【まとめ】ストレスホルモン「コルチゾール」は敵か味方か?
では、このコルチゾールは敵なのか味方なのか…。今回はそんなお話です。
って感じです。
まず答えを書いておきますと、確かに食事制限や運動でストレスはかかります。そもそも食事制限や運動は自分から体にストレスをかける行為なんで、当然コルチゾールも出ます。では、ダイエットやメンタル等に良くないかと申しますと、これは皆さんご存知の通り、逆で適度な運動はダイエットやメンタルに非常に良い効果をもたらすんですよね。
コルチゾールってなに…?
ストレスホルモンであるコルチゾールは、その名の通り、ストレスを受けたときに副腎から分泌されるホルモンです。具体的な流れについては、
- ストレスを受ける
- 副腎がコルチゾールを分泌する
- 血糖値が上昇するとともにインスリンの分泌量が減少する
- アドレナリンが心拍数を上昇させる
- コルチゾールが血管を狭める
- 体が緊張状態(戦闘状態)に入って集中力やテンションアップ…!
って感じです。
つまり、コルチゾールの分泌で、ストレス耐性をアップさせ、戦闘状態に入り生存率を上げる…!っていうのが本来の働きと言えます。ここから想像できる通り、コルチゾールの分泌による効果は短時間専用のシステムです。太古の時代、人が獣に襲われそうになって生死がかかった時、コルチゾールを上げ、集中力や注意力を上げて、スキを見つけて全力で走って逃げて助かる…!そんなときのシステムがコルチゾールの分泌ということです。
しかし、現代社会にはコルチゾールシステムは合っていない…!
このコルチゾールシステムは長時間に対応していない為、現代社会では逆にデメリットが目立つようになってしまいました。
例えば、
- 毎日の学校が嫌だ…。
- あの人に会いたくない…。
- あの職場の雰囲気をこれから毎日味わうのか…。
など皆さんがよく悩む、様々な長時間続くストレスには対応していないということです。このような長時間続くストレスは、人類の歴史から見ても新しいストレスであり、それ故に人間の対処対応機能が追い付いていないというのが実情です。
そして、このような生活では、副腎が常にフル活動な状態でコルチゾールを常時分泌し続けます。そのため、様々な異変が体で起きるのです。
次はコルチゾールが常時分泌されると何が起きるのか具体的に見ていきます。
肥満と内臓脂肪がアップする…!
1997年のイェール大学の研究によると健康で肥満体型な男性27人を対象にコルチゾールの反応性などを調べたそうです。結果、体内のコルチゾールの量が多い場合、筋肉量がダウン、ついでに内臓脂肪量が増加していたんだそうな。
また2000年のイェール大学の研究によるとストレスの影響を受けやすい肥満でない女性は、お腹の脂肪が多くついている可能性が高いそうです。つまり、別に見た目が太っていなくてもストレスに弱いと当然、コルチゾールのレベルが高くなり、結果、内臓脂肪が増えてしまうということ。
見た目は標準体型なのに内臓脂肪がすごい人がいるって話を聞きますが、これは上記が原因みたいですね。因みに内臓脂肪の増加は心臓病や糖尿病のリスクを高めるので気を付けたいところです。更に全身に炎症も起きてしまうので老化促進にも一役買ってしまいます。
似たような研究は他にもありまして、例えば1997年のゲーテボルグ大学の研究によると、体内のコルチゾール濃度の上昇によって、太りやすくなるそうです。人間関係や金銭面によるストレスでコルチゾールが増加している人は、ウエストに脂肪が蓄積しやすくなるとのことで、心当たりのある方は注意が必要かも…。
以上のことから、コルチゾールには内臓脂肪を大幅に増やす効果があると言えます。また、コルチゾールでインスリンが低下しますので、満腹感が得られず、常に飢餓状態をもたらします。結果、慢性的な過食となって、肥満状態になってしまうということに…。
因みに洋ナシ体型になりやすいなんて話もあります。
心臓病の発症率がアップする…!
上記の研究でも挙げたとおり、内臓脂肪の増加によって心臓病のリスクがアップします。また、コルチゾールには血管を狭める働きもあります。これが常時起こるとなると、高血圧になってしまいます。つまり、心臓や血管への負担が大きるということなので、当然、心臓病の発症率もアップしてしまうということに…。
糖尿病の発症率がアップする…!
