【まとめ】2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサスを見てみよう!
皆さんが支援している人の中にADHDを持っている方はいますか…?
ADHDは、注意欠陥多動性障害とか、注意欠如多動性障害などと呼ばれまして、発達障害の一種となっております。子ども時代に発症するケースが多く、主な特徴としては、不注意・多動性・衝動性ですね。…っとここまでは、支援をしている方にとっては耳タコでしょう。
しかし、私も含め、ここから更に深掘りしていくことはあまりないのではないでしょうか…?
2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサス…!
2021年の世界ADHD連盟の研究によると、ADHDにおけるコンセンサス(大多数の意見の一致した物)を発表したそうです。
そもそもADHDに関する誤解は、差別や医療の信頼の低下、治療の妨げや遅れの原因になります。そのため誤解をなくすために確固たるエビデンスに基づいた知見をまとめ、コンセンサスとして声明を出したんだとか。
因みに2002年1月に国際的な科学者チームがADHDの初の国際コンセンサスを声明しております。今回は、そこから20年の間に発表された重要な科学的発見をまとめ、アップデートした感じです。
まず研究者たちは、現時点で発表されているADHDの研究をPubMedで検索してみたそうな。次に、ADHDの歴史や診断基準に関する記述以外の研究を以下の基準に照らし合わせて精査していったらしい。
- メタ分析であること、又は2,000人以上をサンプル数とした大規模研究であること。
- メタ分析は、5件以上の研究又は2,000人以上のサンプル数のデータがあること。
つまり、ADHDにおける高品質のメタ分析と大規模研究のみをピックアップしていったってことですね。その後、各研究を項目ごとに分けてまとめていったみたい。
因みにこれから出てくる効果サイズ(標準化平均差)と相関係数に関しては以下のようになっております。
- 標準化平均差(SMD):小=0.20、中=0.50、大=0.80
- 相関係数:小=0.10、中=0.24、大=0.37
まぁ、一般的なラインですね。
そして専門家グループの代表者を含むプロジェクト運営委員会により、コンセンサスを完成、6大陸27か国にわたる80人の研究者によって承認を得たそうな。また、この文書を読んで内容に同意した人は403人にも上るらしい。すごいっすね~。
ということで、ADHDの記述が14カテゴリー、全208個もございます。じっくり見ていきますか(大変だけど)
カテゴリー①:ADHDは新しい障害ではない…!
ADHDの概念は、ヨーロッパ諸国において長い歴史があるそうです。最初はADHDと呼ばれていなかったそうなんですが、2世紀以上にわたって認識されてきたそうな。
では、ADHDの初期の歴史におけるポイントを見ていきましょう。
1. 1775年にドイツのメルヒオール・アダム・ヴァイカード医師が、ADHDの特徴を持つ障害についての最初の教科書を執筆した。
2. 1798年にイギリス王立内科医院のアレクサンダー・クライトン博士が医学書の中で同様の障害について記述した。
3. 1845年、後にドイツのフランクフルト・アム・マインの最初の精神病院の院長となったハインリッヒ・ホフマン医師は、ADHDのような行動とそれに伴う障害を記録した児童書の中で、多動性と注意欠陥(注意欠如)について記述した。
4. 1887~1901年にデジレ・マグロワール・ブルヌヴィル、シャルル・ブーランジェ、ジョルジュ・ポール・ボンクール、ジャン・フィリップは、フランスの医学・教育に関する著書の中でADHDに相当するものについて説明した。
5. 1902年にイギリスのジョージ・スティル医師が科学雑誌にこの疾患について初めて記述した。
6. 1907年にアウグスト・ヴィダル・ペレラが、スペイン語で最初の児童精神医学概論を執筆した。この中で学童における不注意と多動性の影響について記述した。
7. 1917年、スペインの神経学者・精神科医のゴンサロ・ロドリゲス・ラフォラ博士は、子供のADHDの症状について説明し、その症状はおそらく遺伝的要因による脳障害によって引き起こされると述べた。
8. 1932年にドイツのフランツ・クレイマーとハンス・ポルノウは、ADHDに似た症候群を説明、「多動性障害」という用語を作り出し、後に世界保健機関の用語として採用された。
9. 1937年、アメリカのチャールズ・ブラッドリーは、アンフェタミンという薬がADHDのような症状を軽減することを発見した。
10. 1940年代になると、子供のADHDのような症状を「軽度の脳機能障害」と言うようになった。
11. 1956年~1958年、追跡調査により、軽度の脳機能障害の関連行動が成人期まで続くという最初の兆候が示された。
12. 1960年代になると、FDA(アメリカ食品医薬品局)が子どもの行動障害の治療薬としてメチルフェニデート(リタリン:ドーパミンとノルアドレナリンの再取り込み阻害薬)を承認した。
13. 1970年代~現在にかけて、治療、臨床経過、障害の家族歴の研究に基づいて進化した。
カテゴリー②:ADHDの診断と傾向
ADHDは医師などが、親やその他の保護者、本人と面談を行い、診断するのが一般的です。そのため、評価尺度のみ、神経心理学的検査、脳画像診断では診断できないそうな。
ただ、このことから、ADHDの診断は生物学的検査に基づいていないため主観的であると批判されてきたとのこと。しかしこの批判は根拠がないとおっしゃっております。
因みに専門家協会は、ADHDの診断に関するガイドラインを承認し、公開しているそうです。
ということで診断の主な特徴を見ていきます。
14. APA(アメリカ心理学会)やWHOによれば、ADHDの診断には①発達上不適切なレベルの多動性・衝動性・不注意の症状が、最低6か月間ある、②家庭や学校など様々な場所で症状が発生する、③症状が生活に支障をきたしている、④症状と障害の一部が小児期初期から中期に初めて発現している、⑤症状をより適切に説明できる他の障害がない、ことが必要とのこと。
15. ADHDの臨床症状は、症状の性質に応じて、不注意が強いパターン、多動性・衝動性が強いパターン、これらの両方があるパターンで表現される。メタ分析によると、不注意は学校成績の低下、自尊心の低さ、仕事上の低評価、全体的な適応機能の低下とより強く関係がある。多動性・衝動性は、仲間からの拒絶、攻撃性、危険な運転、事故による傷害とより強く関係がある。
16. 5,700人以上の子供を対象とした縦断研究によると、高IQ、平均IQ、低IQ、とADHDの基準を満たす年齢の中央値、学習障害、精神障害、薬物乱用の発生率、薬物治療の発生率に有意差はなかった。
17. 思春期や若い成人期においても、小児期にADHD歴を持つ多くの人は、不注意の症状を持ち続ける。但し多動性や衝動性は軽減することが多い。
18. 多くの大規模研究と臨床研究により、ADHDは他の精神疾患、特にうつ病、双極性障害、自閉症スペクトラム障害、不安障害、反抗挑戦性障害(反抗挑発症障害)、行為障害(素行障害)、摂食障害、物質使用障害と併発することが多い。
19. 総サンプル数800万人以上のメタ分析によると、学年の最初の4ヶ月間に生まれた(比較的若い)子どもや青少年はADHDと診断される可能性が高い。
カテゴリー③:ADHDの有病率
ADHDは先進国・発展途上国を問わず世界的に発生しておりまして、男性の方が女性よりも多い傾向がみられております。そして過去30年間を振り返ると増加傾向ではないものの、医師の認知度の向上により、以前よりも診断される可能性が高くなっているんだとか。具体的な研究は以下な感じ。
20. 2012年のメタ分析によれば、5万5000人以上を対象にADHDかどうかをチェックしてみた。結果、若者の5.9%がADHDの診断基準を満たしていた。また、2014年のメタ分析では、約25万人の若者を対象に調べてみた結果、北米、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、南米、オセアニアでのADHD有病率に有意差はなかった。
21. 上記の2014年のメタ分析によると、過去30年間において、小児・青年におけるADHDの有病率に増加は見られなかった。但し、アメリカやスウェーデンの大規模研究によると、近年ADHDと診断されるケースが高くなっている傾向がある。
22. 2009年のメタ分析によると、5,300人以上の参加者を対象にADHDかどうかをチェックしてみた結果、成人のADHD有病率は2.5%と推定された。また2017年のメタ分析では、13か国、7つの地域・大都市を網羅し、26,000人以上を対象に調べてみた。結果、成人の2.8%がADHDの診断基準を満たしていると推定された。2006年のメタ分析によると、1,600人以上を対象に若者と成人のADHD有病率を比較してみた。すると成人は若者と比較してADHDの有病率が低かった。ADHDの若者の6人に1人だけが25歳時点でADHDの完全な診断基準を満たしており、約半数はADHDの要素が残っていると出ていた。
23. 2020年のメタ分析によると、高齢者3万2000人以上を対象にチェックした結果、高齢者のADHD有病率は2.2%で、50歳以上に限定すると1.5%に低下していた。一方で、1170万人以上が参加したメタ分析では、50歳以上の有病率はわずか0.2%だった。更に920万人以上を対象にメタ分析を行ったところ、50歳以上のADHD治療率はわずか0.02%だった。
24. 2020年のメタ分析では、18歳未満のアメリカ黒人青年15万人以上を対象にチェックしてみた。結果、18歳未満のアメリカ黒人青年のADHD有病率は14%だった。研究者曰く、黒人はアメリカの一般人口と比較してADHDと診断されるケースが高い、としている。
25. 2012年のメタ分析では、42,000人以上の参加者を対象とした親の評価と、56,000人以上の参加者を対象とした教師の評価をメタ分析にかけてみた。結果、ADHDは男性に多く見られ、青少年における男女比は約2対1だった。
カテゴリー④:ADHDの原因ってなに…?
