当ブログでは運動ってやっぱメリットが多いよね~って話を日々書いております。
詳しくは、


あたりをご覧いただきたいのですが、NEATを意識したり座りっぱなしをやめたりするだけでも全然違うんですよね。しかし、これまでご紹介してきた研究はいずれも障がいのない方を対象にしたものばかりでして、障がいのある方の場合でも同様の効果が出るのかちゃんとご紹介してこなかったんですよ。
そこで今回は、知的障がいの方やダウン症の方の運動の効果を調べた研究をご紹介していこうかと思います。



有酸素運動で不安感が有意に改善した…!

2009年のネゲヴ・ベン=グリオン大学RCTによると、軽度の知的障がいの方を対象に運動によって、不安感や生活の質(QOL)が改善するのか調べてみたそうです。
この研究は、軽度の知的障がい+不安症と診断を受けている24名が参加したものでして、参加者を以下の3グループにランダムに振り分けたそうな。

  1. 有酸素運動グループ:8名
  2. 余暇活動グループ:8名
  3. コントロールグループ:8名

有酸素運動グループは6ヶ月間(26週間)に亘って週3日エアロバイクを漕ぐかトレッドミルで走ってもらったとのこと。また、余暇活動グループはゲームや一般的な運動など様々なアクティビティを行ったもらったみたい。
んで6ヶ月間最後まで完走できたのは24名中19名でして、更に不安評価スケールに同意したのは16名しかいなかったらしい。サンプル数がかなり少なくなっちゃった感じですが、まぁ、仕方ないでしょう。
結果、

  • 有酸素運動グループと余暇活動グループは不安症が大幅に改善した…!

そうです。
やっぱ運動は良さそうですね~。



有酸素運動と筋トレの効果はダウン症の有無に関係なく、BMIの改善とVO2maxの改善に役立つ…!

2011年のリスボン工科大学の研究によると、ダウン症のある成人とない成人に有酸素運動と筋トレを行ってもらい、効果に違いが出るのか調べてみたそうです。
この研究は、ダウン症のある成人(障がい者)13人(平均年齢36.5±5.5歳)とダウン症のない成人(健常者)12人(平均年齢38.7±8.3歳)を対象に行われたもので、全員に以下の運動メニューを行ってもらったそうな。

  • 有酸素運動:週3日のペースでVO2max(最大酸素摂取量)の65%~85%で30分間行ってもらった。
  • 筋トレ:週2日のペースで9種類のサーキットメニューを各12回ずつ、2周行ってもらった。

期間は12週間でして、最後に代謝や心拍数、運動パフォーマンスをテストしてどれぐらい変化が出たのか見比べてみたそうです。
結果、

  • ダウン症の有無に関係なく、BMIが同程度改善した…!
  • VO2maxは、ダウン症のない参加者よりもダウン症のある参加者の方が低かった。但し、有酸素運動+筋トレを行うことによりダウン症のあるなしに関わらず、VO2maxはアップしていた…!
  • 有酸素運動+筋トレの効果はダウン症の有無に関係なく同程度だった…!

とのこと。
有酸素運動と筋トレの効果はダウン症の有無に関係なく、BMIの改善とVO2maxの改善に役立つみたいですね。
ということで、障がいの有無に関係なく運動をすればそのメリットは受けられそうな感じ。しかも有酸素運動でも無酸素運動でも効果は期待できそうなのは誠に嬉しいことですな。



知的障がい児・者への現実的に実現可能な運動プログラムは週2日1日50分間の有酸素運動+筋トレ…!

2011年のゲント大学の研究によると、知的障がい児・者への現実的に実現可能な運動プログラムを調べてみたそうです。
そもそも知的障がいを持つ児童や青少年、成人の方は平均よりも低い運動機能を持っていることが多いとされております。
その主な理由は、


など知的障がい特有の問題が関係しているんだとか。
その結果、筋力低下や心肺機能の低下、筋肉量の低下や脂肪量の増加といったことが起こり、また代謝が低下、更に肥満や糖尿病、心血管疾患リスクの増加ってな具合なルートを進むことが増えてしまうらしい。最後は、これら全ての条件が重なり、体力が更に低下するという悪循環に陥ってしまうそうな。
そこで運動が大事…!となるんですが、どのような運動をどれぐらいすればいいのか先行研究では、まだよく分かっていなかったんですよね。それでも基準になりそうな研究はありまして、例えば、


を見てみますと、どうやら有酸素運動を少なくとも週3日、1日30分を10週間続けると体力が大幅にアップしたみたい。

しかし2009年のアメリカスポーツ医学会(ACSM)の過体重・肥満の成人向けガイドラインを見てみると、少なくとも週150分の中~高強度の有酸素運動が必要だとしているんですよね。因みにこれはこの間ポケモンGOの記事で紹介したアメリカ合衆国保健福祉省(HHS)がアメリカ人向けに作った2008年の運動ガイドライン2010年のWHOの身体活動ガイドライン、以前に紹介した2011年のカナダ版身体活動ガイドラインでも同じラインを引いております。
一方で1998年のアメリカスポーツ医学会(ACSM)の健康な成人向けガイドラインでは、心肺機能や体組成、筋力なんかの増加と維持には、週3~5日、1日20~60分の中~高強度の有酸素運動が必要だということなんですよね。
でもこれらのガイドラインはいずれも障がいのない方を対象とした研究を基に作成しているので、知的障がいの方にはハードルが高い過ぎるんですよ。特に難しいのが週3日ってところでこの頻度をずーっと続けるモチベが続かないんですな。
なんで知的障がいの過体重・肥満の青少年を対象にした専用トレーニングプログラムの作成と必要な頻度をチェックする為、今回実験を行ってみたそうです。

まず研究者たちは、ベルギーにある2つの支援学校の生徒70名に協力をお願いしたそうな。その生徒たちの情報はこんな感じ。

  • 年齢の範囲:14~22歳(青少年)
  • IQの範囲:45~70
  • 性別:男女
  • 教育:同じ教育形態で勉強している
  • BMIの範囲:23~48(過体重・肥満
  • 身体障がいの程度:トレーニングプログラムや測定に支障をきたす可能性のある重度の身体障がいを持つ方はいなかった
  • 他の障がい:広汎性発達障害や自閉症、てんかん、注意欠陥多動性障害を持っている方もいた
  • 理解度:トレーニング中やテスト中の理学療法士の指示を理解することができた

実験は参加者70名を以下の3グループに分けたそうです。

  1. 週3日運動グループ:15名
  2. 週2日運動グループ:15名
  3. コントロールグループ:40名

続いて、週3日運動グループと週2日運動グループの運動プログラムを見てみましょう。


週3日運動グループ

週3日運動グループの概要は以下な感じ。

  • 体育の授業の代わりに行った。
  • 週3日、1日50分間を10週間行った。
  • 有酸素運動+筋トレを行った。

運動プログラムの流れは以下な感じ。

  • ウォームアップ(ストレッチとゆる~く有酸素運動):5分間
  • エアロバイクを漕ぐ:10分間
  • 腕の筋トレ(上腕二頭筋と上腕三頭筋):10分間
  • ステッピング(ステップの昇降):10分間
  • 脚の筋トレ(大腿四頭筋とハムストリングス)10分間
  • クールダウン(ストレッチとゆる~く有酸素運動):5分間

最後に強度についても見ておきます。

  • 有酸素運動(エアロバイク・ステッピング)
  • 第1週~第3週:最大心拍数の60%
  • 第4週~第6週:最大心拍数の70%
  • 第7週~第10週:最大心拍数の75%

