「認知行動療法の共通基盤マニュアル」のポイントを抑えよう!その4「不安・不安症・不安障害の基礎理解とアプローチ」
「「認知行動療法の共通基盤マニュアル」のポイントを抑えよう!」シリーズの続きです。
この記事は、当事業所の社内研修で行いたかったが時間の都合上出来なかった内容を載せている物になります。
具体的には認知行動療法マップ(CBTマップ)の「認知行動療法の共通基盤マニュアル」を私なりにまとめたものです。
不安・不安症・不安障害の基礎理解
不安とは、「対象のない恐れ」(対象がはっきりしない、漠然とした恐れ)のことを言いまして、「対象が明確な恐れ」のことを恐怖と言いますが、両者は厳密には分けきれないそうです。不安は、誰もが持つ、生存に必要な感情です。例えば、夜道を歩いていて物陰で物音がすると不安に感じます。その時おそらく、「物陰に何かいる(危ない)」と身構えていると思います。認知行動モデル(気分・身体・認知・行動)で考えてみると、暗闇の物音に対して、
- 気分:不安な気持ちになる
- 身体:闘争や逃走の準備のために交感神経(緊張神経)が副交感神経(リラックス神経)より優位になる(心臓の鼓動や呼吸が早くなり筋緊張が高まる)
- 認知:「何かいる、危険だ」「闘わなければ」「逃げなければ」という考え(認知)が生じる
- 行動:闘争や逃走の行動をとる
のような状態となります。
イメージとしては以下の画像な感じですね。
ここからも分かるように不安そのものを一律に問題視するべきではありません。過度な不安となり、つらさや機能障害を起こす(不安症・不安障害になる)など、不安以上に支障の方が大きくなっている場合に注意すべきものです。
では不安以上に支障の方が大きくなっている状態、つまり不安症・不安障害について次に見ていきましょう。
まず正常な心理反応としての不安(適応的な不安)と、治療介入が必要な不安(不安症・不安障害)は、不安の程度・持続時間・機能障害(生活への支障)などで区別できるそうです。
一般的に不安症・不安障害は、不安の程度が、現実の状況と比べて不釣り合いに高く、持続時間が長く、そして生活に支障をきたすものを指します。不安症・不安障害は、その対象や状況などにより、色々な種類がありまして、
などに分ける事が出来ます。
これら不安症・不安障害に共通することは、リスクを過大評価し、対処能力(自分自身の対処能力と周囲からのサポート)を過小評価して対処困難という考えを持っていることが多かったりします。また破局視・破局化(極端にネガティブに考えること)も特徴の一つです。
そしてこのような不安な状態では、回避行動や安全行動をとりがちになります。
回避行動や安全行動とは、
って感じです。
回避行動も安全行動も、一時的な不安軽減には役に立ちますが、根本的な解決にはならないので、むしろ、中長期的な不安の持続につながる、逆効果になる行動と言えます。
以上のポイントをまとめると、不安症・不安障害は、
となります。
まず正常な心理反応としての不安(適応的な不安)と、治療介入が必要な不安(不安症・不安障害)は、不安の程度・持続時間・機能障害(生活への支障)などで区別できるそうです。
一般的に不安症・不安障害は、不安の程度が、現実の状況と比べて不釣り合いに高く、持続時間が長く、そして生活に支障をきたすものを指します。不安症・不安障害は、その対象や状況などにより、色々な種類がありまして、
などに分ける事が出来ます。
これら不安症・不安障害に共通することは、リスクを過大評価し、対処能力(自分自身の対処能力と周囲からのサポート)を過小評価して対処困難という考えを持っていることが多かったりします。また破局視・破局化(極端にネガティブに考えること)も特徴の一つです。
そしてこのような不安な状態では、回避行動や安全行動をとりがちになります。
回避行動や安全行動とは、
- 回避行動:不安を感じる場面を避けようとすること
- 安全行動:不安を下げるための一時しのぎな行動(頓服薬を飲むなど)のこと
って感じです。
回避行動も安全行動も、一時的な不安軽減には役に立ちますが、根本的な解決にはならないので、むしろ、中長期的な不安の持続につながる、逆効果になる行動と言えます。
以上のポイントをまとめると、不安症・不安障害は、
