どこかで赤色は有利…!って話を聞いたことがありませんか…?
今回はこの話について色々見ていきます。



レッドアドバンテージ仮説ってなに…?

そもそもレッドアドバンテージ仮説は2005年のダラム大学の研究が元ネタとなっております。
この研究は、2004年に行われたアテネオリンピックの4つの格闘技を調べたというもの。その4つとは、

  1. ボクシング
  2. テコンドー
  3. グレコローマンレスリング
  4. フリースタイルレスリング

でして、総サンプル数(試合結果)は全部で438試合あったんだとか。んでこれらの試合はいずれも赤色又は青色のユニフォームを着る感じなんですな。
最後に色と試合結果を見てみた結果、

  • 赤色のユニフォームを着た人の勝率が55%…!
  • 青色のユニフォームを着た人の勝率が45%…!

って感じで、赤色のユニフォームを着た選手は青色のユニフォームを着た選手よりも試合に勝つ確率が有意に高かったんですよ。
ここから、服の色が試合の勝利にバイアスをかける可能性があるんじゃないか…?となった訳です。これをレッドアドバンテージ仮説と呼んだんですな。
因みに研究者によれば、選手間の技術や強さなどの他の要因が比較的同等である、点数が僅差だった試合(つまり接戦ですな)では、微妙な心理的効果によって赤色の選手が有利になる可能性があると主張されております。



格闘技では赤いジャージが有利…!

2013年のミュンスター大学の研究によると、格闘技における色の効果について調べてみたそうです。
なんでも2004年のロンドンオリンピックでは、テコンドー、ボクシング、レスリングの選手が赤いジャージを着ていた場合、青いジャージを着ていた選手よりも勝つことが多かったそうな。そのためジャージの色が選手の筋力と心拍数の身体的パラメータに与える影響についてチェックしてみることにしたらしい。
この研究は、14組の男性アスリートが参加したもので、身長や体重、年齢が一致するようにしたんだとか。その上で、赤いジャージと青いジャージをランダムに着てもらい格闘技の試合を行ってもらったそうです。併せて、心拍数(試合前・試合中・試合後)と筋力(試合前)もチェックしたんだとか。
結果、

  • 赤いジャージの人は心拍数が有意に高く、試合前の筋力テストも有意に高かった…!

とのこと。
いや~赤色を着ると実際戦闘モードになってパフォーマンスが上がるってのは面白いですよね。



レッドアドバンテージ仮説をはっきりさせるべくメタ分析を行ってみたら…。

2024年のアムステルダム自由大学の研究によると、レッドアドバンテージ仮説は本当なのかメタ分析を行ってみたそうです。
上記にも挙げたとおり2005年のダラム大学の研究で、オリンピックの様々な格闘技において赤色のユニフォームの人は青色のユニフォームの人よりも試合に勝つ確率が高くなるって可能性がございます。また、これまた上記に挙げたとおり2013年のミュンスター大学の研究のようなその後の研究でも可能性が示唆されております。
しかし、レッドアドバンテージ仮説は、複数のトーナメントで体系的に調べられてはいなかったんですな。
そこで今回研究者たちは、

  • 1996~2020年にかけて行われた7回の夏季オリンピック
  • 2005~2021年にかけて行われた9回の世界ボクシング選手権

におけるボクシング、テコンドー、レスリングの試合結果を調べつつメタ分析でまとめてみることにしたそうな。因みに総サンプル数(試合数)は6,589試合にも上るとのこと。
んで、早速メタ分析の結果を見てみますと、

  • 6,589試合中、3,328試合で赤色のユニフォームの人が勝っていた…!
  • 赤色のユニフォームの勝利は50.5%と青色を上回っていたが、統計的に有意ではなかった…!
  • 点数が僅差だった試合(接戦)での赤色のユニフォームの勝利は51.5%と青色を上回っていたが、統計的に有意ではなかった…!
  • 元ネタである2005年のダラム大学の研究以前の特定のトーナメントルールが変更される前は、接戦における赤色有利を裏付けるデータがあり、これらのみだと赤色のユニフォームの勝利は56.8%と高かった…!
  • 2005年以降の試合を含めると、赤と青の勝率は等しく、有差はなくなっていた…!

そうです。
う~ん。なんとも微妙な結果ですねー。これらを見ると、特に赤色で強くなる…!とは言えない感じですな…。
因みになぜ2005年の研究前後で赤色の効果が変わったのかですが、研究者曰く、

  • 赤色が強い…!有利…!っていう、心理的効果に関する知識が広まっちゃって、行動パターンに影響が及ぼし、赤色効果が修正されたり解消されたりしちゃったんじゃない…?
  • 全てのスポーツでルール変更が実施されたからじゃない…?

とおっしゃっておりました。
赤色の効果は小さな効果なんで皆知ると発揮されない説と、赤色有利だからルールを変えたら出なくなった説が考えられると…。
前者だと知っていない人だと依然として赤色効果はありそうですし、後者だと赤色効果があるから変えたと言えますから、これだとレッドアドバンテージ仮説自体が否定された事にはなりませんが、それほど微妙な効果とも言えるし、何とも言えない感じですな。



個人的考察

まぁ、パワータイの効果も否定されておりますし、赤色効果ってのはあっても本当に微妙なぐらいなんだろうな~って印象ですね。ゲン担ぎ程度に使うのが良いのかもしれないな~と思いました。



参考文献