  • 筋トレ(腕・脚)
  • 第1週~第3週:1RMの60%で、15回を2セット
  • 第3週~第6週:1RMの70%で、12回を2セット
  • 第7週~第10週:1RMの80%で、8〜10回を3セット
  • セット間の休憩は60秒

有酸素運動と筋トレを交互に行いつつ全身筋トレっていうオーソドックスな感じですな。


週2日運動グループ

週2日運動グループの概要は以下な感じ。

  • 体育の授業の代わりに行った。
  • 週2日、1日50分間を15週間行った。
  • 有酸素運動+筋トレを行った。

運動プログラムの流れは以下な感じ。

  • ウォームアップ(ストレッチとゆる~く有酸素運動):5分間
  • エアロバイクを漕ぐ:10分間
  • 腕の筋トレ(上腕二頭筋と上腕三頭筋):10分間
  • ステッピング(ステップの昇降):10分間
  • 脚の筋トレ(大腿四頭筋とハムストリングス)10分間
  • クールダウン(ストレッチとゆる~く有酸素運動):5分間

最後に強度についても見ておきます。

  • 有酸素運動(エアロバイク・ステッピング)
  • 第1週~第5週:最大心拍数の60%
  • 第6週~第10週:最大心拍数の70%
  • 第11週~第15週:最大心拍数の75%

  • 筋トレ(腕・脚)
  • 第1週~第5週:1RMの60%で、15回を2セット
  • 第6週~第10週:1RMの70%で、12回を2セット
  • 第11週~第15週:1RMの80%で、8〜10回を3セット
  • セット間の休憩は60秒

つまり週3日運動グループと運動プログラムの流れは同じで、運動の合計回数も同じ30回になるようにしたって感じですね。また強度についても可能な限り同じになるようにしたと…。


因みにコントロールグループの参加者は、普通に体育の授業を受けてもらったそうで、また毎日の全ての学校活動にも参加したそうな。
併せて、参加者は運動プログラムの最初と最後に、体組成や体力(心肺機能や筋力)、HDL・LDL・総コレステロール盲検化された人によって測定してもらったみたい。
最後に集まったデータを統計処理した結果、以下のようになったそうです。

  • 週3日運動グループはコントロールグループと比較すると、体重が大幅に減少…!BMIが大幅に低下…!ウエストが大幅に減少…!脂肪量(総コレステロールが大幅に減少…!LDLが大幅に減少…!HDLが大幅に増加…!)が大幅に変化…!筋肉量が大幅に増加…!
  • 週3日運動グループと週2日運動グループを比較すると、体重、BMI、ウエスト、脂肪量に同程度の効果が見られ、統計的な有意差はなかった…!
  • 週3日運動グループは脚の筋力のみ週2日グループよりアップしていた…!

つまり、週3日運動グループ≒週2日運動グループ>普通の体育の授業って感じですな。因みに参加者全員が怪我やきつすぎ無理的な訴えを起こすこともなく運動プログラムを終えられたということで、このメニューを週2日なら続けやすそうで大変よろしいですね。

知的障がい児・者への現実的に実現可能な運動プログラムとしてかなり使えそうですね。週2日、1日50分間、有酸素運動+筋トレを行ってみてはどうでしょうか…?



成人の知的障がいの方も週2日1日70分間の有酸素運動+筋トレで良さそう…!

2011年のゲント大学の研究によると、成人の知的障がいの方を対象に有酸素運動+筋トレの効果を調べてみたそうです。
この研究はベルギーにある2か所の知的障害センターに協力をお願いしたものでして、参加者は平均IQ56の知的障がいの成人45名とのこと。因みに平均年齢は42歳、平均BMIは24だったそうな。
この45名を以下の3グループのいずれかに振り分けたみたい(年齢や性別、IQなんかはグループ間で同じぐらいになるよう調整済み)

  1. 有酸素運動+筋トレグループ:15名
  2. 有酸素運動のみグループ:15名
  3. 運動なし(対照群)グループ:15名

有酸素運動+筋トレグループと有酸素運動のみグループに割り振られた人は、週2日、1日70分間で運動をしたとのこと。実験期間は20週間でして、代謝や体力に及ぼす影響を測定して違いが出るかチェックしたそうです。
まず有酸素運動+筋トレグループ・有酸素運動のみグループと運動なしグループを比べた結果はこんな感じ。

  • 有酸素運動+筋トレグループは運動なしグループに比べ、コレステロールが改善した…!心肺機能がアップした…!筋力がアップした…!安静時の最高血圧が改善した…!
  • 有酸素運動のみグループは運動なしグループに比べ、心肺機能がアップした…!安静時の最高血圧が改善した…!

運動していないよりも運動している方が良い結果が出たのはもちろん、やはり筋トレしている分、有酸素運動+筋トレグループの方が良い結果が出ていますな。
続いて有酸素運動+筋トレグループと有酸素運動のみグループを比べた結果を見てみましょう。
有酸素運動+筋トレグループは有酸素運動のみグループに比べて、

  • コレステロール(-18vs-3mg/dl)が改善していた…!
  • 上半身の1RM(+6vs+1kg)がアップしていた…!
  • 下半身の1RM(+25vs+8kg)がアップしていた…!
  • 腹筋の1RM(+15vs+1kg)がアップしていた…!
  • 握力の1RM(+9vs+2kg)がアップしていた…!
  • 筋肉の疲れにくさ(+11vs+5秒)がアップしていた…!
  • 立ち上がりテスト(+5vs+2.3秒)の成績が良かった…!
  • 最高血圧(-15vs-10mmHg)が改善していた…!

とのこと。
やっぱ、有酸素運動も無酸素運動も両方取り入れた方が良さそうですね。

上記でご紹介した研究は、週2日1日50分間の有酸素運動+筋トレでOKって感じで、今回ご紹介した研究は、週2日1日70分間の有酸素運動+筋トレでOKってことなんで、知的障がい児・者など年齢に関わらず、週2日運動すればOKっぽいですね。時間については多少違いはありますが1日1時間ほどで良いんじゃないかと。
こう考えると、別に知的障がいがあろうがなかろうが関係なく、運動はこれぐらいのラインが良さそう…!って結論に落ち着きそうですね。まぁ、一番は続くことですし。



運動の不安軽減効果は短期間で出る…!時間の経過とともに効果はアップする…!

2012年のパドヴァ大学RCTによると、知的障がいの方を対象に運動で不安感が減るのか調べてみたそうです。
そもそも先行研究により知的障がいを持つ方は、高レベルの不安を抱えていることがよくあると報告されております。一方で運動は不安感の軽減に役立つ…!という研究結果もございます
んがしかし、知的障がいの方々に対して運動がもたらす不安軽減効果を調べた研究はこの時点で1件(上記で紹介した2009年のネゲヴ・ベン=グリオン大学のRCT)しかなかったんですよね。しかもこの研究の実験期間は6ヶ月間だったので、ちょっと効果が出るまで時間がかかる可能性もございました。
そこで研究者たちは、知的障がい者が運動した場合の不安軽減効果が本当か確かめつつ、更に短い期間でも効果が出るのかも併せてチェックしてみたそうです。
ということでまず研究者たちは、イタリア北東部にある知的障がい者の施設に通う成人に協力を依頼したそうな。すると男性16名、女性11名の計27名が参加をしてくれることになったらしい。
この27名は全員、成人の知的障がいの方々でIQは軽度から中度ぐらいだったそうです。また、自閉症スペクトラム障害(ASD)や不安障害や抑うつ障害の診断を受けている方、運動をすることが禁止されている方は含まれていなかったみたい。
んで実験は参加者全員を以下の2グループにランダムに振り分けたそうな。

  1. 運動グループ
  2. コントロールグループ

期間は12週間でして、併せて主観的な不安感などもスケールでチェックしたそうです。
結果、

  • 運動グループの人たちは、コントロールグループの人たちよりも、不安感のスコアが時間の経過とともに大幅に減少していた…!

