今回は2013年にトリンボス研究所が発表した、ポジティブ心理学の効果を調べたRCTのメタ分析を見てみます。



ポジティブ心理学の効果を調べたRCTのメタ分析のお話

2013年のトリンボス研究所の研究によると、ポジティブ心理学の効果を調べるためRCTのメタ分析を行ってみたそうです。
そもそもポジティブ心理学ってのは、1998年に始まったとされ、2000年のペンシルベニア大学のマーティン・セリグマン博士の研究によって、有名になったとされております。またこれを皮切りにポジティブ心理学は急速に発展していったんだとか。その後「国際ポジティブ心理学会(IPPA)」が2007年に設立し、ポジティブ心理学が広まっていったんですな。
これらもあり、ポジティブ心理学の研究数は大幅に増えました。
主だった方法としては、


なんかですね。
このようなポジティブ心理学の介入は、幸福感を高め、場合によってはうつ症状を軽減させるとまで出ております。
そんな中、2009年のカリフォルニア大学リバーサイド校の研究でポジティブ心理学の効果をメタ分析で調べてみたんですな。すると、ポジティブ心理学の介入で、幸福感がアップ…!うつ症状がダウン…!って出たんですよ。
しかし、このメタ分析には弱点がありまして、例えば、RCTと準実験が混ざっていたり、研究の質が調整されていなかったり、マインドフルネスとかの他の物も混ざっていたりしたそうな。
そこで今回、質の高い研究のみをピックアップし、ポジティブ心理学の効果を調べてみることにしたんだとか。
まず研究者たちは、1998年(ポジティブ心理学開始)から2012年11月までに発表された該当するRCTをPsycInfo、PubMed、コクランで検索してみたそうな。更に参考文献なんかを手作業でチェックしてみたらしい。
すると電子データベースの検索で5,335件、手作業で55件の研究が見つかったんだとか。次にこの中で被っている研究や質の低い研究を除外していったそうです。
最終的に選ばれた研究は39件でして、総サンプル数は6,139人、このうちポジティブ心理学の介入の総サンプル数が4,043人、対照群の総サンプル数が2,096人ってことでした。
では、気になるメタ分析の結果を見てみましょう。

  • 主観的な幸福感:d=0.34…!
  • 心理的な幸福感:d=0.20…!
  • うつ症状:d=0.23…!

つまり、ここから何が言えるのかと言いますと、

  • ポジティブ心理学の介入の効果はいずれも小さい…!

ってこと。
う~ん…。効果がない訳じゃないんだけど、思ったほどじゃなかったみたいですね~。
次に各効果サイズなんですが、

  • 主観的な幸福感:d=-0.09~1.30
  • 心理的な幸福感:d=-0.06~2.4
  • うつ症状:d=-0.17~1.75

って感じで、かなり幅が広い様子らしく、ここから外れ値(極端な結果の数値)を除いてみると、

  • 主観的な幸福度:d=0.26
  • 心理的な幸福度:d=0.17
  • うつ症状:d=0.18

となっており、3つの項目全てで効果サイズが減少しちゃったんですな。
更にこの研究では、3か月から6か月という短期の追跡調査の効果サイズも見てみたんですが、

  • 主観的な幸福感:d=0.22(小さいながらも有意な効果)
  • 心理的な幸福感:d=0.16(小さいながらも有意な効果)
  • うつ症状:d=0.17(有意ではなかった)

とのこと。
どうやらうつ症状への効果はすぐになくなっちゃうみたいですね。残念…。



個人的考察

ということで、まとめてみると、

  • ポジティブ心理学の介入は、主観的な幸福感と心理的な幸福感をちょっとアップさせる…!うつ症状の軽減効果もあるけど、長続きしないっぽい…。

って感じとなりましょう。
なんで過度な期待はせずに、ちょっとポジティブになれるな~ぐらいな感覚でいると良いのかと思いました。



参考文献