先週「睡眠とメンタルって関係あるの?」って話をご紹介しました。
今回はそれに通ずるお話でして、「睡眠障害と片頭痛って関係あるの?」って話でもしようかと。



睡眠障害と片頭痛の関係について先行研究を見直ししてみた…!

2018年のハーバード大学レビュー論文によると、睡眠障害と片頭痛の関係について先行研究を見直ししてみたそうです。
そもそも睡眠障害と片頭痛の関係は、複雑で十分に分かっていないところがございます。ただ、片頭痛持ちは、片頭痛前と片頭痛中に睡眠不足を訴えることが多いんですな。また睡眠は、片頭痛の痛みを和らげる効果があると報告されております。一方で、片頭痛の睡眠は疲労感を感じさせることもあるとのこと。
こんな感じで関係ありそうなんで、今回先行研究を見直ししてみることにしたらしい。


そもそも人間はなぜ眠るのか…?

そもそも人間はなぜ眠るのか…?
この疑問の答えは実はよく分かっていなかったりします。こんなに身近で毎日行う行為なのに…。
ただ、睡眠、特に深い睡眠は、昼間の活動を回復させている可能性が高いみたい。また、睡眠は日中に蓄積された脳内の老廃物(アミロイドβなど)を掃除する機能を持つと考えられています。
つまり疲労回復や脳のお掃除の役割が睡眠だと思われているってことですね。


不眠症と片頭痛の関係

続いて本題である睡眠障害と片頭痛の関係について見てみましょう。
まずは睡眠障害の中で最も一般的な不眠症との関係からです。
そもそも不眠症とは、十分な寝る時間があるにも関わらず、寝れない、寝てもすぐ目が覚めちゃう状態のことを言いまして、日中活動に悪影響を及ぼす状態と定義されております。
そして一般人口の約3分の1が不眠症の症状を持っていると言われ、また、一般人口の6%が慢性不眠症(少なくとも週3回、3ヶ月以上続く不眠症のこと)なんだとか。
そんな不眠症ですが、片頭痛の方は訴えることが多いんですよね。実際、睡眠効率(実際に寝ている時間の割合)や徐波睡眠(レム睡眠は睡眠が浅く、ノンレム睡眠は深い。このノンレム睡眠の中で更に深い眠りのことを徐波睡眠という)の量など、睡眠の質が低くなっているとも先行研究で出ているんですな。また頭痛が起きることによって寝ていたのに目が覚める…!みたいなパターンもあるとのこと。
一方で、睡眠中や朝の頭痛は、入眠潜時(眠りにつくまでの時間)や総睡眠時間にはっきりとした影響がないらしい。そのため、早朝や寝る前の不眠症を訴えるケースもあるそうな。そして早朝の片頭痛は加齢とともに増加し、20代ではわずか16%なのが60歳を超えると58%になるんだとか。高齢者は徐波睡眠が少なく、夜間の覚醒(夜に目が覚めること)が多いんで、これが原因か、又は加齢による睡眠機能の低下の可能性もあるそう。
最後に、片頭痛持ちにおける不眠症ってのは病院でも十分に認識されず、十分な治療も行われないことが多いみたいです。確かにただしっかり寝ましょうみたいなことを言われるだけかもですな。
対策としては、片頭痛持ちの不眠症の方に認知行動療法を行うと睡眠効率が改善し、頭痛頻度も減少するみたいです。


閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)と片頭痛の関係

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA:いわゆる睡眠時無呼吸症候群)は、睡眠時の無呼吸の兆しや関連する症状(眠気、疲労、不眠、いびき、主観的な夜間呼吸障害、観察される無呼吸)や関連する疾患(高血圧、冠動脈疾患、心房細動、心不全、脳卒中、糖尿病、認知機能障害、気分障害)に加え、機械による測定で睡眠1時間あたり5回以上の無呼吸が起こる場合を言います。また、関連症状や疾患がない場合は、1時間あたり15回以上の無呼吸が起こる場合となるんだとか。
そんな閉塞性睡眠時無呼吸症候群ですが、よく見られる症状の朝の頭痛と覚醒時の頭痛は、低酸素血症(血中の酸素が少ない)や高炭酸ガス血症(血中の二酸化炭素が多い)に直接関係しているので、治療により改善するとのこと。
そして片頭痛と睡眠時の無呼吸の発生率は一般人口と同程度であると報告されているそうな。因みに閉塞性睡眠時無呼吸症候群の重症度でも違いは見られなかったらしい。意外ですね~。
つまり、睡眠時無呼吸症候群は片頭痛と関係なし…!頭痛があればそれは体内の酸素が少なく、二酸化炭素が多くなっているから…!って感じですね。