とのこと。
つまり、先行研究の結果同様、やはり知的障がいの方も運動で不安感が減少、更に短期間で効果は出るみたいで、続ければ続けるほど効果がより大きく出たみたいです。
知的障がいをお持ちの方で不安になりがちな方がいましたら、ぜひ運動を進めてみてほしいな~と思いました。



成人の知的障がいの方を対象に有酸素運動+筋トレ+バランストレーニングの効果を調べてみた…!

2014年のラモン・リュイ大学の研究によると、成人の知的障がいの方を対象に有酸素運動+筋トレ+バランストレーニングの効果を調べてみたそうです。
この研究は、スペインの障がい者施設に所属する軽度から中度の知的障がい者92人(男性51人、女性41人、年齢範囲20~60歳)が参加したもので、運動禁止の方や重度の知的障害の方、運動に影響のある薬物治療を行っている方などは不参加としたそうな。続いて、以下の2グループに参加者を振り分けて行ったとのこと。

  1. 運動グループ(37人):有酸素運動、筋トレ、バランストレーニングを週3日1日1時間で行った。
  2. コントロールグループ(29人):特に何もしなかった。

実験期間は14週間でして、運動前後に心肺機能や筋力、バランス感覚、柔軟性なんかをチェックしたらしい。
最後に集まったデータを比べてみた結果、運動グループは、

  • 心肺機能がアップ…!(26.8→29.3ml kg(-1) min(-1))
  • 握力がアップ…!(19.2→21.9kg)
  • 脚の強さがアップ…!
  • バランス感覚がアップ…!
  • 体重が減少…!(70.1→68.1kg)
  • BMIが減少…!(27.4→26.6kg m(-2))

したとのこと。なかなか良い感じですねー。
因みにコントロールグループは当然ですが何も変化がなかったみたいです。
この有酸素運動+筋トレ+バランストレーニングを組み合わせた運動プログラムを行った知的障がいの参加者37人のうち、21人が運動プログラムを90%以上参加したそうで、また、参加者全員だと少なくとも75%以上参加したんだとか。
つまり運動の最大の難所である続けるということもクリアできそうな感じなんですよね。確かに週3日1日1時間ってのはやりやすいのかもしれませんな。



知的障がいの有無に関わらず運動はうつ症状・幸福度にプラスの影響を与えそう…!

2014年のパドヴァ大学の研究によると、知的障がいの方のうつ症状が運動によって改善するのか調べてみたそうです。
そもそも知的障がいのある方ってのは結構、うつ病の症状があることが多かったり致します。一方で様々な研究により運動はメンタルに良い影響がある事も分かっております
んがしかし、そのほとんどの研究は知的障がいのない方を対象に実験したものばかりであり、知的障がいのある方のうつ症状に効くのかを調べた研究は全然ないんですよね。
そこで今回研究者はRCTでチェックしてみたんだとか。
具体的には、知的障がいのある成人27人(男性16人、女性11人)を以下の2グループにランダムに振り分けたとのこと。

  1. 運動グループ:14人
  2. コントロールグループ:13人

実験期間は12週間でして、スタート時、実験開始6週間後、終了時に自己評価のうつ病スケールを用いて、うつ症状の度合いを見てみたらしい。
結果、

  • 運動グループはコントロールグループに比べ、うつ病スコアは有意に減少していた…!

とのこと。
やはり運動によって主観的なうつ症状が改善していたみたいですねー。
また研究者曰く、

  • この結果は運動によって知的障がいのある方の幸福度がアップするという説を裏付けている

としています。
知的障がいをお持ちの方でうつ症状にお悩みの方は運動をしてみてはどうでしょうか…?



知的障がいの方が運動すると体力や自信(自己効力感)、身体活動レベルがアップするのか…?

2018年のソウル大学校の研究によると、知的障がいのある成人が運動することによって体力や自信(自己効力感)、身体活動レベルが変化するのか調べてみたそうです。
この研究は韓国にある障がい者施設から募集された成人23名が参加したものでして、IQが45~70の軽度~中度の方が対象となったそうな。まず実験開始前に参加者全員の体力や自己効力感をテストしてスタート時のスコアを確認、続いて以下の2グループに振り分けたんだとか。

  1. 運動グループ:12名が参加したがドロップアウトが2名おり最終的なサンプル数は10名となった。10名のうち男性が7名、女性が3名で、年齢は30.60±11.00歳とのこと。またBMIは23.02±5.46だったそう。
  2. コントロールグループ:11名が参加したがドロップアウトが1名おり最終的なサンプル数は10名となった。10名のうち男性が3名、女性が7名で、年齢は31.80±11.32歳とのこと。またBMIは24.97±5.91だったそう。

ではここで運動グループのエクササイズ内容の詳細について見ておきましょうか。
今回の研究の運動プログラムは参加者の特性を考慮してデザインされた物なんだそうで、バンド筋トレ+リズミカルな有酸素運動って構成だったらしい。んで、運動プログラムは週2日1回90分間とのことで、12週間行ってもらったんだとか。
気になる流れはこんな感じ。

  1. ウォームアップ:5分
  2. リズミカルな有酸素運動:30分
  3. 小休憩:10分
  4. バンド筋トレ:30分
  5. クールダウン:5分

では更に運動メニューの詳細を見ていきましょう。
まずはリズミカルな有酸素運動から。

  • BGMを使用したリズミカルな有酸素運動で要はエアロビ。
  • BGMは童謡からK-POPまで参加者の好みや運動テンポを考慮して選定。
  • 強度は1~4週目がRPE9~11(主観的な辛さがとても軽め~軽め)、4~8週目がRPE11~13(主観的な辛さが軽め~ややきつめ)、8~12週目がRPE12~14(主観的な辛さがややきつめ)

次にバンド筋トレはこんな感じ。


因みにコントロールグループは運動プログラムには参加せず普通に過ごしてもらったそうです。
12週間後の運動プログラム終了後に、再度参加者全員の体力や自己効力感をテストして実験終了となりました。但し、運動グループ2名とコントロールグループ4名の身体活動レベルを測定するための機器の装着時間の妥当性を満たしていないため最終分析から除外されたとのことです。
結局、サンプル数は運動グループ8名、コントロールグループ6名とかなり少なくなってしまったのですが、そこから出た結果は、運動グループの方がコントロールグループよりも、

  • 筋持久力が有意にアップしていた…!
  • 筋肉量が有意ではないがアップしていた(コントロールグループは逆にダウンしていた)
  • 自己効力感が有意にアップしていた…!
  • 身体活動レベルが大幅に改善していた…!

とのこと。
因みに自己効力感については、自分自身で感じる身体能力アップについて有意差があったものの、身体的自己表現は変わらなかったってことなんで、おそらく、

  1. 運動する
  2. 身体機能がアップする
  3. 身体機能がアップしたことを自覚する
  4. そこに自己効力感を持てるようになる…!

