【まとめ】インスリンを制する者はダイエットを制す!
インスリンを制する者はダイエットを制す…!
ということで、インスリンはダイエットを行う上で非常に重要なんですよね。
インスリンってなに…?
炭水化物(糖質)を食べると、体内の血糖値が上昇します。そして、インスリンは血糖値の上昇を抑え、下げる効果があるホルモンの一つ。
よく健康本やダイエット本なんかをみると、
- インスリン感受性(≒インスリンの効きの良さ)が大事…!
- インスリン感受性が低下した(=インスリン抵抗性が高かった)ら、大変…!
なんて話を聞くかと思います。
そして一昔前まではインスリンは太るホルモン…!ダイエットの敵…!なんて言われておりました。例えば、脂肪細胞の分解を抑えるとか、余分な血糖は脂肪を蓄えちゃうのに一役買っちゃうとか…。
これらは事実ですが、事はそう簡単ではないようで、というのも、インスリン=太るホルモン…!だからダイエットの敵…!って図式にならないんですよね。
例えば2004年のミネソタ大学の研究によると食事による2型糖尿病患者の代謝への影響とタンパク質の健康への潜在的な影響について調べたそうです。
この研究の中で食事により炭水化物、タンパク質、脂肪のどれを食べてもインスリンが急上昇していたそうです。つまり、米やパン、肉や魚、チーズなど、何を食べてもインスリンは分泌されてしまうみたいなんですよ。
更に2003年のワシントン大学の研究で、インスリンはレプチン(食欲コントロールホルモン)のように脳に食欲を抑えろと命令を出しているみたいなんですよ。ここが面白いんですよね~。では、今から詳しく書いていきます。
…っとその前に今回は動物実験がいくつか出てきますが、初めに書いておくと、人間やマウスなんかの哺乳類はインスリンに対しての反応がほぼ変わらないみたいなんで、マウスやラットの実験は非常に参考になります。まぁ、脳の中をいじったりもするので動物で試すことが多いんですよね。
インスリンは暴飲暴食を防いでくれる…!
最初に紹介したいのが1986年の動物実験。これによると、インスリンの注射をマウスにたくさん打って変化を見たらしいんですよね。すると、マウスの食事の摂取量は増えず、低血糖症も起こさなかったそうなんですよ。
更に2010年のカーティン工科大学のRCT、クロスオーバー試験によると、スリムな男性22人を対象にホエイ、マグロ、七面鳥、卵白の4つのタンパク質を用意し、参加者の食後の血糖値とインスリン濃度、食事の満腹感なんかを調べてみたそうな。結果、インスリン分泌量が多い程、満腹感が優位に高かったそうです。
また、インスリンに付随した効果もありまして、2006年の動物実験によると、インスリンが分泌されるとアミリンというホルモンも同時に分泌されるみたい。このアミリンってのがヤバくて、抗肥満効果がかなり高いみたいなんですよね。つまり、インスリンの満腹感を上げる効果とアミリンの肥満防止効果のダブル効果によって食欲コントロールがなされているのも大きそうな感じです。
更に更に1980年のコロンビア大学の動物実験、2002年のシンシナティ大学の研究でも、インスリンを増やしてみたそうですが、肥満にならず、どころか、痩せていったみたい。食べる量も減ったそうでやっぱインスリンがダイエットの敵…!って図式は成り立たない様子…。
インスリンが効かないとみるみる太る…!
インスリンが増えてもダイエットの敵にはならなさそうなのは分かりましたが、では、逆にインスリンが減ったらどうなるのでしょうか…?これで、もし、何も変わらないなら、インスリンってダイエットの敵ではないけど、ダイエットの味方でもなく、そもそもインスリンって関係ないんじゃないか…?他に原因があるんじゃないか…?って話になってしまいますからね。
そこで非常に参考になるのが2000年のケルン大学の研究。この研究によるとインスリン受容体遺伝子が破壊されたマウスを作ってみたんだとか。つまり、インスリンに全く反応しないマウスですね。このマウスの食欲について調べてみたら、インスリンが食欲を抑制しなくなってしまい、暴走、結果、みるみるマウスは脂肪を溜め込み太っていったそうです。やっぱインスリンの食欲抑制効果はダイエットの味方になり得そうな予感がしますね~。
インスリンの急上昇が悪いのか…?
