ケトジェニックダイエットの健康効果についてアンブレラレビュー(非常に質の高い研究)で見てみた!
「アンブレラレビューを見てみよう!」シリーズその77です。
ケトジェニックダイエットの健康効果についてアンブレラレビューを行ってみた…!
2023年のユタ大学の研究によると、ケトジェニックダイエットの健康効果についてアンブレラレビューを行ってみたそうです。
そもそも2013年のアラゴアス連邦大学のRCTのメタ分析や2020年の翰林大学校のRCTのメタ分析を見てみると、ケトジェニックダイエットは短期間で痩せられることから、大きな注目を集めているそうな。
因みに2019年の全米脂質協会(NLA)の研究や2022年のカロリンスカ研究所の研究、2021年のPhysicians Committee for Responsible Medicine(PCRM)の研究、2013年のパドヴァ大学の研究によれば、ケトジェニックダイエットは炭水化物の摂取量を1日50g未満にしつつ、タンパク質と脂質の摂取量を増やすというのが一般的な方法らしい。
そして先行研究により、ケトジェニックダイエットは体重管理や心血管代謝の改善、てんかんの発作頻度の減少、アスリートの体重管理とパフォーマンスアップに役立つみたいなんですな。
ただこれまでエビデンスの強度や質を総合的にチェックしたものはほとんどなかったそうな。そこで今回、ケトジェニックダイエットの健康効果をガッツリ調べてみることにしたらしい。
まず研究者たちは、2023年2月15日までに発表された該当研究をPubMed、EMBASE、Epistemonikos、コクランで検索してみたんだとか。すると全部で1,407件の研究がヒットしたとのこと。次にこの中で重複した研究を除外、その後、適格基準を満たす研究をピックアップしていったそうな。
最終的に選ばれたメタ分析は17件でして、これらを基にアンブレラレビューを行ったそうです。それでは結果を見てみますかー。
まずは選ばれたメタ分析の質なんですが、
- 質の高いメタ分析:0件(0%)
- 中程度の質のメタ分析:2件(12%)
- 質の低いメタ分析:2件(12%)
- 質の極めて低いメタ分析:13件(76.0%)
って感じで、ご覧の通り、ほとんど質が極めて低い物だったんですよね。
次にケトジェニックダイエットの種類について見てみましょう。
- ケトジェニックダイエット:炭水化物の摂取量を1日50g未満にする。又は、総カロリー摂取量の10%未満に炭水化物を制限する。
- ケトジェニック低炭水化物高脂肪食:炭水化物の摂取量を1日50g未満にする。又は、総カロリー摂取量の10%未満に炭水化物を制限しつつ、総カロリー摂取量の60~80%を脂肪にする。
- 超カロリー制限ケトジェニックダイエット:炭水化物の摂取量を1日30~50g未満にする。又は、総カロリー摂取量の13~25%未満に炭水化物を制限しつつ、総カロリー摂取量を700~800kcal未満にする。
- 修正アトキンスダイエット:炭水化物の摂取量を1日10g未満にしつつ、高脂肪食品を食べる。
こう見ると、ケトジェニックダイエットの中にも結構なバリエーションがあるんですねー。
お次はこの研究で見つかったケトジェニックダイエットと健康効果の関連性についてです。
- 関連性は全部で115個あった。
- 115個中66個(57%)が非常に低いエビデンスだった。
- 115個中36個(31%)が低いエビデンスだった。
- 115個中9個(8%)が中程度のエビデンスだった。
- 115個中4個(3%)が高いエビデンスだった。
- 115個中51個(44%)の関連性が統計的に有意だった。
- 51個中26個(51%)は非常に低いエビデンスだった。
- 51個中17個(33%)は低いエビデンスだった。
- 51個中4個(8%)は中程度のエビデンスだった。
- 51個中4個(8%)は高いエビデンスだった。
う~ん。やっぱり全体的に質が低いですねー。
んでこの中で、中程度と高いエビデンスだった13個の関連性のうち統計的に有意だったものは8個だったとのこと。次はこれらを見ていきます。
【高いエビデンスで統計的に有意だったもの4個】
- ケトジェニックダイエット又は修正アトキンスダイエットを3~16ヶ月間実施した人たちは、通常の食事と比べて、小児・思春期における難治てんかんの発作頻度減少率が50%以上を達成した割合が5.11倍(RR5.11)も高かった…!