って流れだと思われます。
運動で自信が持てるようになる仕組みは実際に見た目が変わるからってのが大きいですが、身体機能アップを自覚するのもポイントみたいですねー。

この研究で個人的に思ったことが、

  • 音楽を聴いてエアロビってのは、楽しく有酸素運動をできるから知的障がいの方の運動におすすめかもな~
  • 運動で自信(自己効力感)が持てるようになるのは良いよな~
  • この自信がつくのが不安感の減少にも役立っているのかもな~

って感じです。
やっぱり定期的な運動はメリットが多そうですねー。



週3日1日30分の有酸素運動+リバウンドセラピー(トランポリン)で下半身の持久力とバランス感覚が大幅にアップする…!

2019年のグダニスク体育大学RCTによると、知的障がい児の方を対象に有酸素運動+リバウンドセラピーの効果を調べてみたそうです。
ということでまずはリバウンドセラピーの説明から。
日本ではあまり聞きなれない言葉なんですが、リバウンドセラピー(Rebound Therapy)ってのは、知的障がいや自閉スペクトラム症、身体障がいの方が楽しくリハビリできるよう考案された運動法のことで、トランポリンを使用して行うものとなります。理学療法士の方がサポートしつつトランポリンの上で飛び跳ねることによって、

  • 身体活動の促進
  • バランス感覚アップ
  • 体の認識力アップ
  • 筋緊張の増減のサポート
  • リラクゼーション効果
  • 身体感覚力アップ
  • 運動能力のアップ
  • コミュニケーションスキルの向上

が得られるということです。確かにトランポリンで跳ねていたら楽しく運動できそうですよね。因みに実際にリバウンドセラピーを行っている様子はこんな感じとなっております。




いや~やっぱ楽しそうですな。
知的障がいの方は運動をする機会がどうしても少なくなりがちですし、続けるのも難しいんで良い感じですねー。
では具体的な実験内容について見ていきましょう。
今回この研究に参加したのは13~17歳の知的障がい児の女の子24人でして、IQは50~70(軽度から中度)の間だったそうな。この参加者たちを以下の3グループにランダムに振り分けたらしい(1グループ8人)

  1. 有酸素運動10分間+リバウンドセラピー20分間を行うグループ
  2. 有酸素運動20分間+リバウンドセラピー10分間を行うグループ
  3. 何もしないコントロールグループ

実験期間は8週間で、その間、運動をしたグループは運動と運動の間を2日間(48時間)以上空けつつ週3日で行ったみたい。
因みに具体的な運動メニューは以下な感じだったそうな。

  1. ウォーミングアップ:10~15分間、ジョギングやストレッチなんかを行う。
  2. 1グループは有酸素運動10分間とリバウンドセラピー20分間の30分間運動を行う。
  3. 2グループは有酸素運動20分間とリバウンドセラピー10分間の30分間運動を行う。
  4. リバウンドセラピーでは、1分間飛び跳ねる→1分間休むを繰り返した。たまに5分間の休憩も挟みつつ、挟んだ後の最初は2分間飛び跳ねてもらう。

併せて、実験開始終了の前後に体力や運動機能テストを行ったらしい。
最後に集まったデータを照らし合わせてみた結果、

  • 運動した1グループ・2グループはコントロールグループよりもテストの結果が良かった…!

とのこと。
まずは効果があったみたいですねー。
次に1グループ・2グループのパフォーマンスの変化を見てみましょう。

  • テスト内容:1グループ:2グループ
  • 持久力:620±40.58→747.87±100.02:534.75±119.20→634.25±46.12
  • 下半身の持久力:6.75±3.45→11.25±5.49:5.12±2.23→8.87±3.18
  • 心肺機能:29.72±0.28→30.29±0.43:29.7±0.58→29.95±0.64
  • 静的バランス:3.25±1.48→6.75±3.19:3.5±1.60→5.37±2.5
  • 動的バランス:1.62±0.91→4±1.69:1.87±0.83→3.12±0.8
  • 動作スピード:13.87±2.30→10±1.17:16.15±4.23→11.6±1.8

一応補足として、

  • 静的バランス:動かない状態をキープする時のバランス感覚。例えばその場に同じ姿勢で立っている、座っているなど
  • 動的バランス:動いている状態のバランス感覚。歩いたり跳ねたりした時、転ばないようにするなど

のようになります。
持久力、特に下半身の持久力とバランス感覚が非常にアップしていますねー。心肺機能に関しては維持って感じだと。
因みに上記結果からも分かる通り、

  • 有酸素運動10分間+リバウンドセラピー20分間と有酸素運動20分間+リバウンドセラピー10分間の間に有意差はなかった

そうです。
この感じだとお好みで選べそうですな。
運動を続けるために楽しさは必須ですが、そこにリバウンドセラピーが使えそうですねー。難しいのは日本でトランポリンを使えるところが少ないことでしょうか。



成人の知的障がいの方にバランス感覚アップ特化運動プログラムを試してみた…!

2020年のAlma Mater EuropaeaRCTによると、成人の知的障がいの方を対象にバランス感覚アップと転倒防止に運動が有効なのか調べてみたそうです。
この研究は、普段運動をしていない軽度~中度の知的障がいを持つ成人150人を対象にしたものでして、以下の3グループにランダムに振り分けて運動をしてもらったんだとか。

  1. バランス感覚アップに特化した運動プログラムグループ:50人
  2. 多要素の健康プログラムグループ:50人
  3. 通常の運動プログラムグループ:50人

実験期間は16週間とのことで、併せてバランス感覚テストも行ってみたらしい。
最後にグループ間で差が出たかデータをチェックしてみたそうで結果、

  • バランス感覚アップに特化した運動プログラムグループは他の2グループに比べ、バランス感覚テストの結果が良くなっていた…!

とのこと。
専用運動プログラムを用いたことで、障がいのある方でもバランス感覚がアップしたんですね~。素晴らしい…。
知的障がいをお持ちの方の中には、平衡感覚が低い方や頻繁に転倒する方がいるんで、そういった方へはバランス感覚アップに特化した運動法が良いのかもしれませんな。それと高齢の知的障がいの方にも有効そうですね。



運動が障がいのある方の不安軽減に役立つのか初めてメタ分析・系統的レビューしてみた…!

2021年のコインブラ大学などの研究によると、障がいのある方が運動をすることによって不安感を軽減できるのかメタ分析・系統的レビューで調べてみたそうです。
そもそも運動がメンタルにプラスの影響を与えるのはほぼ間違いなく、もちろんそれは不安感や不安症状の改善にも効果がございます。んがしかし、それは障がいのない方を対象にした研究の話でして、障がいのある方における効果はまだはっきりしていなかったんですよね。そこで今回、運動は障がいのある方の不安症状を軽減できるかはっきりさせるべく、初のメタ分析・系統的レビューを行うことにしたんだとか。
まず研究者たちは、PubMedやWeb of Science、Scopus、SPORTDiscusといったデータベースを用いて該当する研究を検索してみたそうです。因みに今回の研究では身体障がいの方と知的障がいの方の研究がヒットするようにしたかったみたいで、検索キーワードには、脳性麻痺や運動障害、身体障害、視覚障害、知的障害、精神遅滞、聴覚障害といったものが使われたみたい。その結果、330件の研究がみつかったそうな。
続いて、基準を満たす研究かどうかをチェックしていったそうで、最終的に選ばれた研究は4件だったとのこと。この4件の研究のうち、1件が複数の障がいを持つ方を対象にしており、特に重度の身体障がいの方がメインっぽい感じでした(因みにボッチャの研究)。残り3件の研究は知的障がいの方を対象にしていましたんで、このメタ分析・系統的レビューは主に知的障がいの方の運動による不安軽減効果を調べたといって良いのではないでしょうか…?
次に4件の研究のまとめた情報ですが以下のようになっておりました。

  • 合計サンプル数は124人、そのうち53人がコントロールグループだった。
  • 参加者の年齢層は若者から成人までだった。
  • 運動期間は8~24週間の間だった。
  • 運動頻度は週2~3回の間だった。
  • 1回の運動時間は60~180分間の間だった。

では、これらをメタ分析にかけてみた結果を見てみましょう。

  • 障がいのある方(主に知的障がいのある方)が運動することによる不安軽減効果は1.875だった…!
  • つまり、運動した障がいのある方はそうでない方に比べて、不安感・不安症状が改善する可能性が1.9倍ぐらい高いことを示していた…!

