最近注目されているものの一つに「知的謙遜」ってのがございます。
なんとなくどこかで聞いたこともあるんじゃないかと。
今回はこの「知的謙遜」についてご紹介していきます。



「知的謙遜」ってなに…?メリットは…?アップする方法は…?

2022年のペンシルベニア大学などレビュー論文によると、知的謙遜について先行研究をまとめてみたそうです。
まず知的謙遜(知的謙虚)とは、自分の知識の限界を認め、自分の信念が間違っている可能性があることを認めることを言います。この考え方は意外と古くからありまして、例えばソクラテスの無知の知が該当しますね。
もちろん、これらを完全に排除することはできませんが、知識の限界を認識することによって、権威主義的な考えや独断的な考え、偏見的な考えから身を守るのに役立つ可能性があるとのこと。
また知的謙遜は、リスクの低い状況だと出来ることも多いんですが、リスクが高い状況だと、出来なくなる事も多いみたい。例えば、強い信念に突き動かされているとき、政治や宗教、倫理や価値観とかち合った時なんか結構難しいらしい。確かにこの辺の問題で「謙虚に」は難しいでしょうね。
但し、知的謙遜を身に付けることによって、両極端な考え、過激な考え、陰謀論にハマることを減らし、学習の機会と発見を増やし、科学的信頼性を育てる一助になる可能性があるそうです。
因みに知的謙遜をメタ認知の一部と捉える派とそうでない派がおります。ここについては学者でも意見が分かれるところみたいなんですが、多くの哲学者や心理学者によれば、知的謙遜は必然的に自分の無知と知的間違いを認識することが含まれるという点では一致しているそうです。


知的謙遜ってどう測定するの…?

じゃあ、今の自分の知的謙遜はどれぐらいなのか…?ってことで、これまで、色々な測定方法が発表されてきたんだとか。
んで、一番ポピュラーなのが参加者にアンケートを用いて答えてもらう方法。その他にも質問に正しく答えることを目的としたグループワークを行い、参加者がどのくらいの頻度でより知識のある仲間に質問を託すのかチェックする方法なんかもあるそうな。

んで、アンケートの共通点は「自分の信念や態度が間違っている可能性があることをどの程度受け入れているか」を尋ねる感じ。
具体的な例としては、

  • 銃規制についての質問を行う。その結果、自分の見解が限られた証拠に基づいていることをどの程度認識しているかチェックする
  • ワクチンの義務化についての質問を行う。その結果、自分の見解が限られた証拠に基づいていることをどの程度認識しているかチェックする
  • 最近起こった意見の違いや衝突の際に「自分の信念(考え・意見)が間違っている可能性のある理由をどの程度積極的に探したかを尋ねる

みたいな感じ。
銃規制はアメリカ問題なんで、ちょっと分かりづらいですが、なんとなくイメージできるかと。


知的謙遜のメリットってなに…?

冒頭でもチラッと書きましたが、知的謙遜には様々なメリットがあるんだとか。
まず社会レベルでのメリットとしては、グループの崩壊を防ぐ、仲の良いグループ関係を促進する、グループの結束を高められるなんかがあるとのこと。
また個人レベルでのメリットとしては、幸福、意思決定、学習に重要な影響を及ぼす可能性があるそうです。
もうちょい詳しく見てみると、社会レベルのメリットは以下な感じ。

