皆さんはダイエットと聞いて真っ先に運動(有酸素運動)や筋トレ(無酸素運動)を思い浮かべませんか…?
確かにメディアで出ている普段運動や筋トレしている方(フィットネストレーナーなど)は皆スリムですよねー。運動でダイエットだ…!みたいなCMも多いですし…。
しかし一方でこんな話しを良く聞く事がございます。

  • 運動しているのに痩せない…。
  • ランニングしているのに痩せない…。
  • 始める前と全く同じ体重を維持している…。
  • むしろ始めた時よりも体重が増えている…。
  • 体重が増えた原因が筋肉ではなく余分な脂肪によるものだった…。

これは一体どういうことなのか…?
…ってことで早速、この謎の現象について参考になりそうな研究を見ていきましょう…!



体重に変化なし…!体脂肪・代謝に変化アリ…!

まず初めに見ていきたいのが1994年のメリーランド大学の研究になります。この研究によると、50歳から65歳の健康な男性13人を対象に筋トレの効果を調べたそうです。実験の流れとしては、筋トレ前に測定を行い、その後筋トレプログラムを実施。終了後、再度測定したんだそうな。
16週間後の結果は、

  • 体重に変化なし…!
  • 体脂肪が減った…!
  • 代謝が上がった…!

ってことで、ダイエットの目的が体重を落とすだと効果がない感じですが、脂肪を減らす、代謝を上げるだと効果アリといった感じですねー。



筋肉がついて、消費カロリーが減って代謝が上がった…!

お次は1997年のマーストリヒト大学の研究を見ていきます。男性26人を対象に筋トレが1日の平均代謝率にどのような影響を及ぼすのかを調べたそうです。期間は18週間で、26人のうち、18人には筋トレプログラムを行ってもらい、8人には普通に生活してもらったそうな。
データの測定は開始前、8週間後、18週間後に行ったそうで、比べてみた結果、

  • 18週間後には平均で1.4kgも筋肉がついていた…!
  • 1日の消費カロリーが263kcalも上がっていた…!
  • 1日の平均代謝率が大幅に増加していた…!

って感じだったとのこと。
筋肉がついて、消費カロリーが減って代謝がアップしたってことでこれまたダイエットに使えそうな雰囲気がありますね~。



ダイエットには筋トレが良いのか有酸素運動が良いのか調べてみた…!

1997年のコロンビア大学の研究によると、ダイエットには筋トレが良いのか有酸素運動が良いのか調べてみたそうです。
この研究は、19~48歳の中程度の肥満の方65人(男性25人、女性40人)を対象に行ったとのことで、以下の3グループのいずれかにランダムに振り分けたそうな。

  1. 食事制限+筋トレ
  2. 食事制限+有酸素運動
  3. 食事制限のみ

食事制限については3グループとも一緒で、安静時代謝率の70%か、1日5150±1070kJに設定したそうです。
筋トレ、有酸素運動については同じ消費カロリーになるよう設定したそうで、週3日のペースで行ったんだとか。因みに筋トレは上半身と下半身を行い、有酸素運動は脚と腕を交互にサイクリングしたそうです。
実験期間は8週間だったそうで、結果は、

  • 平均9.0kgのダイエットに成功した…!
  • 体重減少について筋トレ・有酸素運動に有意差はなかった…!
  • しかし、筋トレは、有酸素運動や食事制限のみに比べ、筋肉量の減少が明らかに少なかった…!
  • 筋トレは、腕の筋肉量のアップと、握力アップをもたらしていた…!
  • 平均安静時代謝率が大幅に低下していたがグループ間の差はなかった…!
  • peak VO2(最高酸素摂取量=持久力)は、有酸素運動が最もアップしていた……!

だったそうです。
筋トレと有酸素運動のダイエット効果が同じってのは面白いですねー。
但し、筋トレは筋肉量の減少が抑えられるけど、有酸素運動は筋肉量が減っちゃうみたいですね。代わりにpeak VO2がアップすると…。体脂肪と筋肉量は基本同時に増えて同時に減るんで、それを筋トレで抑えられるみたいですね。



ダイエットで短期的な結果を見るとカロリー制限+有酸素運動が良さそうだけど、中長期的にみたらカロリー制限+筋トレが良さそう…!

1999年のウェストバージニア大学の研究によると、カロリー制限ダイエット+筋トレの効果を調べてみたそうです。
この研究は、男女20人(女性17人、男性3人、平均年齢38歳)を対象に以下の2グループにランダムに分かれてダイエットを行ってもらったそうな。

  1. カロリー制限+有酸素運動:10人が参加。1日800kcalという超カロリー制限で過ごしてもらう+週4日で1回1時間、ウォーキング、サイクリング、階段上りをローテーションで行う。
  2. カロリー制限+筋トレ:10人が参加。1日800kcalという超カロリー制限で過ごしてもらう+週3日で筋トレを行う。最初は8~15回×2セットで行い、最後は8~15回×4セットに増やした。つまり徐々にセットを増やして負荷を上げていった。

実験期間は12週間で結果はこんな感じ。

  • VO2max(最大酸素摂取量)は、2グループとも同じように大幅にアップした…!
  • 体重は、カロリー制限+筋トレよりもカロリー制限+有酸素運動の方が明らかに減少していた…!
  • 筋肉量は、カロリー制限+有酸素運動の場合、4kg(51から47kg)も減っていた…!
  • 筋肉量は、カロリー制限+筋トレの場合、変化はなかった…!
  • 1日の安静時代謝率は、カロリー制限+筋トレの場合、2.6から3.1もアップしていた…!
  • 1日の安静時代謝率は、カロリー制限+有酸素運動の場合、減少していた…!

つまり、

  • カロリー制限+有酸素運動だと、体重は減るけど筋肉が減っちゃって代謝も落ちちゃう…。
  • カロリー制限+筋トレだと、体重は少ししか減らないけど筋肉が維持できて代謝もアップできる…!

って感じですね。
ダイエットで短期的な結果を見るとカロリー制限+有酸素運動が良さそうだけど、中長期的にみたらカロリー制限+筋トレが良さそうです。



一方で消費カロリーは少ない…!って話もある…。

ここまでだとやっぱ、ダイエットには運動…!筋トレだ…!ってなるんですが、どうやらそんな簡単な話でもないみたいです。
というのも2001年のセントルークスルーズベルト病院の研究では、人体の色々な場所の消費カロリーを調べたそうなんですが、結構、消費カロリーが少なかったんですよね。
例えば、1kg当たりの各場所の消費カロリーを見てみると、

  • 脳:220kcal
  • 心臓:400kcal
  • 肝臓:180kcal
  • 腎臓:200kcal
  • 筋肉:13kcal
  • 脂肪:4kcal

だったそうです。
筋肉を1kgもつけても消費カロリーはたったの13kcalという全くやる気の起きない結果なんですよ(笑)。ほんと、必死に運動なり筋トレなりして筋肉をつけて1kgで13kcalは意味がないレベル…。

でも、不思議なのが筋肉の消費カロリーというパーツでみた場合は意味なしレベルでも、上記に挙げた研究の通り実際は結構良い感じの効果も出ております。
この矛盾についてはいくつかの説があるそうで、

  • 成長ホルモンが促進する為じゃないか説
  • 運動時は消費カロリーが上がるんじゃないか説
  • 筋肉がつくと運動後の消費カロリー量がアップする為じゃないか(いわゆるEPOC)説

などが考えられるそうです。
特にEPOCは確かにわかる話で、筋肉修復にはタンパク質を使って代謝を上げて行いますんで、運動や筋トレを行い、更に筋肉量が増えればそれだけ消費カロリーが増えるのも納得ですよね。
つまり、筋肉それ自体の消費カロリーはないに等しいが、EPOCなどの他の要素が絡むんで結果、消費カロリーはアップして痩せる…!みたいな構図が考えられそうってことですね。
因みにEPOCの消費カロリーは1kg当たり約150kcalなんて話もあるんで、これならダイエットに使えそう…!って感じですね…!


