日々様々なリラクゼーションについてご紹介しております当ブログ。
リラクゼーション(リラックス)はストレス同様、貯めることができまして、毎日の貯金を意識して行っていくことがメンタル安定のポイントになるんですよね。
そこで当ブログでは、これまで様々なリラクゼーション法や効果をご紹介してきましたが、一つ一つを具体的にフォーカスして紹介していることが多く、その概要をつかめるような、つまり基本的な内容を書いた記事がありませんでした。
そこで今回はリラクゼーションの概要・基本編としてまとめておきます。



リラクゼーションの概要・基本を抑えよう…!

今回、リラクゼーションの概要・基本を抑えるのに参考にしていくのが、アメリカ国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)に属する、アメリカ国立補完統合衛生センター(NCCIH:National Center for Complementary and Integrative Health)のリラクゼーションページになります。ここの内容が非常に端的にまとめられていて良い感じなんですよね。では見ていきます。



リラクゼーション法ってなに…?

まずはそもそもリラクゼーション法(リラクセーション法・テクニック)ってなんだ…?って話から。
リラクゼーション法とは、ゆったりした呼吸や血圧の低下、心拍数の低下といった体がリラックスした状態になるための方法のことを言いまして、ストレス状態と真逆の状態になるようにするテクニックです。
んで、リラクゼーション法は様々なやり方があります。
例としてはこんな感じ。

  • 漸進的筋弛緩法:体の各部位に意識を向け、思い切り力を込めて数秒維持、その後、体を緩めることを繰り返していく方法。
  • 自律訓練法:楽な姿勢で目を閉じて、気持ちが落ち着いている・手足が重いな~といった意識や感覚に意識し続けていく方法。
  • ガイドに従ったイメージ・想像:音声などのガイドに従って様々なイメージをしていく方法。例えば平和な場面とか自然の風景とか楽しい出来事とか。
  • バイオフィードバックでのリラクゼーション:心拍数や心拍変動などをスマートウォッチなどのガジェットを使って可視化(見える化)し、身体の反応を客観的に認識したり、管理したりする方法。
  • 自己催眠・催眠療法:自己催眠プログラムに則って、自分自身に暗示をかけてリラックス状態に入れるようにする…って聞くと如何にもヤバそうな雰囲気満載だけど、催眠療法は歴史があり効果が認めれている。
  • 呼吸法:意識してリズムを変えて呼吸を行うこと。代表的な物は深呼吸や腹式呼吸だが正式なやり方があり、覚えたり慣れるまでが結構難しい。
  • マッサージ:手技療法・徒手療法・徒手理学療法などとも言われる。理学療法士に素手でマッサージを行ってもらうのが一般的。特に痛みに効きそう
  • 瞑想:ひたすら呼吸や体などに意識を集中し続ける方法。こちらもヤバそうな雰囲気があるがリラックス効果はある。
  • ヨガ:決まった格好で呼吸に意識を集中するハタ・ヨーガが代表的な方法。但し、ヨガはゆったりとした動きのものからエクササイズ的な有酸素運動バリバリのものまで幅広くあるので統一した効果が出づらいのが玉にキズ。
  • 太極拳:ゆったりとした動きで様々なポーズをしていく方法。こちらも研究で良い結果が出ていたりする。
  • 気功:ゆっくりとした呼吸で身体に意識を集中する方法。

上記を見て分かる通り、共通している部分が結構ありまして例えば、呼吸や姿勢、今に集中する(マインドフルネスを意識する)ってところですね。また認知行動療法がやはり関わってくる部分が多いです。



リラクゼーション法の効果ってなに…?

