アンブレラレビューを見てみよう!」シリーズその96です。
今回は、2024年に慶熙大学校が発表した、乳幼児突然死症候群(SIDS)における出生前・出生後のリスク要因・保護要因についてのメタ分析のアンブレラレビューを見てみます。



乳幼児突然死症候群(SIDS)における出生前・出生後のリスク要因・保護要因についてメタ分析のアンブレラレビューを行ってみた…!

2024年の慶熙大学校の研究によると、乳幼児突然死症候群(SIDS)における出生前・出生後のリスク要因・保護要因についてメタ分析のアンブレラレビューを行ってみたそうです。

  • 乳幼児突然死症候群(SIDS)とは、何の予兆や既往歴もないまま乳幼児が死に至る原因のわからない病気で、窒息などの事故とは異なる

とのこと。
なんでも日本では令和5年に48人の乳幼児がSIDSでお亡くなりになっているらしく、乳児期の死亡原因の第5位となっているんだとか。これは是非、リスク要因と保護要因を知りたいですね。
ということでまず研究者たちは、2023年1月18日までに発表された該当するメタ分析をPubMed/MEDLINE、Embase、EBSCO、Google Scholarで検索してみたそうな。次に被っている研究や質の低い研究を除いていったみたい。
最終的にピックアップされたメタ分析は8件でして、これらには5大陸からなる21の国と地域が含まれていたそうです。
それでは気になる結果を見てみましょう。
まずはリスク要因からです。

  • 出生前における薬物の曝露:7.84倍(非常に可能性のあるエビデンス)
  • 出生前におけるオピオイド(鎮痛剤)の曝露:9.55倍(可能性のあるエビデンス)
  • 出生前におけるメサドン(鎮痛剤)の曝露:9.52倍(低いエビデンス)
  • 出生前におけるコカインの曝露:4.38倍(低いエビデンス)
  • 出生前における母親の喫煙:2.25倍(非常に可能性のあるエビデンス)
  • 出生後における母親の喫煙:1.97倍(低いエビデンス)
  • ベッドの共有(赤ちゃんと一緒に寝るなど):2.89倍(低いエビデンス)
  • 最後の睡眠後に頭が布団で覆われた状態で乳児が発見されたこと:11.01倍(可能性のあるエビデンス)

ざっくりまとめると、母親の薬物・鎮痛剤の使用、喫煙、一緒に寝る、赤ちゃんの頭が布団で覆われていたことがあるのは危ないってことですね。
次は保護要因をチェックしてみます。

  • 母乳による育児:0.57倍(エビデンスなし)
  • 赤ちゃんが仰向けの姿勢で寝る:0.48倍(可能性のあるエビデンス)
  • おしゃぶりの使用:0.44倍(低いエビデンス)

いずれもあんまりエビデンスレベルが高くないですね…。但し、寝方とおしゃぶりは窒息死を防ぐのに有効そう…。



個人的考察

これらを見ると、まだまだ信頼できる、関連性がある研究不足といったところ。今後の研究に期待ですねー。
因みに冒頭でご紹介したこども家庭庁のwebページによると、

  1. 1歳になるまでは、寝かせる時はあおむけに寝かせましょう
  2. できるだけ母乳で育てましょう
  3. たばこをやめましょう

と対策が書かれておりました。
基本は良いんですが、母乳はちょっとエビデンスがあやしいかな~って感じになっちゃいましたね。まぁ、母乳による育児は衛生仮説を踏まえるとメリットがありますんで、やっておいて損はないかと思いますが…。
それとこども家庭庁のwebページの下の方には2022年の米国小児科学会の研究を基に赤ちゃんの睡眠中における窒息死の防止策が載っていました。こちらは上記と被る部分もあり、保護要因として参考になるかと思います。



参考文献