【まとめ】抗栄養素(レクチン)の摂り過ぎはヤバいのか?豆類は食べるべきか?
抗栄養素とは、ビタミンやミネラルなどの吸収をブロックする成分のことを言います。いくらビタミンやミネラルが豊富な食品を摂っても、抗栄養素の食品を摂り過ぎれば当然ビタミンやミネラルが吸収されず不足しますのでダイエット時には注意が必要です。
では、具体的に抗栄養素(レクチン)についてみていきましょう…!
豆類はいつから食べていたのか…?
基本的に人類は長い時間をかけて環境に適応しようと進化してきました。となれば豆類がいつから食べられてきたのかはポイントになります。ということで早速研究を見ていきましょう。
2010年のジョージ・ワシントン大学の研究によると、ネアンデルタール人の食生活を調べてみたそうです。この研究は、イラクのシャニダール洞窟とベルギーのスパイ洞窟から見つかったネアンデルタール人の頭蓋骨を使い、プラークを回収、当時、何を食べていたかを調べてみたんだとか。
すると、
- 当時(約20万年前)からマメ科の植物を食べていた…!
そうです。
つまり、人類ははるか昔から豆を食べていたことになります。
また、トロント大学の名誉教授であるリチャード・ボルシャイ・リー教授の1979年の書籍によれば、ボツワナ共和国とナミビア共和国のカラハリ砂漠に住む狩猟採集民族サン人(ブッシュマン)が一番食べているのがモンゴンゴフルーツで、次に多いのが豆類だったそう。
更にオーストラリア先住民であるアボリジニの人々も豆類(アカシアの種)をたくさん食べているらしい。
現代に生きる狩猟採集民も豆類をメインとして食べているみたいですね。
これらをみると、メインの食材として豆類をチョイスしていても、病気にならずに暮らしている狩猟採集民は多いみたいなんで、まずは全く食べないという選択肢はなくて良さそうな感じ…。
レクチンは加熱調理をすれば毒性が消える…!
昔から豆類を食べてきたとはいえ、体に悪いのであればやっぱ食べない方が良いのでしょうか…?2002年のサンパウロ大学の研究によると、レクチンなどの抗栄養素は適切に処理すれば、慢性的に摂取し続けても、人の健康リスクに影響をもたらす可能性は低いとしています。ちゃんとレクチン対策をすれば食べても問題ないってことですね。一安心。
ではレクチンの適切な処理とはどうすれば良いのでしょうか…?
1998年の研究によると、レクチンは加熱調理をすれば毒性が消えるそうです。
1998年の研究によると、レクチンは加熱調理をすれば毒性が消えるそうです。
具体的には沸騰したお湯に10分程つければ毒性は消えるみたいなんで、しっかり煮てあげればよろしいかと思います。
因みに狩猟採集民のサン人(ブッシュマン)も豆類は水にしっかりつけた上で茹でて食べるみたい。つまり豆類は生で食べずに煮れば良い…!ってことですね。
レクチンが含まれている食材は普通にたくさんある…!
結果、29種類の食品にレクチンは含まれていたそうで、豆類はもちろん、
- ニンジン
- トマト
- ニンニク
- キノコ
- メロン
- ナッツ
などにも入っていたそうな。
つまり、レクチンが含まれている食材は普通にたくさんあるってことですね。
そのため、先に挙げた豆類や小麦食品なんかの穀物、じゃがいもなどレクチンが多く含まれている食材は加熱調理をして食べる、それ以外は普通に食べれば、摂りすぎるってことはないかと思います。ふ~、トマトとか普通に生で食べますので一安心ですね。
但し、やはり何事も例外と言うものがございまして、
その他の抗栄養素問題について
最後にその他の抗栄養素問題をまとめておきます。
- 豆類→上記の通りレクチン問題がある。また、総カロリーあたりの栄養価も意外と低かったりする。但し、発酵食品である納豆は積極的に食べていきたいところ。余談だが豆類はタンパク質が豊富(ソイプロテイン)だが、農薬の問題もありなかなか難しい食材だったりする。
- 小麦食品→上記やグルテンといった問題がある。主な物としてパンやパスタ、ピザ、大麦、ライ麦、オーツ麦、キヌア、ビールやシリアルなどがある。
- 玄米→抗栄養素が入っている食品。ストレスに効く食べ物だったりする。
豆腐は健康に良いのか…?