障がいの有無に関わらず、やっぱり運動は不安感に良い効果があるんですね~。しかもそれが何もしない人よりも2倍弱ある…!って言うんだからすごいですな。
但し注意点として、この研究はメタ分析としてかなり小規模でして先に書いた通り4件しか基準を満たした研究がなかったんで、その辺は踏まえておきたいところです。とはいえ、運動の不安軽減効果は障がいのない方の研究でほぼ確立されておりますんで、信じてよろしいのではないのかな~と思います。



知的障がい者を対象にした筋トレの先行研究をまとめてメリットを調べてみた…!更に知的障がい者用の筋トレガイドライン(筋トレメニュー)を作ってみた…!

2021年のコインブラ大学など系統的レビューによると、障がいのある方への筋トレ効果と筋トレメニューについて調べてみたそうです。
そもそも運動、特に筋トレを行うことは人々の健康に様々なメリットをもたらします。しかし、それらの研究は障がいのない方を対象としているものが多く、知的障がいを持つ方々の研究はあんまないんですよね。
そこで研究者たちは以下の2つの疑問についてチェックしてみたんだとか。

  1. 知的障がいを持つ方が筋トレを行うメリットは何か…?
  2. 知的障がいを持つ方が筋トレする場合、最もベーシック且つ効率的な筋トレガイドライン(筋トレメニュー)はどんな感じか…?

ということでまず研究者たちは、該当する先行研究をPubMedやWeb of Science、Scopus、SPORTDiscusを用いて検索したそうな。またその際、2010年より前に発表された研究は除外しておいたらしい。つまり、ここ10年近くの研究をまとめてみたかったみたいですね。
その結果、最初に検索にヒットした研究は全部で169件だったとのこと。次にこの中から、基準を満たす質の高い研究かどうかを精査していったそうで、最終的に9件の研究がピックアップされたみたい。
この9件の総サンプル数は280人でして、運動グループの総サンプル数が150人、コントロールグループの総サンプル数が130人って感じでした。因みに平均年齢は18.23±2.86歳って感じでして、主に若者が対象となっております。
また、全ての研究で知的障がいを持つ方とダウン症を持つ方が区別なく参加者となっておりました。
それでは先行研究をまとめた際の筋トレメニューの特徴について見ていきましょう。


ざっくりまとめると、基本に則った全身筋トレって感じですね。
それでは「1. 知的障がいを持つ方が筋トレを行うメリットは何か…?」の結果から見ていきましょう…!

  • 下半身の筋力がアップしていた…!
  • 上半身の筋力がアップしていた…!
  • 握力がアップしていた…!
  • 筋肉量(除脂肪体重)がアップしていた…!
  • 体脂肪が減っていた…!
  • 一部の研究ではウエストが引き締まっていた…!
  • 一部の研究ではBMIが減っていた…!
  • 一部の研究ではバランス感覚がアップしていた…!
  • 免疫グロブリンやテストステロンレプチンTNF-αIL-6の増加も確認された…!
  • 認知機能(ワーキングメモリや語彙力、推論能力など)がアップしていた…!
  • 柔軟性がアップしていた…!
  • 日常生活での活動パフォーマンスがアップしていた…!

やはり系統的レビューの結果を見ても障がいのあるなしで筋トレ効果は変わらなそうですね。
因みに肥満は健康リスクの上昇や生活の質の低下と関係あるんで、筋トレは単に障がいのある方の運動機能をアップさせるだけじゃなく、生活の質も向上させるんじゃないかとのことです。
更に研究者曰く、

  • 筋トレを行うことにより、メニューが違うのにも関わらず、全ての研究でポジティブな結果が出ていた
  • ただし、限られた研究数と質の低い研究は、バイアスリスクがありそう

ってことなんで、細かい点はこれから変わっていくかもですが、それでも筋トレを行った方が良いのは間違いなさそうな感じです。


ではもう一つの疑問である「2. 知的障がいを持つ方が筋トレする場合、最もベーシック且つ効率的な筋トレガイドライン(筋トレメニュー)はどんな感じか…?」の結果も見てみましょう。
今回、ありがたいことに上記の結果を踏まえて、知的障がい者用の筋トレガイドライン(筋トレメニュー)を研究者たちが作ってくれたんですよね。
その内容はこんな感じとなっておりました。

  1. 筋トレ期間:12週間
  2. 週の頻度:少なくとも週3日
  3. 1回の運動時間:45~60分
  4. 種目:チェストプレスローローラットプルダウン、挙上筋トレ、アブダクションショルダープレス、様々な腹筋運動(シットアップとかクランチとか)、前腕の筋トレ(フォアアーム)レッグエクステンションレッグカールレッグプレス。6〜7種類を行い、フリーウェイトは避ける
  5. セット数:2~3セット
  6. レップ数(回数):6~12回、又は限界まで
  7. 強度:8RMの40~65%が基本。但し8RMの40~50%から1RMの60~90%の範囲で柔軟に行っていく
  8. 強度の変化:徐々に上げていく。ウェイトを重くする、レップ数やセット数を増やす
  9. 筋トレの検査や評価:知的障がいの特性に合わせて個別に対応するべき。筋トレで行ったものと同じものでチェックする必要あり
  10. 安全性・正確性・有効性の確保:筋力テスト前や筋トレ開始前に筋トレに慣れるためのメニューを実施するのが重要

かなり良い感じにまとめてくれておりますんで、これをたたき台にして筋トレメニューを組んでいくと良さそうですねー。

基本的に障がいのあるなしに関わらず筋トレのメリットは受けられそうですし、筋トレメニューに関しても大きくは違いはないのかな~と思いました。
但し、より障がい特性に配慮したところやケガ防止を意識したところなど細かい部分に違いもありますんで、その辺は非常に参考になりますね。



知的障がいを持つ方の筋トレ効果を系統的レビュー・メタ分析してみた…!

2021年のデラウェア大学の研究によると、知的障がいを持つ方の筋トレ効果を系統的レビュー・メタ分析して調べてみたそうです。
まず研究者たちは2020年5月までに発表されている、以下の項目に該当する研究を11種類のデータベースを用いて検索してみたそうな。

  • 知的障がい者に筋トレを行ってもらい効果を調べた研究
  • 最大筋力の変化を調べた研究

次に検索した研究の中から基準を満たすものをピックアップしていったそうで、最終的に11件の研究が選ばれたらしい。
この11件を系統的レビュー・メタ分析にかけてみた結果、以下のことが分かったそうです。

  • 25~58歳の知的障がい者が筋トレを行うと、筋力が全体的に有意にアップしていた…!
  • 有酸素運動+筋トレやバランス運動+筋トレよりも筋トレのみの方がより筋力が有意にアップしていた…!

どうやら筋トレを行う場合、他の運動と組み合わせない方が筋力アップが見込めそうですね~。
但し注意点として、研究数が限られており、研究の質も低いんでバイアスリスクはありそうってことなんで、この先の研究で変わるかもしれんですな。



知的障がいを持つ方の有酸素運動効果を系統的レビュー・メタ分析してみた…!

