アンブレラレビューを見てみよう!」シリーズその94です。
先週の土日と昨日、大気汚染のアンブレラレビュー(質の高い研究)を見てきました。
詳しくは、


をご覧いただきたいのですが、分からない部分はあるものの、なかなか興味深い結果が出ているんですよね。
そして今回は、大気汚染と糖尿病の関係を調べた2025年のアンブレラレビューを見てみます。



大気汚染と糖尿病の関係についてアンブレラレビューを行ってみた…!

2025年の温州医科大学の研究によると、大気汚染と糖尿病の関係についてアンブレラレビューを行ってみたそうです。
まず分かっていそうでいない糖尿病についてなんですが、1982年のカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究によると、糖尿病(DM)とは、継続的な高血糖を特徴とする慢性代謝疾患とのこと。んで、糖尿病は世界中で早期死亡の大きな原因となっておりまして、先進国と発展途上国共に有病率が増加傾向にございます。そして糖尿病は、様々な臓器に損傷をもたらして健康リスクを高める恐ろしい病気なんですな。
そんな糖尿病ですが、実は大きく以下の3種類があるんですよ。

  1. 1型糖尿病(T1DM)
  2. 2型糖尿病(T2DM)
  3. 妊娠糖尿病(GDM)

これらが起こる原因としては様々あるものの、肥満、ライフスタイル、食習慣、遺伝要因などが考えられるらしい。
そして近年メタ分析で登場しだしたのが大気汚染物質との関連です。なんだかあやしそうな雰囲気があるんですな。但し、各メタ分析の異質性が高い(=個々の研究結果のバラバラさが激しい)んで、はっきりとしたことが言えない状況なんですよ。
そこで今回アンブレラレビューでガッツリ深掘りしてみることにしたんだとか。
まず研究者たちは、2024年9月30日までに発表された該当する系統的レビュー・メタ分析をWeb of Science、Embase、PubMedで検索してみたそうな。
すると、

  • Web of Science:199件
  • EMBASE:383件
  • PubMed:273件

の合計855件の研究がヒットしたとのこと。
次に重複研究と質の低い研究を除外していったらしい。
最終的に基準を満たした研究は19件でして、内訳は、

  • 大気汚染と1型糖尿病の研究:2件
  • 大気汚染と2型糖尿病の研究:9件
  • 大気汚染と妊娠糖尿病の研究:10件

って感じでした。
それでは結果を見てみますかー。

  • 大気汚染と1型糖尿病の関係:PM2.5、PM10、O3、NO2、SO2との関係を調べたものがあったが、いずれも統計的に有意な関係は見られなかった。
  • 大気汚染と2型糖尿病の関係:大気汚染物質と2型糖尿病の関係で有意差ありとしたのが80.8%、有意差なしとしたのが19.2%だった。ほとんどの研究でPM2.5は統計的に有意な関係があった(1.08~1.12)。ほとんどの研究でPM10は正の相関関係がみられた。半数の研究でNO2は有意差なしと出ていた。1件の研究でO3は関係ありそうと出ていた(1.06)
  • 大気汚染と妊娠糖尿病の関係:妊娠における様々な段階での大気汚染物質(PM2.5、PM10、SO2、O3、NO2、CO、NOx 、NOなど)への曝露を調べていたが異質性が高かった。また疫学調査の半分以上が有意ではなかった。

なんだかパッとした回答が少ないですね~。
ちょっとポイントをまとめてみると、

  • 大気汚染と1型糖尿病の関係:なし…!
  • 大気汚染と2型糖尿病の関係:粒子状物質(PM2.5とPM10)でリスクアップ…!
  • 大気汚染と妊娠糖尿病の関係:一貫性がなく、よく分からん…!

って感じでしょうか。
とりあえず2型糖尿病だけは間違いなさそうですね…。