【加筆内容】大気汚染と気候変動によるメンタルへの影響についてアンブレラレビューを行ってみた!
「アンブレラレビューを見てみよう!」シリーズその92です。
大気汚染と気候変動によるメンタルへの影響についてアンブレラレビューを行ってみた…!
2024年のバルセロナ大学の研究によると、大気汚染と気候変動によるメンタルへの影響についてアンブレラレビューを行ってみたそうです。
大気汚染と気候変動(気温上昇、気象パターンの極端な変化)は様々な健康リスクを上げると先行研究で出ておりまして、更に近年注目されているのがメンタルへの影響です。
例えば、
- 大気汚染の暴露で認知障害リスクが増加…!
- 気温上昇で自殺リスクが増加…!
- サイクロン、洪水、山火事などの異常気象がトラウマ体験となり、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症…!
って結果が出ているんだとか。
また間接的な物として、気候変動は経済の安定、食料安全保障、地域社会の幸福、身体的健康に影響を与えたり、移住や紛争を加速させたりする可能性があるんで、これらによってメンタルが影響を受ける可能性があるそうな。確かにこう考えていくと関係がありそうですね。
ただ、これらの知見は矛盾した結果も出ており、詳しいことがよく分かっていなかったみたい。そこで今回ガッツリ深掘りしてみることにしたそうです。
まず研究者たちは、2023年6月26日までに発表された該当研究をPubMed/Medline、Scopus、PsycINFOで検索してみたそうな。すると合計3,582件の研究がヒットしたとのこと。次にこの中で被っている研究を除外、その後、質をチェックし、低い物を除いていったそうな。
最終的に残ったメタ分析・系統的レビューは32件でして、これらを基にアンブレラレビューを行ってみたそうです。
それではエビデンスレベル別の結果を見てみましょう。
【説得力のあるエビデンス】
- 溶剤(長期による高暴露と低暴露)によって、認知症・認知障害リスクが1.139倍高かった…!
【非常に可能性のあるエビデンス】
- CO(長期による高レベルと低レベルの暴露)によって、認知症リスクが1.587倍高かった…!
- NOx(長期のよる1μg/m3の暴露の増加)によって、血管性認知症リスクが1.004倍高かった…!
- PM10(妊娠中期による1μg/m3の暴露の増加)によって、産後うつ病リスクが1.023倍高かった…!
- SO2(5日間による1μg/m3の暴露の増加)によって、統合失調症の再発リスクが1.005倍高かった…!
- SO2(7日間による1μg/m3の暴露の増加)によって、統合失調症の再発リスクが1.004倍高かった…!
- 気温(短期による1℃の上昇)によって、 自殺・精神障害に関連する死亡率リスクが1.024倍高かった…!
- 気温(短期による1℃の上昇)によって、自殺行動(死亡、自殺企図又は希死念慮、自傷行為)リスクが1.012倍高かった…!
- 気温(短期による1℃の上昇)によって、自殺行為や精神障害による入院リスクが1.011倍高かった…!
- 気温(短期による1℃の上昇)によって、精神障害のみによる入院リスクが1.009倍高かった…!
- 平均体感気温(短期による1℃の上昇)によって、自殺行為(死亡又は自殺未遂)リスクが1.010倍高かった…!
- サイクロンの被害によって、PTSD症状の重症度が高まっていた(r=0.275)
【可能性のあるエビデンス・低いエビデンス・エビデンスなし】
- 可能性のあるエビデンスは、237件中24件(10.1%)だった。
- 低いエビデンスは、237件中65件(27.3%)だった。
- エビデンスなしは、237件中136件(57.6%)だった。
因みに、説得力のあるエビデンスで出てきた「溶剤」ってのは、トルエン、アセトン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチルなどらしい。そして溶剤の主な用途は、塗料、塗料の剥離剤、インク、ドライクリーニングなどで使われまして、特に建設・製造工程で使われております。また低・中所得国では、危機管理なしに使われていることが多いらしくその結果、深刻な健康リスクをもたらし続けているみたい。
ということで、ちょっと上記をまとめてみると、
- 特定の大気汚染物質の濃度が高いほど、認知症・認知機能障害、産後うつ病、統合失調症の再発リスクが高まる…!
- 気温の上昇で、自殺行動、自殺・精神障害に関連する死亡率、自殺行動・精神障害、精神障害のみによる入院が増加する…!
って感じになるのではないでしょうか。
但し注意点もございまして、
- メタ分析・系統的レビューの質は全て「低い」又は「極めて低い」だった…!
とのこと。
そのため、今回の結果で決まり…!とは言えない感じです。
個人的考察
とはいえ、メンタルに悪そうなのは間違いなさそうなんで、大気汚染や気温上昇には注意していきたいですねー。