2021年のデラウェア大学の研究によると、知的障がいを持つ方の有酸素運動効果を系統的レビュー・メタ分析して調べてみたそうです。
まず研究者たちは、2021年6月までに発表されている、該当研究を11種類のデータベースを用いて検索してみたそうな。すると該当する研究が2,997件も見つかったらしい。その後、重複している研究などを除外していき、14件まで絞ったらしい。
これに参考文献やレビューで見つけた2件の研究を加えて、最終的には16件の研究が選ばれたんだとか。
この16件の研究を用いて、系統的レビュー・メタ分析を行ってみた結果、以下のことが分かったそうです。

  • 21~58歳の知的障がい者が有酸素運動を行うと、心肺機能が有意にアップ(SMD=0.41)していた…!
  • 有酸素運動に筋トレやバランス運動、柔軟性エクササイズなんかを組み合わせても心肺機能は有意にアップしていた…!
  • 但し、有酸素運動と筋トレやバランス運動、柔軟性エクササイズなんかを一緒にやる(SMD=0.40)よりも、有酸素運動のみ(SMD=0.42)の方が心肺機能がわずかにアップしていた…!

先行研究の結果同様、有酸素運動を行うと心肺機能はアップするみたいですねー。
しかも上記で挙げた筋トレ研究の時と違い、他と組み合わせても良いと。但し、ベストはやっぱり有酸素運動のみみたいですね(わずかな差なんで気にするレベルではないですが)


ということで上記2つの系統的レビュー・メタ分析から分かったことをまとめると、

  • 成人の知的障がいの方は筋トレで筋力がアップする…!
  • 成人の知的障がいの方は有酸素運動で心肺機能がアップする…!
  • つまり成人の知的障がいの方は筋トレも有酸素運動も行った方が良い…!
  • 但し筋トレと有酸素運動は同時に行わず、別々の日に行った方が良さそう…!

ってことになりましょう。
やっぱり障がいの有無に関わらず、運動効果は得られそうなんで定期的に行った方が良さげです。



運動はやはり効果アリ…!特に有酸素運動がオススメ…!

2023年のコインブラ大学などの研究によると、障がいのある方のうつ症状に運動が効果的なのかメタ分析・系統的レビューを行い調べてみたそうです。
ということでまず研究者たちは、該当する先行研究を探すべく、PubmedやWeb of Science、Scopus、SportDiscusというデータベースを用いて検索してみたそうな。因みに研究者たちは、身体障がいと知的障がいの方のうつ症状に対する運動効果の研究がヒットするようなキーワードを使っておりました。
その結果、合計で1,509件もの研究が見つかったらしい。続いてこの中から、質の高い研究を選んで行ったそうで、最終的に基準を満たした研究は全部で5件だったとのこと。この5件の研究の総サンプル数は226人でして、そのうちの111人が運動グループ、残りの115人がコントロールグループだったみたい。
また基本的に成人の方がサンプルとして選ばれておりまして、5件のうちの1件が身体障がいの方、他の4件は知的障がいの方が実験に参加しておりました。なんで知的障がいの方が運動した時のうつ症状改善効果を調べたと言っていいでしょう。
5件の研究の運動の種類は全て違っておりまして、

  1. ミニテニス
  2. サッカー
  3. 2人1組で行うエクササイズ
  4. 有酸素運動+筋トレ
  5. 特定の運動を指定しない運動プログラム

って感じ。
更に運動の実験期間や週の頻度、時間なんかもバラバラでして、

  • 実験期間:12~24週間
  • 週の頻度:週2~4回
  • 時間:45~180分

のようになっておりました。
これらのデータを基にメタ分析・系統的レビューを行ってみた結果、

  • 知的障がいの方が運動すると抑うつ症状を軽減できる可能性が高い…!
  • 全体的な効果サイズは-1.403(より大きな効果サイズ)である可能性が高い…!

そうです。
やっぱり障がいの有無に関係なく運動はメンタルに良い影響を及ぼすみたいですな。
またこの研究ではどんな運動法が良いの…?ってこともチェックしておりまして、5件の中で質の高い研究を見てみた結果、

  • 週2回、中程度から激しい強度の有酸素運動を行うのが最も効果的っぽい…!

って感じだったらしい。
どうやら有酸素運動のみと無酸素運動(筋トレ)のみだと有酸素運動のみの方が良さそうですねー。

ということで知的障がいのある方も運動した方が良いのは間違いなく、

  1. 有酸素運動+筋トレ
  2. 有酸素運動のみ
  3. 筋トレのみ

の優先順位になりそうな感じです。
但し、上記で挙げた研究により有酸素運動と筋トレは同時にやらない方が良さげって話もありますんで気になる方は別日で行っていくのがよろしいかと思います。



知的障がいの方の有酸素運動の効果と最も一般的かつ効果的な有酸素運動プログラムを調べてみた…!

2023年のコインブラ大学などの研究によると、知的障がいのある方の有酸素運動の効果について系統的レビューで調べてみたそうです。
そもそも知的障がいの方の運動効果を調べた有名な2011年のデュービル大学の系統的レビューによると、運動はバランス感覚や筋力、生活の質に中~強程度のプラスの影響を与えるとしております。
しかし、心肺機能の部分にフォーカスした研究はまだまだ少ない感じなんで、今回、

  1. 知的障がいの方の有酸素運動の効果はどれぐらいか…?
  2. 知的障がいの方の最も一般的かつ効果的な有酸素運動プログラムはどんな感じか…?

についてチェックしてみたんだとか。
ということでまず研究者たちは該当する先行研究をPubmed、Web of Science、Scopus、SPORTDiscusという4つのデータベースを用いて検索してみたそうな。因みに発表期間は2013年1月~2023年6月9日までで、今回ランダム化比較試験に絞って検索したみたい。
その結果258件の研究が見つかったらしく、続いてその中から基準を満たす質の高い研究を選んで行ったそうで、最終的には1​2件の研究がピックアップされたそうです。
この12件の研究の中にはアジアの研究が含まれているんですが、韓国や中国の研究で残念ながら日本の研究はありませんでした(日本はこの分野の研究が遅れているんで仕方ないですね)
12件の研究の総サンプル数は402名で、そのうち運動グループは186名、対照グループは192名って感じでした。また、参加者は子供から青少年、大人の範囲でした(但し子どもの対象研究は少ない)。それと12件の研究のうち、9件はダウン症の方を対象にしており、3件のみが知的障がいのみの方を対象としておりました。
ではここで12件の研究の運動プログラムについて見てきましょう。

  • 期間:8~15週間の範囲だった。但しほとんどの研究では8~12週間(8週間、10週間、12週間)だった。
  • 週の頻度:週2~5日の範囲だった。最も多かった頻度は週3日だった。
  • 時間:20~60分間の範囲だった。
  • 種目:エアロバイク、トレッドミル、エリプティカル、ステッパー、ウォーキング、ランニング
  • 強度:最大心拍数の50%~80%又はVO2maxの70%~80%

こう見ると、スタンダードな有酸素運動って感じですね。
では結果です。
まずは「1. 知的障がいの方の有酸素運動の効果はどれぐらいか…?」からバーッと見ていきましょう…!