上記の研究でも挙げたとおり、内臓脂肪の増加によって糖尿病のリスクがアップします。また、コルチゾールの分泌は、血糖値の上昇やインスリンの分泌量の低下をもたらします。
つまり、これが常に起きるとなると、高血糖状態が常に維持されるってことになりますんで、糖尿病の発症率がアップしてしまうということに…。
ガンとアレルギーの発症率がアップする…!
1991年の研究によるとストレスによる慢性的なコルチゾールの増加で免疫系がダウンしてしまうということです。
実はコルチゾールはストレスを減らす効果があるため、体内の炎症を抑える働きがあるとも言えます。しかし、これは良い事ばかりではなく、同時に免疫系も抑制してしまうんですよね。つまり、ガンの発症率がアップしてしまうということに…。因みに同じ理由でアレルギーの発症率や悪化もアップしてしまいます。
老化が進む…!
長時間のストレスでコルチゾールが常に分泌され続けると、脳内で神経ペプチドであるサブスタンスPという物質が出てきます。サブスタンスPは激しい炎症効果がある物質で、つまり、激しい慢性炎症状態に陥ることになります。
結果、全身の炎症が進みますんで老化が進んでしまうということに…。
テストステロンが減る…!
2005年のアメリカ国立精神衛生研究所の研究によると健康な男性10人(18〜45歳)を対象にCRH負荷試験を行ったそうです。結果、コルチゾールにより、テストステロンが減少していたそうです。テストステロンは男性だけでなく、女性にも重要なホルモンで、これが減少すると元気がなくなってしまいます。
コルチゾールが増える原因はストレスだけじゃない…!
コルチゾールが増える主な原因はストレスであり、それは間違いないんですが、上記で挙げたように炎症効果もあるので、それに関係する問題でも増えてしまうんですよね。更に他の要因もあったりします。
バーッと挙げていくと、
- カロリー制限ダイエット
- 極端な糖質制限ダイエット
- ファスティング・断食・プチ断食
- オメガ6脂肪酸の摂り過ぎ
- トランス脂肪酸を摂る
- 砂糖の摂り過ぎ
- 食物繊維不足
- カフェインの摂り過ぎ
- アルコールの摂り過ぎ
- 睡眠不足
- 運動不足
- 過度な運動(有酸素運動は特に注意…!)
などなど…。
つまり、セットポイントで挙げたものの多くはコルチゾールの増加とも関係しているんですよね。これらによってコルチゾールが増加、イライラしたり不安になったりしてしまいます。
確かに食事制限や運動でコルチゾールは分泌される…!しかし…。
上記で「セットポイントで挙げたものの多くはコルチゾールの増加とも関係している」と書きましたが、一つ疑問として挙げられるのが、ダイエットで食事制限や運動をするのはそもそも痩せるためだけど、でも食事制限や運動ってやりたくないとか嫌だとかでストレスがかかるよね…?じゃあ、やらない方が良いの…?って話。
ではこの矛盾する部分はどう説明するのかってことで早速研究を見ていきましょう…!
まず参考にしたいのが2000年のアメリカ陸軍環境医学研究所(USARIEM)の研究になります。この研究は継続的な作業や不十分な睡眠など複数の高ストレスがかかる環境において、食事量のみ変えるとどうなるのか…?について調べてみたそうです。
今回実験に参加したのはアメリカ陸軍のレンジャーコースに参加した健康な若い男性で、まずグループ1(49人)とグループ2(48人)に分かれてもらったそうな。
んで、ここからコルチゾールマックスの地獄の8週間が始まりまして、具体的には、
- 食事:1日に必要なカロリー摂取量-平均1,000~1,200kcal
- 断食:カロリー制限と栄養補給を交互に4回繰り返す
- 運動:高温環境でのトレーニング又は寒冷地でのトレーニングを交互に行う
- 夜中:毎晩重さ30kgのリュックを背負って巡回業務に当たる
- 睡眠:1日4時間以下
だったそうです。
これはきつい…!死ぬ…!よく耐えられますね…。
このコルチゾールがガンガン出まくってヤバそうな状況ならストレスで太るかどうか判断できますね。
気になる結果は、
とのこと。
この結果に研究者曰く、コレステロールとコルチゾールの上昇は、体脂肪蓄積の減少に対応するために起こっていると考えられるそうです。
もし、コルチゾールで太るのなら肥満になるはずですが、実際は逆で、コルチゾールはむしろ痩せる働きをするみたいですね。しかも体内のコルチゾール濃度が高い程痩せていたってのは矛盾していますね~。
食事制限、有酸素運動、筋トレとストレス量が増えれば増えるほどダイエット効果も大きくなる…!
