精神障がいや発達障がいを発症した方がいた場合、その家族のリスクはどうなのか? その11
「精神障がいや発達障がいを発症した方がいた場合、その家族のリスクはどうなのか?」シリーズの続きです。
前回に引き続き今回も台湾の研究を見てみます。
双極性障害Ⅰ型・双極性障害Ⅱ型の患者さんの家族における精神疾患リスク
2021年の台北栄民総医院の研究によると、双極性障害Ⅰ型・双極性障害Ⅱ型の患者さんの家族における精神疾患リスクについて調べてみたそうです。
双極性障害(躁うつ病)は、気分がハイな状態とうつな状態がジェットコースターのように上がったり下がったりするものでして、この気分の波にさらわれると様々な状態に陥ります(詳しくは「双極性障害の方はクリエイティブ性(創造性)が高いのか?」の記事の冒頭を参照)。そんな双極性障害ですが、実は2つの種類があるんですよね。
双極性障害(躁うつ病)は、気分がハイな状態とうつな状態がジェットコースターのように上がったり下がったりするものでして、この気分の波にさらわれると様々な状態に陥ります(詳しくは「双極性障害の方はクリエイティブ性(創造性)が高いのか?」の記事の冒頭を参照)。そんな双極性障害ですが、実は2つの種類があるんですよね。
- 双極性障害Ⅰ型:日常生活に支障を来たすほどの激しい躁状態がある。
- 双極性障害Ⅱ型:日常生活に支障を来たすほどの躁状態はない。但し、うつ状態が長く重たい場合が多い。
上記からも分かる通り、どっちが軽い、重たい精神疾患という訳ではなく、それぞれ難しい精神障がいとなっております。今回は双極性障害をこの2種類に分けて、家族の精神疾患リスクをチェックしてみたんだとか。
この研究は「精神障がいの方の平均寿命は本当に短いのか?」で登場した、台湾における国民健康保険のデータベースを使ったというもの。サンプル数は当時の台湾の全人口となる23,258,175人でして、まずはこの中から双極性障害の患者さんをピックアップしていったそうな。
この研究は「精神障がいの方の平均寿命は本当に短いのか?」で登場した、台湾における国民健康保険のデータベースを使ったというもの。サンプル数は当時の台湾の全人口となる23,258,175人でして、まずはこの中から双極性障害の患者さんをピックアップしていったそうな。
続いて双極性障害Ⅰ型又は双極性障害Ⅱ型に分類していったらしい。併せて、双極性障害Ⅰ型と双極性障害Ⅱ型の患者さんの一親等の家族もピックアップしたそうで、184,958人が見つかったんだとか。
最後に主な精神疾患リスクを推定したそうで、結果、以下のような傾向がみられたとのこと。
- 双極性障害Ⅰ型の患者さんの一親等の家族は、双極性障害Ⅰ型リスクが約16倍(RR15.80)高かった。
- 双極性障害Ⅱ型の患者さんの一親等の家族は、双極性障害Ⅰ型リスクが約5.7倍(RR5.68)高かった。
- つまり、双極性障害Ⅰ型の患者さんの一親等の家族は、双極性障害Ⅱ型の患者さんの一親等の家族に比べて、双極性障害Ⅰ型リスクが有意に高かった。
- 双極性障害Ⅰ型の患者さんの一親等の家族は、双極性障害Ⅱ型リスクが約6.5倍(RR6.48)高かった。
- 双極性障害Ⅱ型の患者さんの一親等の家族は、双極性障害Ⅱ型リスクが約6倍(RR5.89)高かった。
- つまり、双極性障害Ⅰ型の患者さんの一親等の家族と双極性障害Ⅱ型の患者さんの一親等の家族の双極性障害Ⅱ型リスクは同程度だった。
- 双極性障害Ⅰ型の患者さんの一親等の家族は、統合失調症リスクが約5.8倍(RR5.83)高かった。
- 双極性障害Ⅱ型の患者さんの一親等の家族は、統合失調症リスクが約2.7倍(RR2.72)高かった。
- つまり、双極性障害Ⅰ型の患者さんの一親等の家族は、双極性障害Ⅱ型の患者さんの一親等の家族に比べて、統合失調症リスクが高かった。
- 双極性障害Ⅰ型の患者さんの一親等の家族は、注意欠陥多動性障害(ADHD)リスクが約2倍(RR1.93)高かった。
- 双極性障害Ⅱ型の患者さんの一親等の家族は、注意欠陥多動性障害(ADHD)リスクが約2.3倍(RR2.36)高かった。
- つまり、双極性障害Ⅱ型の患者さんの一親等の家族は、双極性障害Ⅰ型の患者さんの一親等の家族に比べて、注意欠陥多動性障害(ADHD)リスクが高かった。
双極性障害を持つ人の家族は、双極性障害Ⅰ型、双極性障害Ⅱ型、統合失調症、ADHDを持つ可能性が高かったみたいですね。また、双極性障害Ⅰ型と双極性障害Ⅱ型のどちらを持つ人の家族かによって、影響も変わるみたい。