次にリラクゼーション法の効果にはどのようなものがあるのか見ていきます。

  • 陣痛や出産時に痛みに対しては微妙:2018年のレビュー論文によると、5件の研究(総サンプル数1,248人)で効果アリ…!とでた。但し、研究の質が低い物ばかりで正直よく分からん感じ。また2019年のレビュー論文では、出産時の痛みに対して鎮痛剤又はリラクゼーション法のどちらかを試してもらったが、8件の研究(総サンプル数99人)結果も微妙な感じ。一部の女性からはリラクゼーション法は効果が低かったなんて声も。
  • 未成年や青少年といった10代の子どもに対しては微妙:様々な研究で痛みや不安感、うつ病、頭痛に効果アリ…!って話がある。んがしかし、各研究の質が低く、まだはっきり効果があるのか分からん感じ。
  • 高血圧にはサブ的に使う程度の効果はありそう:2019年のレビュー論文によると、17件の研究(総サンプル数1,165人)を対象に呼吸法を練習・実践してもらったら、血圧が低下した…!とのこと。但し、長期の効果が不明だったりバイアスリスクが高かったり、本当に脳卒中や心臓病予防に効くのかまではよく分からん感じ。また2018年のレビュー論文では、リラクゼーション法とバイオフィードバックが血圧低下に良いぞ…!って結果が出たもののそこで使われた29件の研究の質は低かった。やはり高血圧は医療が基本、サブ的に使うには効果があるかもって感じ。
  • ストレス・不安感にはかなり効果がありそう:2017年のレビュー論文によると、呼吸法と不安について調べている。24件の研究(総サンプル数484人)では呼吸法で心拍変動が変わりそれをスマートウォッチなどのガジェットを使って可視化(見える化)したが、結果、ストレスや不安が減ったという人が多かった…!また2019年のレビュー論文では3件の研究(総サンプル数880人)を対象に腹式呼吸がストレス解消に役立つ可能性アリ…!という結果も出ている。メンタルの自己評価やコルチゾールの低下、血圧低下といった測定結果も出ている。
  • 脳卒中後の不安感には微妙:脳卒中患者さんの約20%は不安感を感じるそうだが、2017年のレビュー論文によると、不安症と診断された脳卒中患者さん21人を対象とした1件の研究結果が載っていた。リラクゼーション法を週5日で1ヶ月試してもらったが、3ヶ月後、参加者の不安が軽減されていた。但し、小規模実験が1件のみのためこれからの研究に期待。
  • 手術や歯医者への不安にも効きそう:不安により痛みが増すのは有名な話。手術前の不安が高いのは当たり前ですし、虫歯治療が嫌な人も多いでしょう。2017年のRCTによると、側弯症の手術前の青少年159人を対象に自然音を聞いてもらう、リラクゼーション法を試す、静かな部屋で待つ(対照群)の3グループにランダムに分かれてもらったそうな。すると自然音やリラクゼーション法を試したグループの人たちは手術前の不安感が減ったとのこと。また2019年の研究では歯医者の不安感がある68人を対象に週1回、4週間にわたって漸進的筋弛緩法+口の健康教育又は口の健康教育のみのどちらかを行ってもらったそう。結果、漸進的筋弛緩法を行った人たちは、4週間後3ヶ月後に不安感とうつ症状が軽減されていたらしい。更に2013年のレビュー論文でも歯医者の不安にリラクゼーション方が効くぞ…!と12件の研究(総サンプル数679人)で出ていた。因みに認知行動療法+リラクゼーション方がかなり良さげとのこと。但し、小規模研究が多いので決め手に欠ける感じ。
  • 不安障害(全般性不安障害社交不安障害パニック障害)にはかなり効果がありそう:2018年のレビュー論文によると、不安障害を持つ856人を対象とした16件の研究をチェックしてみた。結果、リラクゼーション法が不安感、うつ症状、恐怖、心配といったネガティブな感情の軽減につながったとのこと。また不安感には認知行動療法よりもリラクゼーション法の方が効果があったらしい。一方で2018年のレビュー論文では50件の研究(総サンプル数2,801人)により心的外傷後ストレス障害(PTSD)強迫性障害(OCD)にはリラクゼーション法は認知行動療法よりも効果が低かったそう。また全般性不安障害や社交不安障害、パニック障害、限局性恐怖症(特異的恐怖症)といった不安障害への改善にリラクゼーション法と認知行動療法の効果の差はなかった。しかしバイアスリスクの高い研究が多い、小規模研究があるなどの問題もあった。これらを踏まえると、認知行動療法より優れているかは不明だが不安障害に効果があるのは間違いなさそうな感じ。
  • 痛み・慢性疼痛には効きそう:リラクゼーション法は手術後の痛みや頭痛、腰痛、関節炎の痛みなどに効果がありそうな感じ。但し、研究の中にはエビデンスレベルが低い物もある。また線維筋痛症の痛みにリラクゼーション方が効くのかははっきりとは分かっていない。更に詳しくは以下参照。
  • 手術後の痛みには効きそう:2016年のレビュー論文によると、全身麻酔の手術後の痛みについて13件の研究が分析をしている。結果リラクゼーション法は痛みの軽減に効果があった。また2019年の2つのレビュー論文でも、腹部手術後の痛み、膝関節手術後の痛みについてチェックした(少しだけ手術前にもチェックしている)が、質の高い研究がそもそもなくてリラクゼーション法の効果についてよく分からんかった。