それでもダイエットの優先順位を考えると、食事や睡眠よりは一歩後退って感じですね。なんせ、運動の習慣化は大変ですし、辛いし、時間もかかる割には効果が低いんで…。つまり、ダイエット目的で最初に運動を行うとか運動だけするのは非常に効率が悪いってことですね。個人的にはそれよりもニートに力を入れた方が良いと思います。
それと大きなメリットとして運動によってカロリー消費は期待できないけど、セットポイントが正しく動くようになるというのもありますんで、運動はやっぱした方が良いかと思います。



1年半ランニングを続けてもらっても女性の体脂肪は減らなかった…!

1989年のマーストリヒト大学の研究によると、ランニングと食事摂取量・体組成の関係について調べてみたそうです。
この研究は普段座りがちな男性18人、女性9人の計27人が参加したもので、全員にランニングを行ってもらったと言うもの。実験期間は結構長くて1年半(18ヶ月)も行ってもらったんだとか。また食事摂取量は7日間の食事記録から計算したとのこと。
んで、食事摂取量と体組成については以下のタイミングでチェックしたそうな。

  1. 実験開始時
  2. 実験開始から1年後
  3. 実験終了時

1年半後の結果がどうだったかと言いますと、

  • 男性の体脂肪:体脂肪が2.4kgも減った…!
  • 女性の体脂肪:体脂肪が変わらなかった…!
  • 男性の1日のカロリー摂取量:131kJ/kgから159kJ/kgと大幅にアップしていた…!
  • 女性の1日のカロリー摂取量:141kJ/kgから147kJ/kgと有意な変化はなかった…!
  • 男性の炭水化物摂取量:63.7~81.7kJ/kgと有意にアップしていた…!
  • 女性の炭水化物摂取量:68.0~81.9kJ/kgと有意にアップしていた…!

1年半走り続けることにより、男性はより多くのカロリーを摂取して、体脂肪も減っているって感じですね。それに対して女性は変化がないと…。そして男女ともに炭水化物の摂取量が増えたみたいですな。
更に面白いのが、女性のみ炭水化物の摂取量が増加した代わりに脂肪の摂取量が減っていたらしい。
また研究者によれば、これらの食生活の変化は心血管疾患の健康リスクを改善するので良い事だという話でした。



運動でのダイエット効果は皆が予想するよりも30%しか効果がない…!

2001年のクイーンズ大学の研究によると、運動による体重減少・脂肪減少(特にウエストの脂肪減少)の効果についてレビューしてみたそうです。
このレビュー論文は1966年から2000年までに発表された該当する先行研究のデータを見てみたというもので、

  • 短期間の研究:運動期間が16週間以下の研究。全部で20件あった
  • 長期間の研究:運動期間が26週間以上の研究。全部で11件あった

って感じなんですよ。
んで、確かに短期間の研究結果では体重や体脂肪が減っていたんですが、長期になると一変しまして、

  • 26週間以上の運動を続けた研究では、平均体重の減少は予想の30%に過ぎなかった…!

ってことなんですよね。
つまり皆が抱く運動の減量効果のわずか3分の1しかないってことに…。


同じ運動を行っても男女で効果に違いが出るし、期待した効果も出ないっては悲しいですね。
それと運動のダイエット効果ってのは個人差も結構あるんでそれらも踏まえるとより複雑になってくるんではないかと。更に体重が減ったと思ったら筋肉量も減っていた、体脂肪が増えていたなんてこともあるんでこれらを見ていると運動、特にランニングやマラソン、ジョギングでダイエット効果を期待しないのが良いんではないのかな~と思います。



運動で痩せない!むしろ太った!の原因は心理面っぽい…!

2015年のNEW YORK THE CUTに載っているハーバード大学の研究によると、マラソンと体重の関係について調べてみたそうです。
この研究は64名の方を対象に行ったもので、

  1. マラソンを始める前の体重
  2. マラソンを始めた後の体重

をチェックしたと言うものになります。
週4日のランニングを3月間続けた結果、

  • 参加者のうち約11%の方は体重が減っていた…!
  • 参加者のうち約11%の方は体重が増えていた…!
  • 参加者のうち約78%の方は体重が変わらなかった…!
  • 体重が増えたうちの86%は女性だった…!

とのこと。
因みに体重が増えたことと筋肉量は関係なかったそうなんで単純に体脂肪が増えたみたいです。
この結果を踏まえて研究者曰く、

  • 走れば体重が減るという考えは現実的ではない。むしろ、このようなことが起こる理由は生理学よりも心理学と関係があり、その多くは運動の目的の誤解に起因していそうだ

ということです。
どうやらこの研究者は原因を心理面と捉えているみたいですねー。
では心理面とは具体的に何なのか次から見ていきましょうかね。



運動したせいで食べる量が増えたっぽい…!

2015年のアリゾナ州立大学の研究によると、女性を対象に有酸素運動におけるダイエット効果について調べてみたそうです。
そもそも前提として、


ってことが先行研究で分かっておりました。
ではなぜ運動をするとカロリーは消費されているのに、体重や体脂肪が変わらない、増えるのかってことを今回チェックしてみることにしたそうな。
この研究は、19~45歳までの女性82人が参加したもので、後に1人脱落したんでサンプル数は81人となっております。そして参加者は全員健康なんですが肥満な方が多く、また定期的(週1~2日以上の運動)な有酸素運動、筋トレ、ダイエットなんかを行っていない方々だったみたい。
実験の流れは、まず参加者全員にラボに来てもらい、体重やBMI、体脂肪率(DXAを使用)、現在の心肺機能、健康や運動能力を測定したとのこと。続いて以下の状況で運動を行ってもらったらしい。

  • 週3回、ラボ内のトレッドミルで走ってもらった。
  • 最初に5分間のウォームアップを行い、その後20分走って、5分間のクールダウンという流れだった(合計30分)
  • 全力の約80%のパワーで走ってもらった。
  • 運動は全て研究者の監視付きで行われた。
  • 運動は連続しないように日にちを空けて行われた。
  • 期間は12週間だった。そのため全部で36回運動した。
  • トレッドミルの速度は12週間を通じて一定だったが、約80%のパワーが維持できるよう傾斜を上げた。

併せて毎月、スタート時と同様の測定を繰り返したそうです。
運動についてかなり厳密にした感じが良いですね。しかしここでポイントなのが厳密にしたのが「運動のみ」ということ。つまり研究者たちは、食生活については何も指示しなかったんですよね。
その結果どうなったかと言いますと、

  • 参加者全員の心肺機能は大幅にアップしていた…!
  • しかし全体的にみると体重や体脂肪、ウエストに大きな減少はなかった…!
  • 除脂肪体重(≒筋肉量)は大幅にアップしていた…!

って感じ。
やっぱり平均的にみるとダイエット効果がないですな。
そして冒頭で書いた通りやっぱり個人差がめちゃめちゃ高くて、

  • 体重:-11.7kgも痩せた人もいれば+4.8kgも太った人もいた…!
  • 体脂肪:-11.8kgも痩せた人もいれば+3.7kgも太った人もいた…!
  • 筋肉量:-3.6kgも減った人もいれば+4.0kgも増えた人もいた…!

ってことでした。
わずか3ヶ月で12kg近く体重や体脂肪が落ちたり4kgも筋肉を付けた人がいた一方で3ヶ月で5kg太った人もいたってのはすごいですね…。
更にデータを細かく見ていくとある一つの法則があったそうな。それは実験終了後体重が減っていた人はスタートから一貫して減り続けていたということ。それに対して変わらない、増えた人はこのような傾向がなかったんだとか。
つまりこれが意味するところは、

  • 食事やその他の活動で何かが起きている…!

ということ。
つまり運動したという安心感から、

  • 無意識に食べる量が増えている…!
  • 普段の運動量(NEAT)が減っている…!