インスリンがどうやらダイエットの敵…!ってのが少しずつ違う感じがしてきたところですが、インスリンの急上昇が悪いんじゃないの…?って意見もあるかと思います。つまり、急激な血糖値の上昇など乱高下が太るからやっぱインスリンはダイエットの敵…!って話ですね。
そこでまず見ていきたいのが1997年のハーバード公衆衛生大学院の研究。この研究では、TNF-α(炎症性サイトカインの一つ)の遺伝子と受容体を効かなくした肥満マウスを作製したそうな。TNF-αが効かないと炎症が起きなくなる(インスリン抵抗性が上がり肥満になることがなくなる)ため、インスリンが急上昇することもありません。この肥満マウスに大量のエサを与えて、インスリンと肥満の関係について調べてみたそうです。結果は、肥満マウスも普通マウスも変わらず太ったとのこと。肥満マウスはインスリンの急上昇では太らないのに太ったということで、つまり、インスリンの急上昇は肥満と関係ないと言えそうな感じ。
2007年のフリブール大学の研究でも似たようなことをしていまして、JNK1(炎症物質の一つ)を効かなくしたマウスを作製、つまり、上記と同じくインスリンが急上昇することがないマウスですね。このマウスにエサを与えてインスリンと肥満の関係について調べてみたそうですが、やっぱり結果は同じで、JNK1なしマウスも普通マウスも変わらず太ったとのこと。
動物実験ばっかじゃん…!みたいな意見もありそうなんで一応人間を対象にしたものも紹介しておきます。2004年のモントリオール大学の研究では肥満とインスリンの上昇・下降率について調べておりまして、どうやら個人差がかなりあるみたいでよく分からん…!ってのが結論みたい。一応どんな感じか見てみると、
- 食後のインスリンの上昇・下降がしにくい人でも肥満者はたくさんいた
- 食後のインスリンの上昇・下降がしやすい人でもスリムな人はたくさんいた
ってことで、結局、インスリンの急激な乱高下と肥満は関係なさそうな感じとなっております。
インスリンレベルのアベレージが関係しているのか…?
いやいや、インスリンレベルが常に高い人がいるじゃないか、そういう人は太っていることが多いからやっぱインスリンはダイエットの敵だ…!って話について次は考えていきたいと思います。ここについて参考になるのが2007年のシャーブルック大学の研究です。この研究では、人間が太ることを予測できるよう様々な側面から調べたものを要約したそうで、ここのレビューの中に空腹時にインスリンレベルが高い人はスリムな体型の人が多かったと書かれております。また、2012年のブリガムヤング大学の研究でもインスリンレベルのアベレージとインスリン抵抗性の高さは長期的な肥満やスリムな体型と関係がなかったそうです。
更にこれについては2012年に大掛かりな研究が行われておりまして、2型糖尿病の患者を有する12,537人(平均年齢63.5歳)を6年間も追い続けて健康転帰を調べたそうな。2型糖尿病の患者さんはまさにインスリンレベルのアベレージが高く、サンプル数の多さ、期間の長さともに良い感じの研究です。
早速結果を見てみると、
- インスリン注射をたくさん打った患者さん程、約1.6kg太っていた…!
って結果だったそうです。
確かに体重は増えてはいたんですが、インスリン注射を打ちまくっても6年で1.6kg体重増加ってことは、単純計算すると1年で267gしか太っていないことになります。更にメトホルミン(体重が増加しにくくなる)を使わなかったそうなんで、以上を踏まえるとインスリンレベルのアベレージが肥満に関係しているとは言えないような気が致します。
インスリンレベルのアベレージの高さが脂肪の分解(代謝)を邪魔するのが悪いのか…?
最後にインスリンが脂肪の分解を抑制する…!だから太る…!って話を深掘りしていきます。1989年のメイヨークリニックの研究によると上半身が太っている10人の女性、下半身が太っている9人の女性、スリムな8人の女性のインスリンレベルと脂肪酸代謝について調べたとのこと。結果、空腹時のインスリンレベルが高ければ高い程、安静時の脂肪酸代謝も高かったそうです。つまり、インスリンレベルは高い方がむしろ脂肪が分解されやすいってことですね。似たようなことを再度メイヨークリニックは行っておりまして、1993年のメイヨークリニックの研究によると、上半身が太っている8人の女性、下半身が太っている8人の女性、スリムな8人の女性のインスリンレベルと脂肪の分解について調べたそうですが、やっぱり結果は同じだったということ。
食後のインスリンレベルが脂肪の分解(代謝)を邪魔するのが悪いのか…?
