アンブレラレビューを見てみよう!」シリーズその88です。
今回は、2023年に発表されたケトジェニックダイエットのアンブレラレビューを見てみます。



ケトジェニックダイエットの健康効果についてメタ分析のアンブレラレビューを行ってみた…!(済南大学バージョン)

2023年の済南大学の研究によると、ケトジェニックダイエットの健康効果についてメタ分析のアンブレラレビューを行ってみたそうです。
私たちの体は、エネルギーを作る時、糖質、つまりブドウ糖をまず最初に使います。そして糖質がなくなったり、糖質制限ダイエットや糖尿病などでブドウ糖が足りなくなると、脂肪を使います。この脂肪を使ってエネルギーを作る時に、ケトン体ってのが増えるんですよね。このケトン体が血液中に増加した状態をケトーシスと言います。
ケトジェニックダイエット(KD)とは、このケトーシスを誘発する食事法として定義されておりまして、そのために糖質(炭水化物)の摂取量を非常に少なくします。具体的には1日の総摂取カロリーのうち糖質を5~10%にするって感じですな。
因みにケトジェニックダイエットの歴史は意外に古く、1920年代に初めて登場しております。当初は糖尿病とてんかん、特に小児てんかんの治療法として考案されたんですよ。
そんなケトジェニックダイエットですが、大きく以下の4種類の方法がございます。

  1. ケトジェニックダイエット(いわゆる古典的ケトジェニックダイエット)
  2. 修正アトキンスダイエット
  3. 中鎖脂肪酸(MCT)ケトジェニックダイエット
  4. 低GIダイエット(低GI食)

そしてこれまでケトジェニックダイエットの健康効果を調べたメタ分析が多数発表されてきておりました。
しかしこれらは様々なバイアス(サンプル数、出版バイアス(=効果アリって結果の方が効果なしって結果よりも世に出回ることが多いこと)、報告バイアス(=結果の一部のみ報告、特に統計的に有意・ポジティブな結果のみ報告すること)など)があったんですな。そこで今回、メタ分析の結果を更にまとめてみることにしたらしい。
まず研究者たちは、2023年4月2日までに発表された該当するメタ分析をPubMed、コクラン、EMBASEで検索してみたそうな。すると全部で1,942件の研究がヒットしたとのこと。次にこの中で被っている研究を除外、その後、各研究の質をチェックし精査していったらしい。
最終的に基準を満たしたメタ分析は23件ってことでした。
それでは結果を見てみましょう。
まずは23件のメタ分析の質なんですが、

  1. 高品質:3件
  2. 低品質:10件
  3. 非常に低品質:10件

って感じでした。
あんまり質の高い研究はなかったみたいですね~。
次に各関連性とエビデンスレベルについてなんですが、

  • 説得力のあるエビデンス→なし…!
  • 非常に可能性のあるエビデンス→なし…!
  • 可能性のあるエビデンス→あったけど、有意な関連性ではなかった…!
  • 低いエビデンス→有意な関連性が10個あった…!

とのこと。
つまり、

  • 現時点でケトジェニックダイエットの健康効果として、はっきりと言える、又は非常に可能性のあるものは一つもなかった…!

ってことですね。
う~ん。残念…。
因みに研究者によれば、

  • その主な理由の一つは、対象となった研究のサンプル数が少なかったことである

とのことです。
もっと大規模な研究が必要ってことですねー。
最後に低いエビデンスレベルで見られたケトジェニックダイエットの健康効果なんですが、

  • LDLコレステロールの増加
  • 総コレステロールの増加
  • HDLコレステロールの増加
  • 呼吸交換比(低いと脂質が使われている)の増加
  • 総テストステロンの低下
  • テストステロンレベルの低下
  • ケトジェニックダイエット+運動で体重が大幅に減少
  • ケトジェニックダイエット+運動でコルチゾールが増加
  • 小児てんかん(難治てんかん)発作の減少

って感じです。



個人的考察

ということで今回の研究結果は、ケトジェニックダイエットの健康効果はよく分からんから今後の研究に期待…!ってところです。



参考文献