当ブログでは、様々な研究をご紹介しておりますが、その中でたまに出てくるのが肥満と過体重(太り過ぎ・太りすぎ)って単語です。
なんとなく太っている状態だよな~とは想像できつつも、細かいところは知らない方も多いのではないでしょうか…?
ということで今回は、肥満や過体重(太り過ぎ)についての基本を抑えつつ、そもそもなぜそのような状態になるのかについて見ていきます。



肥満と過体重(太り過ぎ)とは、BMIがいくつ以上の事を言うのか…?

まずは肥満と過体重(太り過ぎ)とは、BMIがいくつ以上の事を言うのか…?見ていきたいと思います。
WHOによれば、肥満と過体重(太り過ぎ・太りすぎ)とは、

  • 過体重(太り過ぎ・太りすぎ):BMIが25以上のこと(BMI=25~29.9kg/m2のこと)
  • 肥満:BMIが30以上のこと(BMI=30kg/m2以上のこと)

と定義されているそうです。
因みに過体重は体内に過剰な脂肪が蓄積された状態のことを指すそうで、肥満は、健康を損なう可能性があるほど、体内に過剰な脂肪が蓄積された状態を指すんだとか。

では実際に肥満の方がどのぐらいいるのか…?ってことで、まず参考にしたいのが2017年のNCD-RisCの研究になります。この研究は、1975年から2016年にかけての肥満や太り過ぎを調べてみたものなんですが、なんでも2016年には3億9000万人の女性と2億8100万人の男性が肥満だったそうです。つまり2016年の時点で肥満が6億7100万人もいたと…。
但しWHOによれば、2022年には25億人の成人(18歳以上)が太りすぎだったらしく、そのうちの8億9000万人が肥満だったそうなんで、たった6年で更に2億1900万人も肥満が増えたんですね。これはえらいこっちゃ…。
また2016年のNCD-RisCの研究によれば、肥満は1970年代から3倍も増えているそうで、
更にWHOによれば、成人の肥満は1990年以降で2倍以上、青少年の肥満は4倍も増加していたみたい。
それと2010年のCDCの研究では2007~2008年にかけての成人アメリカ人の肥満と過体重の割合をチェックしているんですが、

  • 全体の肥満の割合:33.8%
  • 男性の肥満の割合:32.2%
  • 女性の肥満の割合:35.5%
  • 全体の過体重の割合:68.0%
  • 男性の過体重の割合:72.3%
  • 女性の過体重の割合:64.1%

とのこと。つまり成人アメリカ人のうち、過体重の人が68%、肥満の人が34%ってことですね。
これらを見ると、肥満や過体重は世界的な問題と言えますな。



OECDが経済学の観点から肥満を紐解いてみた…!

2019年のOECDの研究によると、経済学の観点から肥満を紐解いてみたそうです。
これはOECD、EU、G20を含む最大52カ国における肥満&過体重の経済的、社会的、健康的コストを分析したもので、世界中で増大する健康問題かかる費用を計算し経済への影響を見てみたと言うもの。
んでポイントがいくつかに分かれておりまして、並べていくとこんな感じとなっております。


世界における肥満の割合は増えている…!

  • OECD加盟国が当時36カ国ありまして、そのうちの34カ国では、人口の50%以上が過体重、25%が肥満となっていた。
  • そしてOECD加盟国における成人の平均肥満率は、2010年は21%だったのに対し、2016年は24%と3%も増えていた。
  • 2019年では更に5000万人の人が肥満に苦しでいると思われる。
  • この10年間、肥満対策を取り組んできたが結果は虚しく終わっている。
  • 過去50年間におけるOECD加盟国のカロリー摂取量は約20%も増加しており、更なる対策が必要である。

世界の割合でみても肥満と過体重は急速に増えていると言えますね。


肥満と過体重は社会的不平等をもたらす…!

