今回は2024年にアムステルダム自由大学医療センターが発表した統合失調症スペクトラム障害に認知行動療法は有効なのかのRCTのメタ分析のアンブレラレビューを見てみます。



統合失調症スペクトラム障害に認知行動療法は有効なのかRCTのメタ分析のアンブレラレビューを行ってみた…!

2024年のアムステルダム自由大学医療センターの研究によると、統合失調症スペクトラム障害に認知行動療法は有効なのかRCTのメタ分析のアンブレラレビューを行ってみたそうです。
あんま聞きなれない言葉かもですが、統合失調症スペクトラム障害(SSD:schizophrenia spectrum disorders)ってのは、統合失調症や統合失調症のような症状がある、短期精神病性障害など、様々な精神病症状を特徴とする精神疾患グループのことを指します。つまり、統合失調症とその症状を持つ精神疾患グループの総称ってことですね。
んで、これらの患者さんの治療には認知行動療法が良いぞ…!って話がありまして、広く使われているんですよ。
実際、いくつかのメタ分析では統合失調症や関連する精神病に対しての認知行動療法の有効性を調べておりまして、結果、

  • 通常の治療や混合治療よりも認知行動療法が良かった…!
  • 効果サイズは、無~小~中程度まで様々だった…!

って感じだったんですな。
但し、詳細までチェックしたアンブレラレビューは未だなかったとのこと。そこで今回調べてみることにしたんだとか。

ということでまず研究者たちは、2023年8月18日までに発表された該当するRCTのメタ分析をMEDLINE、コクラン、Embase、PsychINFOで検索してみたそうな。すると全部で1,273件の研究がヒットしたとのこと。次にこの中で被っている研究や質の低い研究を除いていったみたい。
最終的に残ったRCTのメタ分析は26件でして、この中で十分なデータが得られた16件のメタ分析をまとめてみたんだとか。
それでは大枠の結果から見てみましょう。

  • 統合失調症スペクトラム障害に認知行動療法が有意としたのは42.9%だった。
  • 統合失調症スペクトラム障害に認知行動療法が有意ではないとしたのは57.1%だった。
  • 統合失調症スペクトラム障害に認知行動療法が有意としたもののうち、説得力のあるエビデンス、非常に可能性のあるエビデンスのものはなかった。
  • 可能性のあるエビデンスとしたものが7.1%あった。
  • 低いエビデンスとしたものが35.7%あった。

微妙な感じですね~。
一応効果はありそうだけどゴニョゴニョ…ってところでしょうか…。
では、もうちょい具体的に見てみますかー。

  • 一般的な精神病理に関連する相関関係の43.8%は有意だった。
  • 1つの比較(6.3%)では、治療終了時点に認知行動療法と通常治療を比較した場合、認知行動療法の方が効果があると出ていた(可能性のあるエビデンス)
  • 37.5%で、様々な追跡期間での認知行動療法と通常治療又は支持療法(ST)を比較しており、認知行動療法の方が効果があった(低いエビデンス)。一方で56.3%は、有意ではなく、対照群は通常治療、支持療法(ST)、薬物療法だった。
  • 陽性症状(幻覚や妄想、思考の混乱など)は、12.5%で、治療終了時点に認知行動療法は通常治療よりも効果があると出ていた(可能性のあるエビデンス)
  • 62.5%で、様々な追跡期間での認知行動療法と通常治療、支持療法(ST)を比較しており、認知行動療法の方が効果があった(低いエビデンス)
  • 25%は、通常治療又は支持療法(ST)において、治療終了時点で有意ではなかったか、追跡期間が6か月未満だった。
  • 妄想は、16.7%で、治療終了時点に認知行動療法は通常治療よりも効果があると出ていた(可能性のあるエビデンス)
  • 33.3%で、治療終了時点で認知行動療法は混合治療よりも効果があると出ていた(低いエビデンス)
  • 追跡調査では通常治療と薬物治療と比較して有意差はなかった。
  • 幻覚は、33.3%で、治療終了時点に認知行動療法は通常治療よりも効果があると出ていた(可能性のあるエビデンス)
  • 66.7%で、治療終了時点で認知行動療法は混合治療よりも効果があると出ていた(低いエビデンス)
  • 陰性症状(言語・思考の低下、意欲の低下、非社会性)についての可能性のあるエビデンスはなかった。
  • 25%で、認知行動療法は通常治療又は支持療法(ST)よりも治療終了時点と12ヶ月の追跡期間において効果があると出ていた(低いエビデンス)
  • 75%で、認知行動療法は通常治療と比べて、治療終了時点と12ヶ月の追跡期間において有意差はなかった。

やっぱりパッとしない感じですね~。
それとも認知行動療法の効果が思ったよりも小さいのかしら…。
これについて研究者は、

  • 認知行動療法って一口に言ってもすごい色々な手法があるよね~。これをひとくくりにしたからかも…?だから個別のアプローチで見て行けばもうちょい効果があるって出るかも…?

と答えておりました。
確かに当ブログでも紹介している通り、認知行動療法は非常に範囲が広いんで、まとめると効果が薄まって出ちゃうのかもですな。



個人的考察

ということで認知行動療法は、一般的な精神病理、妄想、幻覚なんかに効果があるかも…?って感じ。あとはもっと質の高い研究が出ることを期待する感じですな。



参考文献