アンブレラレビューを見てみよう!」シリーズその66です。
皆さんの支援している方の中に摂食障害の方はおりますか…?
ということで、今回は、現時点の摂食障害大全になりそうなアンブレラレビューを見てみます。



摂食障害と精神的健康の関係についてアンブレラレビューを行ってみた…!

2023年のモナシュ大学の研究によると、摂食障害と精神的健康の関係についてアンブレラレビューを行ってみたそうです。
摂食障害は、吐くほど食べ過ぎてしまったり、逆にほとんど食べられず食べてもすぐ吐き出してしまうような症状がある精神障害でして、カレン・カーペンターが後年苦しんだ症状としても有名だったりします。ストレスのはけ口を食べるという行為で逃げようとする回避行動の一種だったり、過度なダイエットやスリムさを追い求めた結果、認知が歪んで起こる事が多い感じ。
また2020年のキングス・カレッジ・ロンドンのレビュー論文を見てみると、現在、摂食障害は大きく以下の6つに分かれるらしい。

  1. 神経性無食欲症:自分で意図的に食べないようにし、体重減少をさせるのが特徴。歪んだボディイメージからこのような行動を行う。いわゆる拒食症のこと。他に神経性やせ症とか神経性食欲不振症などとも呼ばれる。
  2. 神経性過食症:暴飲暴食といった、むちゃ食い、気晴らし食いをし、その後、吐いたり、下剤を使って食べた分をチャラにする行動を行うのが特徴。いわゆる過食症+拒食症のこと。
  3. 過食性障害:暴飲暴食といった、むちゃ食い、気晴らし食いを行うのが特徴。神経性過食症はチャラにする行動があるが過食性障害はしない。いわゆる過食症のこと。
  4. 回避・制限性食物摂取症:ちょっとしか食べない、特定の食べ物を避けるのが特徴。歪んだボディイメージがない点が神経性無食欲症との違い。
  5. 異食症:食べ物でない物を日常的に食べるのが特徴。
  6. 反芻症:食べた物を吐こうとするのが特徴。

これらは過去50年間で増加傾向にあり、男性と女性で症状が異なる場合もあるそうです。そして身体的・心理的な罹患率、障害、死亡率の上昇につながっているんだとか。
そんな摂食障害の生涯有病率について、2019年のルーアン大学の系統的レビューによると、女性は3.3~18.6%、男性は0.8~6.5%とのことで、女性に多いのが特徴となっております。
また2017年のディーキン大学の系統的レビュー・メタ分析によると、摂食障害はダイエットやボディイメージへの不満などからリスクが高まる感じ。その他にも全米摂食障害協会(NEDA)によれば、摂食障害の家族歴、メンタルに問題を抱えた家族がいる事、不安障害歴、行動の柔軟性の欠如、体重への偏見、いじめられた経験、限定的な社会的ネットワーク
なんかも関係あるらしい。
ただ研究者曰く、今まで年齢層を問わず摂食障害とメンタルの関係のアンブレラレビューは発表されていなかったんだとか。そこで今回ガッツリ深掘りしてみることにしたそうです。
まず研究者たちは、2022年11月8日までに発表された該当研究をMEDLINE、PyscInfo、CINAHL、EMBASEで検索してみたそうな。
すると合計7,275件の研究がヒットしたとのこと。次にこの中で被っている研究を除きつつ、更に基準に従って質をチェックしていったらしい。
最終的に残った研究は18件でして、特徴は以下のようになっておりました。

  • 18件中10件はメタ分析を含んでいた。
  • 個々の研究数は5件~122件だった。
  • 研究の大半は横断研究だった。
  • 1件以外、男女を対象にしていた。
  • サンプル範囲は1,792人~2,321,441人だった。

それでは、結果を見てみましょう。

  • 摂食障害と不安障害は双方向に関係していた…!
  • 否定的な気分、緊張、悲しみ、感情の不安定のリスクが高く、それらが不安障害やうつ病に発展する可能性がありそうだった。
  • 摂食障害とうつ病は双方向に関係していた…!
  • 男性は、より大きな体を理想化すること(=マッチョなイメージ)で、自分の痩せた体への不満を募らせるのに対し、女性は、痩せた体を理想化すること(=モデル体型)で、自分の体を実際よりも太っていると認識していた。
  • 摂食障害とADHD(注意欠陥多動性障害)は双方向に関係していた…!
  • 原因はADHDの衝動性だった。
  • ADHDの方が摂食障害の診断を受けることは3.82倍高く、一方で摂食障害の方がADHDの診断を受けることは2.57倍高かった。つまり、ADHD→摂食障害の可能性(二次障害・併存疾患・重複障害の可能性)が高そうだった…!
  • 摂食障害と双極性障害は関係していた…!
  • 双極性障害の方の摂食障害リスクは5.3~31%の範囲だった。
  • 双極性障害の方における拒食症(神経性無食欲症)の生涯有病率は3.8%、過食症+拒食症(神経性過食症)の生涯有病率は7.4%、過食症(過食性障害)の生涯有病率は12.5%だった。つまり、過食に走る傾向が強そうだった…!
  • 摂食障害は自殺や希死念慮による自殺リスクの上昇と関係していた…!
  • 摂食障害と自傷行為は関係していた…!
  • 自傷行為における摂食障害の生涯有病率は27.3%、拒食症(神経性無食欲症)の生涯有病率は21.8%、過食症+拒食症(神経性過食症)の生涯有病率は32.7%だった。特に青年と成人した若者に多かった。
  • 摂食障害とパーソナリティ障害は関係していた…!
  • 完璧主義神経症傾向低い外向性、社会的報酬に対する感受性、回避する動機、否定的な切迫感、責任感の強さがリスクをアップさせるようだった。また摂食障害の方は、境界性パーソナリティ障害の症状が有意に増加していた。
  • 摂食障害と強迫性障害は関係していた…!
  • 摂食障害における強迫性障害の生涯有病率は13.9%、現在の有病率は8.7%だった。
  • 拒食症(神経性無食欲症)における強迫性障害の生涯併存率は19%、過食症+拒食症(神経性過食症)における強迫性障害の生涯併存率は14%だった。また縦断研究を考慮して再計算すると、拒食症(神経性無食欲症)における強迫性障害の生涯併存率は44%、過食症+拒食症(神経性過食症)における強迫性障害の生涯併存率は18.5%に増加した。

いや~因果関係がはっきりしないものもありますが、摂食障害は不安障害、うつ病、ADHD、双極性障害、自殺や希死念慮、自傷行為、パーソナリティ障害、強迫性障害と関係ありそうですね。特にADHDとの関係が強いと…。



個人的考察

摂食障害は様々な精神疾患の二次障害・併存疾患・重複障害が起きる感じでした。
是非、意識して支援していきたいですね。
因みに摂食障害対策のおすすめは、認知行動療法、特にセルフコンパッションですね。詳しくは以下からご覧ください。




参考文献