ってことです。
確かに運動した安心感からついつい食べて動かなくなるってのは有り得そうですね。しかも運動の消費カロリーは少ないんで、結果、消費カロリーよりも摂取カロリーの方が上回ってしまうと…。
但し研究者は実験終了後、参加者全員が健康的になったと話しております。運動のダイエット効果は芳しくありませんでしたが、健康効果は間違いなくあったみたいですね。



ほとんどの人は実際よりも激しい運動をしていると思いがち…!

2014年のヨーク大学の研究によると、主観的な運動強度が実際の強度とどれぐらい合っているのか調べてみたそうです。
この研究は18~64歳の成人男女129人(男性39人、女性90人)が参加したもので、参加者はランダムに軽度、中程度、高強度だと自分が思う速さでトレッドミルの上を歩いたり走ったりしてもらったと言うもの。因みに軽度、中程度、高強度といった3つの運動強度の説明(定義)は以下だったんだとか。

  1. 軽度:体が温かいと感じ始め、呼吸がわずかに増加するぐらい(最大心拍数の50~63%)
  2. 中程度:体が温かくなり、呼吸も大きく増加するぐらい(最大心拍数の64~76%)
  3. 高強度:体がかなり温かい感じで、息も切れた状態ぐらい(最大心拍数の77~93%)

因みに参加者は心拍数モニターを付けた状態で各強度の速度を2~3分間歩いたり走ったりしたそうな。次に健康上のメリットが得られそうな速度を主観で捉えて3分間歩いたらしい。
最後に集まったデータを統計処理したそうです。これで主観的な運動強度(軽度、中程度、高強度)が実際の運動強度と合っているのか分かりますな。因みに性別や人種、年齢やBMIによっても違いが出るのかもチェックしたとのことでした。では結果を見てみましょう。
まずは参加者全体の主観的な運動強度の照らし合わせからです。

  • 軽度:主観は最大心拍数の51.5±8.3だった。最大心拍数の50~63%からみて、正しく判断できていた…!
  • 中程度:主観は最大心拍数の58.7±10.7だった。最大心拍数の64~76%からみて、低く判断していた…!
  • 高強度:主観は最大心拍数の69.9±11.9だった。最大心拍数の77~93%からみて、低く判断していた…!
  • 健康上のメリットが得られそうな速度の主観は最大心拍数の57.4±10.5だった。中程度の最大心拍数は64~76%なので低く判断していた…!

どうやら軽度は正しく判断できるけど、中程度や高強度は実際もっと高いレベルなのに低く思っているみたいですな。
また若者と中年~高齢者での健康上のメリットが得られそうな速度の主観は違いまして、

  • 若者:最大心拍数の56.6±9.4
  • 中年~高齢者:最大心拍数の59.5±13.5

って感じだったんですよ。
つまり若者の方がより低く見積もっていたってことですな(まぁ、それでも中高年でも低く見積もっていたんですが)。因みに性別や人種、BMIによっての違いはなかったそうです。
まとめると、

  • ほとんどの人は楽なペースでの運動を正確に見積もることができる…!
  • しかし普通や激しいペースでの運動を正確に見積もることができない…!
  • つまり、軽度を除き、ほとんどの人は実際よりも激しい運動をしていると思っている…!

って言うことになりましょう。
運動でのカロリー消費は皆が思っているほど多くないのに、更に実際自分が行ったダイエットの見積もりが甘くて、思っている以上に全然運動していないとなれば、これは痩せないのも無理からぬ話ですな。

この「いっぱい運動した…!」っていう過大評価(バイアス・思い込み)は、初心者のマラソン選手に特に起こりがちだそうです。例えば、ランニングを週7日で中~高強度のペースで走っている人はほとんどいないでしょう。マラソンは長距離走なんで自ずと全力を出すシーンは少なく、結果、強度は下がってしまうんですな。そして大体の方は週3~4日のランニングをしていると言います。しかし一方で、週3~4日でジムに通い、走ったり筋トレしたりする人は全然珍しくありません。
これらを見ても、運動でダイエットやランニングでダイエットが如何にムリゲーか分かるかと。



ではどうしたらいいのか…?

これまで見てきた研究により、

  • 運動のダイエット効果は低い…!
  • にも関わらず、運動した安心感からついつい食べて動かなくなる…!
  • 更に運動でダイエットしても実は思っている以上に運動していない…!

ってことが分かりました。
それではどうしたらいいのか…?ってことで、早速結論から申しますと、

  • 運動を楽しみと捉えモチベーションをアップし自然ともっと運動や健康的な食事をするようにする…!
  • 運動の目的をダイエットにしない…!健康を目的にする…!

ってのが大事になります。
では具体的に見ていきましょう…!



運動を行う前に運動をして楽しかったことを思い浮かべよう…!

2013年のニューハンプシャー大学の研究によると、過去の記憶を利用して運動するようになるのか調べてみたそうです。
まず研究者たちは、参加する大学生に実験の主旨を秘密にしつつ、運動のオンラインアンケートを実施したそうな。
具体的には、

  • 運動することについてどう思っているか…?
  • 運動のモチベーションはどうか…?
  • 自分の行動についてどう思っているか…?

なんかを聞いたとのこと。
次に参加者を3グループに分けて以下のことを伝えたみたい。

  1. 運動のモチベーションがアップする過去のポジティブな運動の記憶を思い出してください。
  2. 運動のモチベーションがダウンする過去のネガティブな運動の記憶を思い出してください。
  3. 何も伝えない(コントロール群)

上記アンケートに回答してから8日後、大学生たちは更にアンケートを受け取ったそうな。
そこで、実際にどれぐらい運動のモチベーションが変わったのかをチェックしてみたらしい。
その結果、

  • 運動に対してポジティブな記憶を思い出した大学生は大幅にモチベーションが上がった…!

とのこと。
つまり、運動を行う前に運動をして楽しかったことを思い浮かべるようにするとモチベーションが湧きそうな感じなんですよね~。これは手軽な方法なんで是非取り入れていきたいですな。
因みにこの効果は、以前までの運動に対する考えやモチベーション、運動頻度とは関係なくアップしたみたいなんで、どのような方でも使えるテクニックっぽいです。
まぁ、自己申告に基づいているところがあるんで、研究の質はそんなに高くないんですが副作用はないと思いますんで、このテクニックを使い自然にもっとたくさん運動するようにしてきたいですね。



運動を運動として捉えず楽しみとして捉えよう…!

以前に当ブログでも登場し「そのひとクチがブタのもと」でも有名なコーネル大学のブライアン・ワンシンク博士の2014年の研究によると、運動に対する考え方の違いがその後のカロリー摂取にどう影響するのか調べてみたそうです。
そもそも運動を行っても必ずしも体重が減るわけじゃございません。その理由の一つが運動したご褒美としてついつい自分にお菓子など与えてしまうからです。また他にも、運動による消費カロリーを過大評価することも考えられます。このような弱点を対策するために運動に対する認識の違いが有効なのかこの度チェックしてみることにしたんだとか。
ということで今回研究者たちは、3つの実験を行ってみたそうです。


実験1:運動に対する認識の違いで運動後の食事量やデザートの選択が変わるのか調べてみた…!