つまり、体型がスリムになって体内炎症も減少、心肺機能がアップし筋肉もアップ、疲れにくくなって頭も良くなったってことですね。考えられる有酸素運動のメリットは全て受けられそうですな。

お次は「2. 知的障がいの方の最も一般的かつ効果的な有酸素運動プログラムはどんな感じか…?」についての結果です。
今回の系統的レビューに含まれる全ての研究の有酸素運動プログラムの特徴や共通点をまとめてみると、このような感じだったんだとか。

  • 期間:12週間
  • 週の頻度:3回
  • 時間:20~60分
  • 流れ:ウォームアップ→有酸素運動→クールダウン
  • 種目:エアロバイク、エリプティカル、ステッパー、トレッドミル
  • 強度:最大心拍数の50%~80%又はVO2maxの70%~80%

ここから、知的障がいの方の最も一般的かつ効果的な有酸素運動プログラムを作ってみるとこのような感じとのこと。

  • 期間:8~12週間
  • 週の頻度:週3日
  • 流れと時間:ウォームアップとクールダウンを常に考慮しつつ、20~60分
  • 種目:エアロバイク、エリプティカル、ステッパー、トレッドミル
  • 強度:最大心拍数の50%~80%又はVO2maxの70%~80%

そして研究者が強調していたポイントは継続できることでした。
やっぱ運動やダイエットは続けられるかが一番大事でして、例えば2021年のベイラ・インテリオール大学の研究によると、自己決定理論を踏まえて過去の行動が将来の行動に及ぼす影響を分析すると、運動をスタートした最初の6ヶ月が重要なんだとか。これが次の6か月も続くかどうかのポイントらしいんですよね。
但し研究者によれば、上記の通り知的障がいの方やダウン症の方の運動効果を調べた6ヶ月以上の長期による研究が全然足りていないんで、ここが今後の課題ということです。
ということでまず何の運動をしていいか分からん…!みたいな方はウォーキングや早歩き、自転車を漕いでみてはどうでしょうか…?



知的障がいを持つ高齢者の運動効果はどうなのか…?

2013年のハイファ大学の研究によると、知的障がいのある高齢者の運動効果について調べてみたそうです。
そもそも高齢者は運動機能が低下し、転倒からのケガを引き起こすリスクが高いですが、高齢知的障がい者の場合どうなのかはちゃんと調べられておりませんでした。
そこで今回研究者は高齢知的障がい者に運動を行ってもらいバランス感覚がアップするのか見てみることにしたらしい。
この研究はイスラエルのハイファに住んでいる高齢知的障がい者27名が参加したもので、参加者を以下の2グループにランダムに振り分けたそうです。

  1. バランストレーニンググループ:バランス感覚アップの為の運動プログラムを行った。
  2. 筋トレグループ:筋トレプログラムを行った。

コントロールグループがないのはちょっと残念ですな。まぁ、仕方ないでしょう。
実験期間は半年間で、実験開始前後に簡単な健康アンケートや身体能力テストなんかを行い運動機能がどのように変わったかチェックしたそうな。
その結果、

  • 両グループともスタート時のテスト結果よりも終了時のテスト結果の方が運動機能がアップしていた…!
  • バランストレーニンググループは、バランス感覚や全体的な健康においてよりはっきりとアップしていた…!

とのこと。
知的障がいを持つ高齢者がどのような運動をしてもメリットはある…!ってことですね。また、バランストレーニンググループのように特化したプログラムを行えば、その部分のメリットが大きく受けられると。
つまり障がいの有無に関わらず高齢者でも運動のメリットは同じように受けられるみたいです。大変よろしいお話ですな。
但し、個人的に注意したいな~と思うのが知的障がいやダウン症をお持ちの方の老化スピードが早いということ。これを踏まえると知的障がいやダウン症をお持ちの方はより若いうちから運動習慣を身に付けておいた方がよろしいのかなと思います(まぁ、ぶっちゃけ障がいの有無に関わらず早いうちから運動習慣を身に付けておくに越したことはないですが)



知的障がいの方のSIT(スプリント・インターバル・トレーニング)の効果を調べてみた…!

2014年のノース=ウェスト大学RCTによると、知的障がいの方を対象にSIT(スプリント・インターバル・トレーニング)の効果を調べてみたそうです。
この研究は、知的障がいのある男女54名が参加したもので、参加者の平均年齢は17歳、平均BMIは27.7とのこと。また平均IQは59だったらしいんで、軽度知的障がいの方が対象だったみたいですね。
んで、実験は参加者を以下の3グループに分けて行われたんだとか。

  1. SITグループ:17名にSIT(スプリント・インターバル・トレーニング)を行ってもらう。
  2. 普通の有酸素運動グループ:15名に普通の有酸素運動を行ってもらう。
  3. コントロールグループ:14名は特に何もしない。

ではここで各グループについて詳しく見ておきましょう。
SITグループの流れは以下のようになっておりました。

  1. 15秒間全力で運動→45秒間休憩、これを10回繰り返す(全部で10分間)
  2. 普通の有酸素運動を行う(10分間)
  3. 15秒間全力で運動→45秒間休憩、これを10回繰り返す(全部で10分間)

つまり、SIT→普通の有酸素運動→SITってことですね。全部の時間は30分ですな。
これを週2回で15週間続けてもらったそうな。
続いて普通の有酸素運動グループの流れを見てみます。

  1. 普通の有酸素運動を30分間行う。
  2. 但し8週間後に強度を上げた。

SITと運動時間の合計が同じようになるよう調整しつつ、慣れてきた頃合いで強度を上げたみたいですね。まぁ、一般的な有酸素運動ですな。
最後はコントロールグループですがこちらは、

  • 普通に過ごす

って感じ。
この研究では実験開始前後に体組成や体力、代謝といった項目もチェックしておりまして、これで違いが出たかどうか比べてみたみたい。
その結果がこちらです。

  • SITグループはコントロールグループに比べて、ウエストが細くなり、体脂肪率は減り、収縮期血圧も良くなり、インスリン抵抗性も改善、VO2max(≒心肺機能)もアップ、筋力もアップと有意なプラスの効果のオンパレードだった…!
  • SITグループは普通の有酸素運動グループに比べて、体脂肪率、収縮期血圧、LDL、インスリン、VO2max(≒心肺機能)で有意な改善があった…!

運動していない人よりもSITを行った方が良い結果が出たのは当然ですが、普通の有酸素運動よりも更に良い結果が出たってのは大きいですね。
つまりSITのようなHIIT系に関しても障がいの有無に関係なく、同じ効果を得られそうな感じです。但し、めっちゃきついんで続けるようにするのが難しそうですが…。



ダウン症の方のSIT(スプリント・インターバル・トレーニング)の効果を調べてみた…!

2016年のノース=ウェスト大学RCTによると、ダウン症の方を対象にSIT(スプリント・インターバル・トレーニング)の効果を調べてみたそうです。
この研究は、ダウン症の成人42名(男性25名、女性17名、平均年齢33.8±8.6歳)が参加したもので、以下の3グループにランダムに振り分けたそうな。

  1. SITグループ:10~30秒全力で運動→90秒低強度で運動(休憩)、これを繰り返した。
  2. 普通の有酸素運動グループ:全力の70~80%の強度で運動した。
  3. コントロールグループ:特に何もしない。

SITグループも普通の有酸素運動グループも運動種目はエアロバイク又はウォーキングだったとのこと。
上記を6週間続けてもらったのち、以下のような形で強度をアップしたみたい。

  1. SITグループ:運動時間を5分間延長した。
  2. 普通の有酸素運動グループ:全力の85%の強度にしつつ、運動時間を5分間延長した。

これで更に6週間続けてもらったそうです。つまり実験期間は12週間ってことですな。
最後にスタート時と終了時に計ったデータを基にグループ間の違いを見てみた結果、このようになったそうです。

  • SITグループは他のグループよりも体重とBMIが大幅に減少していた…!
  • SITグループは体重が71.4±8kg→69.4±8kgと2kg痩せていた…!
  • SITグループはBMIが29.3±4→28.5±4と減少していた…!
  • 普通の有酸素運動グループはコントロールグループよりも脚の強さが有意にアップしていた…!
  • 普通の有酸素運動グループは6分間の歩行距離が499±78m→563±75mにアップしていた…!
  • 普通の有酸素運動グループは脚の筋力が13.1±2→15.2±2にアップしていた…!
  • SITグループと普通の有酸素運動グループはコントロールグループよりもpeak VO2と疲れにくさが大幅にアップしていた…!
  • SITグループは普通の有酸素運動グループよりもpeak VO2がアップしていた…!
  • SITグループはpeak VO2が32±8mL/min/kg→37±8mL/min/kgにアップしていた…!