- 非機能的な認知、不安感情、身体反応(交感神経優位の症状)が相互に悪循環を起こす(例:パニック症において、不安に伴う身体症状が、「息苦しい。死んでしまうのではないか」などの認知を引き起こし、さらに不安感情を増幅する)
- 回避行動や安全行動で不安に向き合う機会を減らし、認知の修正の機会を損ねるため、非機能的認知が持続するという悪循環に陥る
となります。
不安・不安症・不安障害のアプローチ
不安症・不安障害の症状改善のための対策としては以下が有効との事。- 心理教育:不安の特徴、不安症・不安障害の特徴、認知行動療法の効果と他の治療法との選択、認知モデルなどについて心理教育を行う。これらを行う事によって「不安は異常ではない」「有害ではない」という認識を利用者に持ってもらえるようにする。支援する場合は、ソクラテス式質問(ソクラテス式問答法)を通じて、利用者自身の体験とすり合わせながら、認知・行動の悪循環に気付いてもらうようにする。また、セルフモニタリングも有効となる。セルフモニタリングとは、自分が今どのような状況で、どのような悪循環に陥っているかに気付き、自分を客観視してもらう事を言う。客観視は、「メタ認知」「外在化」「脱中心化」「距離化(distancing)」などとも呼ばれる。
- 認知療法的な認知行動療法(認知的介入):認知療法のABC分析や認知再構成法を行う。
- 行動療法的な認知行動療法(行動的介入):不安階層表や暴露療法などを行う。
これらを行う場合は、最も介入しやすい症状から介入するのが良い。理由は容易に課題を達成できるため、利用者の自信や治療へのモチベーション向上につながりやすいから。更に成功した対策を別の不安でも流用できることが多いのでオススメ。但し、利用者の生活に支障が生じているような場合は、その問題から取り組むことを検討する。その問題に取り組むことが利用者にとって極めて困難な場合は、問題を小分けにしたうえで、何から取り組む必要性が高いかを利用者と一緒に話し合うと良い。
また基礎的スキルトレーニング(基盤作り)として、以下の方法を試すことも検討すると良い。
また基礎的スキルトレーニング(基盤作り)として、以下の方法を試すことも検討すると良い。
- リラクゼーショントレーニング:漸進的筋弛緩法や呼吸法、イメージ技法など
- 思考停止:思考停止とは、反芻思考などの無意味な思考を停止させ、より適応的な思考に置き換えることを言う。但し、強迫症(強迫性障害)には逆効果の可能性もある。やり方は以下の通り。
- 注意の転換:注意の転換とは、注意の方向を切り替えることを言う。結果的に注意の転換が回避行動や安全行動になっていないか気を付ける必要がある。
- 脱破局視の修正:脱破局視の修正とは、最悪の事態を想定したシナリオを作り、その予測を弱めるための方法を活用すること(防衛的悲観主義と同じくネガティブを活かす戦略ですな)。脱破局視の具体的な方法例は下記となる。
項目:意味
1. 可能性予測:破局的結果が実際に起こる可能性について検討する
2. 根拠の評価:破局的結果が起こる可能性を肯定する根拠を検討するため根拠リストを作成する
3. 根拠リストの見直し:根拠リストを見直し、破局的結果が起こる可能性をあらためて評価する
4. 活動計画の作成:破局的事態が起こる可能性を低下させるような活動計画を作成する
5. 対処計画の作成:破局的事態が実際に起こった際の対処計画を作成する
6. 再評価:破局的結果が起こる可能性について再評価する
7. デブリーフィング:破局的思考について話してどうだったか、あらためて利用者と話し合う - 呼吸法訓練:呼吸法訓練とは、呼吸を自分自身でコントロールできるようにするトレーニングのことを言う。基本的に副交感神経優位(リラックス状態)になるように呼吸を整えていく。特にパニック症(パニック障害)の方に効果的と言われている。
- 暴露(暴露療法・エクスポージャー):暴露とは、不安を引き起こすために避けている対象物、状況や刺激にあえてさらすことを言う。不安に対する慣れ(=馴化(じゅんか))を促し、回避しなくても不安は自然に下がるという体験を通して不安への耐性を高め、対象や状況に対する非現実的な思考を再評価することを行う。イメージをつかみたい方はこの動画の1時間5分ぐらいから見てみると良い。
個人的考察
以上「不安・不安症・不安障害の基礎理解とアプローチ」でした。
次回は「強迫・強迫症・強迫性障害の基礎理解とアプローチ」について見ていきます。


