2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサスを見てみよう! その10「生活の質・感情的障害・社会的障害・事故による怪我」
「2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサスを見てみよう!」シリーズの続きです。
カテゴリー⑧:ADHDが与える患者さんと家族への影響ってなに…?
ADHDは、深刻な苦痛や生活に支障を来たす障がいとなっております。そのため、ADHDには多くの問題が発生しますが、以下に挙げる全ての問題を皆が経験するわけではないとのこと。そして多くのADHDの患者さんは、特に治療を受けている場合、楽しい生活を送っているということです。
ADHDの影響:生活の質(QOL)
101. 2016年のメタ分析によると、5,000人以上の若者とその親を対象に調べた結果、ADHDを持つ若者は、そうでない同年代の若者と比較して、生活の質が大幅に低かった。これは、若者の自己評価、親の評価に関わらなかった。また、身体機能は中程度の低下、情緒機能と社会機能は重度の低下、学校成績も重度の低下を示していた。更にADHDを持つ若者は、そうでない同年代の若者と比較して、成長するにつれて、身体機能・情緒機能・学校成績においても生活の質が低下していた。
102. 647家族、2,300人以上を対象とした2019年のメタ分析によると、ADHDの子供を持つ親は、そうでない親と比較して生活の質が中程度低かった。
ADHDの影響:感情的障害・社会的障害
103. 2006年の研究によると、アメリカ人の若者8,600人以上を調べた結果、ADHDの若者は、感情、行動、仲間とのトラブルがこじれる割合が一般的な場合よりも6倍以上高かった。また、家庭生活、友人関係、学校での学習、余暇活動への支障などがこじれる割合が一般的な場合よりも9倍以上高かった。
104. 2016年のメタ分析によると、21,000人以上の方を対象に調べた結果、ADHDの若者は、新しい環境やストレス過多の環境に対する柔軟性が著しく低かった。また2020年のメタ分析では1,900人以上を対象に調べたところ、ADHDを持つ成人はそうでない成人に比べて、感情調節障害レベルが非常に高かった。
105. 2018年のメタ分析によると、ADHDを持つ子どもは、拒絶/好感度、人気、友情といった仲間との社会性において、中程度から重度の障害を抱えていた。また、共有、協力、順番を守る、相互関係といった社会的スキルと、社会的合図の認識、問題の特定、解決策の考案、偏見の回避といった社会的情報処理能力においても中程度の障害を抱えていた。
106. 2007年の研究によると、アメリカ人の児童53,000人以上を対象に調べた結果、ADHDを持つ児童はいじめに加担する可能性が2.4倍高かった。2015年の研究では同じデータセットを使い、約64,000人の児童を対象に再度調べ直した。すると、ADHDを持つ児童はいじめに加担する可能性が2.8倍高かった。
ADHDの影響:事故による怪我
107. 2020年の台湾国民健康保険データベース(NHIRD)を使った研究によると、ADHDの若者5万人以上と対照群を比較してみた。結果、ADHDの若者は、火傷のリスクが75%以上高かった。更に細かく見てみると6歳未満だと火傷のリスクが2倍、6歳~17歳だと火傷のリスクが約70%高かった。男女差はなかった。
108. 2018年のメタ分析によると、400万人以上を対象に調べた結果、ADHDを持つ人は偶発的な身体的損傷リスクが40~50%高かった。
109. 2014年のスウェーデンの研究では、2006年~2009年にかけてADHDの患者さん17,408人を追跡調査した。するとADHDの患者さんは重大な交通事故リスクがほぼ50%高かった。
110. 2016年のアメリカの研究によると、8,000人以上の高校生と大学生アスリート(主に男子フットボール選手)を対象に調べた結果、ADHDの患者さんは脳震盪を3回以上経験することが3倍高かった。
111. 2014年のメタ分析によると、175,000人以上を対象にADHDと自動車事故との関連性を調べてみた結果、ADHDを持つ人は自動車事故に巻き込まれる割合が23%高いと推定された。
112. 2017年のコホート研究によると、ニュージャージー州のドライバー18,000人以上を対象に調べた結果、ADHDを持つ人はそうでない人に比べて衝突事故リスクが33%程高かった。
113. 2014年のメタ分析では、軽度の外傷性脳損傷の患者さん3,000人以上と対照群9,000人以上を比較してみた。その結果、外傷性脳損傷の患者さんはそうでない患者さんよりもADHD発症リスクが2倍高かった。
個人的考察
長くなったので今回はここまで。
続きは来週です。
参考文献
最後にまとめてご紹介します。