  • 肥満と過体重の社会的不平等は特に子どもへの影響が大きい。
  • 肥満と過体重の子どもは学校成績が悪い、欠席率も高い、最終学歴も低いなどの影響がある。
  • また、生活満足度も低く、いじめに遭う可能性も最大3倍も高くなると分かっている。
  • これらの要因が学業成績を下げていると思われる。
  • 対して、標準体型やスリムな体型の子どもは肥満の子どもよりも13%も学業成績が良いとする報告がある。
  • 大人の場合も肥満と過体重における社会的不平等への影響はある。
  • 過体重に関係する慢性疾患を最低1つ以上持っている人は翌年に雇用される可能性が8%も低くなる。
  • 現在雇用されている場合でも、欠勤率や生産性の低下により翌年に雇用される可能性が最大3.4%も低くなる。
  • また肥満の成人は、慢性疾患リスクや寿命の低下リスクが高い。
  • EUに加盟している28カ国を見てみると、最低所得層の女性は最高所得層の女性に比べて、90%も肥満リスクが高い
  • EUに加盟している28カ国を見てみると、最低所得層の男性は最高所得層の男性に比べて、50%も肥満リスクが高い

肥満や過体重の悪影響が子ども時代が大きいってのは納得できるところですね。特にいじめリスクが3倍ってのはヤバいですし、学歴にこれほど影響をもたらすものが肥満や過体重なのかと改めて思い知らされる結果でしょう。
そして大人になったら今度は職歴に響くと言うのも切ないところ。生涯に亘って不平等が起こるんですね…。
それと因果関係は謎なところ、年収の低さと肥満リスクが関係しており、特に女性の90%は衝撃的な数値と言えるのではないでしょうか…?


過体重は医療費がかかりそれが経済や国家へ悪影響をもたらす…!

  • OECDの分析によるば、2020年から2050年にかけて、肥満と関係する病気で平均寿命が3年程短くなると出ている。
  • BMIが高い人は糖尿病やがん、心疾患になりやすくこれらは長期にわたって治療が必要なため、高額な費用がかかる
  • また過体重の人は健康体重の人に比べて病院に行くことが多い。そして多くの手術を受け、処方箋を2倍以上もらっている。
  • OECD加盟国の平均では、糖尿病の治療費全体の70%、心血管疾患の治療費の23%、がんの治療費の9%が過体重によるものだと出ている。
  • 高BMIと関連疾患の治療は、OECD加盟国全体で年間1人当たり200ドル以上の費用がかかっている。
  • そのため、OECD、EU、G20の国々がダイエットを推進することは優れた投資と言える。
  • 例えば、OECDの分析によると、肥満予防に1ドル使うと最大6倍の経済的利益が生み出されると出ている。

肥満や過体重は医療費増大の原因であり、それが個人や経済、国家の金銭負担をアップさせているんですねー。


まとめ

肥満と過体重におけるOECDの調査結果をまとめると、

  • 学歴・職歴・幸福・年収・健康・医療費にも悪影響をもたらす…!
  • 子ども時代のダメージがデカい…!
  • 大人になってもダメージがある…!
  • 寿命も縮む…!

のような感じかと。
人口の50%以上が過体重、25%が肥満なんで、これらのリスクを持っている人がこの割合でいると思うと何とも恐ろしい話ですね。



WHOの結果も大体同じ感じ…!

ついでにWHOの報告も見ておきましょう。
2022年のWHOの研究では、ヨーロッパ諸国における肥満や過体重についての現状を報告書としてまとめております。
これによれば、ヨーロッパ諸国における過体重と肥満を合わせた割合は、

  • 成人の場合:約60%…!
  • 男の子の場合:29%…!
  • 女の子の場合:27%…!

って感じだったらしい。やっぱこれぐらいの割合なんですね。
因みにWHOによればコロナ禍でBMIがアップした…!って傾向が出ていたらしく、コロナが終わった後の復興に肥満予防が必要だとおっしゃっておりました。



25年間にわたって195カ国で過体重と肥満の健康リスクを調べてみた…!

