2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサスを見てみよう! その20「続 安全かつ効果的な非薬物療法」
「2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサスを見てみよう!」シリーズの続きです。
これまで、
- その1「概要・歴史・診断と傾向」
- その2「有病率・原因」
- その3「毒性物質への暴露」
- その4「栄養不足と妊娠中・出産中の出来事」
- その5「感染症・死別・虐待・貧困・家庭環境・親・地域支援」
- その6「脳研究」
- その7「脳スキャン」
- その8「肥満・アレルギーと喘息・糖尿病」
- その9「その他の疾患」
- その10「生活の質・感情的障害・社会的障害・事故による怪我」
- その11「早死に・自殺、犯罪と非行」
- その12「学校教育・物質使用障害・その他」
- その13「経済的損失」
- その14「安全で効果的な薬」
- その15「薬物治療の効果」
- その16「続 薬物治療の効果」
- その17「ADHD治療薬の副作用」
- その18「刺激性薬剤の乱用と転用」
- その19「安全かつ効果的な非薬物療法」
を見てきました。
今回も2021年の世界ADHD連盟の研究を見ていきます。それでは続きをどうぞ~。
認知トレーニングとニューロフィードバック
201. 2014年のRCTのメタ分析では、263名を対象にニューロフィードバック(自分の脳波をリアルタイムで測定し、それを見たり聞いたりして、脳の活動をコントロールするトレーニング法)の効果を調べた。結果、不注意がわずかに改善、多動性、衝動性、ADHD全般の症状は有意に改善しなかった。また2019年の同じようなRCTのメタ分析でも、256名を対象にニューロフィードバックの効果を調べた。結果、不注意は改善せず、代わりに多動性と衝動性が小~中程度改善した。
202. 2015年のメタ分析では、青少年を対象に認知トレーニングとニューロフィードバックの効果を調べてみた。結果、ADHDの症状は有意に改善しなかった。但し、言語性ワーキングメモリは中程度改善した。一方で数学と国語(読解力)の成績は有意に改善しなかった。2016年のRCTのメタ分析では、ADHDの症状は有意に改善しなかった。
203. 2013年のメタ分析によると、ワーキングメモリのトレーニングは有効なのか調べてみた。結果、言語性ワーキングメモリと視空間性ワーキングメモリの両方が、短期的に改善していた。但し持続するかは不明とのこと。また研究の質も低かった。
サプリメント・食事・運動
204. 2011年のメタ分析、2018年のメタ分析、2014年のメタ分析によると、オメガ3脂肪酸のサプリでADHDの症状が小~中程度改善した。また2014年の別のメタ分析では、オメガ3脂肪酸のサプリでADHDの症状がわずかに改善した。
205. 2016年のメタ分析によると、ADHDの子供がオメガ3脂肪酸サプリを摂取しても、親や学校の先生による感情の不安定さの評価、反抗的症状の評価は変わらなかった。
206. 2012年の二重盲検・クロスオーバーデザインのメタ分析によると、子供の食事から合成着色料を減らすとADHDの症状がわずかに改善した。
207. 2020年のメタ分析によると、子ども300名を対象に調べた結果、運動によりADHDの症状が中程度改善した。但し出版バイアスを調整すると有意ではなくなった。2019年の別のメタ分析でも、運動の効果を見てみたが、結果、不注意・多動性・衝動性の症状に有意な変化はなかった。但し、不安と抑うつ症状が有意に改善した。
208. 2020年のスウェーデンの双子研究では、約18,000組の双子を対象に不注意・多動性・衝動性と食習慣の関係を調べてみた。結果、不注意は果物、野菜の摂取、健康的な食事スタイルと負の相関関係にあった。多動性・衝動性も同様の傾向を示したが、不注意よりも弱い傾向を示した。また、不健康な食事スタイルと正の相関関係もあった。一卵性と二卵性を区別しても依然として不注意は関係があった。一方で多動性・衝動性は無視できるレベルにまで減少した。700組以上の一卵性双生児を対象にした研究でも、不注意と不健康な食事スタイル、特に精製糖の多い食品の摂取との間には、小さいながらも強固な関連性があった。一方で多動性・衝動性と不健康な食事スタイルとの関連性は弱く、精製糖との関連性はなかった。
個人的考察
これで14カテゴリー、全208個全て終了です。ついに終わりましたな…!
ということで長かったこのシリーズも次回で終了となります。
ラストはまとめとなります。
参考文献
最後にまとめてご紹介します。
