【加筆内容】テロメアの長さで抗うつ薬(SSRI)の効果が変わるのか?
テロメアの長さで抗うつ薬(SSRI)の効果が変わるのか…?
2023年のカリフォルニア大学の研究によると、テロメアの長さで抗うつ薬の効果が変わるのか調べてみたそうです。
そもそもWHOによれば、うつ病(大うつ病)は世界の成人のおよそ5%に影響を及ぼしておりまして、また2018年のコロンビア大学の研究によれば、その生涯有病率は15%なんだとか。
そんなうつ病(大うつ病)は、メンタルを落ち込ませるだけでなく、糖尿病や心血管疾患、肥満などといった老化に伴う疾患リスクを上げたり、早期死亡率を上げたりもしているみたいです。これらの関係のメカニズムははっきり分かっていないものの、どうやらストレス調節の機能不全や代謝の調節機能不全が原因っぽい。
一方で、テロメアは染色体の先端にある保護キャップの事を言いまして、これは細胞分裂のたびに短くなる傾向があり、実際に短くなると、細胞の老化やアポトーシス(細胞の自殺)につながる可能性があるんですな。
また、細胞分裂で短くなるほかにも、DNAの損傷、精神的なストレス、食事と肥満、喫煙、炎症や酸化ストレスなんかでも短くなる傾向があるみたい。
これらうつ病とテロメアの長さの関係を調べた先行研究はいくつかありまして、
って感じなんですが、結果はバラバラだったりします。
また2011年のカリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究や2014年のアムステルダム自由大学の研究、2012年のブルゴーニュ大学の研究では、うつ病の人とそうでない人に差がなかったともでているんですな。ということでまだこの辺はよく分かっていないみたい。
ただうつ病とテロメアの関係は違う視点からも調べられておりまして、同研究チームが行った2016年の研究によると、テロメアが長いとSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に対する効きが良くなったそうです。
その後、
- 2015年の中南大学の研究:統合失調症における抗精神薬
- 2016年のスタンフォード大学の研究:大うつ病における補助薬としてのピオグリタゾン(アクトス)
- 2013年のカロリンスカ研究所の研究:双極性障害におけるリチウム(治療薬)
で、テロメアが短いと特定の精神薬の効きが悪くなるとも出たそうです。
但し抗うつ薬とテロメアの長さを前向きコホート研究で調べたものは今のところなかったらしい。そこで今回チェックしてみることにしたんだとか。
この研究は投薬治療を受けていないうつ病の患者さん48人が参加したもので、平均年齢は34.9歳、48人のうち女性は26人(女性の割合54.2%)、平均BMIは25.2だったそうな。また、喫煙の有無については、
- 一度もタバコを吸ったことがない:31人(64.6%)
- 以前にたばこを吸っていたが現在は吸っていない:13人(27.1%)
- 現在タバコを吸っている:4人(8.3%)
って感じ。
まずはこの方々のテロメアの長さを測り、次に抗うつ薬(SSRI)による治療を8週間行ったそうな。その後、再度テロメアの長さを測りつつ、また他の関係性も併せてチェックしたとのこと。
結果、
- 治療前におけるテロメア・テロメラーゼと治療前のうつ病の重症度・慢性度は有意な関係がなかった…。
- 治療前におけるテロメアの長さと治療前の不安スコアは有意な逆相関の関係があった…!
- テロメアが長い程、抗うつ薬(SSRI)の治療に対する反応が良かった…!
- 治療前におけるテロメアの長さとアロスタティック負荷(慢性ストレスのダメージ度)は有意な逆相関の関係があった…!
- 治療前におけるテロメアの長さと心血管疾患リスク因子(血圧やコレステロール値など)は有意な逆相関の関係があった…!
とのこと。
先行研究の結果同様、テロメアが長いと抗うつ薬(SSRI)の効きが良くなるみたいですね。
また慢性ストレスによるダメージが少ない人、心血管疾患リスクの低い健康な人もテロメアが長かったみたい。この辺も先行研究の結果と同様ですな。
個人的考察
因みに2004年のカリフォルニア大学の研究によると、うつ病でない人でも慢性ストレスの期間とダメージ度がテロメアの長さと有意に関係していたと出ております。
そのため、ストレス対策はここでも重要なポイントと言えそうです。