いいや、アベレージと代謝は問題なくても、食べた後のインスリンレベルと代謝が問題なんだ…!って話も残っていますが、これについても問題ないようで1991年のヴァンダービルト大学のRCT、クロスオーバー試験によると男性3人、女性5人の計8人の成人を対象に高炭水化物食(総カロリーの60%が炭水化物)と高脂肪食(総カロリーの60%が脂肪)の食事を7日間食べたそうな。更に6人の参加者は1週間混合食(総カロリーの45%が脂肪)を食べたそうで、それらの食事の変化がエネルギー消費と栄養バランスにどのような影響を与えるのかを調べたとのこと。
つまり、炭水化物を変えることで食後のインスリンレベルと代謝について調べたってことですね。結果、炭水化物と脂肪のパーセンテージはエネルギー消費と関係がなかったそうです。
また、1998年のロックフェラー大学の研究でも似たようなことをしておりまして、入院患者を対象にインスリンレベルと代謝について調べたそうですが、結果はやっぱり同じで、炭水化物と脂肪の比率を大きく変えてみても24時間の総エネルギー必要量は変わらなかったそうです。
デノボ脂質生成は気にすべきか否か…?
まず、冒頭で書いた通り、インスリンは血糖を脂肪に変えて蓄えちゃう性質があるのは事実であります。参考になるのが1999年のカリフォルニア大学バークレー校の研究で、炭水化物(糖質)を摂取したとき、体内では、- 血糖値が上昇する
- インスリンを大量に分泌する
- 脂肪を燃やさず、血糖が中性脂肪に変わる
- 結果、脂肪細胞にストックされる…!
って流れが起こるみたいです。
この流れをデノボ脂質生成(デノボ脂肪合成)と言うそうで、ここから糖質=太るの図式ができました。そして、デノボ脂質生成をなるべくしないようにすれば痩せる…!となって糖質制限ダイエットが流行り、更にはもっと制限すれば良いのかも…!となって、極端な糖質制限ダイエットに発展していきました。
しかし、2001年のカリフォルニア大学バークレー校の研究によると、ここには大きな見落としがあって、確かにデノボ脂質生成は体内で起こるのですが、よほど大量の炭水化物を摂取しないと起こらないことが分かったんですよね。
更に同じ年に発表された2001年のスコットランド農業大学の研究によれば、スリムな女性8人と肥満体な女性5人を対象に、ショ糖またはブドウ糖のいずれかを50%多く食べてもらって、デノボ脂質生成を測定してみたそうです。
期間は96時間で、結果分かったことが、
- スリムか肥満かで違いはあったが、炭水化物を360g±17g~389g±21gを食すことによって、デノボ脂質生成が、平均3.7g±0.5g~6.2g±1.2g起きていた…!
そうです。
体型は多少関係あるけど、炭水化物を360g~389gも食べて、デノボ脂質生成がたった3.7g~6.2gしか起きないんですよ。
つまり、お茶碗を軽く1杯(100g)のごはんの糖質が38.1gなんで、10杯弱食べても6g脂肪に変われば良い方です(笑)
ごはんを10杯も食べて体重6gが増えた…!で一喜一憂する人はさすがにいらっしゃらないかと思いますので、気にするレベルでは全くないってことですね。
じゃあ、余った糖質はどうなるのかと言うと、筋肉のグリコーゲン貯蔵庫に行き、保管されるみたいです。
それと体型に関係なくデノボ脂質生成が起こるって話もあれば、肥満の方がデノボ脂質生成が起こりやすく、脂肪も燃えないって話もあるみたいですが、相当微妙な差みたいで、いずれにしても気にするレベルではなさそうな感じです。
もちろん、お菓子などの加工食品を大量に食べるなどして炭水化物を多量に摂取すれば話は別ですが、そんなに糖質さんを邪険にしなくても良いのではないのかな~と私は思いますねー。
インスリン抵抗性が高いと肥満になる…!は本当か…?
