2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサスを見てみよう! その9「その他の疾患」
「2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサスを見てみよう!」シリーズの続きです。
その他の疾患
87. 2014年のメタ分析によると、2,500人以上の子どもと青少年を対象にチェックした結果、ADHDと呼吸系の睡眠障害は中程度の関係があった。
88. 2020年のメタ分析によると、ADHDの成人の睡眠について調べてみた。結果、ADHDのない成人と、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)、入眠潜時、第1段階の睡眠、第2段階の睡眠、徐波睡眠、レム睡眠、睡眠効率、総睡眠時間、レム睡眠潜時、入眠後の覚醒時間、就床時間と実際の覚醒時間、実際の睡眠時間に有意差はなかった。但し、ADHDの方は入眠潜時がはるかに長い、睡眠効率はやや低い、主観的な評価では、寝つきがやや困難、夜中に目が覚める頻度がやや多い、起床時に十分に休めている可能性がやや低い、睡眠の質がやや悪いといった報告もあった。
89. 2018年のノルウェーの研究によると、120万人以上の男性と120万人以上の女性を対象に調べたところ、ADHDの男性は対照群と比較して、乾癬と診断される可能性が30%高く、ADHDの女性は50%以上高かった。
90. 台湾のコホート研究によると、8,000人以上のADHD患者と32,000人の対照群を対象に
自己免疫疾患との関連性を調査した。結果、ADHD患者は対照群に比べて、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、自己免疫性の甲状腺疾患(バセドウ病・橋本病(慢性甲状腺炎))の発症リスクが2倍以上高かった。また、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎の発症リスクも50%以上高かった。
91. 2016年のコホート研究では、デンマークの子ども90万人以上を対象にてんかんとの関連性をチェックした結果、ADHDの子どもは2.7倍もてんかんリスクが高かった。また、2013年のコホート研究によると、台湾人1万2千人以上を対象に調べた結果、てんかんはADHDリスクを2.5倍高めていた。更に台湾人1万8千人以上を対象にチェックすると、ADHDはてんかんリスクを4倍高めていた。
92. 190万人を対象にした2018年のスウェーデンの研究によると、てんかん患者はADHD発症リスクが3.5倍高く、母親がてんかん患者の場合85%、父親又は兄弟姉妹がてんかん患者の場合50~60%、いとこがてんかん患者の場合15%高かった。この差は遺伝的要因が40%、非遺伝的環境要因が50%によるものだった。
93. 2018年の台湾の国民健康保険データベース(NHIRD)を使った縦断研究によると、ADHDの青年及び若年成人約18,000人と対照群70,000人以上を比べた結果、ADHDの人は性感染症発症リスクが3倍以上も高かった。
94. 2019年のデンマークの研究によると、110万人を対象に調べてみた結果、重篤な感染症による入院は、その後のADHD診断率の倍増と関連していた。但し抗感染症薬による治療を受けた人は、その後のADHD診断率が半減していた。
95. 約100万人を対象にした2017年のデンマークの研究によると、自己免疫疾患のある子どもはADHD発症リスクが24%高かった。また母親の自己免疫疾患は子どものADHD発症リスクを12%高めていた。一方で父親の自己免疫疾患は関係なかった。
96. 2020年の台湾の国民健康保険データベース(NHIRD)を使った研究によると、ADHDの子ども11万6000人以上と対照群の子どもを比較してみた。結果、ADHDの子どもは、重大な目の異常を有する可能性が非常に高く、弱視の可能性が約90%、乱視の可能性が80%以上、外斜視の可能性が2倍高かった。また2019年の台湾の国民健康保険データベース(NHIRD)を使った研究では、弱視と診断された6,817人の若者と対照群2万7000人以上を比べてみた。結果、弱視グループの人は、ADHD発症リスクが1.8倍高かった。
97. 250万人以上のドイツの若者を対象にした2019年の研究によると、ADHDの人は代謝疾患率が9倍、ウイルス性肺炎率が5倍、白血球疾患率が4倍、腎不全・高血圧・肥満率が3倍、2型糖尿病・片頭痛率が2.5倍、喘息・アトピー性皮膚炎率が2倍、緑内障率が50%高かった。また、2020年のブラジルの研究では5,671人の子どもを対象にチェックしたところ、片頭痛のある子どもはADHD率が約4倍高かった。
98. 2019年の台湾国民健康保険データベース(NHIRD)を使った研究では、ADHD男子59,000人以上と対照群の男子52,000人以上を比較してみた。すると、ADHD男子は精巣機能障害の発症リスクが2倍高かった。
99. 2020年のスウェーデンのコホート研究によると、セリアック病の子ども19,000人以上と対照群の子ども95,000人以上を比べてみた。その結果、セリアック病の子どもはADHDリスクが29%、成人のADHD診断に限定すると39%高かった。一方でセリアック病の子ども13,000人と、セリアック病でない兄弟姉妹18,000人を比べてみると、ADHDリスクの上昇の有意差はなくなった。
100. 2013年にスウェーデンに居住していた18歳から64歳までの全ての人の医療記録をチェックし、少なくとも1回はADHD治療薬を処方された41,840人を特定した。そのデータを見てみると、ADHDの若年成人は対照群と比較して、身体疾患の薬物治療との併用率が4倍、向精神薬との併用率が15倍高かった。またADHDの中年成人(30~49歳)だと、身体疾患の薬物治療との併用率が6倍、向精神薬との併用率が21倍高かった。ADHDの高齢者だと、身体疾患の薬物治療との併用率が7倍、向精神薬との併用率が18倍高かった。身体疾患は、呼吸器系の薬(主にアレルギー反応や喘息用)で処方されることが最も高く、次いで消化管・代謝系の薬(最も頻繁なのは胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃食道逆流症(逆流性食道炎と非びらん性胃食道逆流症)用)、心血管系の薬(主に高血圧・不整脈用)だった。
個人的考察
ようやく100個まで来ましたー。先は長いですね(笑)
ということで続きは来週です。
参考文献
最後にまとめてご紹介します。