2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサスを見てみよう! その7「脳スキャン」
「2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサスを見てみよう!」シリーズの続きです。
カテゴリー⑥:脳スキャンで見られた違い
71. 4,100人以上の脳をMRIでスキャンしたデータ分析により、ADHDの子どもは大脳皮質の表面積がわずかに小さかった。また、脳のいくつかの皮質下領域(前頭葉、帯状皮質、側頭葉)で小さく、側頭葉では皮質厚もいくらか小さかった。更に同研究チームが行った別の研究によると3,242人を対象に調べた結果、ADHDの子どもは皮質下領域(大脳基底核、扁桃体、海馬、頭蓋内容積)が小さかった。但し観察された違いはすべて小さいか非常に小さく微妙なものだった。また、これらは青年や成人には見られなかった。
72. 1,870人を対象にしたメタ分析によると、大脳基底核と島皮質における灰白質の容積減少は強迫性障害に多く見られた。一方で3,610人を対象に調べた結果、内側前頭葉の容積減少はASD(自閉スペクトラム症)に多く見られた。そして12,000人以上を対象にした研究によると、脳をMRIでスキャンした結果、ADHDの方は強迫性障害の方に比べて海馬の容積が小さく、これがIQの違いと関係している事、また、ADHDの方はASDの方と強迫性障害の方に比べて頭蓋内容積が小さかった。1,870人を対象にした研究によると、実行機能タスク中における右下前頭前野と基底核の機能低活性化は強迫性障害に多く見られた。3,610人を対象にした研究によると、実行機能タスク中における下前頭前野の機能障害はASDに多く見られた。
73. 947名が参加したメタ分析によると、ADHDの有無で最も一貫した違いのあった白質は、右帯状皮質、右矢状層、左タペタムまで広がる脳梁体後部とのこと。なんでも注意と知覚に関わる頭頂連合野、下前頭回、側頭葉、頭頂葉、後頭葉における両方の脳半球間の接続に問題があることを示唆しているそうな。
74. 607名を対象としたメタ分析によると、MRIによりADHDの人は、右腹側頭前野、補足運動野、大脳基底核といった抑制制御領域が、一貫して低活動だった。また腹側頭前野の低活動は別の2件のメタ分析でも見られた。更に1,914人を対象にしたメタ分析では、大脳基底核の機能異常と男性の腹側頭前野の機能低下のみ見られた。
75. 1,250人以上を対象にしたメタ分析によると、脳波のシータ波(眠気がある時や睡眠時に多い脳波)・ベータ波(覚醒時に多い脳波)はADHDの信頼できる診断基準とはみなされなかった。
76. 148名を対象にしたメタ分析によると、ミスマッチ陰性電位(同じ音を繰り返し聞きつつ、時々違う音を聞く。それによる脳波のゆらぎをみる)を行った。結果、ADHDの児童は対照群の児童と比べ、ミスマッチ陰性電位の振幅が小~中程度に減少していた。
77. 様々な系統的レビュー・メタ分析により、ADHDの治療に使われる薬は脳構造の障害と関連がなく改善と関連があった。特に下前頭葉と線条体で改善が見られた。
個人的考察
長くなったので今回はここまで。
続きは来週です。
参考文献
最後にまとめてご紹介します。