夢遊病と片頭痛の関係

夢遊病(睡眠時遊行症)は、寝ている最中、無意識に歩き回ったりすることを言います。
実は、片頭痛のある子供の研究と成人の回想法(昔の経験や思い出を話し合う心理療法)の研究の両方で、片頭痛持ちにおける子供・子供時代の夢遊病の割合が高かったらしい。
因みに親の報告によれば、前兆のある片頭痛の子供の夢遊病率は13%、前兆のない片頭痛の子供や片頭痛のない子供の夢遊病率は約3%だったそうな。また頭痛持ちの成人を対象にした研究によると、片頭痛持ち(33%)は他の種類の頭痛持ち(5%)と比較して、子供時代の夢遊病率が高かったみたい。
まだまだ分からないものの、もしかしたら子供時代の睡眠問題って子どもや大人の頭痛、片頭痛に影響があるのかもですね。


歯ぎしりと片頭痛の関係

歯ぎしりは、片頭痛と併発することが知られている顎関節症と相関関係があるそうです。そのため、片頭痛持ちは歯ぎしりを訴えるケースが多いんだとか。
但し、その根本的なメカニズムははっきりしていないみたい。睡眠時の歯ぎしりは、慢性片頭痛の診断や反復性の片頭痛と関連し、一方で緊張型の頭痛とは関連がなかったらしいので、頭痛の種類によっても違いがあるのかも。


むずむず脚症候群(RLS)と片頭痛の関係

むずむず脚症候群(RLS)は、脚を動かしたいという衝動を抑えきれない病気の事を言います。
んで、むずむず脚症候群と片頭痛の関係を調べた研究はまぁまぁありまして、その大多数では片頭痛持ちはむずむず脚症候群リスクが高いと出ているんですな。その効果サイズは症例対照研究で4.2倍(OR4.2)、コホート研究で1.2倍(OR1.2)とのこと。
原因はドーパミンじゃないかな~?って感じ。上手くドーパミンが分泌・制御がされていなくてそれが原因になっていると考えられているんですな。
因みに片頭痛持ちは悪夢を見る頻度の増加も報告しているらしいんですが、詳しくは不明とのこと。


ナルコレプシーと片頭痛の関係

ナルコレプシーは日中に強い眠気が繰り返し起こり寝てしまう病気。話している最中に急に寝てしまうこともあったりします。
そんなナルコレプシーですが片頭痛と関係があると出ている研究は限られているそうな。ある研究ではナルコレプシーの方は片頭痛の発生率の増加は見られず緊張型の頭痛の発生率が増加したと報告されており、一方で別の研究ではナルコレプシーの方は片頭痛の発生率が一般人口より多いと出ております。
そのため、よく分かっていないのが実情みたい。


因果関係と原因ってどうなの…?

因果関係について、睡眠と片頭痛に関する先行研究をレビューした結果、どうやら双方向の関係が見られそうとのこと。
但し、より詳しく見てみると、片頭痛と睡眠問題の間には共通した原因がありそうなんだとか。
その原因は、

  • 視床下部に問題が起きている
  • 神経伝達物質、神経ペプチド、ホルモンに問題が起きている
  • 脳の老廃物除去機能に問題が起きている

などがあやしいらしい。
現時点ではここまで分かっている感じだそうです。


睡眠不足は片頭痛を起こすのか…?

睡眠不足で片頭痛が起きるのか…?片頭痛により睡眠不足が起きるのか…?
この問題は、実は複雑でよく分かっていないのが実際の所みたいです。
但し、原因の可能性として高そうなのが、睡眠、ネガティブな気分(抑うつと不安)、食欲、性機能、痛みなど、多くのヒトの行動に影響を与えるセロトニンらしい。またドーパミンもあやしいそうな。


睡眠はどのように片頭痛を止めるの…?慢性片頭痛の場合、睡眠効果が持続しないのはなぜ…?

一般的でありながら、あんまりよく分かっていないものの一つに、睡眠が片頭痛を止めることがあると言うことです。そしてもうひとつよく分からないのが睡眠が慢性片頭痛にはあまり効果が続かないってことです。ほんと睡眠って分からないことだらけですよね。
とりあえず可能性があるのが脳の老廃物除去機能のおかげかも…?ってことです。
寝ている間にアミロイドβみたいな脳のゴミをお掃除しているので、逆に言えば、睡眠障害ってのは脳のゴミの蓄積につながるんじゃないか…?それが片頭痛が起きる原因なんじゃないか…?って感じです。



個人的考察

睡眠自体、分かっていないことが多いんで、睡眠障害と片頭痛の関係も分からないことが多かったりします。
ただ、少ないながらも分かっている事、分かってきつつある事があるのもまた事実です。
そして上記を見ると対策もいくつか取れそうなんで、もしこれらに該当する方は医師と相談の上、セルフチェックして自分の効く対策を探すのがよろしいのかな~と思いました。



参考文献