ADHDの人のほとんどは、多くの遺伝的リスク要因と環境的リスク要因が蓄積して障がいを引き起こしていると考えられております。但し、これらの知見はADHDの原因を理解するのに役立つが、障がいの診断には役立たないとのこと。またADHDの発症と環境との関係は非常に高いレベルで認められてもいるそうです。
ADHDの遺伝要因
26. アメリカ、ヨーロッパ、スカンディナヴィア(スカンジナビア)、オーストラリアの双子研究のレビュー論文を見てみると、遺伝要因と環境要因との相互作用が、ADHDの原因の重要な役割を果たしている。
27. アメリカ、ヨーロッパ、スカンディナヴィア、中国、オーストラリアのADHD患者2万人以上と非ADHD患者3万5千人以上を対象にDNA解析を行った。結果、ADHDのリスクにそれぞれわずかな影響を及ぼす多くの遺伝子リスク変異が特定された。つまり、それぞれが極めてわずかな影響を及ぼす多くの遺伝子変異が組み合わさって、ADHDリスクが高まっている(=多遺伝子リスク)ことを示している。このリスクは一般的な精神病理やいくつかの精神疾患とも関連している。
28. メタ分析によって関係ありそうな遺伝子はあるが依然として不明確とのこと。これらの遺伝子は、ANKK1、DAT1、LRP5・LRP6、SNAP25、ADGRL3、DRD4・BAIAP2らしい。
29. ADHDの多遺伝子リスクは、人口におけるADHD症状を予測するので、ADHDの遺伝要因が、人口におけるADHD症状に低レベルの影響を与えることを示唆している。
30. ADHDの多遺伝子リスクが高い人は、ADHD、不安症、うつ病と診断されているケースが高い。
31. ADHDは、稀な単一遺伝子の欠陥や染色体異常でも引き起こる。自閉症スペクトラム障害(自閉スペクトラム症:ASD)・ADHDの子ども8,000人以上と対照群5,000人をDNA解析した研究では、ASD・ADHDの子どもは対照群と比べて、稀な遺伝子変異の発生率が高かった。
32. 家族研究、双子研究、DNA研究を見てみると、遺伝要因と環境要因は、ADHDや他の精神疾患(統合失調症、うつ病、双極性障害、自閉症スペクトラム障害、素行症、摂食障害、物質使用障害など)、片頭痛、肥満などと関係がある。但し、ADHDには特有の遺伝的リスクが存在する。疾患間で遺伝リスクと環境リスクが共通しているという証拠は、これらの疾患が神経発達を調節不全にし、脳の変異を引き起こし、疾患発症につながる共通のメカニズムを有していると考えられる。
33. 大規模家族研究により、ADHDは、自己免疫疾患、尿道下裂、知的障害と、遺伝的要因、家族的要因が関係していると出ている。
ADHDの環境要因:毒性物質への暴露
34. 2つのメタ分析により、鉛と不注意・多動性・衝動性には小さな相関関係がありそうだった。また17,000人以上の子供を対象としたメタ分析によると、血中の鉛濃度が高いとADHDリスクが4倍も高くなることが分かった。更にアメリカ国民健康栄養調査(NHANES=アメリカ国民の代表的な健康調査)を使い、2,500人以上の青少年を対象に調べた研究によると、血中の鉛濃度が高かった上位の3分の1の人は下位3分の1の人に比べてADHDリスクが2.3倍も高かったみたい。更に更に同じくアメリカ国民健康栄養調査で4,700人以上の若者を対象にした研究を見てみたら、血中の鉛濃度が高かった上位5分の1の若者は下位5分の1の若者に比べてADHDリスクが4倍高かったとのこと。
35. 300万人以上を対象とした3つのメタ分析によると、妊娠中の母親の喫煙・副流煙は、ADHDリスクが50%以上も増加するんだとか。妊娠中の母親の喫煙とADHDリスクの関係は、喫煙とADHDの両方のリスクを高める家族要因又は遺伝要因によるものであるとのこと。
36. 10万人以上を対象としたメタ分析では子ども時代の受動喫煙はADHDリスクを60%もアップさせるそう。
37. 219人を対象としたメタ分析によると、人工着色料と子供の多動性はわずかな増加と関係があったみたい。また、794人を対象にしたメタ分析では、ADHD症状のごくわずかな増加が見られたそうな(親による評価のみで判断)
38. 1万人以上の出産者を対象にした台湾の研究によると、妊娠中の母親におけるアセトアミノフェン(解熱・鎮痛剤)の使用は、子どものADHDリスクを33%増加させたとのこと。また、ノルウェーの研究(11万3000人の出生児、うちADHDを持つ方2,246人)でも、母親による出生前のアセトアミノフェンの使用とADHDには用量反応関係があったそうな。
39. デンマークにおける全国規模の研究では、1997年から2011年の間に生まれた91万3000人の乳幼児を対象に、抗てんかん薬バルプロ酸ナトリウムへの出生前暴露を調べたところ、ADHDリスクが50%も増加していた。他の抗てんかん薬については関係がなかった。
40. ノルウェーの研究(ADHDの子供297人と対照群553人を対象)によると、フタル酸エステル(PAE:香水や化粧品、ボディケア製品などに使われる)の濃度が最高5分の1の母親の子どもは、最低5分の1の母親の子どもに比べて、幼少期にADHDを発症するリスクが3倍高かった(出産時の母親の年齢、子供の性別、母親の学歴、婚姻状況、妊娠中の母親の喫煙などといった変数は調整済み)
41. アメリカ人の子ども1,139人を対象に調べた結果、有機リン系農薬(ジメチルアミノピリジン)の濃度が10倍増加すると、ADHDリスクが55%も高くなっていた。また最も高レベルな子供は、検出されないレベルの子供に比べて、ADHDリスクが2倍高かった。
42. 2020年のメタ分析によると、粒子状物質(PM2.5やPM10など。サンプル数51,000人以上)、窒素酸化物(サンプル数51,000人以上)に有意な関係は見られなかった。また、16,000組以上の母子と大気汚染物質レベルの関係を調べた台湾の前向きコホート研究でも、妊娠中における粒子状物質、二酸化硫黄、二酸化窒素のレベルと、子どもの生後8年間のADHD診断に関係性はなかった。ただし、一般的な交通汚染物質である一酸化窒素(窒素酸化物)への暴露はADHDリスクを25%高くしていた。
43. 2013年から2015年にかけてADHDと診断された青少年を調べた韓国の研究によると、二酸化窒素、二酸化硫黄、粒子状物質が増えると、数日後にADHD関連の入院が二酸化窒素47%、二酸化硫黄27%、粒子状物質12%も増えていた(男女や年齢の有意差はなし)
44. 4,826組の母子を対象としたメタ分析によると、乳児期の母乳を介した有機フッ素化合物(PFAS)の暴露とADHDリスクは関係がみられなかった。
45. 3大陸6カ国から合計25,000人以上を対象としたメタ分析によると、若者の砂糖の摂取とADHDリスクは関係がみられなかった。
ADHDの環境要因:栄養不足
46. 617人を対象にしたメタ分析を見てみると、ADHDの若者における血中の鉄分濃度に差は見られなかった。但し、2,100人以上を対象に調べてみると血中のフェリチン(鉄分を貯蔵するタンパク質)が小~中程度少なかった。1,700人以上を対象にした別のメタ分析でも血中の鉄分濃度に差はなかった。但し、6,000人以上を対象に血中のフェリチンをチェックしたら、こちらでも小~中程度少なかった。
47. 586人を対象にしたメタ分析によると、ADHDを持つ若者は、血中のオメガ3脂肪酸の濃度がやや低かった。
48. フィンランドの国民登録簿を使った大規模症例対照研究では、1998~1999年の間に生まれたADHDを持つ方1,067人と対照群1,067人を比較してみた。結果、母親のビタミンDレベルが低いと、子どものADHD発症リスクが約50%も高くなっていた。
ADHDの環境要因:妊娠中・出産中の出来事
49. 6,000人以上を対象にしたメタ分析によると、極めて早い早産児又は極めて低い低出生体重児は、ADHD率が3倍高かった。また460万人以上の出生に関するデータをまとめた2018年のメタ分析によると、低出生体重とADHDの間には小~中程度の相関関係が見られた。更にスウェーデンで行われた120万人の子どもを対象にした研究では、未熟児であればあるほどADHDリスクが高まっていた。因みにフィンランドで行われた10,000人以上のADHD患者と38,000人以上の対照群を比較した研究でも同じような結果が出ていた。
50. 140万人を対象にしたメタ分析によると、妊娠中に母親が高血圧症(妊娠中毒症・妊娠高血圧・妊娠高血圧腎症など)になった場合、子どものADHD発症率が25%高まっていた。
51. スウェーデンで行われた200万人以上の子ども(うち11万5000人がADHDを持つ)を対象にした大規模コホート研究によると、妊娠中の母親が妊娠高血圧症候群(旧、妊娠中毒症)になった場合、子どものADHD発症率が15%高まっていた。また、胎児が妊娠期間に対して小さく妊娠高血圧症候群に罹患していた場合、ADHD発症率が40%以上も高まっていた。これは遺伝要因や家族要因によるものではなかった。
52. 28,000人以上を対象にしたメタ分析・140万人以上を対象にしたメタ分析を見てみると、肥満の母親の子どもはADHD発症リスクが約60%高かった。8万組以上の母子を対象にしたデンマークの研究でも、肥満の母親の子どものADHD発症リスクは約50%も高まっており、重度の肥満の母親の子どもだとADHD発症リスクが2倍になっていた。
53. 310万人以上を対象にしたメタ分析を見てみると、妊娠中の母親の甲状腺機能亢進症(バセドウ病:甲状腺ホルモンが過剰に分泌される)と子どものADHDには、わずかだが有意な相関関係があった。また340万人以上を対象にしたメタ分析では、母親の甲状腺機能低下症と子どものADHDとの関係をチェックしてみたら、わずかだが有意な相関関係があった。
54. 2020年のデンマークの大規模コホート研究では、100万人以上の出生記録を調査して、過去に1回流産した母親・2回以上流産した母親の子どもと、流産歴のない母親の子どもを比較してみた。結果、流産歴のある母親の子どもは、流産歴のない母親の子どもよりもADHD発症リスクが9%高かった。また過去に2回以上流産した母親の子どもの場合、ADHD発症リスクが22%高かった。
ADHDの環境要因:感染症・死別・虐待・貧困・家庭環境・親・地域支援
55. 台湾の国民健康保険データベース(NHIRD)を使い14,000人以上のエンテロウイルス71型の感染者とそうでない人を比較した結果、エンテロウイルス71型の感染者はその後ADHDと診断されるケースが25%高かった。
56. デンマークのコホート研究では、妊娠中に近親者を亡くした女性から生まれた29,000人以上の子どもと100万人の子どもを比較した。結果、妊娠中に近親者を亡くした女性から生まれた男の子はADHDリスクが2倍高かった。
57. アメリカの前向きコホート研究では、青少年14,000人以上を対象に調べた結果、ADHDの不注意型と性的虐待やネグレクトに遭っていたことは関係があった。
58. 韓国で行われた18,000人以上の子供を対象にした研究によると、世帯収入が低いとADHD発症率が高まっていた。またスウェーデンで行われた80万人以上を対象にした研究では、家族要因・遺伝要因の変数を調整しても同様の結果が出ていた。
59. デンマークで行われた100万人を対象にした前向きコホート研究によると、逆境度合い、家庭外養育(里親や児童養護施設などで養育すること)、社会的地位の低さ、父親の犯罪歴、母親の精神疾患歴、深刻な夫婦間の不和はADHDの予測因子だった。
60. デンマークで行われた63万人以上の若者を対象にした研究によると、親の学歴の低さ、親の失業、親の貧困と、子どものADHD発症リスクの高さには用量反応関係があった。また社会的に不利な状況が複数重なるとリスクは累積的に高まった(例:親が貧困で学歴が低く失業状態だと子どものADHD発症リスクが約5%高まった)
61. スウェーデンで行われた54万人以上を対象にした研究によると、家族における逆境度合いとADHDの間には用量反応関係があった。家族内での死亡により、その後のADHD発症リスクが60%増えていた。親が重度の薬物依存症、親の犯罪歴、親の精神疾患歴、居住環境の不安定さ、世帯の公的扶助は、いずれもADHD発症リスクを2倍以上高めていた。
