2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサスを見てみよう! その15「薬物治療の効果」
「2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサスを見てみよう!」シリーズの続きです。
カテゴリー⑪:ADHDに関連する障害に対する薬物治療の効果
158. 2019年のスウェーデンの研究によると、65万人以上の学生を対象にADHD治療薬の効果を調べてみた。すると3か月間ADHD治療薬を使った結果、学校成績の合計点(0~320点の範囲)が9点以上アップした。また高等学校を卒業する確率が66%程アップした。
159. 2017年のスウェーデンの研究によると、ADHDの若者61,000人以上を対象に服薬の有無と学校成績について調べてみた。その結果、薬を服用した方が服用しないよりもテストの点数が高かった。また2018年のデンマークの研究では、50万人以上の子ども(ADHD患者6,400人以上)を対象に調べたところ、ADHD薬の服用を中止するとテストの平均点がわずかだが有意に低下した。更に2020年のRCTのメタ分析によると、1,463人のADHD患者を対象に調べた結果、薬の服用中止は子どもと青年の生活の質の悪化につながった。一方で、成人は関係なかった。
160. 2012年のスウェーデンのコホート研究によると、ADHD患者25,000人以上を対象に調べた結果、ADHD治療薬を服用した男性の犯罪率が3分の1に減少、女性の犯罪率が40%減少した。また、2019年のデンマークの研究では、小児期のADHD患者4,200人以上を対象に調べたところ、ADHD治療薬を服用していた期間中、成人期の犯罪率が30~40%低下していた。
161. 2015年のデンマークのコホート研究によると、ADHD患者4,557人を含む70万人以上を対象に調べた結果、ADHDの10代の若者が刺激性薬剤を服薬すると傷害率が低下していた(10歳で30%、12歳で40%低下)
162. 2020年のスウェーデンの研究では、2006年~2013年にかけて、ADHDの若者9,421人とADHD+他の精神疾患を持つ若者2,986人を追跡調査してみた。その結果、どちらの若者もADHD治療薬を服用していた期間中、意図しない傷害が10%以上、外傷性脳損傷が70%以上減少した。
163. 2018年の台湾の研究によると、ADHDの若者124,000人以上を対象に調べた結果、メチルフェニデート(刺激性薬剤)の服薬で、外傷性脳損傷リスクが減少していた。
164. 2016年の台湾の研究では、ADHDの子ども7,200人とADHDのない子ども36,000人を比較してみた。結果、ADHDの男の子は骨折リスクが約40%高く、女の子は60%高かった。また2017年の台湾の別の研究によると、新たにADHDと診断された6,200人以上の子どもを対象にメチルフェニデートの効果を調べてみた結果、半年以上服薬した子どもは骨折リスクが20%も低下していた。
165. 2015年の香港の研究によると、メチルフェニデートを処方されている6~19歳の17,000人以上を調べてみた。すると約5,000人が、少なくとも1回は外傷関連の救急外来を受診していた。そしてメチルフェニデートの処方期間中は、処方されていない期間と比較して、入院が9%減少していた。
166. 2018年のメタ分析によると、13,000人以上を対象に調べた結果、ADHD治療薬(主に刺激性薬剤)は、不慮の事故による負傷を10%以上減少させていた。
167. 2014年のスウェーデンの研究によると、ADHD患者17,000人以上を対象に調べた結果、ADHD治療薬の服用により、男性の重大な交通事故リスクが50%以上減少した。一方で女性の減少は見られなかった。また、男性患者による衝突事故の40%以上は、治療期間全体を通して治療を受けていれば回避できたはずのものだった。更に2017年のアメリカのコホート研究では、ADHD患者230万人を対象に、10年間の自動車事故による救急外来の受診について調査してみた。その結果、ADHDの男性は、ADHD治療薬を服用していた月の方が服用していなかった月よりも衝突事故リスクが38%低く、ADHDの女性は42%も低いことが分かった。研究期間全体を通して服用していれば、衝突事故の約5分の1は回避できたはずのものだった。
168. 2018年の台湾国民健康保険データベース(NHIRD)の縦断研究によると、ADHDの青年・若年成人約18,000人と、年齢と性別を一致させた対照群70,000人以上を比較してみた。するとADHD治療薬の短期使用で性感染症が30%減少していた。また長期使用だと40%も減少していた。但し、この減少は男性のみに見られた。
個人的考察
とりあえず今回はここまで。
続きは来週です。
参考文献
最後にまとめてご紹介します。
