ということで今回も2005年のコロラド州立大学レビュー論文の続きを見てみます。



3. 主要栄養素の割合

現在のアメリカにおける三大栄養素の割合は下記とのこと。

  • 炭水化物:51.8%
  • 脂質:32.8%
  • タンパク質:15.4%

んで、心血管疾患やその他の慢性疾患リスクを減らすための現在のアドバイスは、

  • 炭水化物の摂取量を55~60%に増やす…!
  • 脂肪の摂取量を30%に制限…!
  • タンパク質の摂取量を15%に維持…!

って感じ。
つまり狩猟採集民の食事の特徴である、炭水化物(22~40%)を減らし、タンパク質(19~35%)を増やす食事スタイルと大きく異なるんですな。また、旧石器時代の食事の三大栄養素を直接調べることはできないものの、ネアンデルタール人と旧石器時代のヨーロッパ人の骨を調べた研究によれば、タンパク質の摂取量は現在よりもかなり高かった可能性があるみたい。
そんな高タンパク質食は血中の脂質を改善し、心血管疾患リスクを下げる可能性があります。例えば、

  • 炭水化物とタンパク質の摂取量を同じ(23%)にした研究では、総コレステロールやLDLコレステロール、VLDLコレステロール、中性脂肪が大幅に減少、逆にHDLコレステロールが増加した…!
  • この効果は2型糖尿病患者でも見られた…!
  • 高タンパク質食で2型糖尿病患者の代謝コントロールが改善した…!
  • カロリー制限+高タンパク質食で肥満女性のインスリン感受性を改善、筋肉の減少を抑えた…!
  • 一方でカロリー制限+高炭水化物食で肥満女性のインスリン感受性が悪化、筋肉が減少した…!
  • 80,082人の女性を対象にした研究では、タンパク質の摂取量と心血管疾患リスクは逆相関していた…!
  • タンパク質の摂取量は血中ホモシステイン濃度と逆相関していた…!
  • 肉を食べる人は肉を食べない人よりも血中ホモシステイン濃度が低かった…!
  • 血圧が高い人ほどタンパク質の摂取量が少なかった…!
  • 高血圧患者に4週間、高タンパク質食(25%)を食べてもらったら血圧が有意に下がった…!
  • 脳卒中による死亡率はタンパク質の摂取量と逆相関していた…!

のような感じです。
他にもタンパク質は脂肪や炭水化物に比べて3倍以上のカロリー消費量(食事誘発性熱産生:DIT)を持っておりまして、満腹感も脂肪や炭水化物よりも高いんですな。そのため、タンパク質の摂取量を増やすことは、過体重や肥満の人にとって効果的なダイエット法の可能性があるとのこと。実際、カロリー制限+高タンパク質食は、カロリー制限+高炭水化物食よりも、過体重の人の空腹感の低下、満足感の増加、減量効果・体重維持効果が高かったそうです。


4. 微量栄養素の密度

精製糖には、基本的にビタミンやミネラルは含まれておりません。そのため、精製糖や精製糖を含む食品を摂取することは、より栄養価の高い食品と置き換えられたことになり、結果、ビタミンやミネラルといった微量栄養素の総密度が低下するとのこと。因みに精製植物油​​にも同じようなことは起きますが、こちらは一応ビタミンEとビタミンKが含まれております。
そして精製糖と植物油は、典型的なアメリカの食事におけるカロリー摂取量の36.2%以上を占めているんだとか。そのため、これらの食品をたくさん食べることによって、ビタミンとミネラル不足になってしまう可能性があるとのこと。実際、アメリカ人の少なくとも半数は、ビタミンB6、ビタミンA 、マグネシウム、カルシウム、亜鉛の推奨摂取量を満たしておらず、また、人口の33%は葉酸も持たしていないらしい。特に葉酸とビタミンB6の両方が多いと血中のホモシステインの蓄積を防ぐことができますが、一方で摂取が少ないと血中ホモシステイン濃度が上昇してしまい、結果、心血管疾患、脳卒中、血栓症の発症リスクが上がってしまうんだとか。
因みにビタミンやミネラルといった微量栄養素の密度をランキングにしてみると、全粒穀物牛乳は2番目に低いそうで、果物野菜赤身肉、魚介類と置き換えてしまうと食事中の微量栄養素の密度が全体的に低下してしまうそうです。
狩猟採集民が食べていた野生の植物性食品は、微量栄養素の濃度が高く、野生の動物性食品も同様となっております。それが新石器時代に乳製品と穀物が主食となったことで微量栄養素の平均含有量が低下してしまったと考えられるんですな。更に産業革命時代に穀物の製粉技術が飛躍的に発達、結果、栄養価の高いふすまや胚芽が取り除かれ、微量栄養素の平均含有量が低下した精製穀物(精製小麦を使ったパン)が誕生する訳です。
このように栄養価の高い食品(果物、野菜、赤身肉、魚介類など)がどんどん栄養価の低い食品(精製糖、穀物、植物油、乳製品など)に置き換えられ、食品のビタミンやミネラルの摂取量が低下し、結果、ビタミンやミネラル不足だけに留まらず、多くの感染症や慢性疾患リスクの増加といった文明病の脅威にされされることになったそうです。



個人的考察

ということで今回はここまで。
次回は、「5. 酸塩基平衡」と「6. ナトリウム・カリウム比」を見ていきます。



参考文献

後でご紹介します。