62. ADHDを持つアメリカ人の若者4,122人を対象にした研究によると、家族の結束力と地域社会の支援が強まると、中度から重度のADHDリスクが低下していた。カテゴリー⑤:ADHDの患者さんの脳研究で何がわかったの…?
ADHDの患者さんの脳研究には、大きく2つの種類があるそうです。
その2つとは、
- 心理テストの成績に関する研究
- 脳をスキャンして、脳の構造や機能を直接調べる研究
とのこと。
これらの研究の多くは、ADHDを持つ人とそうでない人を比べてチェックする場合が多かったりします。しかし、その差は通常小さく出ることが多いそうで、ADHDの患者さんと他の障がいを持つ患者さんとも劇的な差は見られないんだとか。そのため、これらはADHDの診断に役立たないらしい。またこれらの差は薬物治療によって引き起こされるものではなく、患者によっては障がいが良くなると減少したり変化したりするそうです。
それでは具体的な研究を見てみましょう。
それでは具体的な研究を見てみましょう。
63. 2004年のメタ分析では、あらゆる年齢層の9,400人以上を対象に調べた結果、ADHDを持つ方はIQと読解力のスコアが中程度に低く、また、スペリング(単語の書き出し)と数学のスコアの低下が大きかった。2006年の別のメタ分析では、成人1,900人以上を対象に調べた結果、ADHDを持つ方のIQの低下は小さく、臨床的に意味のあるものではないという結論が出された。
64. 2005年のメタ分析によると、ADHDの患者さんは、抽象的な問題解決能力とワーキングメモリ、集中的注意、持続的注意、言語記憶で軽度から中程度の困難を抱えていた。また、829人を対象にした別のメタ分析によると、ADHDの患者さんは「ルール違反(ルールを守るべき状況で意図せずルールを破ってしまう)」と呼ばれる認知エラーを起こしやすかった。
65. 2つのメタ分析によると、ADHDと診断された人は、大きな遅延報酬よりも小さな即時報酬を好む傾向が中程度あった(=セルフコントロールが低い傾向がみられた)
66. 2,300人以上を対象にしたメタ分析によると、ADHDとリスクを伴う意思決定の間には軽度から中程度の関連性が見られた。また、児童・青少年3,850人を対象にしたメタ分析では、ADHDを持つ人は、遅延割引や満足の遅延課題で、全体的に衝動的な意思決定が中程度高かった。
67. 全年齢のADHDの患者さんを対象にした2018年のメタ分析によると、脳の複数の領域(ワーキングメモリ、反応時間の変動、反応抑制、知能/達成、計画/組織化)で中程度の障害を有していた。これは、成人よりも小児・青年期の方が大きかった。
68. 児童・青少年8,200人以上を対象にしたメタ分析によると、ADHDを持つ人はワーキングメモリに中程度の障害がみられた。但し、加齢とともに軽減していた。
69. 2020年のメタ分析では、ADHDの若者を対象に調べた結果、ADHDの症状全体、不注意症状、多動性・衝動性症状のいずれにおいても、男女による有意な差は見られなかった。
70. 2020年の未就学児を対象にしたRCTのメタ分析によると、認知トレーニングによってワーキングメモリが中程度改善した。また、抑制と制御も小~中程度改善した。
カテゴリー⑥:脳スキャンで見られた違い
71. 4,100人以上の脳をMRIでスキャンしたデータ分析により、ADHDの子どもは大脳皮質の表面積がわずかに小さかった。また、脳のいくつかの皮質下領域(前頭葉、帯状皮質、側頭葉)で小さく、側頭葉では皮質厚もいくらか小さかった。更に同研究チームが行った別の研究によると3,242人を対象に調べた結果、ADHDの子どもは皮質下領域(大脳基底核、扁桃体、海馬、頭蓋内容積)が小さかった。但し観察された違いはすべて小さいか非常に小さく微妙なものだった。また、これらは青年や成人には見られなかった。
72. 1,870人を対象にしたメタ分析によると、大脳基底核と島皮質における灰白質の容積減少は強迫性障害に多く見られた。一方で3,610人を対象に調べた結果、内側前頭葉の容積減少はASD(自閉スペクトラム症)に多く見られた。そして12,000人以上を対象にした研究によると、脳をMRIでスキャンした結果、ADHDの方は強迫性障害の方に比べて海馬の容積が小さく、これがIQの違いと関係している事、また、ADHDの方はASDの方と強迫性障害の方に比べて頭蓋内容積が小さかった。1,870人を対象にした研究によると、実行機能タスク中における右下前頭前野と基底核の機能低活性化は強迫性障害に多く見られた。3,610人を対象にした研究によると、実行機能タスク中における下前頭前野の機能障害はASDに多く見られた。
73. 947名が参加したメタ分析によると、ADHDの有無で最も一貫した違いのあった白質は、右帯状皮質、右矢状層、左タペタムまで広がる脳梁体後部とのこと。なんでも注意と知覚に関わる頭頂連合野、下前頭回、側頭葉、頭頂葉、後頭葉における両方の脳半球間の接続に問題があることを示唆しているそうな。
74. 607名を対象としたメタ分析によると、MRIによりADHDの人は、右腹側頭前野、補足運動野、大脳基底核といった抑制制御領域が、一貫して低活動だった。また腹側頭前野の低活動は別の2件のメタ分析でも見られた。更に1,914人を対象にしたメタ分析では、大脳基底核の機能異常と男性の腹側頭前野の機能低下のみ見られた。
75. 1,250人以上を対象にしたメタ分析によると、脳波のシータ波(眠気がある時や睡眠時に多い脳波)・ベータ波(覚醒時に多い脳波)はADHDの信頼できる診断基準とはみなされなかった。
76. 148名を対象にしたメタ分析によると、ミスマッチ陰性電位(同じ音を繰り返し聞きつつ、時々違う音を聞く。それによる脳波のゆらぎをみる)を行った。結果、ADHDの児童は対照群の児童と比べ、ミスマッチ陰性電位の振幅が小~中程度に減少していた。
77. 様々な系統的レビュー・メタ分析により、ADHDの治療に使われる薬は脳構造の障害と関連がなく改善と関連があった。特に下前頭葉と線条体で改善が見られた。
カテゴリー⑦:非精神医学的問題にはどのようなものがあるのか…?
