皆さんが支援している人の中にADHDを持っている方はいますか…?
ADHDは、注意欠陥多動性障害とか、注意欠如多動性障害などと呼ばれまして、発達障害の一種となっております。子ども時代に発症するケースが多く、主な特徴としては、不注意・多動性・衝動性ですね。…っとここまでは、支援をしている方にとっては耳タコでしょう。
しかし、私も含め、ここから更に深掘りしていくことはあまりないのではないでしょうか…?
ということで今回は、世界ADHD連盟がコンセンサスを久しぶりにアップデートしたよー!って情報を入手しましたんで、ご紹介しておきます。



2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサス…!

2021年の世界ADHD連盟の研究によると、ADHDにおけるコンセンサス(大多数の意見の一致した物)を発表したそうです。
そもそもADHDに関する誤解は、差別や医療の信頼の低下、治療の妨げや遅れの原因になります。そのため誤解をなくすために確固たるエビデンスに基づいた知見をまとめ、コンセンサスとして声明を出したんだとか。
因みに2002年1月に国際的な科学者チームがADHDの初の国際コンセンサスを声明しております。今回は、そこから20年の間に発表された重要な科学的発見をまとめ、アップデートした感じです。
まず研究者たちは、現時点で発表されているADHDの研究をPubMedで検索してみたそうな。次に、ADHDの歴史や診断基準に関する記述以外の研究を以下の基準に照らし合わせて精査していったらしい。

  • メタ分析であること、又は2,000人以上をサンプル数とした大規模研究であること。
  • メタ分析は、5件以上の研究又は2,000人以上のサンプル数のデータがあること。

つまり、ADHDにおける高品質のメタ分析と大規模研究のみをピックアップしていったってことですね。その後、各研究を項目ごとに分けてまとめていったみたい。
因みにこれから出てくる効果サイズ(標準化平均差)と相関係数に関しては以下のようになっております。

  • 標準化平均差(SMD):小=0.20、中=0.50、大=0.80
  • 相関係数:小=0.10、中=0.24、大=0.37

まぁ、一般的なラインですね。
そして専門家グループの代表者を含むプロジェクト運営委員会により、コンセンサスを完成、6大陸27か国にわたる80人の研究者によって承認を得たそうな。また、この文書を読んで内容に同意した人は403人にも上るらしい。すごいっすね~。
ということで、ADHDの記述が14カテゴリー、全208個もございます。じっくり見ていきますか(大変だけど)



カテゴリー①:ADHDは新しい障害ではない…!

ADHDの概念は、ヨーロッパ諸国において長い歴史があるそうです。最初はADHDと呼ばれていなかったそうなんですが、2世紀以上にわたって認識されてきたそうな。
では、ADHDの初期の歴史におけるポイントを見ていきましょう。

1. 1775年にドイツのメルヒオール・アダム・ヴァイカード医師が、ADHDの特徴を持つ障害についての最初の教科書を執筆した。
2. 1798年にイギリス王立内科医院のアレクサンダー・クライトン博士が医学書の中で同様の障害について記述した。
3. 1845年、後にドイツのフランクフルト・アム・マインの最初の精神病院の院長となったハインリッヒ・ホフマン医師は、ADHDのような行動とそれに伴う障害を記録した児童書の中で、多動性と注意欠陥(注意欠如)について記述した。
4. 1887~1901年にデジレ・マグロワール・ブルヌヴィル、シャルル・ブーランジェ、ジョルジュ・ポール・ボンクール、ジャン・フィリップは、フランスの医学・教育に関する著書の中でADHDに相当するものについて説明した。
5. 1902年にイギリスのジョージ・スティル医師が科学雑誌にこの疾患について初めて記述した。
6. 1907年にアウグスト・ヴィダル・ペレラが、スペイン語で最初の児童精神医学概論を執筆した。この中で学童における不注意と多動性の影響について記述した。
7. 1917年、スペインの神経学者・精神科医のゴンサロ・ロドリゲス・ラフォラ博士は、子供のADHDの症状について説明し、その症状はおそらく遺伝的要因による脳障害によって引き起こされると述べた。
8. 1932年にドイツのフランツ・クレイマーとハンス・ポルノウは、ADHDに似た症候群を説明、「多動性障害」という用語を作り出し、後に世界保健機関の用語として採用された。
9. 1937年、アメリカのチャールズ・ブラッドリーは、アンフェタミンという薬がADHDのような症状を軽減することを発見した。
10. 1940年代になると、子供のADHDのような症状を「軽度の脳機能障害」と言うようになった。
11. 1956年~1958年、追跡調査により、軽度の脳機能障害の関連行動が成人期まで続くという最初の兆候が示された。
12. 1960年代になると、FDA(アメリカ食品医薬品局)が子どもの行動障害の治療薬としてメチルフェニデート(リタリン:ドーパミンとノルアドレナリンの再取り込み阻害薬)を承認した。
13. 1970年代~現在にかけて、治療、臨床経過、障害の家族歴の研究に基づいて進化した。



カテゴリー②:ADHDの診断と傾向

ADHDは医師などが、親やその他の保護者、本人と面談を行い、診断するのが一般的です。そのため、評価尺度のみ、神経心理学的検査、脳画像診断では診断できないそうな。
ただ、このことから、ADHDの診断は生物学的検査に基づいていないため主観的であると批判されてきたとのこと。しかしこの批判は根拠がないとおっしゃっております。
因みに専門家協会は、ADHDの診断に関するガイドラインを承認し、公開しているそうです。
ということで診断の主な特徴を見ていきます。

14. APA(アメリカ心理学会)やWHOによれば、ADHDの診断には①発達上不適切なレベルの多動性・衝動性・不注意の症状が、最低6か月間ある、②家庭や学校など様々な場所で症状が発生する、③症状が生活に支障をきたしている、④症状と障害の一部が小児期初期から中期に初めて発現している、⑤症状をより適切に説明できる他の障害がない、ことが必要とのこと。
15. ADHDの臨床症状は、症状の性質に応じて、不注意が強いパターン、多動性・衝動性が強いパターン、これらの両方があるパターンで表現される。メタ分析によると、不注意は学校成績の低下、自尊心の低さ、仕事上の低評価、全体的な適応機能の低下とより強く関係がある。多動性・衝動性は、仲間からの拒絶、攻撃性、危険な運転、事故による傷害とより強く関係がある。
16. 5,700人以上の子供を対象とした縦断研究によると、高IQ、平均IQ、低IQ、とADHDの基準を満たす年齢の中央値、学習障害、精神障害、薬物乱用の発生率、薬物治療の発生率に有意差はなかった。
17. 思春期や若い成人期においても、小児期にADHD歴を持つ多くの人は、不注意の症状を持ち続ける。但し多動性や衝動性は軽減することが多い
18. 多くの大規模研究と臨床研究により、ADHDは他の精神疾患、特にうつ病、双極性障害、自閉症スペクトラム障害、不安障害、反抗挑戦性障害(反抗挑発症障害)、行為障害(素行障害)、摂食障害、物質使用障害と併発することが多い
19. 総サンプル数800万人以上のメタ分析によると、学年の最初の4ヶ月間に生まれた(比較的若い)子どもや青少年はADHDと診断される可能性が高い。



個人的考察

長くなったので今回はここまで。



参考文献

最後にまとめてご紹介します。