まず1つ目の実験では、運動に対する認識の違いで運動後の食事量やデザートの選択が変わるのか調べてみたそうです。
この研究は大学の女性事務員56名(平均年齢44.52歳)が参加したもので、参加者のうちの約半数(25名、44.6%)はBMIが正常な方だったんだとか。んで、その56名を以下の2グループにランダムに振り分けたそうです。

  1. 運動を楽しみとして捉えるグループ:目的は何か楽しいことをすることであると言われ、30分間、大学のキャンパス内を音楽を聴きながら(楽しんで)歩いてもらう。
  2. 運動を運動として捉えるグループ:目的は運動(=ウォーキング)であると言われ、30分間、大学のキャンパス内を真剣に歩いてもらう。

次に参加者全員には個別に食べ放題のビュッフェを好きなだけ食べてもらったとのこと。そして、以下の2種類のデザートから好きな方を選んでもらったらしい。

  1. アップルソースのデザート(ダイエットに良いデザート)
  2. チョコレートプリン(ダイエットに良くないデザート)

どちらか1種類しか選べないものの、選んだ方は好きなだけ食べることができたそうです。
また、参加者は飲み物も以下の2種類から選べたそうで部屋の隅に取りに行ってもらったそうな。

  1. 水(ダイエットに良い飲み物)
  2. コーラ(ダイエットに良くない飲み物)

これもどちらかを選んでもらったそうです。
んで、参加者が部屋の隅に行き、飲み物を取っている間に、研究者はこっそりとビュッフェの皿の重さをチェックしたそうな。その後、普通に食べてもらったとのこと。
参加者の食事が終わり退室した後、食べ残しの重さを量り、実際に食べた量を計算したら実験終了です。
では結果がどうだったかと言いますと、

  • どちらのグループも歩いた距離の認識に違いはなかった…!
  • どちらのグループもウォーキングの主観的なカロリー消費量に違いはなかった…!
  • どちらのグループもビュッフェのメインディッシュの総カロリー量に違いはなかった…!
  • 運動を楽しみとして捉えるグループは、運動を運動として捉えるグループよりも、アップルソースのデザート(ダイエットに良いデザート=カロリーの少ない方のデザート)を選んでいた…!
  • 運動を楽しみとして捉えるグループは、運動を運動として捉えるグループよりも、水(ダイエットに良い飲み物=カロリーの少ない方の飲み物)を選んでいた…!

とのこと。
つまり両グループとも同じように運動し、同じようにカロリーを消費したと思っており、同じ量の食事を食べていたんだけど、デザートや飲み物といった間食に近い物だけは無意識に違ったみたいですね。ここで総カロリー摂取量が変わるのか…。
また他にも違いが出ておりまして、

  • 運動を運動として捉えるグループは、運動を楽しみとして捉えるグループよりも、ウォーキング後の疲労感が高かった…!
  • 運動を楽しみとして捉えるグループは、運動を運動として捉えるグループよりも、ウォーキング後、よりポジティブな気分になった…!

そうなんですよね。
因みにこのポジティブな気分はデザートや飲み物のチョイスに影響があったそうなんですが、疲労感に関しては関係なかったそうです。
これらを見ると、どうやら運動=楽しむことと捉え集中すると、運動への辛いイメージが軽減され、疲労感を感じ辛くなり、ポジティブな気分が高まるみたいですね。その結果としてデザートや飲み物といったご褒美(報酬)になるような食べ物を選ぶことが少なくなると。


実験2:音楽以外の方法で楽しみを感じてもらい、同様の結果が得られるのか調べてみた…!

次に2つ目の実験を見てみましょう。
1つ目の実験により運動を楽しみと捉えた方が良いということが分かりました。んがしかし、その楽しみってのは音楽しか該当しないのか、他はダメなのかが実験1だけでは分からないという問題がございました。
そこで実験2では、音楽以外の方法で楽しみを感じてもらい、同様の結果が得られるのか調べています。
この研究は大学の事務員46名(女性87%、平均年齢44.35歳)が参加したもので、参加者のうちの約7割(32名、69.6%)はBMIが正常な方だったんだとか。んで、その46名を以下の2グループにランダムに振り分けたそうです。

  1. 運動を楽しみとして捉えるグループ:目的はキャンパスの訪問と観光(楽しいこと)であると言われ、30分間、大学のキャンパス内を歩いてもらう。
  2. 運動を運動として捉えるグループ:目的は運動(=ウォーキング)であると言われ、30分間、大学のキャンパス内を真剣に歩いてもらう。

今度は音楽の代わりに楽しみのベクトルをキャンパスの訪問と観光にしたんですな。
んで終わった後に、今回はお菓子(M&M's)を渡したそうです。その際、自分が欲しい分を好きなだけ取ってもらったとのこと。そしてこれまたこっそり研究者がとったお菓子の重さを量ったみたい。
その結果、

  • 1つ目の実験同様、楽しむことを意識すると、取るお菓子の量が減った…!
  • 運動を意識すると、より多くのお菓子を取っていた…!

そうです。
どのような方法でも良いので運動イコール楽しいと捉えられるようにすると、自然と間食が減るみたいですな。


実験3:ラボ内では方法を問わず運動イコール楽しいと捉えると良かった…!では実生活ではどうなのかフィールド調査をしてみた…!

最後は3つ目の実験です。
実験1、実験2により方法を問わず運動イコール楽しいと捉えると良いということが分かりました。しかし、今までは主にキャンパス内(ラボ内)の研究だったので、これが実生活でも同様なのかという疑問が残っております。そこでフィールド調査をしてみたそうです。
この研究は、16歳~67歳までのマラソンランナー231名(男性65.1%、平均年齢35.64歳)が参加したもので、参加者のうちの約8割(182名、79%)はBMIが正常な方だったんだとか。まず今まで同様、参加者を

  1. 運動を楽しみとして捉えてもらう
  2. 運動を運動として捉えてもらう

のどちらかにランダムに振り分けたそうです。
続いて参加者に、6人1チームになってもらい駅伝を走ってもらったらしい。因みに各区間の距離とそこを走った人数はこんな感じ。

  • 5kmコース:118名(50.4%)
  • 10kmコース:85名(36.6%)
  • 7.195kmコース:29名(12.5%)

その後、参加してくれたお礼として以下の2種類のどちらかの軽食を選んでもらい食べてもらったそうな。

  1. チョコレートバー(不健康な軽食)
  2. シリアルバー(健康的な軽食)

最後にデータをまとめてみると、以下のような傾向があったらしい。

  • 駅伝を楽しみと捉えた参加者はシリアルバー(健康的な軽食)を選ぶことが多かった…!
  • 駅伝を運動と捉えた参加者はチョコレートバー(不健康な軽食)を選ぶことが多かった…!
  • 上記結果に走った距離は関係なかった…!

どうやら楽しんでランニングをすると健康的な食事になるみたいですねー。


まとめ

3つの実験により、ラボ内と実生活(フィールド調査)の両方で、運動を運動ではなく楽しみとして捉えることが、参加者のその後の食事行動に良い影響を及ぼすことが分かりました。そしてこの効果はBMIを調整しても一貫していたそうなんで、どのような方にも当てはまりそうです。
運動を運動として捉えるとどうしても義務って感じになり、その結果、脳の報酬系が見返りとしてご褒美を求めてしまうみたいなんで、運動は楽しんだ方が良いと覚えておきましょう。
因みに研究者も、

  • 運動は苦痛に耐えるものではなく、楽しむものであると考えたほうがよいだろう

とおっしゃっております。
またこれらを踏まえ、研究者は最後にこんなアドバイスをしておりました。

  • 減量の為に運動を始めようと考えている人は、運動は楽しいものと捉え、あるいは少なくとも仕事や運動としては捉えないように考えることを強くオススメする。ランニング中に音楽を聴く、ウォーキング中に電話をかける、トレッドミル中に動画を視聴することは、これまで考えられていたよりも減量の成功と忍耐力アップに関係している可能性が高いからだ。

以前に書いた通り、私は毎日のトレッドミルによるウォーキング中に調べ物をしたり、スマホゲーをしたりしているんですが、あれはダイエットにも良いのか(笑)



運動の目的イコールダイエットにしない…!運動がもたらすあらゆるメリットを心に留めておくべし…!

運動の目的をついつい減量やダイエットとしてしまう場合がありますが、これが良くないのは今まで見てきたとおりです。ではどうすれば良いのかというと、運動がもたらすあらゆるメリットを心に留めておくことが重要なんだとか。
運動のメリットは、減量やダイエット以外にも

  • ストレス解消
  • 気分の改善
  • 脳機能のアップ
  • 活力の向上
  • 幸福感のアップ
  • 睡眠の改善
  • 男性らしさ、女性らしさのアップ

などなどたくさんございます(詳しくは「有酸素運動・無酸素運動(筋トレ)の効果を片っ端から挙げてみる!」の記事をご覧ください)
そしてマラソンやランニング、ジョギングといった走る場合には、

  • 屋外だと一緒にランニングする新しい仲間が出来る可能性がある…!
  • 室内だと同じジムに通っている新しい仲間が出来る可能性がある…!