ADHDに関する研究の中で比較的新しい分野として、非精神医学的問題というのがございます。但し、この分野はまだまだ黎明期といったところで、ADHDの方がこのカテゴリーの全て、又は一つ以上必ず該当している訳ではないのは注意が必要なところ…。
その辺を踏まえご覧ください。
肥満
78. 2018年のスウェーデンの研究によると、250万人以上を対象に調べた結果、ADHD患者は非ADHDの兄弟やいとこに比べて、肥満リスクが3倍高かった。またADHDと臨床的肥満が家族内で共存していた。その強さは血縁関係に直接依存していた。
79. 2016年のメタ分析によると、薬物治療を受けていないADHDの子どもや青年は、そうでない子どもや青年と比べて、過体重や肥満リスクが約20%も高かった。また、薬物治療を受けていないADHDの成人は過体重・肥満リスクが約50%も高かった。更に2016年の別のメタ分析では、18万人以上を対象に調べた結果、薬物治療を受けていないADHDの人は肥満リスクが約40%高かったが、薬物治療を受けているADHDの人はそうでない人と違いがなかった。
アレルギーと喘息
80. 150万人以上を対象にしたスウェーデンの研究によると、喘息のある人は、ADHD発症リスクが45%も高かった。また、約100万人を対象にしたデンマークの研究によると、喘息のある母親から生まれた子どもはADHD発症リスクが40%も高かった。
81. 5万人以上を対象にした観察研究のメタ分析によると、喘息又はアトピー性皮膚炎の患者は、対照群と比較してADHD発症リスクが3分の1高かった。また、4万8千人以上を対象にした2017年のメタ分析によると、アレルギー性鼻炎を持つ患者はADHD発症リスクが約50%も高かった。
糖尿病
82. 2016年のドイツの研究によると、65万人以上の小児・青少年を対象に調べた結果、1型糖尿病の小児はADHDと診断される可能性が40%も高かった。
83. 56,000人以上の小児・青年を対象にした2017年のドイツの研究によると、ADHD+1型糖尿病の患者は、ADHDのない糖尿病患者と比べて、糖尿病性ケトアシドーシスの発症頻度が2倍高かった。またHbA1c(血糖値)も有意差が見られた。そのため、ADHD+1型糖尿病の小児患者は、ADHDのない1型糖尿病患者と比べて、代謝コントロールが不良であったと結論付けた。
84. 2018年の台湾国民健康保険データベース(NHIRD)を使った縦断研究によると、ADHDの青年・成人の若者は、2型糖尿病発症リスクが約3倍高かった。
85. 2018年のスウェーデンのコホート研究によると、50歳から64歳までの成人160万人以上を対象に調べた結果、ADHDの成人は2型糖尿病の有病率が70%も高かった。
86. 2019年のメタ分析によると、母親が1型糖尿病を持つ場合、その子どもはADHDリスクがわずかに高かった。また父親が1型糖尿病を持つ場合、母親が2型糖尿病を持つ場合も同様の結果だった。2018年のスウェーデンの研究によると、両親が1型糖尿病と診断された後に生まれた15,615人の子どもを対象に調べた結果、子どものADHDと診断される可能性が30%高かった。
その他の疾患
87. 2014年のメタ分析によると、2,500人以上の子どもと青少年を対象にチェックした結果、ADHDと呼吸系の睡眠障害は中程度の関係があった。
88. 2020年のメタ分析によると、ADHDの成人の睡眠について調べてみた。結果、ADHDのない成人と、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)、入眠潜時、第1段階の睡眠、第2段階の睡眠、徐波睡眠、レム睡眠、睡眠効率、総睡眠時間、レム睡眠潜時、入眠後の覚醒時間、就床時間と実際の覚醒時間、実際の睡眠時間に有意差はなかった。但し、ADHDの方は入眠潜時がはるかに長い、睡眠効率はやや低い、主観的な評価では、寝つきがやや困難、夜中に目が覚める頻度がやや多い、起床時に十分に休めている可能性がやや低い、睡眠の質がやや悪いといった報告もあった。
89. 2018年のノルウェーの研究によると、120万人以上の男性と120万人以上の女性を対象に調べたところ、ADHDの男性は対照群と比較して、乾癬と診断される可能性が30%高く、ADHDの女性は50%以上高かった。
90. 台湾のコホート研究によると、8,000人以上のADHD患者と32,000人の対照群を対象に
自己免疫疾患との関連性を調査した。結果、ADHD患者は対照群に比べて、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、自己免疫性の甲状腺疾患(バセドウ病・橋本病(慢性甲状腺炎))の発症リスクが2倍以上高かった。また、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎の発症リスクも50%以上高かった。
91. 2016年のコホート研究では、デンマークの子ども90万人以上を対象にてんかんとの関連性をチェックした結果、ADHDの子どもは2.7倍もてんかんリスクが高かった。また、2013年のコホート研究によると、台湾人1万2千人以上を対象に調べた結果、てんかんはADHDリスクを2.5倍高めていた。更に台湾人1万8千人以上を対象にチェックすると、ADHDはてんかんリスクを4倍高めていた。
92. 190万人を対象にした2018年のスウェーデンの研究によると、てんかん患者はADHD発症リスクが3.5倍高く、母親がてんかん患者の場合85%、父親又は兄弟姉妹がてんかん患者の場合50~60%、いとこがてんかん患者の場合15%高かった。この差は遺伝的要因が40%、非遺伝的環境要因が50%によるものだった。
93. 2018年の台湾の国民健康保険データベース(NHIRD)を使った縦断研究によると、ADHDの青年及び若年成人約18,000人と対照群70,000人以上を比べた結果、ADHDの人は性感染症発症リスクが3倍以上も高かった。
94. 2019年のデンマークの研究によると、110万人を対象に調べてみた結果、重篤な感染症による入院は、その後のADHD診断率の倍増と関連していた。但し抗感染症薬による治療を受けた人は、その後のADHD診断率が半減していた。
95. 約100万人を対象にした2017年のデンマークの研究によると、自己免疫疾患のある子どもはADHD発症リスクが24%高かった。また母親の自己免疫疾患は子どものADHD発症リスクを12%高めていた。一方で父親の自己免疫疾患は関係なかった。
96. 2020年の台湾の国民健康保険データベース(NHIRD)を使った研究によると、ADHDの子ども11万6000人以上と対照群の子どもを比較してみた。結果、ADHDの子どもは、重大な目の異常を有する可能性が非常に高く、弱視の可能性が約90%、乱視の可能性が80%以上、外斜視の可能性が2倍高かった。また2019年の台湾の国民健康保険データベース(NHIRD)を使った研究では、弱視と診断された6,817人の若者と対照群2万7000人以上を比べてみた。結果、弱視グループの人は、ADHD発症リスクが1.8倍高かった。
97. 250万人以上のドイツの若者を対象にした2019年の研究によると、ADHDの人は代謝疾患率が9倍、ウイルス性肺炎率が5倍、白血球疾患率が4倍、腎不全・高血圧・肥満率が3倍、2型糖尿病・片頭痛率が2.5倍、喘息・アトピー性皮膚炎率が2倍、緑内障率が50%高かった。また、2020年のブラジルの研究では5,671人の子どもを対象にチェックしたところ、片頭痛のある子どもはADHD率が約4倍高かった。
98. 2019年の台湾国民健康保険データベース(NHIRD)を使った研究では、ADHD男子59,000人以上と対照群の男子52,000人以上を比較してみた。すると、ADHD男子は精巣機能障害の発症リスクが2倍高かった。
99. 2020年のスウェーデンのコホート研究によると、セリアック病の子ども19,000人以上と対照群の子ども95,000人以上を比べてみた。その結果、セリアック病の子どもはADHDリスクが29%、成人のADHD診断に限定すると39%高かった。一方でセリアック病の子ども13,000人と、セリアック病でない兄弟姉妹18,000人を比べてみると、ADHDリスクの上昇の有意差はなくなった。
100. 2013年にスウェーデンに居住していた18歳から64歳までの全ての人の医療記録をチェックし、少なくとも1回はADHD治療薬を処方された41,840人を特定した。そのデータを見てみると、ADHDの若年成人は対照群と比較して、身体疾患の薬物治療との併用率が4倍、向精神薬との併用率が15倍高かった。またADHDの中年成人(30~49歳)だと、身体疾患の薬物治療との併用率が6倍、向精神薬との併用率が21倍高かった。ADHDの高齢者だと、身体疾患の薬物治療との併用率が7倍、向精神薬との併用率が18倍高かった。身体疾患は、呼吸器系の薬(主にアレルギー反応や喘息用)で処方されることが最も高く、次いで消化管・代謝系の薬(最も頻繁なのは胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃食道逆流症(逆流性食道炎と非びらん性胃食道逆流症)用)、心血管系の薬(主に高血圧・不整脈用)だった。
カテゴリー⑧:ADHDが与える患者さんと家族への影響ってなに…?