2016年の滋賀医科大学の前向きコホート研究によると、豆腐と脳卒中の関係について調べてみたそうです。
そもそも日本では昔から豆腐が食べられておりますが、これが脳卒中リスクをどう関係しているのかイマイチよく分かっていなかったそうな。そこで今回、日本人の男女を対象にチェックしてみることにしたらしい。
この研究は1980年に国民健康・栄養調査に登録された日本人男女9,244人を対象にしておりまして、24年間という長期にわたって追跡調査をしたと言うもの。参加者はスタート時、心血管疾患(CVD)がない方たちでして、食事内容については3日間の食事アンケートから推測してみたんだとか。つまりここから豆腐の摂取量を出したってことですね。
これらのデータを統計処理したところ、この24年間の中で、脳卒中により死亡した方は417人いたそうです。因みに内訳は、
- 脳出血:88人
- 脳梗塞:245人
- その他:84人
って感じ。
では、豆腐の摂取量との関連性を見てみましょう。
- 全年齢の男性と65歳以上の女性において、豆腐の摂取量と脳卒中は関係なかった…!
- 65歳未満の女性において、最も豆腐を摂取していた人たちは、最も豆腐を摂取していなかった人たちに比べて、脳出血のリスクが74%(HR0.26)も有意に低かった…!
65歳未満の女性だけ脳卒中の一つである脳出血リスクが下がるってのはなんかパッとしない結果ですね。
これについては研究者も同じような事をおっしゃっておりまして、
- 日本人の男女を長期にわたって追跡調査したこの大規模前向きコホート研究では、豆腐の摂取は、65歳未満の女性における脳出血リスクの低下を除いて、脳卒中リスクとは無関係だった。この結果について若い女性と実際に関係があるのか、単なる偶然なのか、更なる研究が必要である
としております。
豆腐の摂取量がアンケートからの推測だったり、観察研究だったりと偶然性も否めない感じみたいですね。
ということで豆腐が脳卒中リスクを下げる可能性はあまり期待しない方が良さげです。
大豆製品・大豆の発酵食品は健康に良いのか…?
2020年の国立がん研究センターの前向きコホート研究によると、大豆製品・大豆の発酵食品と死亡リスクの関係について調べてみたそうです。
皆さんもご存知の通り、伝統的な日本食ではよく大豆製品・大豆の発酵食品が食べられます。例えば、納豆とか味噌とか豆腐とか油揚げなんかですね。これらが全死亡リスクや原因別の死亡リスクと関係あるのか今回チェックしてみたんだとか。
この研究は2つの実験内容はこんな感じ。
【実験1】
- 1990年に開始、1995年に追跡調査
- 最終的に2012年12月31日(例外として1つの地域のみ2009年12月31日まで)まで追いかけ続けた
- 日本全国にある保健所から選ばれた5か所
- 対象者の年齢は45歳から64歳
【実験2】
- 1993年に開始、1998年に追跡調査
- 最終的に2012年12月31日(例外として1つの地域のみ2009年12月31日まで)まで追いかけ続けた
- 日本全国にある保健所から選ばれた6か所
- 対象者の年齢は45歳から74歳
また両方の実験で参加者にアンケートを行い、食事スタイルやライフスタイル、健康状態なんかを聞きつつ、死亡日・海外移住日・追跡期間最終日まで追跡したみたい。因みに大豆製品・大豆の発酵食品については、総大豆製品、大豆の発酵食品(納豆と味噌)、大豆の非発酵食品、豆腐の摂取量をチェックしております。
最終的な総サンプル数は92,915人(男性42,750人、女性50,165人)でして、そのうち亡くなった方は13,303人(男性8,370人、女性4,933人)、平均追跡期間は14.8年ということでした。
これらのデータを統計処理した結果、全死亡リスクとの関係は以下な感じになったそうです。
- 年齢と地域で調整後、男女別に見てみたが、両方とも総大豆製品の摂取量と全死亡リスクはわずかに逆相関していた。但し有意差はなかった。
- 総大豆製品の摂取量が最も多かった男性たちは最も少なかった男性たちに比べて、全死亡リスクが2%(HR0.98)低かった。
- 総大豆製品の摂取量が最も多かった女性たちは最も少なかった女性たちに比べて、全死亡リスクが2%(HR0.98)低かった。
- 年齢と地域で調整後、男女別に見てみたが、両方とも大豆の発酵食品の摂取量と全死亡リスクは逆相関していた…!
- 大豆の発酵食品の摂取量が最も多かった男性たちは最も少なかった男性たちに比べて、全死亡リスクが10%(HR0.90)低かった…!
- 大豆の発酵食品の摂取量が最も多かった女性たちは最も少なかった女性たちに比べて、全死亡リスクが11%(HR0.89)低かった…!
