最後は、2024年に発表された境界性パーソナリティ障害患者における弁証法的行動療法(DBT)の有効性を調べたRCTの系統的レビューを見てみましょう。



境界性パーソナリティ障害患者における弁証法的行動療法(DBT)の有効性についてのRCTの系統的レビュー

2024年のペルーユニオン大学の研究によると、境界性パーソナリティ障害患者における弁証法的行動療法(DBT)の有効性についてRCTの系統的レビューを行ってみたそうです。
今まで見てきたように境界性パーソナリティ障害は非常に難しい精神障がいの一つ。世界の有病率は一般人口で2%、青年で3%、成人で1.5%と推定されております。そして脳のスキャン情報によれば、前頭前野の機能不全が境界性パーソナリティ障害の衝動性や情緒不安定さを起こしている可能性があるらしい。
そんな境界性パーソナリティ障害の治療が難しい理由の一つとして、自傷行為と自殺率の高さが挙げられます。先行研究によれば、境界性パーソナリティ障害の患者さんの約70%が自傷行為の経験があり、また自殺率は一般人口の約50倍とのことです。
そこで治療方法として注目され続けているのが弁証法的行動療法(DBT)です。弁証法的行動療法は、境界性パーソナリティ障害を感情調節システムの誤作動と捉えておりまして、

  1. 認識方法の見直し(=考え方・捉え方の幅を広げる)
  2. 対人効果性(=対人スキルを上げる)
  3. 感情調節(=感情のコントロール法を学ぶ)
  4. 不快感耐性(ネガティブへの耐性を上げる)

っていう4つのスキルを練習・習得していくんですな。
そしてこれまで弁証法的行動療法の効果を調べた研究はたくさんございまして、それらをまとめた系統的レビューとメタ分析もいくつか発表されておりました。
んがしかし、


って感じでした。
そのため、現時点(2024年時点)での最新の知見をまとめ、境界性パーソナリティ障害に対する弁証法的行動療法の効果を調べる必要があったんで今回行ってみたそうです。
まず研究者たちは、2000年1月~2023年6月までに発表された該当するRCTをScopus、Web of Science、PubMedで検索してみたそうな。
すると、

  • Scopus:673件
  • Web of Science:586件
  • PubMed:370件

の合計1,629件の研究がヒットしたとのこと。
次にこの中で被っている研究を除きつつ、質の低い研究を除外していったんだとか。最終的に選ばれたRCTは18件でして、総サンプル数は1,755人、そのほとんどが女性だったとのこと。
それでは系統的レビューの結果を見てみましょう。

  • ほとんどの研究で、境界性パーソナリティ障害に対する弁証法的行動療法は小~中程度の効果があると出ていた…!
  • 弁証法的行動療法で最も効果的だったのは、境界性パーソナリティ障害患者さんの自傷行為と自殺行為に対するものだった…!
  • ほとんどの研究で、短期間の弁証法的行動療法、標準期間の弁証法的行動療法ともに、治療期間後最大24か月、小~中程度の効果(自殺行為の改善)が持続すると出ていた…!
  • 弁証法的行動療法は、境界性パーソナリティ障害患者の一般的な精神病理と抑うつ症状を有意に改善していた…!
  • 弁証法的行動療法は、コンプライアンス(ルールや倫理の遵守)、衝動性、情緒不安定さを改善し、また、入院率の低下をもたらしていた…!

最新の知見をまとめてみても、やっぱり、境界性パーソナリティ障害に弁証法的行動療法は有効だと言えますね…!