があるんですよね。
また、ランニング(有酸素運動)は特に心臓、脳、血管を健康にすることは確立されておりますんで、健康を目的にするのが最も良いと思われます。
ダイエットのみの為に毎日運動・走っていると、疲れ果てて嫌になってきたとき、必死にやめる言い訳を考えてしまいます。ダイエット・減量ってのはそれほど非常に薄っぺらいモチベーションの目的・理由なんですよね。しかしちょっと考えれば、他の目的・理由はたくさんあります。
そのため、違う目的で運動・走っていたら結果的に「ダイエットした・減量した」ぐらいの方が成功しやすいんですよね。因みにハーバードビジネススクールのエイミー・カディ教授の目標設定の話も参考になるんで見ておくと良いかもしれません



まとめ

誰もが知っているように、ダイエット・減量の基本は非常にシンプルです。

  • 1日に摂取するカロリーよりも多くのカロリーを消費すること

これしかありません。これを続けると、時間の経過とともに体重は減っていきます。
短期間で誰もが驚くような、劇的な変化なんてありません。あればそれはかなりのデメリットを背負うことになる方法のみです。
これを忘れないようにしつつ、まずは消費カロリー(運動・ランニング)よりも、摂取カロリー(食事)の方を最優先で手を付けて頂けたらと思います。



運動で痩せない原因は空腹感が増してカロリー摂取量が多くなっていたから…!

2008年のリーズ大学の研究によると、運動でカロリー消費量がどう変化するのか調べてみたそうです。
この研究は、過体重や肥満体型であり、且つ普段座りがちな男女35名(BMI=31.8±4.1、平均年齢39.6±11.0歳)を対象に行ったもので、研究者が監視する中、週5回の運動を12週間続けてもらったと言うもの。併せて実験のスタート時と終了時に体重や体組成、安静時代謝率、1日のカロリー摂取量、主観的な食欲なんかをチェックしたらしい。
最後にデータを比べてみた結果、

  • 全ての参加者データを統合すると、体重が平均3.7±3.6kg減っており、有意だった…!
  • しかし、体重の変化は-14.7~+1.7kgと大きな個人差があった…!

とのこと。
全体的にみれば確かに運動で減量できたけど人によっては体重が変わらない、むしろ増えた人もいたみたいですねー。
ではその辺をもう少し詳しく見ていきましょう。研究者は、しっかり痩せた人(平均6.3±3.2kg痩せた人)とちょっとしか痩せなかった人(平均1.5±2.5kg痩せた人)の2グループに参加者を振り分けて再度データを比べてみたそうな。
するとグループ間には、代謝、1日のカロリー摂取量、主観的な空腹感に違いがあったらしい。それらを見てみるとこんな感じ。

【安静時代謝率】
  • しっかり痩せた人:1日14.2±242.7kcal→平均して代謝が大きい…!
  • ちょっとしか痩せなかった人:1日-69.2±268.7kcal→平均して代謝が小さい…!

【1日のカロリー摂取量】
  • しっかり痩せた人:1日130±485kcal→平均して減っている…!
  • ちょっとしか痩せなかった人:1日268.2±455.4kcal→平均して増えている…!

【主観的な空腹感】
  • しっかり痩せた人:1日0.4±9.6mm→平均して変化なし…!
  • ちょっとしか痩せなかった人:6.9±11.4mm→平均して増えている…!

つまり、運動しても減量効果が低い、むしろ変化がなかったり増えた人は空腹感が増してカロリー摂取量が多くなっていたのが原因…!ってことですね。



運動による減量効果は個人差があるが健康効果は誰でも受けられる…!

2009年のクイーンズランド工科大学の研究によると、有酸素運動のダイエット効果について調べてみたそうです。
この研究は、普段座りがちな過体重・肥満の男女58人(BMI=31.8)が参加したもので、男性のBMIが平均30.5、女性の平均BMIが32.6だったそうな。この58名に以下の条件で運動をしてもらったらしい。

  • 研究者が見ている中で運動をしてもらう。
  • 有酸素運動を最大心拍数の70%で行ってもらう。
  • 運動により約500kcal消費するように設計した。
  • 週5回、12週間行ってもらった。

また、実験開始時と終了時に体組成やVO2max、血圧、安静時心拍数などを測定したらしい。更にポイントなのが参加者全員に期間中、カロリー摂取量を制限しないよう指示したこと。これで運動だけで痩せるのかが分かる感じですな。
では結果をバーッと見ていきましょう。

  • 参加者全員で見てみると平均-3.3kg減量していた…!
  • 但し大きな個人差があった…!
  • 58人中26人は、運動によるカロリー消費量から推定される予想減量を達成できなかった…!
  • 達成した32人は平均-5.2kgも減量していた…!
  • 未達成だった26人は平均-0.9kgしか減量していなかった…!
  • 26人の中には体重が増えた人もいた…!

つまり全体でみれば確かに運動のみで痩せていたけど、個人差が大きくあんま痩せない人や逆に太った人までいたみたい。
但し、ダイエットがダメだった人も健康効果については良い結果が出ておりまして、

  • VO2maxが大幅にアップした(6.3ml/kg/min)
  • ウエストがスリムになった(-3.08cm)
  • 収縮期血圧がダウンした(-6.0mmHg)
  • 拡張期血圧がダウンした(-3.9mmHg)
  • 安静時心拍数がダウンした(-4.8bpm)
  • 実験開始時高血圧(140/90mmHg)だった方は、収縮期血圧が-15mmHg、拡張期血圧が-10mmHgと大幅にダウンした…!
  • ポジティブな気分がアップし、12週間維持された…!

とのこと。
減量効果については、達成グループと未達成グループで統計的に有意な差があったみたいですが、健康効果については有意差がなかったらしい。また男性と女性の有意差もなかったみたい。つまり健康効果は誰でも受けられる…!ってことですね。



期間が短いと運動しても効果がない可能性がある…!

上記研究から、運動しても痩せられるかについて個人差がかなりあったり、運動した油断からカロリー摂取量が多くなってしまい良くて維持、悪いと体重が逆に増えてしまうってことがわかりました。
んで、今回からなぜこのように上手くいかないのか、その可能性について見ていきたいと思います。
まず一つ目の可能性が、

  • 期間が短いと運動しても効果がないんじゃないか…?

ってこと。
つまり、運動を数回行っただけでは意味がなく、かなり長期間に亘って行わないとダイエット効果は得られないんじゃないかと言うことです。
ではどうなのか見ていきますかー。

1997年のリーズ大学の研究によると、食欲制御と運動効果についてレビューしてみたそうです。
皆さんご存知の通り、ダイエットには食事の摂取量と運動量は重要なポイントとなります。この2つの行動によって体重が増えるか減るかが決まるからですね。しかし、運動によって健康的になるのは間違いないものの、運動とカロリー摂取量の関係については未だ謎が多いんですな。そこで今回既存の研究結果を見直ししてみたそうです。
まずは運動による短期的な影響について、いくつか研究を見ていきましょう。

  • 1990年のコロンビア大学の研究:肥満女性と非肥満女性が高強度又は中程度のエアロバイクを漕ぐことを40分間行った。運動終了15分後にストロベリーヨーグルトを食べてもらった結果、非肥満女性の場合、中程度よりも高強度の方が運動後のカロリー摂取量が減っていた肥満女性の場合、強度の間でカロリー摂取量に差がなかった
  • 1988年のクイーンズ大学の研究:スリムな男性を対象に運動強度とカロリー摂取量の関係を調べた。運動終了1時間後に食事を行った結果、食欲は変わらなかった。但し、高強度の運動後の主観的な空腹感は短時間だけ抑制された様子。つまり、運動直後の空腹感の抑制効果は短期間限定で運動終了1時間後にはなくなってしまった
  • 1994年のリーズ大学の研究1995年のリーズ大学の研究:やはり高強度の運動の直後に空腹感が減っていた

