これまで、


を見てきました。
今回も2021年の世界ADHD連盟の研究を見ていきます。それでは続きをどうぞ~。



169. 2016年のスウェーデンのコホート研究によると、ADHD患者38,000人以上を対象に調べた結果、ADHD治療薬の服用は3年後のうつ病リスクを40%以上低下させていた。但し、このリスクはADHD治療薬の服用期間が長くなるにつれて減少していた。また、ADHD治療薬を服用した患者は、服用しなかった患者と比較して、うつ病の発症率が20%低かった
170. 2014年のスウェーデンの研究によると、ADHD患者38,000人を対象に調べてみた結果、治療期間中に刺激性薬剤を処方された患者は、治療を受けていない期間と比較して、自殺関連事象が20%減少していた。この効果は非刺激性薬剤では見られなかった
171. 2018年の台湾国民健康保険データベース(NHIRD)の研究では、ADHDの若者8万5000人をピックアップし、メチルフェニデートの使用と自殺企図の関連性について調べてみた。結果、メチルフェニデートを3ヶ月から半年使用した人は自殺リスクが60%低下、半年以上使用した人は70%低下していた。
172. 2014年のスウェーデンの研究では、1960年から1998年の間に生まれ、ADHDと診断された38,753人を対象に、2006年に処方されたADHD治療薬と2009年の薬物乱用との関連性を調べた。すると刺激性薬剤を処方された人は薬物乱用率が30%以上減少していた。また服薬期間が長いほど、薬物乱用率は低下していた。更に2,300人以上を対象にした2014年のメタ分析によると、ADHD患者が定期的に刺激性薬剤を服薬していると、喫煙する可能性が約半分になっていた。一方で2013年のメタ分析によると、刺激性薬剤はアルコール、ニコチン、コカイン、大麻の乱用又は依存のリスクを高めないことがわかった。
173. 2020年の台湾の研究によると、ADHDの青少年7,500人以上と対照群30,000人以上を比較してみた結果、ADHD治療薬の長期使用で10代の妊娠率が30%減少していた。
174. 2020年の台湾国民健康保険データベース(NHIRD)の研究では、ADHDと診断されメチルフェニデートを処方された68,000人以上の小児・青年をピックアップし、年齢、性別、ADHDの初回診断年を一致させた同数の対照群と比較してみた。すると、メチルフェニデートを処方されたADHD患者は、処方されなかったADHD患者に比べて、全死亡率が5分の1低下していた。一方でメチルフェニデートの遅れて使用した場合、死亡率がわずかに上昇(5%)していた。またメチルフェニデートを長期服薬した場合、全死亡率が6分の1低下していた。但し、研究者によれば、データベースの情報が不足しているため、様々な変数が排除できていないとのこと。
175. 2020年の台湾国民健康保険データベース(NHIRD)の研究によると、ADHDと診断された18歳未満の子ども9万人以上を見つけ、メチルフェニデートを服薬している人・90日未満服薬している人、90日以上服薬している人と分けて火傷リスクを比較してみた。その結果、メチルフェニデートを服薬していると、火傷リスクが半分以上を防げる可能性があった。また、メチルフェニデートを服薬していない人と比較して、90日未満服薬している人は火傷リスクが30%低く、90日以上服薬している人は火傷リスクが57%低かった
176. 2016年のメタ分析では、ADHDに対するメチルフェニデートの効果について見てみた。結果、メチルフェニデートで抑制制御と注意の持続に中程度の改善が見られました。一方でワーキングメモリは有意な改善が見られなかった。
177. 2014年のメタ分析では、212人を対象にfMRIを使って脳をスキャンしてみた。すると薬物治療により、ADHDの若者の脳は、ADHDの典型的な問題とされている認知制御に関わる脳領域において、ADHDのない人の脳に似た機能に変化していた。一方で2017年や2019年の研究によると、ADHD患者4,180人を対象に調べた結果、薬物治療は脳構造に影響を与えなかった。



個人的考察

とりあえず今回はここまで。
続きは来週です。



参考文献

最後にまとめてご紹介します。