- ケトジェニックダイエットを3ヶ月間実施した2型糖尿病成人患者さんは、通常の食事と比べて、中性脂肪が-18.36mg/dLも低かった…!
- ケトジェニックダイエットを12ヶ月間実施した2型糖尿病成人患者さんは、通常の食事と比べて、中性脂肪が-24.10mg/dLも低かった…!
- ケトジェニックダイエットを12ヶ月間実施した2型糖尿病成人患者さんは、通常の食事と比べて、LDLコレステロールが6.35mg/dLも高かった…。
【中程度のエビデンスで統計的に有意だったもの4個】
- ケトジェニックダイエットを3ヶ月間実施した2型糖尿病成人患者さんは、通常の食事と比べて、HbA1c(血糖値)が-0.61%も低かった…!
- 超カロリー制限ケトジェニックダイエットを4~6週間実施した過体重又は肥満の2型糖尿病成人患者さんは、低脂肪食又は通常の食事と比べて、体重減少が-9.33kgも高かった…!
- ケトジェニック低炭水化物高脂肪食を4~6週間実施したアスリートは、高炭水化物食と比べて、呼吸交換比(RER:呼吸時に体内に取り入れた酸素量と体外に排出する二酸化炭素量の比率。これが高いと、酸素の消費量<二酸化炭素の排出量となる。高いと体内で炭水化物が使われている、低いと脂質が使われている)が-2.66と低かった(=脂質が使われていた)…!
- ケトジェニック低炭水化物高脂肪食を11~24週間実施したアスリートは、通常の食事と比べて、総コレステロール値が1.32mg/dL高かった…。
後は、非常に低いエビデンス(26件)~低いエビデンス(17件)だったとのこと。
ケトジェニックダイエットの種類によって多少の違いはありそうですが、まとめると、
【ケトジェニックダイエットのメリット】
- てんかん発作の頻度減少
- 中性脂肪の減少
- HbA1c(血糖値)の低下
- 体重減少
- 体内での脂質使用量の増加
【ケトジェニックダイエットのデメリット】
- LDLコレステロールの増加
- 総コレステロールの増加
ダイエットと健康に概ね良い感じだけど、コレステロールだけちょっと気にした方が良さげみたいですな。
またこの研究によれば、過体重又は肥満の成人において特にデメリットはなかったそうな。
但し、
- ケトジェニック低炭水化物高脂肪食を3~12週間実施した健康な参加者は、体重が3.68kg減ったものの、筋肉量も1.27kg有意に落ちてしまった…。
ってことなんで、標準体型や筋肉質な人はちょっと注意が必要かもですね。
それと上記を見ると、ケトジェニックダイエット、つまり糖質制限は夢のダイエット法に見えるかもしれませんが、研究者曰く、
としています。
スタートダッシュが良い感じになるのは「なぜ糖質制限ダイエットはすぐ体重が減るのか?」で、他のダイエット法と効果が同じなのは「どんなダイエットでも長くやれば結果は同じ!だから自分が続けられるものを選ぶのが一番大事!」で書いた通りですね。
スタートダッシュが良い感じになるのは「なぜ糖質制限ダイエットはすぐ体重が減るのか?」で、他のダイエット法と効果が同じなのは「どんなダイエットでも長くやれば結果は同じ!だから自分が続けられるものを選ぶのが一番大事!」で書いた通りですね。
やはりこの辺の結論は変わらないみたいですね。
個人的考察
その他にも当ブログでは色々な方面から糖質制限ダイエットを見ております。
気になる方は下記からご覧ください。
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