1997年のペンシルベニア州立大学の研究によると、肥満体型の女性31人(平均年齢35.4歳)を対象にして、様々なダイエット法を試してみたそうです。具体的には以下の4グループにランダムに分かれてもらったとのこと。
- 対照群:6人
- 食事制限:8人
- 食事制限+有酸素運動:9人
- 食事制限+有酸素運動+筋トレ:8人
期間は12週間で結果、
- 食事制限をした3つのグループは、体型、体脂肪率、脂肪量が明らかに減少した…!
- 食事制限+有酸素運動と食事制限+有酸素運動+筋トレをしたグループは、VO2maxが増加した…!
- 食事制限+有酸素運動+筋トレを行ったグループは、最大筋力が増加した…!
って感じでして、やっぱりストレス(コルチゾール)がないグループに比べ、食事制限、有酸素運動、筋トレとストレス量が増えれば増えるほどダイエット効果は大きくなっていたみたい。
う~ん…。相反する結果ですねー。
なぜこういった矛盾が起きるのか…?
なぜこういった矛盾が起きるのかと言いますと、コルチゾールは脂肪分解効果を高める力があるから…!とのことです。つまり、コルチゾール=太る…!ってわけではないってことですね。では何が原因かと言いますと、コルチゾールが分泌されている時間になります。コルチゾールは確かに脂肪の分解を助けてくれるみたいなんですけど、永遠には続かないみたいで、慢性的に高コルチゾール濃度が体内で維持されると脂肪を蓄えようとしちゃうみたいなんですよー。
つまり、
- 急性ストレス(短時間のコルチゾールの増加)だと、脂肪燃焼効果がアップする…!
- 慢性ストレス(長時間のコルチゾールの増加)だと、脂肪蓄積効果がアップする…。
といったようになります。
真逆の効果が発生してしまうから矛盾した感じがしていたんですね~。この辺はインスリン問題やコーヒー・インスリン問題と似ていますね(ツンデレシリーズ)
そのため、長時間のコルチゾール分泌につながるような
といったことは避けた方が良いと言えます。
当ブログで何度も書いていますが、やっぱり、過ぎたるは猶及ばざるが如し…!ですね(過ぎるは良くない)
コルチゾールの境界線はどこなのか…?
では、ちょうど良いライン、つまりコルチゾールのメリットとデメリットの境界線はどのあたりなんでしょうか…?
コルチゾール時間の境界線を考える上で、まず参考にしていきたいのが2002年のオーフス大学の研究になります。
この研究は、健康な若い男性7人(平均年齢27歳、平均BMI=24.0)を対象に行ったそうで、まず一晩断食をしてもらったそうです。その際、合わせて血中のコルチゾール濃度と脂肪の分解についてデータを取ったとのこと。
これを2回試した結果分かったことが、
- コルチゾールは脂肪分解に強力な効果をもたらしていた…!
- コルチゾールの脂肪分解効果は、太ももとウエストの両方の脂肪に等しく効果を発揮していた…!
- コルチゾールの脂肪分解効果は6時間後まで高い水準をキープしていた…!
とのこと。
コルチゾールのダイエット効果は下半身に等しく効き、その持続時間は6時間だったみたいですね。
この研究は、コルチゾールが全身の脂肪分解効果をアップさせ、一方で慢性ストレス(慢性的な高コルチゾール)は脂肪量をアップさせてしまうけど、この正反対の結果が起こる理由は何なのか調べてみよう…!となったそうです。
実験は健康な男女6名(男性5名女性1名)を対象に行われたそうで、年齢は22.5〜50.4歳、BMIは20.3〜26.9の間だったとのこと。
まず参加者には、実験開始の24時間前から喫煙と普段しないような運動を控えるよう言ったそうで、合わせて服薬や病歴、代謝性疾患など遺伝の要素を含め、詳細に経歴をとったそうな。つまり、コルチゾールに関わっていそうなバイアスを極力減らしたり、調べて実験の精度を上げようとしたってことですね。
続いて参加者には18時に研究室に来てもらい、低脂肪食(タンパク質=53.5g、炭水化物=52.9g、脂肪=20.8g)を食べてもらって、その後22時から1時間ごとに採血をしてコルチゾール等をチェックし続けたそうな。因みに23時には消灯し、翌日の6時半まで参加者には寝てもらったとのこと。
実験は翌日の14時まで続けられたそうで、これを全員に2回行ってもらったそうです。
んで結果が、
- 20時〜3時の間はコルチゾール濃度が低く、脂肪分解効果が高かった…!つまりコルチゾールの脂肪分解効果は7,8時間後まで続いた…!
