統合失調症と双極性障害を併発する強迫性障害のレビューを見てみた!
統合失調症と双極性障害を併発する強迫性障害のレビューを見てみた…!
2019年のインド国立精神衛生神経科学研究所のレビュー論文によると、統合失調症と双極性障害を併発する強迫性障害について先行研究を見直ししてみたそうです。
そもそも強迫性障害(OCD)、不安障害、うつ病ってのは互いに高い併存性を有しております。但し、強迫性障害と統合失調症、強迫性障害と双極性障害との併存性についてはまだよく分かっていなかったんですな。そしてこれらの治療は非常に困難とのこと。
そこで今回この複雑な併存性について、レビューしてみることにしたんだとか。具体的には、2018年8月までに発表された該当する研究をPubMedとGoogle Scholarで検索し、レビューしたみたい。
それではレビューのポイントをバーッと見ていきますかー。
- 統合失調症の方は強迫性症状が良く見られる。
- 発生率は5%から30%の範囲。
- 強迫性症状は一般人口や他の精神疾患の患者にもよく見られる。しかし精神病リスクが極めて高い人は一般人口よりも頻度が高い。
- 強迫性症状は特に男性に多く見られ、発症が遅く、精神病の持続期間が長く、うつ病や自殺傾向がある場合に多く見られる。
- 但し強迫性症状と重症度は、必ずしも精神病への移行を予測するものではない。
- また強迫性症状がある人はない人よりも、認知機能テストの点数が高かった。
- 強迫性症状の発症頻度が最も高かったのは、精神病の家族歴がある人だった。
- 統合失調症患者の12%~14%が強迫性障害の診断基準を満たしている。
- 強迫性障害と診断され、後に統合失調症と診断されるケースは6.9倍多い。
- 強迫性障害の親を持つ子供の統合失調症リスクは4.31倍多い。
- 強迫性障害患者はそうでない人に比べて、統合失調症、バセドウ病(自己免疫疾患の一つ。甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまう病気。体温調節が上手くいかない、疲れやすい、イライラしやすい、目が飛び出るなどの症状がある)、統合失調感情障害の併存疾患リスクが12~13倍高い。
- 強迫性障害と診断された人はそうでない人に比べて、後に統合失調症と診断されるリスクが3倍高い。
- 統合失調症と診断された人はそうでない人に比べて、後に強迫性障害と診断されるリスクが7倍高い。
- 統合失調感情障害と診断された人はそうでない人に比べて、後に強迫性障害と診断されるリスクが5倍高い。
- 統合失調症と強迫性障害は、性別、発症年齢が似ており、男性の方が発症年齢が早いという特徴がある。
- 統合失調症+強迫性障害患者の親族は、統合失調症患者の一親等の家族と比較して、強迫性パーソナリティ障害、強迫性障害の発症リスクが有意に高い。
- 強迫性障害患者の一親等の家族は、統合失調症リスクが1.9倍高い。
- 強迫性障害患者の一親等の家族は、統合失調感情障害リスクが1.5倍高い。
- 強迫性障害患者の一親等の家族は、双極性障害リスクが1.7倍高い。
- 第二世代抗精神病薬(SGA)、特にクロザピン、リスペリドン、オランザピンは、統合失調症患者における強迫性症状の新規出現及び悪化と関係している。
- 第一世代抗精神病薬(FGA)は、ハロペリドールの稀な症例報告を除き、強迫性症状と関係がない。
- 特にクロザピンがヤバそうで、新規出現率が20%~28%、悪化が10%~18%と推定される。
- 強迫性症状は通常、第二世代抗精神病薬(SGA)による治療開始後数週間以内に出る。
- 但しクロザピンは、強迫性症状が最初の12か月の間に徐々に出てくる。
- リスペリドンは低用量では強迫性障害の治療におけるSSRIの作用をアップするのに効果的。
- 一方でリスペリドンを高用量服薬すると強迫性症状が出てくる。
- 強迫性症状と強迫性障害が併存する統合失調症の治療について、アメリカ心理学会(APA)はSSRIと抗精神病薬の併用をおすすめしている。