ADHDは、深刻な苦痛や生活に支障を来たす障がいとなっております。そのため、ADHDには多くの問題が発生しますが、以下に挙げる全ての問題を皆が経験するわけではないとのこと。そして多くのADHDの患者さんは、特に治療を受けている場合、楽しい生活を送っているということです。
ADHDの影響:生活の質(QOL)
101. 2016年のメタ分析によると、5,000人以上の若者とその親を対象に調べた結果、ADHDを持つ若者は、そうでない同年代の若者と比較して、生活の質が大幅に低かった。これは、若者の自己評価、親の評価に関わらなかった。また、身体機能は中程度の低下、情緒機能と社会機能は重度の低下、学校成績も重度の低下を示していた。更にADHDを持つ若者は、そうでない同年代の若者と比較して、成長するにつれて、身体機能・情緒機能・学校成績においても生活の質が低下していた。
102. 647家族、2,300人以上を対象とした2019年のメタ分析によると、ADHDの子供を持つ親は、そうでない親と比較して生活の質が中程度低かった。
ADHDの影響:感情的障害・社会的障害
103. 2006年の研究によると、アメリカ人の若者8,600人以上を調べた結果、ADHDの若者は、感情、行動、仲間とのトラブルがこじれる割合が一般的な場合よりも6倍以上高かった。また、家庭生活、友人関係、学校での学習、余暇活動への支障などがこじれる割合が一般的な場合よりも9倍以上高かった。
104. 2016年のメタ分析によると、21,000人以上の方を対象に調べた結果、ADHDの若者は、新しい環境やストレス過多の環境に対する柔軟性が著しく低かった。また2020年のメタ分析では1,900人以上を対象に調べたところ、ADHDを持つ成人はそうでない成人に比べて、感情調節障害レベルが非常に高かった。
105. 2018年のメタ分析によると、ADHDを持つ子どもは、拒絶/好感度、人気、友情といった仲間との社会性において、中程度から重度の障害を抱えていた。また、共有、協力、順番を守る、相互関係といった社会的スキルと、社会的合図の認識、問題の特定、解決策の考案、偏見の回避といった社会的情報処理能力においても中程度の障害を抱えていた。
106. 2007年の研究によると、アメリカ人の児童53,000人以上を対象に調べた結果、ADHDを持つ児童はいじめに加担する可能性が2.4倍高かった。2015年の研究では同じデータセットを使い、約64,000人の児童を対象に再度調べ直した。すると、ADHDを持つ児童はいじめに加担する可能性が2.8倍高かった。
ADHDの影響:事故による怪我
107. 2020年の台湾国民健康保険データベース(NHIRD)を使った研究によると、ADHDの若者5万人以上と対照群を比較してみた。結果、ADHDの若者は、火傷のリスクが75%以上高かった。更に細かく見てみると6歳未満だと火傷のリスクが2倍、6歳~17歳だと火傷のリスクが約70%高かった。男女差はなかった。
108. 2018年のメタ分析によると、400万人以上を対象に調べた結果、ADHDを持つ人は偶発的な身体的損傷リスクが40~50%高かった。
109. 2014年のスウェーデンの研究では、2006年~2009年にかけてADHDの患者さん17,408人を追跡調査した。するとADHDの患者さんは重大な交通事故リスクがほぼ50%高かった。
110. 2016年のアメリカの研究によると、8,000人以上の高校生と大学生アスリート(主に男子フットボール選手)を対象に調べた結果、ADHDの患者さんは脳震盪を3回以上経験することが3倍高かった。
111. 2014年のメタ分析によると、175,000人以上を対象にADHDと自動車事故との関連性を調べてみた結果、ADHDを持つ人は自動車事故に巻き込まれる割合が23%高いと推定された。
112. 2017年のコホート研究によると、ニュージャージー州のドライバー18,000人以上を対象に調べた結果、ADHDを持つ人はそうでない人に比べて衝突事故リスクが33%程高かった。
113. 2014年のメタ分析では、軽度の外傷性脳損傷の患者さん3,000人以上と対照群9,000人以上を比較してみた。その結果、外傷性脳損傷の患者さんはそうでない患者さんよりもADHD発症リスクが2倍高かった。
ADHDの影響:早死に・自殺
114. 2015年のデンマークの研究によると、約200万人を対象に調べた結果、ADHDの人は事故による早期死亡リスクがわずかに高かった。また、ADHDに他の精神疾患や物質使用障害が併存すると、早期死亡リスクが高まっていた。
115. 220万人以上の台湾人を対象にした2019年の研究によると、ADHDに関連する自然死リスクの増加は見られなかった。但し、ADHD患者の自殺リスクは2倍、殺人による死亡リスクは2倍、不慮の事故による死亡リスクは30%高かった。
116. デンマーク人290万人を対象にした2019年のコホート研究によると、ADHD患者の自殺未遂と死亡率は4倍高かった。またADHDに他の精神疾患が併発すると、自殺未遂と死亡率は10倍高かった。
117. 2019年のメタ分析によると、ADHD患者は、自殺未遂が2倍、希死念慮が3倍以上、自殺既遂が6倍以上だった。
118. 2018年の台湾の研究では、ADHDの青年と成人の若者2万人以上と、年齢と性別を一致させた非ADHDの人6万1千人以上を対象に比較してみた。結果、ADHDの人はそうでない人に比べて、自殺未遂が約4倍、自殺未遂の繰り返しが6倍以上だった。メチルフェニデート(リタリン・コンサータ)又はアトモキセチン(ストラテラ)を服薬しても、自殺未遂や自殺未遂の繰り返しリスクは増加しなかった。但し、男性におけるメチルフェニデートの長期治療は、自殺未遂の繰り返しリスクを下げていた。
119. 260万人以上のスウェーデン人を対象とした2019年の前向きコホート研究によると、ADHDの成人は早期死亡リスクがわずかに増加、その主な原因は事故や自殺だった。一方でADHDの子どもは有意な関係がなかった。
ADHDの影響:犯罪と非行
120. 2019年のデンマークの研究によると、ADHDの若者は、そうでない若者と比べて、犯罪で有罪判決を受ける可能性が2倍以上、刑務所に入る可能性が3倍高かった。他のリスク要因の調整後も、犯罪で有罪判決を受ける可能性が60%高く、刑務所に入る可能性が70%高かった。
121. 2015年のメタ分析では、19,500人以上の受刑者を対象にADHDかどうかを見てみた。結果、ADHDの有病率は20.5%で、男女間、青年と成人間の差はなかった。また、2020年のメタ分析では、少年院における青年のADHDの有病率を見てみた。結果、男女共に17%強と報告されており、一般人口の有病率をはるかに上回っていた。
122. 2015年のアメリカ成人5,000人以上を対象にした研究によると、ADHDを持つ人はデート中の身体的暴力の加害者になる可能性が2倍以上、被害者になる可能性が65%高かった。
123. 2016年のアイスランドの研究では、青少年と若年成人21,000人以上を対象に調べた結果、14%が警察署での尋問を受けたことがあると回答していた。そのうちの15%は虚偽の自白をしたとのこと。そしてADHDを持つ人は、虚偽の自白をする可能性が2倍高かった。
124. 2019年のデンマークの研究によると、7歳~18歳までの青少年67万8000人を対象に暴力犯罪を調べてみた。すると、ADHDの子どもは、そうでない同年代の子どもに比べて、暴力犯罪の被害者になるケースが2.7倍も高かった。
ADHDの影響:学校教育
125. 2011年の研究によると、アメリカの成人約3万人を対象に調べたところ、他の精神障害を考慮しても、ADHDを持つ人は高校を卒業できない可能性が2倍高かった。
126. 2017年のスコットランドの子ども75万人以上を対象にしたコホート研究によると、ADHDを持つ子どもは、薬を処方されていたにも関わらず、同年代の子どもと比較して、学校成績が低い可能性が3倍以上、16歳未満で学校を中退する可能性が2倍以上、特別な教育が必要と記録がある可能性が8倍以上、怪我をする可能性が50%、失業する可能性が40%高かった(社会経済的状況やその他の精神疾患は調整済み)
127. 2017年のメタ分析によると、830人の若者を調べた結果、ADHDは、全体的な言語能力、表現力、受容力、実用的な言語能力におけるパフォーマンスの低下と強く関係していた。
ADHDの影響:物質使用障害(SUD)
128. 2011年のメタ分析によると、5,400人以上を調べた結果、ADHD患者はニコチン依存症になる可能性が約3倍高かった。また約2,400人のデータをまとめた結果、ADHD患者は非ADHD患者に比べて、薬物依存症又はアルコール依存症の発症リスクが50%高かった。129. 2017年のメタ分析によると、ADHDはアルコール依存症、ニコチン関連障害のオッズ比が2倍以上高かった。
130. 2015年のスウェーデンの研究では、50万人以上を対象に調べた上で、性別と親の教育を調整してみた。結果、ADHDと薬物依存症の間に3倍以上の関係があった。
ADHDの影響:その他
131. 2017年のデンマークの研究、2019年のスウェーデンの研究、2020年の台湾の研究を見てみると、ADHDを持つ女の子はADHDを持たない女の子よりも10代での妊娠率が高かった。また2014年のスウェーデンの研究、2015年のフィンランドの研究、2017年のヨーロッパ8カ国からなる研究といった大規模研究によると、10代の母親の子どもは、そうでない母親の子どもよりもADHDになる可能性が高かった。
132. 2012年のアメリカの研究によると、36,000人以上を調べた結果、ADHDによってギャンブル依存症、浪費、無謀な運転、計画なしに突然仕事を辞めるリスクが高まっていた。
133. 2019年の台湾国民健康保険データベース(NHIRD)の研究によると、ADHDの成人はそうでない成人に比べて、認知症発症リスクが3.4倍高かった(他の精神疾患、居住地の都市化レベル、収入は調整済み)
134. 2018年のメタ分析によると、約150万人を調べた結果、ADHDは子どもの中毒リスクを3倍高めていた。また2014年の台湾の研究でもADHDの子どもは意図的な中毒リスクが4倍以上高かった。
135. 2014年のアメリカの縦断研究によると、青少年15,000人を対象に調べてみた結果、ADHDを持つ人はADHDを持たない兄弟に比べて雇用率が12%低く、収入も34%低かった。
136. 2020年のデンマークの研究では、7歳~18歳までの若者67万5000人以上を対象に調べてみた。結果、ADHDの若者は、そうでない若者と比べて、性犯罪の被害者になる可能性が3.7倍高かった。また、親からの暴力、親の精神疾患の入院、親の自殺傾向又はアルコールの乱用、親の長期失業、家族の別居、養護施設での保護といった変数を調整した後でも、ADHDの若者が性犯罪の被害者になる可能性が約2倍高かった。
カテゴリー⑨:ADHDの経済的損失ってどれぐらい…?