  • 反対の政治的見解や宗教的見解に寛容である可能性が高い。
  • 反対グループに対する敵意や悪者扱いが少ない。
  • 反対グループとの関与・協力に前向き。
  • 所属以外のメンバーを知的かつ道徳的に破綻していると軽蔑することが少ない。
  • 自分たちの見解や考え方、意見に疑問を持つことが多い。
  • 反対意見にも頻繁に触れようとする。
  • 自分のグループ以外のグループとも親しくなることにオープンな考え方を持っている。
  • 自分の立場を熟考した後で、より協力的になり皆の利益を考える。
  • 自分を傷つけたり信念を侵した他人を許し、和解しようとする意志を持っている。
  • 議論中に相手を悪意のある人や愚か者と決めつけることが少ない。
  • 心の広さと異なる視点を学ぶ意欲が上がる。
  • 敬意を持って議論を進められる。
  • 共感、感謝、利他主義、博愛、普遍主義といった多様な価値観を認められる。
  • 他者の幸福を考え、気遣うことができる。
  • 社会的な逆境に直面した際、対人関係を維持するのに役立つ。
  • 対人関係で悩んだ末、他者に対するポジティブな感情や親近感を高められる。

注意点としては、まだ研究が始まったばかりの分野なんでエビデンスレベルがはっきりしていないことですかね。
お次は、個人レベルのメリットを見てみましょう。

  • 知的謙遜しつつ考え、他人の視点や意見を考慮する人は、そうでない人に比べて、生活満足度が高く、ネガティブな影響が少ない。そのため幸福度が高い。
  • 知的謙遜の高いリーダーはEQ(感情的知性)も高く、周囲からの満足度も高いため、仕事で成功しやすく、幸福度が高い(宗教指導者は幸福度が低い)
  • 信念に反する意見であっても、良い意見と悪い意見を区別できる。そのため、意思決定が上手い。
  • 嘘が少ないため、記憶の歪みが少ない。
  • 誤情報を精査する力が高い。そのため、陰謀論にハマりづらい、コロナワクチン接種を希望する場合が多い。
  • 無知を認識している為、学習意欲が高く、一般的な事実に関する知識も豊富。
  • 知的謙遜な学生は、難しい教材で勉強する際、より多くの努力を払い、フィードバックを積極的に受け入れ、より高い成績を残す。

これらは相関関係に基づく結果らしく、そのため、協調性、知性、道徳によって表れている可能性があるとのこと。


知的謙遜をアップする方法は…?

ここまで見て頂いた方は、知的謙遜が高いと明らかにメリットが多いと感じたでしょう。
じゃあ、知的謙遜をアップするにはどうすれば良いのか気になっちゃいますよね~?
知的謙遜を高める方法かも…?ってのがいくつかの研究で見つかっていますんでそれらをご紹介していきます。

  • 知的謙遜がすぐ発動するように、短い反省を行う…!(私は一人反省会を行うといったりしています)
  • 知的謙遜がすぐ発動するように、書く…!
  • 知的謙遜がすぐ発動するように、読む…!
  • 一歩下がって遠くの観察者の視点から自分を思い描いて経験を振り返る…!(メタ認知脱フュージョンですな)
  • 裏切られた経験や意見の不一致、対人関係の葛藤を思い出し、これについて一歩下がって振り返ってみる…!
  • 知らないことを2つリストアップして最初に「すでに分かっている事、分からない事」を考えてみる…!(私はKJ法+αで紹介した○△×の方法でやっていますね)
  • 知的謙遜のメリットを学ぶ…!(ここまで読んだ方は行っていますね…!)
  • 知性は遺伝で決定する訳ではなく、後天的に身に付けられる能力であるという短い説得力のある記事を読む…!

研究者曰く、これらは総合的に知的謙遜を低コストで高めることができるだろう、としています。確かにいずれも簡単にできてよろしいですな。



個人的考察

知的謙遜、つまり自分の無知と知的間違いを認めることは、より好奇心旺盛で、よりリーダーとして好かれ、より綿密で十分な情報に基づいた意思決定を行う傾向があり、また自分と異なる意見や考えを持つ人との協力にも積極的になれる傾向があるそうです。
こうした思考習慣は、今日の社会が直面する多くの問題に立ち向かう上で不可欠であり、一般の人々からリーダー、科学者まで、様々な人にとってメリットがあるとのことでした。
是非、日々意識していきたい、高めていきたいですな。



参考文献