今回は、2024年にシエナ大学が発表した、統合失調症と強迫性障害の併存性についてのレビュー論文を見ています。
現時点でのまとめ的な感じで、特に治療の項目はとても勉強になりましたのでご紹介しておきます。



統合失調症と強迫性障害の併存性(併存リスク・二次障害・併存疾患・重複障害)について先行研究を見直ししてみた…!

2024年のシエナ大学レビュー論文によると、統合失調症と強迫性障害の併存性(併存リスク・二次障害・併存疾患・重複障害)について先行研究を見直ししてみたそうです。
そもそも統合失調症と強迫性障害はどちらも精神疾患なんですが、それぞれ診断基準と治療法が違うんですよね。それぞれの概要は以下のようになっております。


統合失調症

まず統合失調症なんですがDSM-5の定義によると、妄想、幻覚、支離滅裂な言語、著しく支離滅裂な行動又は緊張病、認知障害などの症状を特徴とする慢性的な精神障害です。
そしてこれらの症状は、1か月間の大部分にわたって現れまして、少なくとも6か月間は継続的な兆候が続くとのこと。その結果、仕事や対人関係、セルフケアなど、さまざまな問題を抱えることになるんだとか。
また統合失調症は、日常生活に深刻な影響を与える可能性もあり、はっきりと良くなることは難しいみたい。更に比較的良い感じで回復した場合も、社会的孤立、統合失調症に伴う誤解や偏見、親密な人間関係を築く機会の減少などに悩むことが多いそうな。
そんな統合失調症の患者さんは失業率が非常に高く、不健康な食生活、体重増加、喫煙、薬物乱用といったことにより、平均寿命が13~15年程短くなる傾向がございます。また、生涯における自殺リスクが5~10%と推定されているのも特徴とのこと。


強迫性障害

次に強迫性障害についてです。
強迫性障害は、継続的な侵入思考(強迫観念)と、それに伴う不安を軽減する為の反復的な行動(強迫行為)を特徴とします。
強迫観念ってのは、勝手に湧き出てくる思考でして、これが著しい不安や苦痛を引き起こすんですな。また、反復的・持続的な思考・衝動・イメージと定義されております。
強迫行為ってのは、強迫観念への反応(対処)として、又は厳格なルールに従って個人が駆り立てられて実行すると感じる反復的な行動や精神行為と定義されております。何度も繰り返してしまうので時間がかかり、それによって苦痛を引き起こすんですな。
そのため、強迫性障害は日常生活への影響が強く、強迫観念や強迫行為に過度の時間を費やし、仕事、学校、人間関係に支障をきたすことが多いとのこと。また、社会生活や職業生活も著しく制限される場合が多く、強迫性障害の患者さんのうち最大60%の方が中度から重度の日常生活障害を経験しているんだとか。
更に強迫性障害の患者さんは一般人口よりも生活の質がかなり低い傾向がございまして、うつ病や不安障害の併存率も高いのが実情です。死亡率に関しても強迫性障害は自殺リスクを高める感じでして、強迫性障害の患者さんの生涯における希死念慮有病率は36%~63%らしく、自殺未遂リスクは10%~27%とのこと。


そして統合失調症と強迫性障害の併存は臨床的な複雑さをアップさせ、診断、管理、治療に大きな課題をもたらすんだとか。今回はそんな統合失調症と強迫性障害の境界、重複、関連性を明らかにしてみたそうです。
んでまず疫学調査によれば、統合失調症と強迫性障害の併存は様々な研究で有病率が報告されているそうで、関係が深い感じとのこと。
例えば、統合失調症と統合失調感情障害の方の強迫性障害の併存率は12%~23%で、一般集団の2~3%よりもかなり高かったそうな。またメタ分析でも統合失調症を持つ方のうち約12.1%が強迫性障害の基準も満たしていたらしい。
他の研究では統合失調症を持つ方の最大25%が強迫性症状(OCS)を併存している可能性があると推定されたそうで、密接に関係しているのは間違いなさそうとのこと。
次に原因なんですが、統合失調症と強迫性障害の併存原因は完全には解明されておりません。但し、遺伝的要因、神経生物学的要因、環境的要因が関係ありそうとする仮説がいくつかあるとのこと。
これらについてざっくり見ていくと以下な感じ。

  • 遺伝的要因:遺伝子研究により、グルタミン酸作動性やドーパミン作動性などの共通部位や経路が特定されており、何らかの関係がありそうな感じだった。
  • 神経生物学的要因:脳をスキャンしてみると、共通する神経異常と異なる神経異常の両方が明らかになった。また、共通する神経生物学的基質と固有の神経生物学的基質がありそうな感じだった。
  • 環境的要因:統合失調症と強迫性障害の併存に関係してそうなものは幼少期のストレス、妊娠中の合併症、幼少期の逆境度合いなどが挙げられる。

また、統合失調症と強迫性障害は臨床的な特徴が重複しているため、診断が複雑みたい。この辺も2つの精神障がいを難しくしている要因ですね。

そして最後に統合失調症と強迫性障害の治療について見てみましょう。
…ってことで早速結論から申し上げますと、

  • アメリカ心理学会(APA)は、SSRI抗精神病薬の併用をオススメしている…!

とのこと。
因みにどのSSRIを併用すべきかについて明確な推奨事項はないとのこと。
但し、


そうです。
一方で、ここで注意すべきなのは強迫症状に対する抗精神病薬には「パラドックス」があるかもということ。
どういうことかと言いますと、

  • 多くの抗精神病薬は、SSRIが効かない場合でも強迫性障害には効果がある。んがしかし、治療中の統合失調症の患者さんの強迫性症状や強迫性障害を誘発又は悪化させる可能性もある…!

ってこと。
例えば第二世代抗精神病薬(SGA)は、強迫性症状の誘発と悪化に関係がありそうでして、具体的には、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピンなんかがあやしい感じ。
但し、いくつかの対策も考案されているとのこと。ちょっと対策を見てみると、

  • 可能であれば抗精神病薬の用量を減らす
  • セロトニン系への影響が最小限の別の抗精神病薬(アリピプラゾール、アミスルプリド、ハロペリドールなど)に切り替える
  • アリピプラゾールを追加する
  • SSRIと認知行動療法を併用する

などとのこと。
因みに認知行動療法も有益な治療法として期待されているらしい。なんでも認知行動療法は統合失調症の強迫性症状や強迫性障害に効果がありそうなんですな。但し、現時点でのアメリカ心理学会(APA)の見解は、SSRIの追加や抗精神病薬の変更に反応しない方に認知行動療法を試すことをおすすめしております。つまりメインはやっぱり薬物療法でサブ的に認知行動療法を使うと良いよーって感じですね。