統合失調症の回復率(症状改善・完全寛解・寛解)はどれぐらいなのか?
統合失調症の回復率(症状改善・完全寛解・寛解)はどれぐらいなのか…?
2012年のオウル大学の研究によると、統合失調症の回復率(症状改善・完全寛解・寛解)はどれぐらいなのか系統的レビュー・メタ分析を行ってみたそうです。
そもそもこの研究が発表される前から統合失調症の回復率を調べた先行研究はいくつも発表されておりました。但し、研究者によれば、それらをまとめた系統的レビューやメタ分析はわずか3件しか発表されていなかったとのこと。
- 1994年のハーバード大学のメタ分析:1895年~1992年までに発表された320件の研究でメタ分析を行った。すると統合失調症の患者さんの約40%は症状が改善していた…!但し最小期間を使っていない、症状改善のカテゴリーが大きく異なるなど突っ込みどころがあった。また気になったこととして、症状が改善した患者さんの割合がここ数十年で変化していなかった。
- 2006年のトロント大学の系統的レビュー:37件の研究をまとめた結果、患者さんの42%が症状改善していた…!但し、症状改善が臨床的・社会的・機能的であること、一定期間持続していることが要件とされていなかった。また、初回の発症のみを対象としており、少なくとも6ヶ月間追跡調査をしていたが、ほとんど短期間(平均追跡期間は35.1ヶ月)の追跡調査だった。
- 2004年の書籍:1904年~2000年の間に発表された114件の研究を分析した。この研究では、回復率(症状改善)を、完全回復(精神病症状がなくなり、発病前の機能レベルに戻った≒完全寛解)又は社会的回復(経済的・居住的自立と社会的な混乱の軽減≒寛解)と定義した。結果、完全回復が11%~33%、社会的回復が22%~53%だった…!但し、回復の持続性は考慮されていなかった。また、上記の1994年のハーバード大学のメタ分析と同じく、症状が改善した患者さんの割合がここ数十年で変化していなかった。
なんとなく回復率が良さそうなものの、イマイチはっきり言えない状況ってことですね。
そこで今回、系統的レビューとメタ分析を行いガッツリ調べてみることにしたんだとか。
まず研究者たちは、2011年10月までに発表された該当研究をPsycINFO(1840年以降)、Pubmed(1950年以降)、ISI Web of Science(1900年以降)、Elsevier Science Direct(1823年以降)、EBSCOhostのAcademic Search Premier(1975年以降)、CINAHL(1981年以降)で検索してみたそうな。また手作業でも探してみたらしい。
すると、6つの電子データベースで合計9,895件、手作業で50件の研究が見つかったそうな。次にこの中で重複している研究や質の低い研究を除いていったとのこと。
最終的に残った研究は50件でして、総サンプル数は8,994人、20か国にまたがっていたそうです。
んで結果の前に今回の研究における回復(症状改善)の定義ってのを確認しておきます。
- 原著論文の著者らが提示した結果(例えば「回復」や「完全寛解」、「機能的回復」の定義に基づくもの)のみにこだわらなかった。
- 回復基準は、少なくとも2つの領域(1つは臨床的寛解、もう1つはより広く社会的機能に関連するもの)とし、最低2年間の持続性を推奨した。
- 臨床的にも社会的にも回復していることを条件とした。臨床的・社会的な回復において少なくとも1つにおける改善が2年以上継続しており、現在症状が寛解している人とした。
ざっくりいうと、色々な角度から回復しているとみられる状態で、且つそれが継続しているって感じですな。
因みに研究者が挙げていた回復の定義の例は、
- 2年間自立して生活し、5年間精神科に入院しておらず、現在臨床的に完全寛解しており、心理社会的機能が正常範囲にあり、抗精神病薬を服用していないか少量である
- 最低24か月間寛解しており、就労しているか活動的で、家庭での世話をしている
などとのこと。
う~ん。印象的には本当に回復したな~って状態ですね。
では、気になる結果を見てみましょう…!
- 男女合わせた回復率の推定値の中央値は13.5%、平均値は16.4%だった…!
- 但し、研究の推定値は非常に異質性が高かった…。
- 年間における回復率の中央値は1.4%、10年間で約14%が見込まれた…!
- 男性の回復率の推定値の中央値は12.9%だった…!
- 女性の回復率の推定値の中央値は12.1%だった…!
- 男女間で統計的な有意差はなかった(OR1.02)…!
- 高所得国・上位中所得国よりも、低所得国・下位中所得国の方が回復率の推定値が有意に高かった(高所得国の中央値が13.0%、上位中所得国の中央値が12.1%、低所得国又は下位中所得国の中央値が36.4%)…!
- 入院期間の中間点、診断基準の厳しさ、追跡期間、その他の研究デザインの特徴による統計的な有意差はなかった…!
先行の系統的レビューやメタ分析よりも回復率は下がっていますが、厳密な定義なんで仕方ないでしょう。むしろ、上記の回復の定義で、統合失調症の患者さんの約7人に1人が回復の基準を満たしていた…!ってのは驚きではないでしょうか…?
個人的考察
ということで、統合失調症はしっかり治療すれば、完全寛解や寛解を継続するレベルまでの回復ができそうな感じ。
これは嬉しい話ですよね~。