ADHDに関連する多くの悪影響を考慮すると、本人、家族、社会に多大な経済的損失をもたらしていることは、特段驚くべきことではないだろう、とのこと。
137. 2014年の系統的レビューによると、ヨーロッパ人数十万人を対象に調べた結果、オランダにおけるADHD関連の総費用は患者1人あたり年間9,860~14,483ユーロ(≒1,712,700~2,515,720円)と推定され、国の年間費用は10億ユーロ(≒1737億円)を超えるとされた。
138. 2019年のオーストラリアADHD専門家協会の研究によると、オーストラリアに住む児童、青少年、成人を対象にADHD関連費用を調査してみた。すると、年間総費用は200億オーストラリアドル(約2兆円)、ADHD患者1人あたり2万5000オーストラリアドル(約250万円)を超えると推定された。
139. 2012年の系統的レビューでは、アメリカ人数十万人を対象にADHD関連費用をチェックしてみた。その結果、ADHDは年間1430億ドルから2660億ドルの費用を国内で負担しており、そのほとんどは成人(1050億ドルから1940億ドル)が関係していた。また、ADHD患者の家族が負担する費用は330億ドルから430億ドルに上った。
140. 2008年の研究によると、10か国7,000人以上の労働者を調査した結果、ADHDを持つ人は、ADHDを持たない人に比べて、職務遂行能力(業務遂行能力)を失っている日数が年間平均22日多かった。
141. アメリカのフォーチュン100企業の10万人以上を対象にした2003年の研究では、ADHDの若者と非ADHDの対照群の医療費を比較してみた。すると家族1人当たりの年間平均費用がADHD患者の家族の場合2,728ドル、非ADHDの家族は1,440ドルでほぼ2倍高かった。
142. 2019年のドイツの研究によると、ADHD患者2万5000人以上を対象に調べた結果、ADHD患者は非ADHD患者に比較して年間約1,500ユーロ多く医療費がかかっていた。主な費用は入院、精神科、心理療法士の費用だった。また、気分障害、不安障害、物質使用障害、肥満はADHD患者で有意に多く見られた。これらの疾患により追加でかかる費用は、患者1人あたり最大2,800ユーロにも上った。
143. 2020年の韓国の研究によると、19歳以下の人口(ADHDと診断された69,353人)の国民健康保険請求データをチェックした結果、ADHDによる年間の経済的負担総額は4,755万ドルと推定された。
144. 2019年のデンマークの研究によると、小児期にADHDと診断されず、成人期にADHDと診断された5,000人以上の成人の経済的損失をチェックしてみた。最終的に460組の兄弟姉妹で比較してみたが、ADHDの成人は、ADHDのない兄弟姉妹と比較して、平均で年間2万ユーロ強の経済的負担を負っていた。
145. 2020年のスウェーデンの研究では、44万5000人以上を対象に、3グループ(小児期にADHDを発症し成人期まで続いた人、成人期にADHDが寛解した人、ADHDがない人)の医療費を比較してみた。その結果、ADHDのない人の年間医療費は平均304ユーロだった。成人期にADHDが寛解した人の医療費は2倍、小児期にADHDを発症し成人期まで続いた人の医療費は3倍以上だった。
146. 2020年のデンマークの研究では、ADHD患者83,000人以上と、非ADHD対照群334,446人を対象にADHDの純社会経済的コストを算出してみた。結果、対照群と比較して、医療費・所得・雇用の減少による純損失は、ADHD患者1人あたり年間平均16,000ユーロ強となった。ADHD患者のパートナーの場合、1人あたりの年間平均追加コストは約5,500ユーロだった。
147. 2020年のドイツの研究によると、データベースを用いて、500万人の健康保険加入者記録を調査し、成人期に初めてADHDと診断された2,380人をピックアップした。この方々の診断後の1年間の直接的な医療費は平均4,000ユーロだった。ドイツのガイドラインではADHD治療薬が明確に推奨されているにもかかわらず、実際に薬を処方されたのは全体の3分の1に過ぎず、4年後には8分の1にまで減少していた。3分の2は心理療法を受けていた。研究者は「ガイドラインの推奨事項は、日常的なケアにおいてまだ包括的に実施されていない」と結論付けた。
カテゴリー⑩:ADHDの治療に安全で効果的な薬はどれ…?
世界中の政府機関によって、ADHDの治療に安全で効果的な薬がいくつか見つかっているそうです。これらの薬は、通常、患者を対象に数週間調べたRCTによって決定されるとのこと。また、精神疾患以外の多くの薬と同等、あるいはそれ以上の有効性を示しており、刺激性薬剤(メチルフェニデートおよびアンフェタミン)又は非刺激性薬剤(アトモキセチン、グアンファシン、クロニジン)に分類されるんだとか。
148. ADHDに対する薬物療法のプロトコルは、専門的な医療協会が作成した詳細なガイドラインに詳しく記載されている。
149. 2018年のネットワークメタ分析によると、刺激性薬剤がADHDの症状軽減に非常に効果的であることがわかった。プラセボと比較して、アンフェタミンは全年齢層で大きな改善が見られたとのこと。またメチルフェニデートは青少年で大きな改善、成人で中程度の改善が見られた。グアンファシンは小児で中程度の改善が見られた。アトモキセチンは全年齢層で中程度の改善が見られた。副作用を考慮すると、小児・青年はメチルフェニデート、成人はアンフェタミンが良さそうだった。
150. 2011年のメタ分析によると、ADHDの成人患者2,000名以上を対象に調べた結果、3種類のアンフェタミン誘導体(デキストロアンフェタミン、リスデキサンフェタミン、混合アンフェタミン塩)がADHD症状に中程度の効果があった。また2002年のメタ分析では、青少年216名を対象に調べたところ、混合アンフェタミン塩がメチルフェニデートよりもADHD症状の軽減にわずかに効果的だった。
151. 2015年のメタ分析によると、1,600人以上を対象に調べた結果、メチルフェニデートは学校の先生から見た時のADHD症状と行動、保護者から見た生活の質において中程度から大きな改善が見られた。また副作用について重篤な有害事象の証拠はなく、非重篤な副作用リスクがわずかに上昇したのみだった。
152. 2015年のメタ分析によると、デクスメチルフェニデートはプラセボと比較して青少年のADHD症状を大きく改善していた。また反応率は3倍だった。更に2004年の別のメタ分析によると、253人を対象に調べた結果、メチルフェニデートで成人のADHD症状が大きく改善、高用量でより大きな改善が見られた。
153. 2007年のメタ分析によると、1,600人以上を対象に調べたところ、アトモキセチンでADHDの症状が中程度改善していた。
154. 2018年のメタ分析では、メチルフェニデートとリスデキサンフェタミンでADHDの成人の感情調節障害の症状が軽度から中程度軽減した。一方で、アトモキセチンの軽減効果はわずかだった。2014年の別のメタ分析によると、1,300名以上の若者を対象に調べた結果、アトモキセチンで感情調節障害の症状が軽度軽減していた。
155. 2019年のメタ分析によると、境界知能又は知的障害のあるADHDの子ども423名を対象に調べた結果、メチルフェニデートでADHD症状が中程度から大きく改善していた。
156. 2015年のメタ分析によると、ADHDの子ども2,900人以上を対象に調べた結果、プラセボと比較して刺激性薬剤は不安感を14%軽減していた。
157. 2015年のメタ分析では、1,300人以上を対象に刺激性薬剤が、ADHD(反抗挑戦性障害の有無に関わらず)及び素行障害のある青少年の攻撃性、反抗的行動、素行問題を軽減するのに役立つか見てみた。結果、学校の先生から見た評価では非常に効果的、保護者から見た評価では中程度の効果があった。
カテゴリー⑪:ADHDに関連する障害に対する薬物治療の効果
158. 2019年のスウェーデンの研究によると、65万人以上の学生を対象にADHD治療薬の効果を調べてみた。すると3か月間ADHD治療薬を使った結果、学校成績の合計点(0~320点の範囲)が9点以上アップした。また高等学校を卒業する確率が66%程アップした。
159. 2017年のスウェーデンの研究によると、ADHDの若者61,000人以上を対象に服薬の有無と学校成績について調べてみた。その結果、薬を服用した方が服用しないよりもテストの点数が高かった。また2018年のデンマークの研究では、50万人以上の子ども(ADHD患者6,400人以上)を対象に調べたところ、ADHD薬の服用を中止するとテストの平均点がわずかだが有意に低下した。更に2020年のRCTのメタ分析によると、1,463人のADHD患者を対象に調べた結果、薬の服用中止は子どもと青年の生活の質の悪化につながった。一方で、成人は関係なかった。
160. 2012年のスウェーデンのコホート研究によると、ADHD患者25,000人以上を対象に調べた結果、ADHD治療薬を服用した男性の犯罪率が3分の1に減少、女性の犯罪率が40%減少した。また、2019年のデンマークの研究では、小児期のADHD患者4,200人以上を対象に調べたところ、ADHD治療薬を服用していた期間中、成人期の犯罪率が30~40%低下していた。
161. 2015年のデンマークのコホート研究によると、ADHD患者4,557人を含む70万人以上を対象に調べた結果、ADHDの10代の若者が刺激性薬剤を服薬すると傷害率が低下していた(10歳で30%、12歳で40%低下)
162. 2020年のスウェーデンの研究では、2006年~2013年にかけて、ADHDの若者9,421人とADHD+他の精神疾患を持つ若者2,986人を追跡調査してみた。その結果、どちらの若者もADHD治療薬を服用していた期間中、意図しない傷害が10%以上、外傷性脳損傷が70%以上減少した。
163. 2018年の台湾の研究によると、ADHDの若者124,000人以上を対象に調べた結果、メチルフェニデート(刺激性薬剤)の服薬で、外傷性脳損傷リスクが減少していた。
164. 2016年の台湾の研究では、ADHDの子ども7,200人とADHDのない子ども36,000人を比較してみた。結果、ADHDの男の子は骨折リスクが約40%高く、女の子は60%高かった。また2017年の台湾の別の研究によると、新たにADHDと診断された6,200人以上の子どもを対象にメチルフェニデートの効果を調べてみた結果、半年以上服薬した子どもは骨折リスクが20%も低下していた。
165. 2015年の香港の研究によると、メチルフェニデートを処方されている6~19歳の17,000人以上を調べてみた。すると約5,000人が、少なくとも1回は外傷関連の救急外来を受診していた。そしてメチルフェニデートの処方期間中は、処方されていない期間と比較して、入院が9%減少していた。
166. 2018年のメタ分析によると、13,000人以上を対象に調べた結果、ADHD治療薬(主に刺激性薬剤)は、不慮の事故による負傷を10%以上減少させていた。
167. 2014年のスウェーデンの研究によると、ADHD患者17,000人以上を対象に調べた結果、ADHD治療薬の服用により、男性の重大な交通事故リスクが50%以上減少した。一方で女性の減少は見られなかった。また、男性患者による衝突事故の40%以上は、治療期間全体を通して治療を受けていれば回避できたはずのものだった。更に2017年のアメリカのコホート研究では、ADHD患者230万人を対象に、10年間の自動車事故による救急外来の受診について調査してみた。その結果、ADHDの男性は、ADHD治療薬を服用していた月の方が服用していなかった月よりも衝突事故リスクが38%低く、ADHDの女性は42%も低いことが分かった。研究期間全体を通して服用していれば、衝突事故の約5分の1は回避できたはずのものだった。