つまり、何もしないよりも普通の有酸素運動が良くて、それよりもSITが良いと。
この研究を見るに、ダウン症の有無に限らずSITのメリットは受けられる感じですな。
ということで知的障がいの方やダウン症の方にもHIITSITはおすすめです。



知的障がいの方が運動を続けるには何がポイントなのか…?

2023年のノーステキサス大学の研究によると、知的障がいの方が運動を続けるには何がポイントなのか…?について調べてみたそうです。
この研究は、2011年のユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究で考えられたCOM-Bモデルっていう行動を理解するためのフレームワークを使ったものでして、

  • C:Capability=能力
  • O:Opportunity=機会
  • M:Motivation=モチベーション

っていう3つの要素から行動(B=Behavior)に影響を与えるよ~って感じとなっております。
んで、今回のケースにこのCOM-Bモデルを当てはめてみると、

  • 能力:身体的にも心理的にも実行可能かどうか
  • 機会:運動を行える又は運動を促す外的要因があるかどうか
  • モチベーション:運動したい又は運動する必要があると思えるかどうか

となります。
参加者はアメリカ南部に住む知的障がいや発達障がいを持った成人でして、全員DSM-5で診断を受けている方々。サンプル数は27歳から50歳までの11人となっており、男性5人、女性6人って内訳です。この参加者たちの障がい特性に十分に配慮しつつ調査してみたそうな。
具体的には、

  1. フィールド調査:参加者がフィットネスを行っているときの様子をビデオに録画した。その際、本人だけでなく、フィットネス仲間やインストラクターも撮影した。併せて聞き取り時に使う写真も撮影した。
  2. 聞き取り調査:個人から直接話を聞いて、何が運動を促進し何が妨げているのか、運動を継続するモチベーションや運動中に必要なサポートは何なのかを調査した。

のようになっておりました。
特に聞き取り調査時の障がい特性への配慮した質問方法が良い感じでして、

  • 簡単な言葉で質問した
  • 質問は短文にした
  • 考えるための十分な時間を用意した(5秒以上は用意した)
  • 安全だと感じる場所で聞き取りした
  • 質問の回答が間違いないか復唱して確認した
  • フォローアップクエスチョンをした
  • フィールド調査の際の写真を使用しつつ話した

といった工夫をしたらしい。
最後に質問の回答データを集計した結果、運動を続けるポイントは以下だったそうです。

  • 交通手段がある又はサポートがある:交通手段やそのサポートがあるかどうかは障がいのある方の自立の障壁として最も頻繁に挙げられるポイント。運動にとってもそれは同じで、多くの参加者はフィットネスクラブに連れて行ってくれる支援者頼みだったそうな。またそのサポートがなければ、フィットネスクラブに参加出来ないとも言っていたそう。そのため、公共交通機関でアクセスしやすいフィットネスセンターがあると良さそう。
  • 様々な運動の機会があると良い:例えば今回の実験では、ウォーキングやウェイトリフティング、ランニング、グループで行うスポーツゲームなど、多種多様な運動方法を提供していたんだとか。いろんなスポーツを行う機会に触れたり、実際に行ったりすることも重要なポイントとのこと。
  • 人との触れ合いが大事:参加者はインストラクターや一緒に運動する仲間、家族など様々な方にサポートされている感じがしたと答えており、それが毎週フィットネスクラブを楽しみにしている理由だと答えていたそうな。確かに友達や仲間ってのは大事ですし、それが習慣化する大きなポイントになるのも事実なんで納得ですね。

またCOM-Bモデルの視点からも見てみると、

  • 自分の能力と機会は、両方とも運動に参加する為のモチベーションにつながっていた…!
  • 例えば「自分で運動が実行可能だと良いですね。もっとフィットネスクラブに来たくなります」と答えていた…!
  • 他にも「インストラクターの○○さんは私のお気に入りなので今では週2回来ています。もっと来たいです」と答えていた…!

そうです。
つまり自分でできる運動があり、それを行う環境や声掛けがあるとモチベがアップし、実際に運動する(行動する)と。やっぱ運動でも環境整備が大事みたいですな。
最後にポイントとして挙がっていたのは、

  • 運動した時の話で盛り上がれる環境や小道具があると良い…!

ということです。
なんでも参加者たちは自分の運動している写真について語り合うのが楽しかったようで、例えば1人はインストラクターと歩いている自分の写真について説明し、その時の詳細やインストラクターがどのように運動を楽しい物と感じさせてくれたかを話してくれたそうな。でも、最初は運動について特に何も話すことはないと答えていたそうなんですよね。
つまり、写真という当時を思い出せる小道具を用意することで、知的障がいや発達障がいのある方は、より当時の話しをしてくれるみたいなんですよ。この辺も個別支援計画作成の為のモニタリング時に使えそうなテクニックですな。
これらをみると、運動の習慣化についても障がいの有無って関係ないな~と思いました。
強いて違いを上げるとするならば、支援者やサポートがより充実している方が良いというところでしょう。



軽度・中度の知的障がいを持つ成人が運動を行うと、有意に心肺機能と筋肉がアップしていた…!

2018年のビーゴ大学系統的レビューによると、知的障がい者の運動効果について調べてみたそうです。
まず研究者たちは、2018年1月までに発表されている知的障がい者の運動効果の研究をPubMedやCINAHL、SPORTDiscus、Scopusで検索してみたそうな。続いてこの中から重複しているものや質の低い研究を除外していったらしい。
最終的にピックアップできた研究は44件でして、これらの内訳は、

  • ランダム化比較試験:17件
  • 非比較試験:11件
  • 非ランダム化比較試験:10件
  • 比較試験:6件

って感じ。
また、運動方法については、有酸素運動のみ、無酸素運動(筋トレ)のみ、有酸素運動+無酸素運動というパターンがあったみたい。
これらの共通点をまとめてみた結果、

  • 軽度・中度の知的障がいを持つ成人が運動を行うと、有意に心肺機能と筋肉がアップしていた…!
  • 但し全ての研究で体組成が改善されたわけではなかった…!

とのこと。
矛盾した結果が出ているものもあるけど、大半は運動で心血管系と筋肉が健康になるみたいですね。因みに研究者によれば、ダンスや水中運動、アニマルセラピーなどのエビデンスは乏しいってことなんで、普通にウォーキングやランニング、筋トレをした方が良さそうです。
更に研究者は、運動に役立つガイドラインが必要だ…!と述べておりました。こちらについては上記で紹介した研究が役立つかと思います。併せてご覧ください。



個人的考察

まとめと、知的障がいやダウン症の有無に関わらず、運動や筋トレの効果は受けられそうです。



参考文献

https://www.researchgate.net/publication/265163943_Physical_exercises_can_reduce_anxiety_and_improve_quality_of_life_among_adults_with_intellectual_disability