因みになんで高強度の運動だけ空腹感を抑えることが出来るのかそのメカニズムは不明とのこと。仮説としては、体温の上昇、乳酸レベルの増加、TNF-αの増加かもって感じ。兎に角、運動で空腹感は抑制できるのは間違いないものの、効果は短期的であり、カロリー摂取量に重大な影響を与える可能性は低いそうです。

次に横断研究を見ていきましょう。
横断研究は日ごろの活動量によってグループ分けして身体活動量とカロリー摂取量の関係をチェックしております。

  • 1956年の研究:頻繁に引用される古典的研究。仕事の身体活動量(座りがち・中度の活動量、高度の活動量)でカロリー摂取量をチェックした。結果、座りがちな労働者は、適度な身体活動をしている労働者よりも多くの食事を摂取し、そして体重も増えていた。但しデータの解釈には批判もあり、適度な活動では肥満を防ぐことはできないとしている
  • 1981年の研究1976年の研究1984年の研究1982年の研究身体活動量が非常に多い人は座りがちな人よりもカロリー摂取量が多かった。そのため、高レベルの身体活動を行う人はカロリー消費量に合わせてカロリー摂取量も調節されている模様

横断研究では時間経過を伴わないので一部の切り取りでの結果とのこと。そのため、習慣的な行動による正確なカロリー摂取量とカロリー消費量を調べるのは難しいそうです。

最後に運動による長期的な影響について、いくつか研究を見ていきましょう。


これらの結果をまとめると、以下のようになります。

  • 短期的(24時間以内)な運動では、カロリー摂取量に大きな影響は及ぼさない可能性が高い。
  • 運動によるカロリー消費量の変化でカロリー摂取量も変化しない可能性が高い。
  • 長期的な運動による、カロリー摂取量に及ぼす影響はよく分からない。

期間が短いと運動しても効果がない可能性があるみたいですね。じゃあ、長いとどうなのかってのもよく分からないみたい…。結局、この時点ではよく分からなかったみたいですな。

その後も、期間が短いと運動しても効果がないんじゃないか説を調べた研究はいくつかありまして、例えば、


なんかがございます。
結果を一言でまとめると、やっぱりあやしいな~って感じですね。



急激な運動後は一時的にカロリー摂取量が増えてしまう可能性がある…!

二つ目の可能性として、

  • 急激な運動後は一時的にカロリー摂取量が増えてしまうんじゃないか…?

を見ていきたいと思います。
2004年のオタワ大学の研究によると、女性におけるカロリー摂取量と運動強度の関係について調べてみたそうです。
この研究は、普段適度に体を動かしている女性13人(BMI=22.2±2.4、平均年齢22.2±2.0歳)を対象にしたもので、3グループに分かれてもらいつつ、以下の方法を試してもらったそうな。

  1. コントロールグループ:運動なし
  2. 低強度で運動グループ:peak VO2の40%で運動
  3. 高強度で運動グループ:peak VO2の70%で運動

因みに運動グループは両方とも同じカロリー量(350kcal)減るよう調整したらしい。
3つの方法を試した後に、参加者全員は昼食と夕食にビュッフェで自由に食事を取ってもらい、また、合間には軽食も食べてもらったんだとか。それを見て食欲を評価したとのこと。これを2回繰り返したみたい。
気になる結果は、

  • 高強度の運動後の昼食時、何もしないよりもより多くのカロリーを摂取していた…!
  • 1日の総カロリー摂取量も高強度の運動を行った日は増えていた…!

そうです。
つまり女性の場合、運動強度が高いとカロリー摂取量が増えてしまうってことですね。

似たような研究は他にもありまして、例えば、2004年のローウェット研究所の研究でも運動強度と食事量の変化をチェックしております。
こちらはスリムな男性8人を対象にRCTのクロスオーバーデザインで調べたもので、以下の4パターンを行ったと言うものです。

  1. 運動なし+低脂肪食(カロリーが20%を脂肪)
  2. 運動なし+高脂肪食(カロリーが50%を脂肪)
  3. 高強度運動(1日で約4MJ≒956kcal消費)+低脂肪食(カロリーが20%を脂肪)
  4. 高強度運動(1日で約4MJ≒956kcal消費)+高脂肪食(カロリーが50%を脂肪)

上記をそれぞれ行いつつ、7日間のカロリー摂取量とカロリー消費量の変化を見てみたとのこと。
結果、

  • 1日の平均カロリー消費量は高強度運動だと17.6MJ、運動なしだと11.5MJだった
  • 1日の平均カロリー摂取量は低脂肪食だと9.0MJ、高脂肪食だと13.4MJだった
  • 統計処理した結果、カロリー摂取量とカロリー消費量のバランスが時間の経過とともに1日約0.3〜0.4MJ変化していた…!
  • 1日の平均カロリー摂取量が約0.2MJ、1日の平均カロリー消費量が約0.35MJ増えていた…!

とのこと。
食事制限もあったんで確かに痩せてはいたんですが、それでも高強度の運動を行うと女性同様、摂取カロリーが増えてしまうみたいです。

オマケでもう一つご紹介しておきます。
2008年のローウェット研究所RCT・クロスオーバーデザインによると、運動量を徐々に上げると食事量はどう変化するのか調べてみたそうです。
この研究はスリム体型な男女12名が参加したものでサンプル情報は以下な感じ。

  • 男性:6名、平均年齢29.7歳、平均体重75.2kg、平均身長175cm
  • 女性:6名、平均年齢24.7歳、平均体重66.7kg、平均身長170cm

参加者全員には、以下の運動をそれぞれの期間にしてもらったそうな。

  1. 運動なし
  2. 中強度運動(1日で約1.5~2.0MJ消費)
  3. 高強度運動(1日で約3.0~4.0MJ消費)

上記を16日間試したら、次の運動方法に移行って感じで全パターンの3回行ったらしい。
また食事については、1~2日目が普通の食事で3~16日目が中脂肪食という内容だったそうです。
結果、1日のカロリー消費量は、

  • 女性の場合:運動なし9.2MJ、中強度運動11.6MJ、高強度運動13.7MJ増えていた…!
  • 男性の場合:運動なし12.2MJ、中強度運動14.0MJ、高強度運動16.7MJ増えていた…!

とのこと。
また、1日のカロリー摂取量は、

  • 女性の場合:運動なし8.3MJ、中強度運動8.6MJ、高強度運動9.9MJ増えていた…!
  • 男性の場合:運動なし10.6MJ、中強度運動11.6MJ、高強度運動12.0MJ増えていた…!

とのこと。
やっぱり性別に関係なく、強度が上がれば上がるほど、カロリー消費量・カロリー摂取量ともに上がっていくみたいですね。
因みに研究者によれば、平均すると運動で消費したカロリーの約30%を補っていたそうなんですが、個人差がかなり大きかったそうです。

以上から、急激な運動後は一時的にカロリー摂取量が増えてしまうんじゃないか説も有り得そうです。



自己申告による食事記録は、二重標識水法(DLW法)と比べて、20~30%もカロリー摂取量を少なく見積もっている…!

三つ目の可能性は、

  • カロリー摂取量の評価に問題があるんじゃないか…?