168. 2018年の台湾国民健康保険データベース(NHIRD)の縦断研究によると、ADHDの青年・若年成人約18,000人と、年齢と性別を一致させた対照群70,000人以上を比較してみた。するとADHD治療薬の短期使用で性感染症が30%減少していた。また長期使用だと40%も減少していた。但し、この減少は男性のみに見られた。
169. 2016年のスウェーデンのコホート研究によると、ADHD患者38,000人以上を対象に調べた結果、ADHD治療薬の服用は3年後のうつ病リスクを40%以上低下させていた。但し、このリスクはADHD治療薬の服用期間が長くなるにつれて減少していた。また、ADHD治療薬を服用した患者は、服用しなかった患者と比較して、うつ病の発症率が20%低かった。
170. 2014年のスウェーデンの研究によると、ADHD患者38,000人を対象に調べてみた結果、治療期間中に刺激性薬剤を処方された患者は、治療を受けていない期間と比較して、自殺関連事象が20%減少していた。この効果は非刺激性薬剤では見られなかった。
171. 2018年の台湾国民健康保険データベース(NHIRD)の研究では、ADHDの若者8万5000人をピックアップし、メチルフェニデートの使用と自殺企図の関連性について調べてみた。結果、メチルフェニデートを3ヶ月から半年使用した人は自殺リスクが60%低下、半年以上使用した人は70%低下していた。
172. 2014年のスウェーデンの研究では、1960年から1998年の間に生まれ、ADHDと診断された38,753人を対象に、2006年に処方されたADHD治療薬と2009年の薬物乱用との関連性を調べた。すると刺激性薬剤を処方された人は薬物乱用率が30%以上減少していた。また服薬期間が長いほど、薬物乱用率は低下していた。更に2,300人以上を対象にした2014年のメタ分析によると、ADHD患者が定期的に刺激性薬剤を服薬していると、喫煙する可能性が約半分になっていた。一方で2013年のメタ分析によると、刺激性薬剤はアルコール、ニコチン、コカイン、大麻の乱用又は依存のリスクを高めないことがわかった。
173. 2020年の台湾の研究によると、ADHDの青少年7,500人以上と対照群30,000人以上を比較してみた結果、ADHD治療薬の長期使用で10代の妊娠率が30%減少していた。
174. 2020年の台湾国民健康保険データベース(NHIRD)の研究では、ADHDと診断されメチルフェニデートを処方された68,000人以上の小児・青年をピックアップし、年齢、性別、ADHDの初回診断年を一致させた同数の対照群と比較してみた。すると、メチルフェニデートを処方されたADHD患者は、処方されなかったADHD患者に比べて、全死亡率が5分の1低下していた。一方でメチルフェニデートを遅れて使用した場合、死亡率がわずかに上昇(5%)していた。またメチルフェニデートを長期服薬した場合、全死亡率が6分の1低下していた。但し、研究者によれば、データベースの情報が不足しているため、様々な変数が排除できていないとのこと。
175. 2020年の台湾国民健康保険データベース(NHIRD)の研究によると、ADHDと診断された18歳未満の子ども9万人以上を見つけ、メチルフェニデートを服薬している人・90日未満服薬している人、90日以上服薬している人と分けて火傷リスクを比較してみた。その結果、メチルフェニデートを服薬していると、火傷を半分以上防げる可能性があった。また、メチルフェニデートを服薬していない人と比較して、90日未満服薬している人は火傷リスクが30%低く、90日以上服薬している人は火傷リスクが57%低かった。
176. 2016年のメタ分析では、ADHDに対するメチルフェニデートの効果について見てみた。結果、メチルフェニデートで抑制制御と注意の持続に中程度の改善が見られた。一方でワーキングメモリは有意な改善が見られなかった。
177. 2014年のメタ分析では、212人を対象にfMRIを使って脳をスキャンしてみた。すると薬物治療により、ADHDの若者の脳は、ADHDの典型的な問題とされている認知制御に関わる脳領域において、ADHDのない人の脳に似た機能に変化していた。一方で2017年や2019年の研究によると、ADHD患者4,180人を対象に調べた結果、薬物治療は脳構造に影響を与えなかった。
カテゴリー⑫:ADHD治療薬の副作用
178. 2015年のメタ分析によると、刺激性薬剤は総睡眠時間を中程度減少させ、入眠を遅らせ、睡眠効率(実際に寝ている時間の割合)を軽度から中程度低下させていた。また2017年のメタ分析によると、メチルフェニデートを服薬している子どもと青年は、腹痛を訴える可能性が50%高く、食欲減少、体重減少を経験する可能性も3倍以上高かった。更に2020年のネットワークメタ分析とRCT・観察研究のメタ分析のアンブレラレビューでは、精神障害のある小児・青年を対象に80種類の向精神薬の有害事象をチェックした。結果、食欲不振(アトモキセチン、デキストロアンフェタミン、リスデキサンフェタミン、メチルフェニデート、モダフィニル)、不眠症(デキストロアンフェタミン、リスデキサンフェタミン、メチルフェニデート、モダフィニル)、体重減少(アトモキセチン、メチルフェニデート、モダフィニル)、腹痛(メチルフェニデート、グアンファシン)、有害事象による中止(リスデキサンフェタミン、グアンファシン)、高血圧(アトモキセチン、リスデキサンフェタミン)、鎮静(クロニジン、グアンファシン)、QT延長(グアンファシン)が有意に悪化していた。
179. 2013年の成人3,300人以上を対象にしたメタ分析によると、アトモキセチンはプラセボよりも有害事象による治療の中止率が約40%高かった。また2017年のメタ分析によると、メチルフェニデートはアトモキセチンよりも不眠症が2倍以上高かった。一方で吐き気や嘔吐は約半分、眠気は6分の1程少なかった。更に2019年のメタ分析によると、メチルフェニデートはプラセボよりも有害事象が55%高かったが生命を脅かすものではなかった。有害事象としては食欲不振が5倍、不眠症が4倍以上高かった。
180. 2008年の研究によると、刺激性薬剤を服薬している子どもは、身長の伸びが1~2年で平均2cm程遅かった。但し時間の経過とともに軽減し、治療を中止すると元に戻ることも少なくなかった。また刺激性薬剤の治療についてADHDの小児32,999人と対照群11,515人を比較してみた。すると、4年間にわたって身長の伸びが予想よりも継続的に低下していた。一方で2018年のドイツの研究では、メチルフェニデートで治療されなかった男の子3,806人と治療を受けた男の子118人を比較してみた。結果、メチルフェニデートは関係なかった。
181. 2014年のデンマークの研究では、70万人以上を対象に10年程追跡調査を行ってみた。結果、ADHD患者8,300人を対象とした調査で、刺激性薬剤の使用者は非使用者に比べて心血管イベント(主に高血圧)の発生率が2倍以上高かった。
182. 2018年の43,000人以上の子どもを対象にしたメタ分析によると、メチルフェニデートとアトモキセチンの心臓に関する有害事象は見られず、775人の成人を対象にしたメタ分析でもメチルフェニデートとプラセボの心臓に関する有害事象は見られなかった。
183. 2019年の全年齢層を対象にしたメタ分析によると、メチルフェニデートは全死亡リスク、心臓発作リスク・脳卒中リスクと関連がなかった。
184. 2018年の研究によると、妊婦によるメチルフェニデート(アンフェタミンではない)の使用は、先天性心疾患リスクの上昇と関連があり、乳児1,000人あたり12.9~16.5人まで増加するようだった。また2020年の女性300万人を対象にしたメタ分析でもメチルフェニデートで先天性心疾患リスクが上昇していた。
185. 2018年のメタ分析ではアトモキセチンの安全性をチェックしてみた。結果イライラの増加と関係がなかった。また2017年の研究や2014年の研究によると、青少年における治療の中止率の増加は見られなかった。一方で2013年の成人3,300人以上を対象にしたメタ分析によると、治療の中止率が40%増加していた。そのためアトモキセチンは成人のADHD治療においてメリットとデメリットのバランスが悪いと結論付けた。
186. 2017年の研究では、メチルフェニデートを服用している25,000人以上の患者を対象に調査してみた。その結果、メチルフェニデートの治療開始前の90日間において、ADHD患者の自殺未遂リスクが治療後と比べて6倍以上高かった。また治療継続後はADHD患者の自殺未遂リスクは上昇しなくなった。
187. 2016年の研究では、ADHD患者がメチルフェニデートを服薬していた期間としていなかった期間を比べてみた。結果、精神病のリスクに差は見られなかった。
188. 2019年の青少年・若年成人23,000人以上を対象にしたスウェーデンの研究によると、メチルフェニデートと精神病に関連性は見当たらなかった。また、メチルフェニデートの開始から1年後、精神病歴のある患者では治療開始直前と比較して精神病イベントの発生率が36%低下し、精神病歴のない患者では18%低下していた。
カテゴリー⑬:刺激性薬剤の乱用と転用
189. 2020年の系統的レビューによると、処方された刺激性薬剤の非医療目的の使用は、特に大学生において重大な公衆衛生問題であると結論付けていた。非医療目的の使用のほとんどは医学的な影響が全くないか軽微なものの、特に経口以外で摂取した場合、死亡を含む有害な問題が発生する可能性があった。刺激性薬剤における非医療目的の使用の主な動機は学校成績アップと仕事のパフォーマンスアップだった。但しADHDのない個人において、刺激性薬剤の非医療目的の使用により、学校成績や仕事のパフォーマンスがアップすると言うエビデンスはほとんどない。
190. 2017年のアメリカの前向きコホート研究によると、ADHDのない人が刺激性薬剤を医療目的外で使っても学校成績が上がるどころか下がるという結果が出た。この研究は18歳から35歳までの高校3年生8,300人以上を調査したもので、処方された刺激性薬剤を医療目的外で使用した人は、医療目的・非医療目的のいずれでも使用しなかった人に比べて、学士号を取得する可能性が17%低かった。
191. 2014年の後ろ向きコホート研究では、ADHDの治療薬を処方された440万人と喘息薬を処方された610万人を比較してみた。すると、複数の医師から処方箋を入手したり、複数の薬局で処方箋を受け取ったりしている人と乱用、誤用、転用は、高い相関関係があった。これらの行動は、ADHDグループは喘息グループの4倍の頻度だった。また、刺激性薬剤を処方された人は、非刺激性薬剤を処方された人に比べ、上記の行動を起こす可能性が8倍以上高かった。但し刺激性薬剤を処方された人のうち、上記の行動を起こしたのはわずか250人中1人だった。
192. 2013年の440,000人以上を対象にしたアメリカの研究によると、違法薬物の使用や処方薬の非医療目的の使用が、ADHD治療薬の非医療目的の使用に先行していた。
193. 2018年のスウェーデンの研究では、2010年~2011年の間にメチルフェニデートの処方箋を受け取った56,922人を調査してみた。すると、メチルフェニデート使用者のうち4,304人(7.6%)が、処方箋の数よりも過剰に使用していた。過剰使用について46~65歳は6~12歳よりも17倍高かった。また、過去にアルコールや薬物を乱用した経験のある人だと、過剰使用の頻度が2倍高かった。
194. 2019年の研究や2018年の研究では、ADHD治療薬におけるアメリカの中毒情報センターに寄せられた電話の大規模調査を行った。その結果、自殺の疑いや薬物乱用・誤用を含む意図的な暴露は、集中治療室への入院と関連があった。また、特に鼻から吸い込んだり注射したりした場合、稀に死亡につながるケースがあった。
カテゴリー⑭:ADHDに対して安全かつ効果的な非薬物療法ってなに…?
