皆さんの事業所や支援している方の中に、成人の精神疾患をお持ちの方はおりますか…?
当事業所にはおります。
んで、その方々の治療法としてゴールドスタンダードなのが、心理療法と薬物療法でしょう。
もう耳タコでしょうが、心理療法と薬物療法ってのは、


って感じです。
まぁ、実践している方も多いかと。
では、その有効性はどうなのか…?ってことで、今回ガッツリ深掘りした研究を見てみます。



成人の精神疾患における心理療法と薬物療法の有効性についてRCTのメタ分析のアンブレラレビューを行ってみた…!

2022年のユストゥス・リービッヒ大学ギーセンの研究によると、成人の精神疾患における心理療法と薬物療法の有効性についてRCTのメタ分析のアンブレラレビューを行ってみたそうです。
皆さんご存知の通り、今世界中で精神疾患は問題になっております。そしてその精神疾患の治療法として代表的な物は、心理療法と薬物療法なんですよね。
じゃあ、これらの効果はどれほどなのか…?ってことで以前に調べられたのが、2014年のミュンヘン工科大学のアンブレラレビューになります。
この研究では61件のメタ分析、総サンプル数137,126人のデータをまとめているんですが、
結果、

  • 精神疾患における心理療法と薬物療法の効果サイズは中程度(標準化平均差:SMD=0.50)…!

って感じだったんですな。
んがしかし、この研究には、注意点がありまして、例えば、含まれているメタ分析の対照群が何も治療していない人だったり(対照群が他の治療法を試している、通常の治療法を試している人と比較した場合効果が大きく出やすい)、各メタ分析の評価をしていなかったり、2014年以降もバンバン良い感じのメタ分析が発表されていたりしたとのこと。
そこで今回、上記を踏まえて、対照群がプラセボ又は通常の治療法を試した場合と比較しているものでアンブレラレビューを行ってみることにしたんだとか。
まず研究者たちは、2014年1月から2021年3月までに発表された該当する研究をPubMed、PsycINFO、コクランで検索してみたそうな。またこの時、精神疾患のある成人を対象にした、心理療法又は薬物療法とプラセボ又は通常の治療法を試した場合と比較したRCTのメタ分析に限って探してみたらしい。
すると合計23,601件の研究がヒットしたとのこと。次にこの中で被っている研究や質の低い研究を除いていったみたい。
最終的に残ったRCTのメタ分析は102件でして、

  • 総RCT数:3,782件(範囲:2~522件)
  • 総サンプル数:650,514人の患者(範囲:65~116,477人)

だったそうです。
かなり質の高い研究ですね。
それでは気になる結果を見てみましょう。

  • 心理療法とプラセボ又は通常の治療法を比較した結果、統計的に有意ではあるものの、精神疾患全体の効果サイズは小程度(SMD=0.34)だった
  • 薬物療法とプラセボ又は通常の治療法を比較した結果、統計的に有意ではあるものの、精神疾患全体の効果サイズは小程度(SMD=0.36)だった
  • 心理療法+薬物療法とプラセボ又は通常の治療法を比較した結果、統計的に有意ではあるものの、精神疾患全体の効果サイズは小程度(SMD=0.35)だった
  • 心理療法と薬物療法を直接比較した結果、うつ病、不安障害、PTSD強迫性障害の効果サイズは全て小程度(SMD=0.00〜0.24)だった
  • 最大規模のメタ分析で心理療法と薬物療法を比較してみたら、有意ではない効果サイズ(SMD=0.11)だった
  • 対象となる全てのメタ分析を考慮すると、いくつかの例外を除いて、うつ病、不安障害、PTSDにおける心理療法と薬物療法の短期的な有効性に差はなかった
  • 例外の一つは強迫性障害だった。強迫性障害における心理療法はSSRIと比較して効果サイズが中~大程度(SMD=0.61~0.95)だった。但し、ほとんどの研究で抗うつ薬を服用していたり、バイアスリスクが高かった
  • もう一つの例外はPTSDだった。PTSDにおける長期的な有効性は心理療法が薬物療法よりも効果サイズが大程度(SMD=0.83)出ていた
  • 最大規模のメタ分析で心理療法+薬物療法の効果サイズを見てみたら、統計的に有意だが小程度の効果(SMD=0.31)があった
  • 対象となる全てのメタ分析、バイアスリスクを考慮すると、うつ病、不安障害、 PTSD、強迫性障害、ADHDにおける単独療法と比較した場合の心理療法+薬物療法の効果サイズは、いくつかの例外を除いて、全て小程度(SMD=0.09〜0.48)だった
  • 例外の一つはPTSDだった。PTSDの長期的な有効性における心理療法+薬物療法は単独療法(薬物療法のみ)よりも大程度の効果(SMD=0.96)があった
  • もう一つの例外は社交不安障害だった。社交不安障害における心理療法+薬物療法は、精神力動的精神療法よりも中程度の効果(SMD=0.68)があった
  • 但し上記の例外はネットワークメタ分析だった

う~ん…。
心理療法のみor薬物療法のみor心理療法+薬物療法とプラセボ又は通常の治療法を比較した場合、心理療法+薬物療法の効果をみた場合、いずれも効果は小さいんですねー。残念。また、心理療法と薬物療法を比較した場合、効果に有意差はないと…。
まぁ、なんとなくPTSDには心理療法や心理療法+薬物療法が良さそう、社交不安障害における心理療法+薬物療法が良さそうな例外もありそうですが、はっきりとは言えない感じですね~。
この結果に研究者も、

  • 半世紀以上にわたって数百万ドルも投資して研究しまくっているのに、実際、精神疾患に対する心理療法と薬物療法の効果量って小さくない…?もっと研究方法とか色々考えて行かないとまずいんじゃない…?

っておっしゃっておりました。
確かに思ったほどの効果がないって出たのは残念ですね~。



個人的考察

個人的には、心理療法だろうが、薬物療法だろうが、運動療法だろうが、食事療法だろうが、ある程度のエビデンスや効果がありそうなものは色々やってみて、試していくしかないのかな~と思っております。また、一つの方法にこだわらず、複数行ったコンビネーションで治療するのが良いのかな~とも…。
そしてそれらを自分なりの体調安定法としてまとめておくのが良いのかなーとも愚考しております。



参考文献