2型糖尿病患者さんにおける精神疾患の危険要因と保護要因のお話
これまで糖尿病の研究をちょこちょこ見てきた当ブログ。
例えば、
- 2型糖尿病の発症リスクと食事・栄養素の関係についてアンブレラレビューを行ってみた!
- 2型糖尿病における減量と寛解に良い食事法は何か?
- ガチで2型糖尿病に効く食事法ってなに?ってのを調べたハインリッヒ・ハイネ大学のアンブレラレビューのお話
- 大気汚染・タバコの煙・化学物質…環境リスクと様々な健康リスクの関係
なんかですね。
んで、なんで糖尿病の研究を取り上げているかと言いますと、実は精神疾患と関係が深いからなんですな。じゃあ具体的にどのような危険要因と関係があるのか…?ってことで、2024年にバーミンガム大学が発表したアンブレラレビューでは、そこん所をガッツリ深掘りしてくれております。
2型糖尿病患者における精神疾患の危険要因についてアンブレラレビューを行ってみた…!
2024年のバーミンガム大学の研究によると、2型糖尿病患者における精神疾患の危険要因についてアンブレラレビューを行ってみたそうです。
そもそも2型糖尿病は身体の健康だけでなく、精神の健康にも影響を及ぼす事が分かっております。例えば、2010年の研究や2012年のノッティンガム大学の系統的レビューによると、2型糖尿病と精神疾患の関係は十分に確立されているそうで、また、双方向の関係とのこと。
そして2型糖尿病患者さんは、糖尿病のない患者さんと比較して、精神疾患と診断される割合がほぼ2倍高くなるんだとか。また、2002年のワシントン大学の系統的レビューによると、2型糖尿病患者さんの約40%に不安症状の悪化が見られるみたい。更に糖尿病を発症した場合、糖尿病と上手く付き合って生きていく必要が出てきます。それが結構大きな精神的ストレスを伴い、メンタルへの悪影響につながっていそうなんだとか。
他にも2019年のバーミンガムシティ大学の系統的レビュー・メタ分析なんかを見てみると、高血糖は、糖尿病患者さんのうつ病の発症と関連性があるそうな。そして適切な治療を受けない場合、糖尿病、メンタルの悪化、セルフケアの実践に悪影響を及ぼし、それらが精神的・身体的健康の悪化につながる可能性があるとのこと。まさに負の連鎖ですね~。
一方で、2005年のマサチューセッツ総合病院の研究や2001年のマニトバ大学の研究によると、うつ病と統合失調症は、インスリン抵抗性に影響を与えるため、2型糖尿病発症の危険要因として認識されているそうな。
また、精神疾患を持つ人は、肥満やコレステロール値の上昇など、糖尿病の他の危険要因も複数抱えていることが多かったりするんですよね。特に、これは有名だと思うんですが、抗精神病薬は体重増加をめっちゃ引き起こすんですよ。例えば2017年のコロンボ大学の研究によると、重度な精神疾患を持つ人の肥満率は一般人口の最大3.5倍とのこと。
他にも2014年のシカゴ大学の研究では、糖尿病患者さんは、一般人口と比較してうつ病の生涯有病率が2倍高いって出ていたり、2019年のイスファハン医科大学の系統的レビュー・メタ分析では、成人の糖尿病患者さんのうち約4人に1人が有意なうつ病症状を経験していたり、2001年のワシントン大学のメタ分析では、糖尿病患者さんうち10~15%が正式にうつ病と診断されているそうです。
今回は、これらの知見をアンブレラレビューとしてまとめてみることにしたんだとか。
まず研究者たちは、2022年11月17日までに発表された該当するメタ分析あり・なしの系統的レビューを、Medline via PubMed、Web of Science、EMBASE、CINHAL、PsycINFOで検索してみたそうな。
すると、
- Medline via PubMed:332件
- Web of Science:686件
- EMBASE:104件
- CINHAL:66件
- PsycINFO:57件
の合計1,245件がヒットしたとのこと。
続いてこの中で重複している研究や質の低い研究を除いていったそうな。
最終的に基準を満たした研究は11件だったそうで、内訳は、
- メタ分析あり・系統的レビュー:8件
- メタ分析なし・系統的レビュー:3件
だったみたい。
また合計サンプル数は489,930人だったらしく、サンプル範囲は1,287人から331,085人の間だったんだとか。
それでは結果を見てみます。
まずは、大枠についてなんですが、
- 説得力のあるエビデンスはなかった…。
- 非常に可能性のあるエビデンスはなかった…。
- 可能性のあるエビデンスは6個あった…!
とのこと。
まだまだはっきり言えるレベルの物はなさそうだけど、参考にはなりそうですね。
それでは気になる6個の関連性を見てみましょう…!
- 肥満:OR1.75…!
- 神経障害:OR2.01…!
- 糖尿病合併症:OR1.90…!
- CRP濃度:SMD0.31…!
- 女性:OR1.36…!
- 社会的支援:OR2.02…!
上記が、2型糖尿病患者さんにおける精神疾患の危険要因の可能性アリ…!ってことですね。因みに残りの関連性は低いエビデンス・エビデンスなしだったそうです。
これらから流れは、
- 2型糖尿病になる
- 肥満になるor神経障害になるor糖尿病合併症になるorCRP濃度が高くなる(慢性炎症になる)or女性であるor社会的支援を受けない
- 精神疾患、特にうつ病の発症リスクがアップ…!
となりましょう。
一方でこの研究では保護要因も見つかっておりまして、
- 社会的支援の増加
- 定期的な運動
の2個は、2型糖尿病患者さんのうつ病リスクを下げていたみたい。
こちらも併せて覚えておきたいですね。
個人的考察
ということで、2型糖尿病患者さんにおける、精神疾患の危険要因と保護要因のお話でした。まずは2型糖尿病にならないよう、気を付けるに越したことはないんですが、もしなっちゃった場合は、そこからの二次障害を防ぐためにも上記を意識していきたいですね。