個の関連性だったそうで以下のようになっておりました。

  • 対象者:メタ分析の結果・エビデンスレベル:メンデルランダム化研究の結果・エビデンスレベル
  • 一般人口:静脈血栓塞栓症・高い:静脈血栓塞栓症・証拠なし
  • 一般人口:全死亡率・非常に可能性アリ:全死亡率・証拠なし
  • 一般人口:冠状動脈性心疾患・非常に可能性アリ:冠状動脈性心疾患・証拠なし
  • 一般人口:2型糖尿病・非常に可能性アリ:2型糖尿病・限定的又は矛盾した証拠
  • 一般人口:高血圧・可能性アリ:高血圧・証拠なし
  • 一般人口:虚血性脳卒中・可能性アリ:虚血性脳卒中(全種類)・証拠なし
  • 心房細動患者:心房細動の再発・低い:心房細動・証拠なし
  • 一般人口:アルツハイマー病・低い:アルツハイマー病・限定的又は矛盾した証拠
  • 一般人口(女性):乳がん・低い:乳がん・証拠なし
  • 一般人口:結腸がん・低い:結腸がん・証拠なし
  • 一般人口:大腸がん・低い:大腸がん・限定的又は矛盾した証拠
  • 血管外科手術患者:心筋梗塞・証拠なし:心筋梗塞・限定的又は矛盾した証拠
  • 一般人口(男性):前立腺がん・証拠なし:前立腺がん・証拠なし
  • 一般人口:直腸がん・証拠なし:直腸がん・証拠なし

つまり113個の関連性のうち、本当にCRPと関係が強かった物は、

  • 一般人口における心血管疾患の死亡率と静脈血栓塞栓症の2つだけ…!

って感じ。
はっきり言える部分ってほとんどなくて、これからの研究に期待…!ってところが大きいみたいですね。またメンデルランダム化研究からはほとんどわからなかったみたいです(まぁ、最近できた研究デザインなんで仕方ないですが)

CRPと健康リスクについての研究はたくさんされておりましたが、大多数は観察研究であり、因果関係まで見ていくとまだよく分からないことが多いって感じでした。
但しだからと言って、慢性炎症が体に悪いのは間違いないので対策しておいて損はないかと思います。



食事スタイルがCRP(C反応性タンパク)に与える影響についてメタ分析のアンブレラレビューを行ってみた…!

2024年のドンナイ工科大学の研究によると、食事スタイルがCRP(C反応性タンパク)に与える影響についてメタ分析のアンブレラレビューを行ってみたそうです。
CRP(C反応性タンパク)は代表的な炎症マーカーでして、低レベルの炎症をチェックする際に良く使われるんですよね。また今まで見てきたとおり、この慢性的な低レベルの炎症(=慢性炎症)は、2型糖尿病や脂質異常症、脳卒中、心血管疾患(CVD)、いくつかのがん、全死亡率など、多くの慢性疾患に関係しているんですな。
一方で食事スタイルは腸内細菌・腸内環境、酸化ストレス、カロリーバランスなどを調節し、それによって慢性炎症や慢性疾患リスクに影響をもたらします。そして健康的な食事スタイルはこれらを抑制します。例えば地中海式ダイエットなんかですな。
ということで、健康的な食事スタイルは、慢性炎症と慢性疾患を防ぐ最初のステップとなるんですが、その効果がどれぐらいのものか分かっていない部分もあったそうです。そこで今回研究者たちは、成人のCRPレベルと食事スタイルの関係をまとめてみたんだとか。
まず最初に2023年11月15日までに発表された該当する観察研究とRCTのメタ分析をPubmed、Scopus、Epistemonikosで検索してみたそうな。すると全部で4,850件の研究がヒットしたとのこと。次にこの中で重複しているものや質の低い研究を除外していったらしい。
最終的に残ったメタ分析は27件だったそうで、特徴は以下な感じでした。

  • 観察研究のサンプル範囲:56人~7,099人
  • RCTのサンプル範囲:介入グループが28人~3,779人・コントロールグループが28人~5,041人
  • 平均年齢範囲:18歳~77歳
  • 地域:主要な研究は6大陸(アフリカ、アジア、ヨーロッパ、北米、オセアニア、南米)にまたがり、合計30ヶ国をカバー

また、今回ピックアップされた食事スタイルは以下の7つのカテゴリーに分類したそう。

それではアンブレラレビューの結果を見てみましょう。
まずはRCTのメタ分析をまとめた結果です。

  • 地中海式ダイエットはCRPレベルの低下(MD=-0.71mg/l)に最も効果があった…!
  • ベジタリアン・ビーガンはCRPレベルの低下(MD=-0.55mg/l)に2番目に効果があった…!
  • カロリー制限ダイエットはCRPレベルの低下(MD=-0.09mg/l)が見られたがエビデンスレベルが低かった。
  • プチ断食、ケトジェニックダイエット、北欧ダイエット、パレオダイエットは、CRPレベルと逆相関の関係になかった。

お次は観察研究のメタ分析の結果です。

  • メタ分析が限られていたため、MD値はベジタリアン・ビーガンとケトジェニックダイエットしかチェックできなかった。
  • ベジタリアン・ビーガンはCRPレベルの低下(MD=-0.37mg/l)が見られたがエビデンスレベルが低かった。
  • ケトジェニックダイエットはCRPレベルの低下(MD=-0.21mg/l)が見られたがエビデンスレベルが低かった。

最後にRCTのメタ分析と観察研究のメタ分析を合わせた結果を見てみましょう。

  • 地中海式ダイエットは成人におけるCRPレベルの低下(MD=-0.61mg/l)に最も顕著な効果を示した…!
  • ベジタリアン・ビーガンも成人におけるCRPレベルの低下(MD=-0.43mg/l)を示したが、それほど顕著ではなかった。
  • これらの調査結果は全て低いエビデンスレベルによって裏付けられている。
  • ケトジェニックダイエットは成人におけるCRPレベルの低下に限られた効果しか示さなかった。

CRPレベルの低下(=炎症レベルの低下)に地中海式ダイエットとベジタリアン・ビーガンが使えそうな感じですね。ただ質の高いエビデンスがないため、今後の研究で覆る可能性アリって感じ。今後の研究に期待ですねー。



では具体的にどのような物を積極的に食べれば良いのか…?

基本的には抗炎症作用・抗酸化作用があるものなら何でも積極的に取り入れていきたいんですが、具体的に何を食べれば良いのでしょうか…?
そこで、おすすめのものをバーッと挙げていきます…!


ざっくりとまとめるなら、地中海式ダイエットと、カロリーの質が高い食事を基準に食べると良い感じ…!ってことですね。



個人的考察

慢性炎症対策は一朝一夕とはいかないので、なかなか大変なんですが出来るところから行っていくとよろしいかと思います。
…。
自分も頑張ろう…。