- 特にSSRIの中でもエスシタロプラムを1日20mg服薬すると良さそう。但し、全ての症例に効果がある訳でない。
- 一方でフルボキサミンとクロミプラミンは、精神病の悪化と関係がある。
- 強迫性障害と双極性障害は互いに高い併存性がある。
- 双極性障害患者における強迫性障害の生涯有病率は11.1%から21%の範囲だった。
- 系統的レビュー・メタ分析では双極性障害患者が強迫性障害を発症するケースが17%だった。
- 系統的レビュー・メタ分析では強迫性障害患者が双極性障害を発症するケースが18%だった。
- 強迫性障害の有病率は、双極性障害の小児・青年の方(24.2%)が成人(13.5%)よりも高かった。
- 強迫性障害における双極Ⅰ型障害の併発率は3.9%だった。
- 強迫性障害における双極Ⅱ型障害の併発率は13.5%だった。
- 双極Ⅰ型障害における強迫性障害の併発率は21.7%%だった。
- 双極性障害患者が後に強迫性障害と診断されるリスクが約1.2倍高い。診断期間の中央値は1.1年。
- 強迫性障害の初回診断後に双極性障害と診断されるリスクが13.7倍。
- 双極性障害の初回診断後に強迫性障害と診断されるリスクが1.2倍。
- 強迫性障害の初回診断後に双極性障害と診断されるリスクは、SSRIの使用で大幅に減少する(ゼロでない)
- 強迫性障害+双極性障害患者はそうでない人に比べて、生涯における希死念慮(自殺願望)が有意に高い。
- 強迫性障害+双極性障害の青少年における希死念慮は2.4倍も高い。
- 強迫性障害+双極性障害患者はそうでない人に比べて、物質使用障害、アルコール依存症、パニック障害、広場恐怖症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、摂食障害と診断されるケースが高い。
- 強迫性障害+双極性障害と鎮静剤、ニコチン、アルコール、コーヒーの使用との間に正の相関関係があった。
- 強迫性障害+双極性障害患者はそうでない人に比べて、薬物乱用率、注意欠陥多動性障害(ADHD)、反抗挑戦性障害(反抗挑発症:10歳未満の子どもに多い。怒りっぽい、挑発的、執念深いという症状がある)のリスクが高い。一方で全般性不安障害(漠然とした強い不安や心配を慢性的に持ち続ける)のリスクは低い。
- 強迫性障害+双極性障害患者はそうでない人に比べて、パーソナリティ障害の併存率が高かった。
- 強迫性障害+双極性障害患者は強迫性障害のみ、双極性障害のみに比べて、一貫して機能低下と生活の質の低下がみられた。
- 強迫性障害+双極性障害患者はそうでない人に比べて、入院回数が有意に高かった。
- 強迫性障害+双極性障害患者はそうでない人に比べて、SSRIによっての躁病・軽躁病を多く引き起こしていた。
- 強迫性症状はうつ病の間に悪化し、躁病・軽躁病の段階で寛解・改善していた。
- 症状の発症は、双極性障害と強迫性障害が同時に始まる、強迫性障害→双極性障害の順に起こる、うつ病エピソード→強迫性障害の順に起こる、など様々なパターンがあった。
- 強迫性障害+双極性障害は気分障害の家族歴がみられる、強迫性障害の家族歴がみられることが多い。
- 強迫性障害+双極性障害の治療の課題は、SSRIが躁病を引き起こしたり、双極性障害を悪化させたりするリスクがあること。
これらを見ると、強迫性障害と統合失調症、強迫性障害と双極性障害との併存性(併存リスク・二次障害・併存疾患・重複障害)は高そうですね。また、他の障がいとの併存もありそうな感じです。
治療については、強迫性障害だと気分安定薬と抗精神病薬が良さそうな物の、双極性障害+強迫性障害だとSSRIはちょっと心配な感じ。また統合失調症+強迫性障害についてはSSRIが良さそうな物の、抗精神病薬(特にクロザピン)は悪化するみたい。
複雑ですねー。これは主治医に任せないと混乱しそうですな。
個人的考察
因みに認知行動療法も役立ちそうな感じはあったんですが、まだまだ研究不足で、今後の研究に期待…!って感じでした。