今回は、2020年にラクイラ大学が発表した、片頭痛と睡眠障害の関係についての系統的レビューを見てみます。



片頭痛と睡眠障害の関係と対策について系統的レビューを行ってみた…!

2020年のラクイラ大学の研究によると、片頭痛と睡眠障害の関係と対策について系統的レビューを行ってみたそうです。
そもそも片頭痛と睡眠障害ってのは、併存するパターンが結構多く、単なる偶然ってだけじゃなさそうな感じなんだとか。
実際、先行研究では、

  • 片頭痛持ちは非片頭痛持ちよりも睡眠の質が悪い…!
  • 自己申告による睡眠の質の悪さは、片頭痛の頻度の増加や慢性化と関係がある…!
  • 片頭痛の治療により、睡眠の質を改善する可能性がある…!

っていう結果が得られているらしい。
んがしかし、ここが摩訶不思議なところでして、正確な関連性は謎のままなんだとか。
ただ可能性としては、

  • 因果関係は双方向にありそう(片頭痛により睡眠障害が起こる、睡眠障害により片頭痛が起こる、の両方が考えられる)
  • 共通の病態生理学的メカニズムがありそう

っていう2つが関係してそうな様子とのこと。
また、最近の研究により、睡眠に重要な中枢神経系と神経伝達物質が特定されており、これらが上手く機能しないのが原因かも…?となっているそうな。例えば、オレキシン、メラトニン、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、セロトニンドーパミンアデノシンの分泌なんかですね。
こんな感じで実は、まだまだよく分かっていない片頭痛と睡眠障害の関係と対策について、今回現時点での研究結果をまとめてみることにしたそうです。
まず研究者たちは、1990年1月1日から2018年11月30日までに発表された該当研究をPubMedとScopusで検索してみたそうな。次にヒットした研究の中で被っている物を除外しつつ、基準に照らし合わせて精査していったらしい。その後、ピックアップできた研究から、各睡眠障害と片頭痛の関係をまとめてみたんだとか。
それではじっくり見ていきましょう…!


不眠症と片頭痛

不眠症は、年齢や人種を問わず、多くの方が発症する一方で、しばしば見過ごされがちな睡眠障害となっております。
その発症率は、研究デザインや不眠症の定義によって異なるものの、

  1. 成人の3分の1から3分の2が不眠症の症状がある
  2. 成人の約10%から15%が慢性不眠症と診断されている

とのこと。めちゃめちゃ多いですね~。
そして片頭痛持ちはそうでない人に比べ、不眠症を訴えるケースが有意に高いんだとか。また、不眠症のある人はない人に比べ、片頭痛持ちの可能性が高いとも出ているらしい。つまり不眠症と片頭痛は双方向に関係がある…!ってことですね。
実際にデータでもそのリスクは見られまして、

  • 頭痛なし・不眠症ありの人は、頭痛なし・不眠症なしの人に比べて、11年後に片頭痛を発症するリスクが1.4倍(RR1.4)高かった…!
  • 片頭痛ありの人は、片頭痛なしの人に比べて、11年後に不眠症を発症するリスクが1.7倍(OR1.7)高かった…!
  • 月7日以上の片頭痛がある人は、11年後に不眠症を発症するリスクが2.1倍(OR2.1)高かった…!
  • 月6日以下の片頭痛がある人は、11年後に不眠症を発症するリスクが1.7倍(OR1.7)高かった…!

って感じだったみたい。
また不眠症は、片頭痛の痛みの強さ、痛みの衝撃、頻度、慢性化の増加とも関係していたそうです。更に従来から言われてきた、不安やうつ病とも関係があったらしい。また不眠症と片頭痛は不安やうつ病とは独立した双方向の関係にあるとのこと。
但し、これら関係性は片頭痛限定の話じゃない可能性があるそうで、頭痛の種類に関係なく、頭痛全般に言えるかもしれないとのこと。
対策としては、2017年の不眠症の診断と治療に関する欧州ガイドラインが参考になるとのことで、これによれば、


のが良いそう。
これらは、不眠症とそれに伴う併存症状の両方に効果があるそうで、また、成人における慢性不眠症の最初の選択すべき治療法としてオススメとのこと。やっぱ睡眠問題の治療法はここら辺がゴールドスタンダードなんですね。
また最近の研究によれば、不眠症に認知行動療法を使うと、

  • 片頭痛の頻度の減少、痛みの強さの減少が見られた…!
  • 慢性片頭痛が対照群よりも6.2日も減少した…!

って話もあるらしい。

それと片頭痛と不眠症の関係におけるメカニズムってのは、まだ完全には分かっていないそうな。
但し、

  • 片頭痛は概日リズム(体内時計)に従っており、早朝または深夜にピークを迎える
  • 片頭痛は、レム睡眠の時間に関係している可能性がある
  • 片頭痛による夜間の中途覚醒は、レム睡眠中に起こりやすい
  • 片頭痛とレム睡眠の時間の関係は、脳幹(中枢神経系)の機能不全の可能性を示している
  • 慢性的な睡眠不足は、痛みの敏感さをアップさせ、頭痛の慢性化を促進する可能性がある

とのこと。
これらから、視床下部や脳幹の機能不全は、片頭痛と不眠症に共通するメカニズムの可能性があるそうです。



個人的考察

長くなったので今回はここまで。
次回は来週です。



参考文献

最後の記事に載せますね。気になる方はリンクからどうぞ。