糖質制限ダイエットの痩せる根拠の一つに、糖質を食べるとインスリン抵抗性が上がるから太るんだ…!みたいな話がございます。
では、これが本当なのか、みていきたいと思います。
1995年のコロラド大学の研究によると、インスリン抵抗性の増加と体重増加との関連性について調査してみたそうです。実験は、コロラド州に住むヒスパニック系又は非ヒスパニック系の白人が対象で、年齢は20〜74歳、参加人数は789人とのこと。因みにみんなインスリンに問題のない方々だったらしい。インスリン抵抗性の測定は、最初とその後、平均で4.3年後に行ったそうな。
んで、結果が、
- インスリン抵抗性がアップすると、体重増加のリスクが減った…!
- 上記は、スタート時の体重や年齢、性別、人種、BMIと関係がなかった…!
とのこと。
どうやら糖代謝に問題ない健康な方であれば、インスリン抵抗性が高い方が痩せるっぽい。意外ですよねー。
また1991年のアメリカ国立衛生研究所の研究によると、非糖尿病のピマインディアン(肥満・糖尿病の人が非常に多い民族)の方、192人を対象に、インスリン抵抗性と体重の変化を調べてみたそうです。因みに平均追跡期間は平均3.5年間とのこと。
結果、
- インスリン抵抗性が高い参加者は、体重が減少していた…!
- 上記は、性別や年齢、スタート時の体重に関係がなかった…!
って感じだったらしい。
やっぱり非糖尿病の方であれば、インスリン抵抗性が高いと痩せるみたいですねー。
上記に挙げた内容も合わせて考えると、やっぱりインスリンと肥満は関係なさそうですし、それどころか、健康であれば、逆にインスリン抵抗性が高い方が痩せるっぽいですねー。
原因は、インスリン抵抗性が高まると細胞が糖を取り込まなくなり(デノボ脂質生成が起きづらくなり)、結果、余った脂肪細胞が燃焼しやすくなるからということです。
二律背反なホルモン、それがインスリン…!
代謝関係についてもインスリンのアベレージの高さ、食後のインスリンレベルともに脂肪の分解の邪魔はしないようですね(脂肪の取り込み自体はあるんで体脂肪も増えるでしょうが)
インスリンについて色々見てきましたが、ダイエットの敵ではなさそうなイメージがついたのではないでしょうか…?しかし、一方で、冒頭で書いた通り、脂肪の分解を抑え、脂肪を蓄えるのもインスリンの働きとして間違いないので矛盾する結果となりました。
つまり、これらから導き出せる結論としては、インスリンは二律背反なホルモンと言うことになるかと思います。
どういうことかと言うと、
- インスリンは、脂肪の分解を抑えるし、脂肪を蓄える
- 一方で、インスリンは、脳に満腹感を知らせるなど食欲を抑制するよう働きかけている
ということ。ダイエットの敵であり、味方である、矛盾した存在がインスリンさんなんですね~。
インスリン感受性を上げて代謝の柔軟性を上げよう…!
2001年のピッツバーグ大学の研究によると、様々な方のインスリン感受性について調べてみたそうです。
この研究は、スリム体型の9人、糖尿病ではない肥満体型の11人、2型糖尿病である肥満体型の8人、持久力トレーニングを受けた9人が参加したもので、参加者全員に採血を行い、インスリン感受性についてチェックしてみたんだとか。
結果、
- 持久力トレーニングを受けた人(=運動をした人)は、骨格筋のインスリン感受性が著しく高かった…!
とのこと。
つまり、運動すると、インスリンの効きが良くなるってことですね。
逆にインスリンの効きが悪くなると負のスパイラルが発動するみたいでして、その辺は2006年のテネシー大学の研究が参考になります。
どんな流れかと言いますと、
- 運動をしない
- インスリン感受性の低下と骨格筋の炭水化物・脂質の処理の低下=代謝の柔軟性の低下が起こる
- 骨格筋ミトコンドリアの量も減少する
- ミトコンドリアの量が少ないとエネルギーが作られないので元気が出ない、疲れやすくなる
- 身体活動レベルが低下する
- 更に代謝の柔軟性が低下する
のような感じです。
そのため、運動は代謝の柔軟性を回復できる強力な対策なんだとか。
ということで、インスリンが正常に動くよう運動は定期的に行った方が良さげです。
個人的考察
上記を見ると糖質制限で痩せる…!ってのにインスリンはあんま関係なさそうですね~。となると、やっぱ、単純で導入しやすかったり、体内の水分量の減少でスタートで痩せた感覚になり、モチベーションがアップしてダイエットが続く、糖質制限の代わりにタンパク質の摂取量が増えたり、ビタミンやミネラルの摂取が増えるなんてところが要因なんですかね~。