2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサスを見てみよう! その6「脳研究」
「2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサスを見てみよう!」シリーズの続きです。
カテゴリー⑤:ADHDの患者さんの脳研究で何がわかったの…?
ADHDの患者さんの脳研究には、大きく2つの種類があるそうです。
その2つとは、
- 心理テストの成績に関する研究
- 脳をスキャンして、脳の構造や機能を直接調べる研究
とのこと。
これらの研究の多くは、ADHDを持つ人とそうでない人を比べてチェックする場合が多かったりします。しかし、その差は通常小さく出ることが多いそうで、ADHDの患者さんと他の障がいを持つ患者さんとも劇的な差は見られないんだとか。そのため、これらはADHDの診断に役立たないらしい。またこれらの差は薬物治療によって引き起こされるものではなく、患者によっては障がいが良くなると減少したり変化したりするそうです。
それでは具体的な研究を見てみましょう。
それでは具体的な研究を見てみましょう。
63. 2004年のメタ分析では、あらゆる年齢層の9,400人以上を対象に調べた結果、ADHDを持つ方はIQと読解力のスコアが中程度に低く、また、スペリング(単語の書き出し)と数学のスコアの低下が大きかった。2006年の別のメタ分析では、成人1,900人以上を対象に調べた結果、ADHDを持つ方のIQの低下は小さく、臨床的に意味のあるものではないという結論が出された。
64. 2005年のメタ分析によると、ADHDの患者さんは、抽象的な問題解決能力とワーキングメモリ、集中的注意、持続的注意、言語記憶で軽度から中程度の困難を抱えていた。また、829人を対象にした別のメタ分析によると、ADHDの患者さんは「ルール違反(ルールを守るべき状況で意図せずルールを破ってしまう)」と呼ばれる認知エラーを起こしやすかった。
65. 2つのメタ分析によると、ADHDと診断された人は、大きな遅延報酬よりも小さな即時報酬を好む傾向が中程度あった(=セルフコントロールが低い傾向がみられた)
66. 2,300人以上を対象にしたメタ分析によると、ADHDとリスクを伴う意思決定の間には軽度から中程度の関連性が見られた。また、児童・青少年3,850人を対象にしたメタ分析では、ADHDを持つ人は、遅延割引や満足の遅延課題で、全体的に衝動的な意思決定が中程度高かった。
67. 全年齢のADHDの患者さんを対象にした2018年のメタ分析によると、脳の複数の領域(ワーキングメモリ、反応時間の変動、反応抑制、知能/達成、計画/組織化)で中程度の障害を有していた。これは、成人よりも小児・青年期の方が大きかった。
68. 児童・青少年8,200人以上を対象にしたメタ分析によると、ADHDを持つ人はワーキングメモリに中程度の障害がみられた。但し、加齢とともに軽減していた。
69. 2020年のメタ分析では、ADHDの若者を対象に調べた結果、ADHDの症状全体、不注意症状、多動性・衝動性症状のいずれにおいても、男女による有意な差は見られなかった。
70. 2020年の未就学児を対象にしたRCTのメタ分析によると、認知トレーニングによってワーキングメモリが中程度改善した。また、抑制と制御も小~中程度改善した。