- 年齢と地域で調整後、男女別に見てみたが、両方とも大豆の非発酵食品の摂取量と全死亡リスクは有意な関係がなかった。
- 男性における大豆製品(納豆、味噌、豆腐)の摂取量と全死亡リスクは有意な関係がなかった。
- 納豆の摂取量が最も多かった女性たちは最も少なかった女性たちに比べて、全死亡リスクが16%(HR0.84)低かった…!
- 味噌の摂取量が最も多かった女性たちは最も少なかった女性たちに比べて、全死亡リスクが11%(HR0.89)低かった…!
次に原因別の死亡リスクとの関係は以下な感じになったそうです。
- 総大豆製品の摂取量と、がんによる死亡リスクに有意差はなかった。
- 納豆の摂取量が最も多かった男性たちは最も少なかった男性たちに比べて、心血管疾患による死亡リスクが24%(HR0.76)低かった…!
- 納豆の摂取量が最も多かった女性たちは最も少なかった女性たちに比べて、心血管疾患による死亡リスクが21%(HR0.79)低かった…!
- 大豆の発酵食品の摂取量が最も多かった男性たちは最も少なかった男性たちに比べて、心血管疾患による死亡リスクが18%(HR0.82)低かった…!
- 大豆の発酵食品の摂取量が最も多かった女性たちは最も少なかった女性たちに比べて、心血管疾患による死亡リスクが11%(HR0.89)低かった。但し有意差はなかった。
つまりざっくりまとめると、
- 大豆製品と死亡リスクは関係なさそう…。
- 納豆や味噌など大豆の発酵食品は良さそう…!
って感じ。
こうなると大豆製品は健康に関係なくて、発酵食品が健康に良い…!って感じがしますね。
豆類の健康効果についてアンブレラレビューを行ってみた…!
2019年のトロント大学の研究によると、豆類の健康効果についてアンブレラレビューを行ってみたそうです。
そもそも豆類(ひよこ豆、レンズ豆、インゲン豆、エンドウ豆)は、
- 食物繊維が豊富…!
- 植物性タンパク質(ソイプロテイン)が豊富…!
- 微量栄養素が豊富…!
であり、脂肪やGI値も低くダイエットや慢性疾患に良い…!って話があるんですよ。例えば2型糖尿病や心血管疾患リスクの低下、LDLコレステロールや血圧の低下なんかですね。ただよく分かっていなかったところもあるんで、今回、豆類の健康効果について先行研究をまとめてみることにしたらしい。
まず研究者たちは2019年3月までに発表された該当する系統的レビューやメタ分析をPubMed、MEDLINE、EMBASE、コクランで検索してみたそうです。すると47件の研究がヒットしたそうな。次にこの中で重複している物や質の低い物を除外していったとのこと。
最終的に選ばれた研究は6件でして、調べた健康効果は、
- 心血管疾患:3件
- 糖尿病:1件
- 高血圧:1件
- 肥満:1件
って感じ。
最後にこれらのデータをまとめた結果、豆類を最も摂取していた人たちは最も摂取していなかった人たちに比べて、
- 心血管疾患の発症リスク:8%(RR:0.92)有意に低下…!
- 心血管疾患の死亡リスク:3%(RR:0.97)有意ではない低下…。
- 冠状動脈性心疾患の発症リスク:10%(RR:0.90)有意に低下…!
- 冠状動脈性心疾患の死亡リスク:6%(RR:0.94)有意ではない低下…。
- 心筋梗塞の発症リスク:10%(RR:0.90)有意ではない低下…。
- 脳卒中の発症リスク:2%(RR:0.98)有意ではない低下…。
- 脳卒中の死亡リスク:11%(RR:0.89)有意ではない低下…。
- 糖尿病の発症リスク:7%(RR:0.93)有意ではない低下…。
- 高血圧の発症リスク:9%(RR:0.91)有意に低下…!
- 肥満の発症リスク:13%(RR:0.87)有意に低下…!
していたとのこと。
いくつかは良い結果が出ていますねー。
但しそれぞれの研究のエビデンスレベルを調べたところ、
- 心血管疾患の発症リスクのエビデンスレベルは低かった…。
- それ以外は非常に低かった…。
って感じでして、質の高い結果がなかったみたい。
う~ん。残念ですね…。
ということで豆類については、もしかしたら健康に良いのかも…?ぐらいであんま期待しない方が良さげ。まぁ、好きなら食べても良いし、無理して食べなくても良いと言うところでしょうか。
個人的考察
抗栄養素はあくまで摂り過ぎに注意しつつ、後は自分の体質に応じて食べて行くのがよろしいかと思います。
余談ですが、ソイプロテインよりホエイプロテインの方が良いよ~って理由の一つに豆類の抗栄養素があったりもします。その当たりも合わせて押さえておくとよろしいかもしれません。
参考文献
リンク