  • 頭痛には効きそう:2018年のレビュー論文に載っている5件の研究では自律訓練法が頭痛の軽減に役立っていた。しかし、研究の数自体が少なくまだまだ今後の研究に期待といったところ。また別の2018年のレビュー論文では5件の研究で自己催眠の効果を試している。結果、片頭痛や慢性頭痛(慢性疼痛)の痛みが軽減したそう。しかし、質の高い研究が少なかった。更に2016年のレビュー論文でも、片頭痛と緊張したら頭痛になる人を対象にした19件の研究(総サンプル数2,600人)を調べていた。リラクゼーション法、認知行動療法、バイオフィードバックを個別に又は併用していたが、15件の研究で頭痛の症状が改善していた。但し効果の幅が広く、日々の頭痛が20~67%の範囲で減少していたらしい。一応、認知行動療法+リラクゼーション方がベスト…!って感じだったが、全体的にみて研究の質が高い物が少ないのが残念。
  • 腰痛には効きそう:米国内科学会は慢性腰痛(12週間以上続く腰痛)の初期治療に非薬物療法をオススメしている。2017年のレビュー論文によると、漸進的筋弛緩法で腰痛が中程度に改善、バイオフィードバックで腰痛が中程度に改善されたとのこと。但しエビデンスレベルは低め。また2018年の研究では慢性腰痛を持つ58人を対象に筋肉を徐々に緩めるリラクゼーション法を実施したそうな。すると痛みや不安、うつ、生活の質、睡眠が改善されたらしい。
  • 関節炎には効きそう:2015年のレビュー論文によると、7件の研究(総サンプル数306人)で関節炎やリウマチ性疾患の成人患者にリラクゼーション方が効果的だった。ここで使われた方法はガイド付きの画像+音声に沿って行うリラクゼーションで1日1~2回を16週間に亘って行ったとのこと。また4件の研究(総サンプル数180人)では特に痛みに注目していた。
  • 線維筋痛症への効果はあるっぽい:2020年の研究では慢性筋骨格痛の非薬物治療について評価しているが、漸進的筋弛緩法の研究が少なく、詳しい効果は不明とのこと。また2015年のレビュー論文によると、2件の研究(総サンプル数95人)でバイオフィードバックの効果を、3件の研究(総サンプル数106人)でリラクゼーション法の効果をそれぞれチェックしているが、バイオフィードバックについては研究の質が非常に低く、リラクゼーション法も研究の質が低かったため線維筋痛症の痛みに効くかどうかは分からんかったそう。但し、2019年のレビュー論文では6件の研究(総サンプル数312人)で心拍変動のバイオフィードバックが痛みの軽減に効果的だとしていた。更に2015年のレビュー論文によると、ガイド付きイメージングを1回行ったら線維筋痛症の痛みが軽減したって話もある。しかし長期研究の結果と矛盾していた。それとこのレビューでは6件の研究(総サンプル数357人)を対象に漸進的筋弛緩法や自律訓練法などの効果もチェックしているが決定打はなかったらしい。
  • がん治療(治療中・治療後)には乳がんのみ効きそう:乳がんについては治療中・治療後ともに2つの専門団体(米国統合腫瘍学会・米国臨床腫瘍学会)からおすすめされている。それによれば気分やうつ病の改善にリラクゼーション法が使えるとのこと。またストレスや不安を軽減し、吐き気や嘔吐にも役立つ可能性が示唆されている。その他のガンは研究が進んでおらず、矛盾した結果も出ている。
  • 睡眠問題には効きそう:2016年の米国内科学会の診療ガイドラインによると、慢性的な不眠症の初期治療として認知行動療法の使用を強くおすすめしている。因みにリラクゼーション法は認知行動療法の一つに含まれている場合が多い。しかし、リラクゼーション法だけでは睡眠に特に効果的とは言えない。またリラクゼーション法がどれぐらい効果的なのかも謎。更に2018年のレビュー論文では、睡眠問題の改善に心理的介入が使えるのか27件の研究を見直ししてみたそうな。具体的には睡眠に問題のない人や睡眠障害を持っている人などを対象に大学生2,776人を調査したそうで、約22%の方がリラクゼーション法、マインドフルネス、催眠療法を使ったらしい。結果、睡眠の質や睡眠問題に多少は効果があったそう。特にメンタルへの影響が良い感じだったそうで、研修者たちは、リラクゼーション・マインドフルネス・催眠療法にプラスして認知行動療法を併用することをおすすめしていた。他にも2015年のレビュー論文によると、7件の研究(総サンプル数284人)を見直した結果、自律訓練法やイメージングで入眠潜時(入眠に入るまでの時間)が短くなるのに役立ったそうな。但し、プラセボと効果が同等だったり、サンプルサイズが少なかったり、研究の質が低かったりしたため、はっきり効果があるとは言えず。
  • その他の症状については今後の研究に期待:過敏性腸症候群(IBS)、閉経、顎関節症についての研究はいずれも数が少なく小規模研究のみの為、謎。

ある程度効果として期待できそうなのは、ストレス・不安・痛み・睡眠って感じですな。



リラクゼーション法の副作用ってなに…?

リラクゼーション法は健康な人にとって安全であると考えられている一方、副作用についてちゃんと調べた研究はほとんどなかったりします。また、ケースによっては不安感の増加、侵入思考自動思考の増加、思考のコントロールを失うことへの恐怖を経験する方もいます。更に稀ですが、特定のリラクゼーション法がてんかんや特定の精神疾患を持つ方、虐待やトラウマ歴のある方の症状を引き起こす、悪化させるといったこともあるみたい。
とはいえ、例外の話をしてもきりがないのも事実。基本的にリラクゼーション法はデメリットはなく、万が一自分に合わないリラクゼーション法だったとしてもすぐに中断やめればOKです。また自分なりの体調安定法(コーピングレパートリー)から削除や絶対にやらない事リストに加えるのもよろしいかと思います。



個人的考察

まずはこの記事をご覧になって大枠をつかんでいただき、気になった部分については、各リンク先の記事なんかをチェックしてもらえたらと思います。
それと言わずもがなですが、症状が重い場合や長期にわたる症状がある場合は、主治医に相談の上行いましょう。



参考文献