となります。
それでは見ていきましょう。
1998年のカリフォルニア大学ロサンゼルス校RCTによると、運動と食事の摂取量について調べてみたそうです。
この研究は15~17歳の男女88人(女性44人、男性44人。ドロップアウト者を含む)を対象にしたもので、男女別に以下の4グループにランダムに振り分けたそうな。

  1. 女性の有酸素運動グループ17人
  2. 女性のコントロールグループ15人
  3. 男性の有酸素運動グループ20人
  4. 男性のコントロールグループ19人

続いて、以下の流れにより実験を行ったらしい。

  • 実験開始前に、全員3日間、自己申告による食事記録を取った。
  • 有酸素運動グループは5週間、エアロバイクを漕いでもらった。
  • コントロールグループは5週間、いつも通り過ごしてもらった。
  • 4~5週間目に、女性12人(有酸素運動グループ6人、コントロールグループ6人)、男性20人(有酸素運動グループ10人、コントロールグループ10人)の食事記録を二重標識水法(DLW法)で取った。
  • 実験終了後に、再度、全員3日間、自己申告による食事記録を取った。

今回の実験のポイントは男女の違いや運動の有無もそうなんですが、食事データを自己申告による食事記録と二重標識水法(DLW法)の2つから取ってみたということです。
んで結果は、

  • 男性の場合、有酸素運動と自己報告による食事記録(カロリー摂取量)は相関していた…!
  • 女性の場合、有酸素運動と自己報告による食事記録(カロリー摂取量)は相関していなかった…!
  • 女性の有酸素運動グループは、脂肪の摂取量が19.8±9%も増加していた…!
  • 女性の有酸素運動グループは、炭水化物の摂取量が-9.8±4%も減少していた…!
  • 女性のコントロールグループに上記のような変化はなかった。
  • 女性の有酸素運動グループも女性のコントロールグループも体重の変化はなかった…!
  • 男性の有酸素運動グループも男性のコントロールグループも三大栄養素の変化はなかった…!
  • 男性の有酸素運動グループも男性のコントロールグループも体重の変化はなかった…!

以前に紹介した研究と同様の結果が出ていますが、一番のポイントであった自己申告による食事記録(主観的なカロリー摂取量)と二重標識水法(DLW法)の食事記録(客観的なカロリー摂取量)のズレが分かりますよね。だって運動していてもしていなくても体重が変わっていないんですから。
つまり、

  • 運動している人は、自己申告によるカロリー摂取量を過小報告する傾向がある…!

ってことです。
それが今回、二重標識水法(DLW法)の食事記録(客観的なカロリー摂取量)でしっかり分かったのが大きいかと。
そして今回更に分かったのがこのズレが結構大きいということです。
というのも、

  • 自己申告による食事記録(主観的なカロリー摂取量)は、二重標識水法(DLW法)の食事記録(客観的なカロリー摂取量)と比べて、20~30%もカロリー摂取量を過小評価していた…!

んですよ。
20~30%はデカいな~。



食べたものを写真に撮る+食事記録を付けると、誤差を3%程に抑えられる…!

2002年のカンザス大学の研究によると、食べた量を少なく見積もってしまう対策法について調べてみたそうです。
この研究は、BMIが30ぐらいの健康な男女54人(女性32人、男性22人)が参加したもので、以下の流れに沿って実験を行ってみたんだとか。

  1. 最初に全員の体重を測定する。
  2. カンザス大学のカフェで自由に食事を取ってもらう。
  3. その時、食べる前と食べた後の写真を撮る。
  4. その写真を基に食事記録を付ける。
  5. カフェ以外で食べた食事についても食べる前と食べた後の写真を撮る。
  6. それもその写真を基に食事記録を付ける。
  7. 併せて二重標識水法(DLW法)を用いてカロリーをチェックする。
  8. これを2週間続ける。
  9. 最後にもう一度全員の体重を測定する。

つまり、自己申告の食事報告を写真に撮って報告するというものにして、実際のカロリーとのズレを見てみたってことですね。
では結果をチェックしましょうか。

  • 女性の写真を使った自己申告によるカロリー摂取量:1日平均10.40±1.94MJ…!
  • 男性の写真を使った自己申告によるカロリー摂取量:1日平均14.37±3.21MJ…!
  • 女性の二重標識水法を使ったカロリー摂取量:1日平均10.86±1.76MJ…!
  • 男性の二重標識水法を使ったカロリー摂取量:1日平均14.14±2.83MJ…!
  • 女性の写真と二重標識水法におけるカロリー摂取量のズレは、96.9±17.0%…!
  • 男性の写真と二重標識水法におけるカロリー摂取量のズレは、103±18.9%…!
  • この実験で、男性は平均0.23±1.58kg痩せていた…!
  • この実験で、女性は平均0.25±1.09kg痩せていた…!
  • グループ間や性別による体重の大きな変化は見受けられなかった…!

食べたものを写真に撮る+食事記録を付けるってので、誤差を3%程に抑えられるのは素晴らしいですな。だって普通にダイエットを行うのに二重標識水法なんて使えませんからね(笑)
しかも過体重や肥満の方を対象にしているとはいえ、わずか2週間で男女とも痩せているのも素晴らしいですよね。
因みに食べたものを写真に撮る+食事記録を付けるって方法は2012年のカンザス大学の研究でも採用されておりまして、この研究では10ヶ月間にわたって使われております。そのため、短期間だけでなく長期間のダイエットのカロリー管理にも有効な手段ではないかと。
ということで、スマホで食べたものを写真に撮りつつ、食事記録を付けていくのは手軽でよろしいのではないでしょうか。



運動によってカロリー摂取量が増えてしまう、その根本的なメカニズムは恒常性プロセスと快楽的プロセスが関係している…!

ここまでを軽く復習しておきますと、

  • 運動で痩せない原因は空腹感が増してカロリー摂取量が多くなっていたからの可能性がある
  • 運動による減量効果は個人差がかなりある。但し健康効果は誰でも受けられる
  • 期間が短いと運動してもダイエット効果がない可能性がある
  • 急激な運動後は一時的にカロリー摂取量が増えてしまう可能性がある
  • 自己申告によるカロリー報告は20~30%も少なく見積もってしまう
  • 但し、これは食べたものを写真に撮る+食事記録を付けると良さそう

って感じです。
つまり、運動増加に伴って、食物摂取量の増加や身体活動量の低下、ルールの不遵守といった様々な適応行動や安静時代謝率の低下が発生する可能性があるみたいです。また2009年のリーズ大学の研究によると、過食は体重増加や肥満の強力な原因であることを示しているとのこと。
以上から、カロリー摂取量の増加・減少と運動介入でみられる適度な体重増加・減少は関連があると言えるでしょう。
では、運動によってカロリー摂取量が増えてしまう、その根本的なメカニズムはどうなっているのかが次の疑問です。
まず結論から申しますと2つのプロセスが関係しているんだとか。
そのプロセスとは、

  • 恒常性プロセス:食べるという食欲誘発性の変化(例:空腹など)に関係している
  • 快楽的プロセス:報酬と食べる喜びに関係している

とのこと。
運動してもランニングしても痩せない・太る人、つまり、運動によってカロリー摂取量が増えてしまいがちな人は、空腹感の増大のしやすさ(恒常性プロセス)と、食べ物に含まれる快楽成分に対する過敏さ(快楽プロセス)のどちらか、またはその両方が関係しているということですね。
ということで次は、この恒常性プロセスと快楽的プロセスの研究を見ていきます。まずは恒常性プロセスからです。



運動は恒常性プロセスと関係があり、空腹感にも満腹感にも作用していた…!

2009年のクイーンズランド工科大学の研究によると、恒常性プロセスについて調べてみたそうです。
この研究は、過体重・肥満の男女58人(平均BMI=31.8±4.5、平均年齢39.6±9.8歳)が参加したもので、12週間ラボ内で監視しつつ運動をしてもらったと言うもの。
運動は1週間で2,500kcal消費するように設計されていたそうで、また、実験開始時と終了時に食欲感覚と固定の朝食の満腹率(食前食後にチェック)を比較してみたらしい。
その結果、12週間で、

  • 体重が平均3.2±3.6kgも減っていた…!
  • 脂肪量も平均3.2±2.2kgも減っていた…!
  • つまり筋肉が減らずに脂肪だけが減っていた…!
  • ウエストも平均5.0±3.2cmも減っていた…!

