前立腺がんのリスク要因についてアンブレラレビューを行ってみた!
「アンブレラレビューを見てみよう!」シリーズその90です。
前立腺がんのリスク要因についてアンブレラレビューを行ってみた…!
2024年の四川大学の研究によると、前立腺がんのリスク要因についてアンブレラレビューを行ってみたそうです。
そもそも2021年の国際がん研究機関の研究によると、2020年版世界がん統計において前立腺がんは、男性のがんの中で2番目に多いがんであり、また、がん関連による死亡原因の第5位なんだとか。そして世界的な高齢化により、高齢男性における前立腺がんの発生率は増加傾向にあるとのこと。
そんな前立腺がんのリスク要因についてのアンブレラレビューで最も古いのが、研究者によれば2016年のヨアニナ大学のアンブレラレビューらしい。こちらは食事・体型・運動に焦点を当ててチェックしていたそうな。またその後もアンブレラレビューは発表されているみたいなんですが、色々な健康リスクを調べたうちの一つとして前立腺がんが取り上げられていたとのこと。更に食事要因に限定されてもいたんだとか。
そのため、前立腺がんに的を絞った最新のアンブレラレビューを行ってみることにしたそうです。
まず研究者たちは、2022年1月10日までに発表された該当するメタ分析をPubMed、Embase、Web of Scienceで検索してみたそうな。すると6,349件の研究がヒットしたとのこと。次に無関係な研究や重複した研究を除外しつつ、質の低い研究も除いていったそうな。
その後更に2023年9月9日までに発表された該当するメタ分析をPubMed、Embase、Web of Scienceで検索してみたそうな。すると新たに1,015件の研究がヒットしたとのこと。次に無関係な研究や重複した研究を除外しつつ、質の低い研究も除いていったそうな。
最終的にピックアップしたメタ分析は92件でして合計123個の関連性があったとのこと。
またこの研究ではメンデルランダム化研究も同様な感じで探しております。
まず研究者たちは、2022年7月6日までに発表された該当するメンデルランダム化研究をPubMed、Embase、Web of Scienceで検索してみたそうな。すると174件の研究がヒットしたとのこと。次に無関係な研究や重複した研究を除外しつつ、質の低い研究も除いていったそうな。
その後更に2023年9月9日までに発表された該当するメンデルランダム化研究をPubMed、Embase、Web of Scienceで検索してみたそうな。すると新たに74件の研究がヒットしたとのこと。次に無関係な研究や重複した研究を除外しつつ、質の低い研究も除いていったそうな。
最終的にピックアップしたメンデルランダム化研究は64件でして合計145個の関連性があったとのこと。
最後に、メタ分析の結果とメンデルランダム化研究の結果をまとめてそれらの関連性を比較し、共通点を探ってみた感じです。
んでまず大枠の結果なんですが、
- 説得力のあるエビデンスの関連性はなかった
- 共通した関連性は26個あった。そのうち一貫して有意な関連性を示したが、エビデンスレベルは一貫していなかったものが3個あった
そうです。
では、その3個の関連性は何なのか…?って話なんですが、以下とのこと。
【身体活動=運動】
- メタ分析では非常に可能性のあるエビデンスだった(OR0.87)
- メンデルランダム化研究では低いエビデンスだった(OR0.49)
【身長】
- メタ分析では可能性のあるエビデンスだった(OR1.09)
- メンデルランダム化研究では低いエビデンスだった(OR1.07)
【タバコ】
- メタ分析では可能性のあるエビデンスだった(OR0.74)
- メンデルランダム化研究では説得力のあるエビデンスだった(OR0.91)
またその他の情報として、
とのこと。
個人的考察
まとめると、現時点で前立腺がんリスクと関係がありそうな要素は、
- 運動…!
- 身長…!
- 喫煙…!
って感じとなりましょう。
但し、運動が前立腺がんリスクを下げる、高身長が前立腺がんリスクを上げるのは、まぁ、納得がいくとして、タバコを吸う人の前立腺がんリスクが下がっているのが謎なところ。…っとこう書くと、タバコは前立腺がん予防になるんや…!って思っちゃうかもですが、事はそう簡単な話じゃないみたい。
というのも、
- タバコは確かに一貫した効果を持つものの、観察された効果は中程度だった
- 特に1995年以前の時期における正の関連性と死亡率との関連性は、非進行性前立腺がんとの関連性ではなく、進行性前立腺がんとの関連性を示唆しているため、慎重に解釈すべきである
- 現在喫煙している人は、前立腺検査を受ける可能性が低いと考えられる。また、喫煙歴のある人も前立腺検査を受ける可能性が低い。結果、参加者における前立腺がんの検出率が比較的低い可能性がある
- 他の可能性として、喫煙が男性における死亡の主なリスク要因であることが挙げられる
- 喫煙者は前立腺がんと診断される前に、がん、心血管疾患、呼吸器疾患など喫煙に起因する疾患で死亡する可能性がある
- 更に現在喫煙している、以前喫煙していた、過去に喫煙したことがあるなど、喫煙に関する複数のカテゴリーが、結果のばらつきを与えている可能性がある
とのこと。
そのため研究者曰く、
- 喫煙者が早期がん検診をより遵守し、禁煙できるように支援する対策を講じる必要があるだろう
としています。
今回の結果に楽観せず、やはり禁煙はした方が良さげですね。