- 3時〜14時の間は平均コルチゾール濃度が高く、脂肪分解効果は低かった…。つまり7,8時間以降はコルチゾールのデメリットが上回っていた…!
といった感じ。
どうやらコルチゾールのメリット・デメリットの境界線は7,8時間っぽいですねー。
高強度の運動は40分までにしておくと良さそう…!
2002年のウィンストン・セーラム州立大学の研究によると、異なる3つの運動強度とコルチゾール濃度の違いについて調べてみたそうです。この研究は健康でアクティブな男性10人を対象としたそうで、4度の別々の機会に、1時間エアロバイクを漕いでもらったそうな。
その際、エアロバイクの負荷(peak VO2=最高酸素摂取量=持久力)を変えたそうで、
- peak VO2の44.5%(低強度)の負荷
- peak VO2の62.3%(中強度)の負荷
- peak VO2の76.0%(高強度)の負荷
だったとのこと。
これをランダムに振り分けて行ったそうです。またコルチゾール濃度を調べるための唾液接種は、運動開始前10分、運動開始20分後、運動開始40分後、運動開始59分後、運動終了後20分にしたそうな。
結果は、
- 高強度の負荷での59分の運動又は、運動後20分のコルチゾール濃度が大幅に高かった…!
- 安静時や低強度、中強度の運動では、コルチゾール濃度に違いは見られなかった…!
- 40分未満の運動では、どの強度でもコルチゾール濃度に違いは見られなかった…!
そうです。
つまり、ウォーキングぐらいの運動ならコルチゾール濃度に影響はないけど、マラソンなどの長時間の有酸素運動は40分までにしておくと良さそう…!ってことですね。
コルチゾールの境界線まとめ
以上を踏まえて行くと、
- コルチゾールのダイエット効果の境界線は6~8時間ぐらい
- 運動によるコルチゾールは高負荷なら40分~1時間に抑えると良い
って基準を守っていけば、コルチゾールのデメリットを抑え、メリットを最大限に受けられるのではないかと思います。逆に言えば上記を超えると慢性ストレスへの第一歩となりますんで、注意していきたいですねー。
慢性ストレスによるコルチゾールでなぜ太るのか…?
ストレスで太る…!って話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか…?
結論から言いますとこれは事実で、例えば2015年のオハイオ州立大学の研究ではストレスによって1年間で5kgも太るぞ…!なんて結果が出ております。怖いっすね~。
そして今回はストレスによるコルチゾールの増加によって、なんで太ってしまうのか…?についてご紹介していこうと思います。
んで、早速結果を見てみますと、
- インスリンとコルチゾールをそれぞれ除去してみると、レプチンの発現が急速に減少していた…!
- インスリンとコルチゾールを除去したレプチンに再度ホルモンを投与してみると回復した…!
とのこと。
インスリンはレプチンと似た動きをしますし、コルチゾールはレプチンの分泌を促進させる効果があるのでそれを取り除くとレプチンも減少しちゃうみたいですね。逆に元に戻すとレプチンも元に戻ると。
こう考えると、慢性ストレスによるコルチゾールで太る…!ってのも納得できますよね。常にコルチゾールが高止まりしていたら、レプチンも同様に高止まりし続けますんで、レプチン抵抗性は悪化してしまいますもん。そうなればレプチンやインスリンのシグナル伝達を妨げますし、シグナル伝達も変化、つまりセットポイントも崩れてしまいます。最後は肥満や甲状腺ホルモンの減少、摂食障害など代謝問題を引き起こすって感じですね。
ぜひお気を付けください。
個人的考察
以上、コルチゾールについてでした。
最後にまとめてみると、
- 短時間は味方…!
- 長時間は敵…!
という関係となっております。コルチゾールの短時間の上昇は問題なく、むしろ自身のパフォーマンスを底上げしてくれる嬉しい機能です。まずいのは常にコルチゾールの量が多い状態でキープされることなんで、その辺は誤解のないようお願いします。
そして、コルチゾールはストレスと密接に関わっていることも分かっておりますが、ストレスにはパラドックスがあって、これまたないと困る…!って話やストレスから逃げ続けるとまずいって話もあるんですよね。
続きになるこの当たりの話は下記になりますので、合わせてご覧頂けると嬉しいです。
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