とのこと。
運動で間違いなくダイエットに成功していたみたいですね。
んで、メインである恒常性プロセスとの関係ですが、

  • 体重と体組成が減少すると、空腹時の空腹感と1日を通しての平均空腹感がアップしていた…!
  • 逆説的にみると、朝食の直後の満腹指数も有意にアップしていた…!

そうです。
つまり、運動は恒常性プロセスと関係があり、空腹感にも満腹感にも作用していたってことですね。運動でどちらの状態にも気づきやすくなるみたいですな。



運動は快楽的プロセスと関係があり、特に運動直後の食品全般への「好みと欲求」と、高脂肪の甘い食べ物への「好みと欲求」に作用する…!

2004年のルイジアナ州立大学ペニントン生物医学研究センターの研究によると、恒常性プロセスと快楽的プロセスについてレビューしてみたそうです。
現代社会は肥満や肥満に関係する健康リスクが急速に増えておりますが、そこには恒常性プロセスと快楽的プロセスの2つが関係しているとのこと。
具体的には、

  • 美味しくてカロリー密度の高い食品(ファストフードやジャンクフードなどの加工食品超加工食品)が手軽に入手できる環境になった
  • 運動不足が起きやすい環境になった

ことにより、飢餓の期間を生き延びるために進化したシステムが足を引っ張り、肥満を後押ししてしまっているんだとか。
確かに現代社会は簡単に食べ物が入手できる環境なんで、ちょっとした空腹感にも敏感になりすぐ食べてしまうし(恒常性プロセス)、しかもそれが旨くてカロリー密度が高い食品という報酬の高い食品なんで、食べ物に快楽(喜びや楽しみ)を求めちゃうのも納得ですな(快楽的プロセス)
しかもこれらは、報酬や認知、社会的側面を司る大脳辺縁系に影響を与えますんで、その結果、摂取カロリーと消費カロリーのバランスが崩壊、肥満へと進んでいくみたい。因みにこの辺は食事報酬の記事に書いた通りですね。

また2007年のタフツ大学の研究では、様々な運動量における体脂肪やカロリー摂取量、食品の好みに与える影響についてレビューしております。
なんでも食事による報酬は、食事の開始や維持、終了に重要な役割を果たしているそうで、食品や主要栄養素の好みの変化によって、快楽的プロセスが変化、その結果、カロリー摂取量を増加させる可能性があったんだとか。

そしてこの当たりを詳しく調べた研究として2010年のリーズ大学の研究というものがあります。この研究では、食事の「好みと欲求」の変化、味覚と栄養素の好みの変化をチェックしてみたんですよね。
実験は、運動不足の肥満の男女34人が参加したもので、研究者が見ている中で運動してもらったそうな。その際の運動は1日500kcal消費するよう設計され、これを週5日のペースで12週間行ってもらったらしい。また、運動でのカロリー消費量に対する体組成の変化から参加者を痩せやすい人(20人)と痩せづらい人(14人)に分けてみたそうです。更に運動の前後に食事の「好みと欲求」についても評価してみたんだとか。
最後にデータを比べてみた結果、

  • 痩せやすい人は、体脂肪が5.2±2.4kgも減っていた…!
  • 痩せづらい人は、体脂肪が1.7±1.4kgしか減っていなかった…。
  • 運動後、痩せやすい人は、全ての食品に対する「好みと欲求」に変化がなかった…!
  • 運動後、痩せづらい人は、全ての食品に対する「好みと欲求」が増えていた…。
  • 痩せづらい人は、高脂肪の甘い食品に対する「好みと欲求」が増えていた…。
  • 上記の違いは、12週間の定期的な運動と体重減少とは無関係だった…!

とのこと。
つまり、運動直後に食品全般への「好みと欲求」が増し、高脂肪の甘い食べ物への「好みと欲求」が増えた人は、減量効果が低かったってことですな。しかも上記の急性運動の効果は定期的な運動には影響を与えないと。
そのため、特定の方は運動による報酬に対する急性の影響をより受けやすい可能性があるみたい。そしてそういった方々が運動後に気軽に食べ物を食べられる環境にあるとついつい食べてしまうみたいです。



運動でダイエットは超難易度が高い…!ではどうすべきか…?

以上、様々な研究を見てきましたが、運動で体重を減らすことは、非常に難しく、失敗する理由をちゃんと理解しない限り、逆に太ってしまったり、継続は不可能となるでしょう。また皆さんがダイエットに思い描く、神がかり的なダイエットの成果は残念ながら期待するだけ無駄となります。更にこれまで見てきたようにダイエットに期待して運動を行うと、その分普段の運動量が減ってしまう場合もあります。
そのため、ダイエット目的で運動を行うことはおすすめできません。
しかし、だからといって運動に減量効果がないだけで運動はしなくて良い、意味がないと解釈するのも早計です。例えば2010年のクイーンズランド大学の研究なんかを見てみると、運動の有無に関係なく、座りっぱなしの時間を減らすことは健康面に大きなプラスの効果があることが分かっております。つまり、意識して行う運動ではない運動、NEAT(日常生活で勝手に消費するカロリーのこと)を増やすことが大事だと言えます。
また今までたくさんの研究結果で出ていたように、運動による体重減少が期待以下や全くダメだったことはあっても、健康上のメリット(血圧改善やウエストの減少など)は間違いなくあります。
これらのことをもっと知ってもらい、運動してもらうことが一番のポイントだと言えるでしょう。



ダイエットを成功させるためのスキルがアップする…!

前に書いた通りダイエットを成功させるためのスキルがアップするのも運動・筋トレの魅力の一つとなっております。
具体的には、

  • 誘惑に抗える力(意志力)がアップする
  • 忍耐力がアップする
  • 先延ばしが減る
  • 感情のコントロールが上手くなる
  • アルコール・カフェインの摂取量が減る
  • ジャンクフードを食べる事が減る
  • 野菜を多く食べる
  • TVをみる時間が減る
  • 勉強や自分の成長に時間を使うようになる

という感じ。更にカロリー消費量が少ないとはいえ、HIITSITウォーキングの効果やメンタルに与える影響も侮れない感じ。やっぱ運動は大事。



運動不足で炎症が起こる…!

2010年のコペンハーゲン大学病院の研究によると日頃から運動不足な人は全身に軽度の炎症が起きてしまうらしいので、やっぱ運動はしておいた方が良いように思います(炎症・慢性炎症の怖さはオメガ6脂肪酸を参照してください)



脂肪燃焼効果は筋トレの方が高いらしい…。

1999年のペンシルベニア州立大学の研究によると、有酸素運動に脂肪燃焼効果はあるものの、筋トレの方がその効果は高いらしい…。この当たりなんてダイエット=有酸素運動(ランニング)って図式をついつい思い浮かべやすいですが、実際は筋トレの方が良いんですね~意外…。



運動・筋トレをしない=座り過ぎのデメリットもヤバい…!

運動・筋トレをする場合を多く見てきましたが、しない場合、つまり、代わりに座り過ぎになる場合が考えられます。
実は、これはこれでヤバい感じでして、詳しくは、


を見ていただきたいのですが、太る可能性が高くなるのはもちろん、食欲暴走や病気の発症率アップ、遺伝子の異変やメンタル悪化、果ては寿命が縮むなんて話もありますんで、ここも合わせて意識していきたいところですね。



運動しすぎもデメリットがある…!

最後に過度な運動はデメリットが多いんであまりおすすめはしません。
詳しくは


をご覧ください。



個人的考察

セットポイントが上がった状態というのはセットポイントが狂っている状態で、つまり脳が暴走している状態です。これを戻す時、特に最初は非常にきついのですが、運動で身に付けたセルフコントロール能力習慣化の力が役立つと個人的には思います。
まぁ、何度も書いている通り運動はやっておいて損はないですので是非チャレンジしてみてください。また、セットポイントが上がる理由の項目も手の付けやすいところから是非チャレンジしてみてください。



参考文献