これまでADHDは、多くの非医学的治療法が提案されてきました。但し、ネットでググって出てくる非医学的治療法のほとんどは、検証されていないか、効果がないことが証明されているとのこと。つまりエビデンスがないってことですね。
そこでこのカテゴリーでは、ADHDの症状に対する治療法の効果と、それがもたらす可能性について触れていくそうです。
余談ですが、ここに出てくるものは障害福祉の分野でも実践・支援できるものなんで押さえておいて損はないかと思います。それでは見ていきましょう。
認知行動療法
ADHDの認知行動療法(行動療法を含む)は多岐にわたり、患者の年齢に応じて内容や焦点が異なるそうです。
まず乳幼児や小学生の場合は、親による子どもへのしつけや接し方を改善するためのトレーニングとして認知行動療法を用いるんだとか。そして青年や成人の場合における認知行動療法は、ADHD患者本人の社会性アップに役立つとのこと。
他にも学校の先生が子どもの行動改善を目的としたプログラムに参加するって場合もあるそうな。更に上記の認知行動療法の中には、社会行動の改善や実践的なスキルアップに焦点を当てたものもあるみたい。
ただ、このコンセンサスでは上記の認知行動療法のうち、ADHDの症状改善に役立つもののみに焦点を当てたとのこと。そのため、ここでADHDの症状を大幅に改善しなかったとしても、それが他の目的でも役立たない…!ってことにはならないんで、そこは心に留めておいて欲しいそうです。
195. 2019年のメタ分析によると、ADHDの乳幼児に対する親のトレーニングとしての認知行動療法は、親視点でのADHD症状・行動上の問題の適度な減少と関係していた。但し独立した評価の場合、ADHD症状・行動上の問題に有意な効果はなかった。一方で子育てのネガティブがわずかに減少していた。
196. 2017年のメタ分析によると、ADHDの成人患者896名を対象に認知行動療法の効果を見てみた結果、自己申告によるADHDの症状と機能が中程度改善していた。但し、質の高い研究のみで見てみると、その効果はわずかだった。また2020年のメタ分析でもADHDの成人患者160名を対象に認知行動療法の効果を見てみた。結果、中~大程度改善していた。更に191名のADHD患者を対象にした3つの研究では、認知行動療法で小~中程度改善していた。
197. 2019年のメタ分析では2,000人以上の参加者を対象に認知トレーニングの効果を調べてみた。その結果、ADHDの乳幼児の実行機能がわずか~中程度改善した。
198. 2018年のメタ分析によると、瞑想の効果を調べてみた。結果、小児・青年・成人のADHDの症状が中程度改善した。但し質の高い研究のみで調べ直すと有意ではなかった。
199. 2019年のメタ分析によると、ADHDの若者にSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)を行ってみた。その結果、学校の先生による社会性スキルの評価、一般的な行動、学校での成績やパフォーマンスは改善されなかった。
200. 2017年の893人の若者を対象にしたメタ分析によると、社会性スキルアップの為の介入により、親が報告した不注意の症状が中程度改善した。
認知トレーニングとニューロフィードバック
201. 2014年のRCTのメタ分析では、263名を対象にニューロフィードバック(自分の脳波をリアルタイムで測定し、それを見たり聞いたりして、脳の活動をコントロールするトレーニング法)の効果を調べた。結果、不注意がわずかに改善、多動性、衝動性、ADHD全般の症状は有意に改善しなかった。また2019年の同じようなRCTのメタ分析でも、256名を対象にニューロフィードバックの効果を調べた。結果、不注意は改善せず、代わりに多動性と衝動性が小~中程度改善した。
202. 2015年のメタ分析では、青少年を対象に認知トレーニングとニューロフィードバックの効果を調べてみた。結果、ADHDの症状は有意に改善しなかった。但し、言語性ワーキングメモリは中程度改善した。一方で数学と国語(読解力)の成績は有意に改善しなかった。2016年のRCTのメタ分析では、ADHDの症状は有意に改善しなかった。
203. 2013年のメタ分析によると、ワーキングメモリのトレーニングは有効なのか調べてみた。結果、言語性ワーキングメモリと視空間性ワーキングメモリの両方が、短期的に改善していた。但し持続するかは不明とのこと。また研究の質も低かった。
サプリメント・食事・運動
204. 2011年のメタ分析、2018年のメタ分析、2014年のメタ分析によると、オメガ3脂肪酸のサプリでADHDの症状が小~中程度改善した。また2014年の別のメタ分析では、オメガ3脂肪酸のサプリでADHDの症状がわずかに改善した。
205. 2016年のメタ分析によると、ADHDの子供がオメガ3脂肪酸サプリを摂取しても、親や学校の先生による感情の不安定さの評価、反抗的症状の評価は変わらなかった。
206. 2012年の二重盲検・クロスオーバーデザインのメタ分析によると、子供の食事から合成着色料を減らすとADHDの症状がわずかに改善した。
207. 2020年のメタ分析によると、子ども300名を対象に調べた結果、運動によりADHDの症状が中程度改善した。但し出版バイアスを調整すると有意ではなくなった。2019年の別のメタ分析でも、運動の効果を見てみたが、結果、不注意・多動性・衝動性の症状に有意な変化はなかった。但し、不安と抑うつ症状が有意に改善した。
208. 2020年のスウェーデンの双子研究では、約18,000組の双子を対象に不注意・多動性・衝動性と食習慣の関係を調べてみた。結果、不注意は果物、野菜の摂取、健康的な食事スタイルと負の相関関係にあった。多動性・衝動性も同様の傾向を示したが、不注意よりも弱い傾向を示した。また、不健康な食事スタイルと正の相関関係もあった。一卵性と二卵性を区別しても依然として不注意は関係があった。一方で多動性・衝動性は無視できるレベルにまで減少した。700組以上の一卵性双生児を対象にした研究でも、不注意と不健康な食事スタイル、特に精製糖の多い食品の摂取との間には、小さいながらも強固な関連性があった。一方で多動性・衝動性と不健康な食事スタイルとの関連性は弱く、精製糖との関連性はなかった。
まとめ
最後に14カテゴリー・全208個の内容をまとめておきます。- 現在ADHDと呼ばれている障がいが最初に医学文献に出てきたのは1775年である:1~13個目
- 医師によって行われるADHDの診断は明確に定義されている。また、他の精神疾患がある場合でも、あらゆる年齢の場合でも診断は有効である:14~19個目
- ADHDは男性に多く見られる。またADHDは青少年の5.9%、成人の2.5%が発症する。ヨーロッパ、スカンディナヴィア、オーストラリア、アジア、中東、南アメリカ、北アメリカと世界中で、ADHDの症状が見られる:20~25個目
- ADHDが単一の遺伝的要因又は環境的要因によって引き起こることは稀である。ADHDのほとんどのケースでは、それぞれが極めて小さな影響を及ぼす多くの遺伝的要因と環境的要因の複合的作用によって引き起こるとされている:26~62個目
- ADHDの人は脳機能テストにおいてパフォーマンスの低下が良く見られる。但し、これらのテストはADHDの診断には使用できない:63~70個目
- MRIによる脳スキャン研究によると、ADHDのある人とない人では脳の構造と機能にわずかな違いがあった。但しこれらの違いはADHDの診断には使用できない:71~77個目
- ADHDの人は、肥満、喘息、アレルギー、糖尿病、高血圧、睡眠障害、乾癬、てんかん、性感染症、目の異常、免疫疾患、代謝疾患などのリスクが高かった:78~100個目
- ADHDの人は、生活の質(QOL)の低下、物質使用障害、事故による怪我、学業不振、失業、ギャンブル、十代の妊娠、社会的問題、非行、自殺、早死のリスクが高かった:101~136個目
- ADHDは世界中で毎年何千億ドルもの経済的損失を生んでいた:137~147個目
- いくつかの薬剤がADHDの症状を軽減するのに安全かつ効果的であった:148~157個目
- ADHD治療薬による治療により、事故による怪我、外傷性脳損傷、薬物乱用、喫煙、学業不振、骨折、性感染症、うつ病、自殺、犯罪行為、十代の妊娠が減少していた:158~177個目
- ADHD治療薬の副作用は基本的に軽度であり、服薬調整や薬の変更でも対処可能だった:178~188個目
- ADHDの刺激性薬剤(メチルフェニデートおよびアンフェタミン)は非刺激性薬剤(アトモキセチン、グアンファシン、クロニジン)よりも効果的だった。但し転用、誤用、乱用される可能性も高かった:189~194個目
- ADHDに対する非薬物療法は、ADHDの症状に対する薬物療法ほどの効果はなかった。但し薬物療法で症状が改善した後に残る問題の改善に役立ちそうだった:195~208個目
個人的考察
以上、「2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサスを見てみよう!」でした…!
ADHDについて網羅しているんでとても勉強になりましたね…!
