旧石器時代(狩猟採集民)の食事をマネる「パレオダイエット」の効果を見てみよう! その7
塩(塩分)
アメリカにおける1日の食塩の摂取量は9.6gとのこと。また西洋諸国の人における1日の食塩の摂取量の75%は加工食品(超加工食品)からなんだそうな。そして15%は調理や食べる際の塩の使用などから、10%は基本的な食品に自然に含まれているみたい。つまり、アメリカにおける食塩摂取量の90%は製造された塩からってことになりますね。そもそも塩を組織に、採掘・製造・輸送していたのは新石器時代にまで遡るそうな。最古の塩の使用は紀元前6000年頃、中国山西省の運城塩湖で行われていたらしい。またヨーロッパでの塩の採掘の最も古い証拠は、スペイン、カルドナの6200~5600年前の岩塩鉱山から発見されているそうな。
そして旧石器時代(260万年前に始まり、1万~1万2000年前に終わった)又は1万年前から現在までに沿岸地域に住んでいた狩猟採集民は、食物を海水に浸したり、乾燥した海水塩を使用したりしていた可能性が高いとのこと。
但し、ニュージーランドの内陸部に住むマオリ族は塩を摂取する習慣を失っており、また内陸部の狩猟採集民は日常的な食事に塩を使うことが全く、あるいはほとんどないとのこと。更に旧石器時代の人々が塩を取りに行ったり、岩塩に興味を持っていたという証拠はないそうな。
以上から、西洋社会における大量の塩分摂取(1日約10gの摂取)は、新石器時代以前の人類にはほとんどないか、全くないことを示唆しているそうです。
脂肪の多い肉
新石器時代以前に人類が食べていた動物性食品は全て野生動物由来のものでした。そして野生の哺乳類の脂肪の絶対量はその種の体重に依存しており、大型哺乳類は小型哺乳類よりも体重当たりの体脂肪率が高かったとのこと。また、野生の哺乳類の体脂肪率は、年齢や性別によって変化し、季節によっても増減していたらしい。なんで、野生の哺乳類の最高or最低体脂肪率は、熱帯や南の緯度の生息だとしても1年のうち数か月しか維持されなかったんだとか。人間もそうですが哺乳類は、余分なエネルギーがあると脂肪として皮下脂肪や腹部に貯蔵されます。そして野生の哺乳類の主要な脂肪酸(脂肪エネルギーの50%以上)は、飽和脂肪酸でありまして、一方で筋肉や他の臓器の主要な脂肪酸は多価不飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸になるんですな。上記にあるように、野生の哺乳類は安定して脂肪があった訳じゃないんで、農耕以前に食べていた人類は、年間を通して大量の飽和脂肪酸を食事から摂取することは不可能だったと考えられるとのこと。
一方で畜産を行うようになってからは、エサとして植物性食品を与えることで、食用肉の体脂肪(脂肪酸)が増えたそうです。また常に体脂肪率がピークの状態で食べることができたんで、より摂取量が増えた様子。更に新石器時代に食品加工技術が進歩したことで、動物のチーズやバター、塩漬け肉などが登場、一年を通して食べることが可能になったんだとか。
そして19世紀初頭から中期にかけての技術革新によって、穀物の収穫量が爆発的に増加し、牛にトウモロコシをガンガン食べさせるようになり、また、蒸気機関車などの登場によって穀物も食用肉(牛など)も効率的に輸送できるようになりました。
これらによって、それまで(1850年以前)のアメリカでは放牧で牛を育て4~5歳で食用になる(いわゆる放牧牛=グラスフェッドビーフ)、という流れだったのが、1885年頃までには、肥育牛となり、わずか1年ほどで545kgの霜降り肉となって食べられる(いわゆる穀物牛=グレインフェッドビーフ)こととなったそうです。野生動物や放牧で霜降り肉になることは稀でして、このような肉は見たまんま、飽和脂肪酸がた~~っぷり入っているうえに、オメガ3脂肪酸が少なく、オメガ6脂肪酸が高いんで、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の比率がかなり大きくなっているんですな。
更に1950年代になると、10万頭もの牛を扱う近代的な穀物牛経営が登場、より脂肪た~~っぷり(体脂肪率30%)で体重545kgの牛がわずか14か月で食用として市場に出回るようになったんだとか。
そして現在、アメリカで消費される牛肉の99%は穀物牛となったそうです。わずか200年前までは、この方法で生産された牛肉、つまり穀物牛は事実上いなくて放牧牛だけだったのにすごいスピードですよね。
以上から、飽和脂肪酸が多い・オメガ3脂肪酸が少ない・オメガ6脂肪酸が多い穀物牛は、進化の時間的スケールで考えると、超最近登場した食事と言えましょう。
個人的考察
ということで今回はここまで。
次回は、新石器時代と産業革命時代の食品がもたらす健康への影響について見ていきます。
参考文献
後でご紹介します。