世界の疾病負担研究(GBD)2015によると、25年間にわたって195カ国で過体重と肥満の健康リスクを調べてみたそうです。
そもそも過体重や肥満は世界中で増加傾向にありまして、先行研究により高BMIは、

  • 心血管疾患
  • 糖尿病
  • 慢性腎臓病
  • 様々ながん
  • 様々な筋骨格系障害

などなど、慢性疾患リスクの増加要因だと分かっているんだとか。
ただ、これらが実際どの程度世界中で起こっているのか不明だったため、この度195カ国の過体重・肥満率、高BMIの死亡リスクを年齢と性別ごとに体系的にまとめてみたんだとか。
この研究は世界の疾病負担研究のデータベースを使ったもので、1980年から2015年までの子供と大人の過体重と肥満傾向をチェックしたと言うもの。因みにチェックしたサンプル数は6,850万人で対象となった国は195か国だったそうな。
それでは統計処理した結果を見てみましょう。
まずは1980年から2015年における肥満の蔓延率についてです。

  • 2015年には1億770万人の子供と6億370万人の大人が肥満だった…!
  • 全体的な肥満率は、子供が5.0%、大人が12.0%だった…!
  • 女性の肥満率は男性よりも一般的に高かった…!
  • 肥満率のピークは女性の場合が60~64歳、男性の場合が50~54歳だった…!
  • 肥満率の増加に男女で有意差はなかった…!
  • 男女とも肥満率の増加は成人初期が最も高かった…!
  • 20歳未満では肥満率に性差はなかった…!
  • 世界の子供の肥満率の増加は、全年齢層の男女で同じだった…!
  • 1980年以降、73カ国で子供と大人の肥満率が2倍になっていた…!
  • 上記以外のほとんどの国でも肥満率の増加が見られた…!
  • 子供の肥満率は大人の肥満率よりも低いが、多くの国で子供の肥満率の増加は大人の肥満率の増加を上回っていた…!

ということで、肥満はヤバい勢いで世界中に広まっているみたいです。
では、肥満がもたらす健康リスクはどんな感じだったのか1990年から2015年まででチェックした結果を見てみましょう。

  • 2015年には高BMIが400万人の死亡の一因となっていた…!
  • 上記結果は高BMIがあらゆる原因による死亡の7.1%に相当することを意味している…!
  • 高BMIに関係する死亡の39%はBMIが30未満の人(つまり過体重の人ですな)で発生していた…!
  • 心血管疾患は高BMIに関係する主な死亡原因であり270万人の方が亡くなっていた…!
  • つまり高BMIの死亡原因のうち、3分の2以上は心血管疾患によるものだった…!
  • BMI関係の死亡の41%は心血管疾患だった…!
  • 糖尿病はBMI関係の死亡原因の第2位であり60万人の方が亡くなっていた…!
  • 糖尿病によるBMI関係の死亡全体のうち9.5%はBMIが30以上(=肥満)で発生し、4.5%は BMIが30未満(=過体重)で発生していた…!
  • 慢性腎臓病とがんはBMI関係の死亡全体のうち10%未満を占めていた…!
  • 筋骨格系障害も10%未満を占めていた…!

肥満や過体重は、全死亡リスク、心血管疾患リスク、糖尿病リスク、慢性腎臓病リスク、筋骨格系障害リスクの増加と関わっているみたいですね。特に全死亡リスク、心血管疾患リスクはヤバいですな。
またこの研究では上記に挙げた病気を抱えながら生きる年数もチェックしたそうなんですが、

  • 17.8~41.4年…!

とのこと。
また主な原因別に見てみると、

  • 糖尿病→10.6~24.4年…!
  • 筋骨格系障害→3.4~8.8年…!
  • 心血管疾患→2.0~4.9年…!

って感じだったらしい。
いや~健康的に長く暮らすことが如何に肥満で脅かされるかが分かる結果ですな。特に糖尿病になると徐々に透析生活が始まって回数も増えるんで10年以上ってのは納得ですね。

肥満がここまで健康リスクを奪う要因っていうのを改めて思い知らされる結果でした。
因みにこの研究では最も死亡リスクが低かったBMI、つまりベストなBMIも出していたんですが、それは、

  • BMIが20~25が最も健康的だった…!

とのこと。
まさに標準体型ですね。納得。



個人的考察

気になる方は下記からご自身のBMIをチェックしてみてください。


また、BMIってどれぐらい正しいのか…?って疑問をお持ちの方は下記から精度を調べた研究が見られますんで、併せてご覧ください。




参考文献