【加筆内容】10代の若者における自傷行為と自殺傾向のリスク要因と保護要因をガッツリ調べたアンブレラレビューのお話 後編
先週の金曜日の続きです。
今回は後編として保護要因を中心にみていきます。
10代の若者における自傷行為と自殺傾向の保護要因
次は各保護要因を見ていきます。【学校とのつながり】
- 学校とのつながりと若者の自殺未遂の関係はOR0.59だった…!
- 学校とのつながりとハイリスクな若者の自殺行動と希死念慮の関係はOR0.60だった…!
- 学校とのつながりと性的マイノリティな若者の自殺行動と希死念慮の関係はOR0.61だった…!
- 学校における自殺行動と希死念慮の予防介入は、自殺行動の予防に効果があった(Hedges's g=0.30)
- 学校とのつながりを経験した青少年と希死念慮との全体的な関係はOR0.53だった…!
- 学校における自殺行動と希死念慮の予防介入は、希死念慮の予防に効果があった(g=0.15)
学校とのつながりがある、感じていると自殺行動・希死念慮が減るみたいですね。
【最適な睡眠時間】
- 睡眠時間の長さと自殺傾向(自殺行動と希死念慮)との全体的な関係はOR0.52(=睡眠時間が長いと自殺傾向リスクが低くなる)だった…!
- 睡眠時間の長さと希死念慮との全体的な関係はOR0.55(=睡眠時間が長いと希死念慮リスクが低くなる)だった…!
- 睡眠時間の長さと計画のある希死念慮との全体的な関係はOR0.50(=睡眠時間が長いと希死念慮リスクが低くなる)だった…!
- 睡眠時間が8~9時間の青少年は、自殺未遂リスクが最も低かった…!
- 青少年の睡眠時間が1時間長くなるごとに計画のある希死念慮リスクが11%減少していた…!
兎に角皆ちゃんと寝ようぜ…!って感じですね。ベストはとりあえず8~9時間みたいでして、この辺は「結局、おすすめ睡眠時間は何時間なのか?」の記事を見ても納得できるかと…。
その他の曝露リスク要因
その他のリスク要因ってのも載っていましたんで、ご紹介しておきます。
- 女性における小児期の虐待と自殺行動の関係はOR2.76だった…!
- 男性における小児期の虐待と自殺行動の関係はOR3.77だった…!
- 一人っ子の家庭と自傷行為の関係は25.8%だったのに対し、兄弟姉妹のいる家庭と自傷行為の関係は27%と多かった…!
- ひとり親家庭と自傷行為の関係は30%と、両親がいる家庭よりも多かった…!
- 身体症状(障害や睡眠障害など)と若者の自傷行為リスクとの全体的な関係はOR2.85だった…!
やっぱ子ども時代の虐待(トラウマ)は自殺行動と関係があるんですね。また兄弟姉妹の有無や親の状況、自分の障がいの有無なんかも関係あるみたいです。
上記の特定の暴露がなかった場合、自傷行為と自殺傾向(自殺行動と希死念慮)の発生率はどれだけ減るのか…?
最後に、上記の特定の暴露がなかった場合、自傷行為と自殺傾向(自殺行動と希死念慮)の発生率はどれだけ減るのか(人口寄与率:PAF)をチェックしておりましたんで、見ておきます。これでどのリスク要因の影響が強いのか分かりますからね。
【1番影響度が強いリスク要因:いじめ】
- 世界学生健康調査(GSHS)によれば、いじめの被害者発生率は低・中所得国で30.4%、低・中・高所得国で30.5%と推定されている。
- GSHS研究に基づくと、いじめの被害から自殺未遂までの全体的な関係はOR3.06で、世界レベルでの関係はOR2.97だった…!
- つまり、いじめの被害から自殺未遂までの人口寄与率(PAF)は、低・中所得国で31.4%、低・中・高所得国で33.6%と推定される…!
- いじめの被害から希死念慮までの人口寄与率(PAF)は、低・中・高所得国で21.8%と推定される…!
- 上記の結果から、いじめに遭わない環境だと、自殺未遂が33.6%、希死念慮が21.8%、発生しなかったとなる…!
もし、いじめがない環境にいたら、自殺未遂が3分の1減っていた、希死念慮が5分の1減っていたってのは衝撃ですね。やっぱいじめは超大問題だと言えましょう。
【2番目に影響度が強いリスク要因:睡眠障害】
- 2番目に高い人口寄与率(PAF)を示した曝露は睡眠障害だった…!
- GSHSから推定された睡眠障害の有病率とメタ分析から推定された相対リスクに基づくと、希死念慮に関する睡眠障害の人口寄与率(PAF)は12.1%で、自殺未遂に関する睡眠障害の人口寄与率(PAF)は10.4%と推定された…!
- 上記の結果から、児童・青少年の時に睡眠障害を持たない環境だと、自殺未遂が10.4%、希死念慮が12.1%、発生しなかったとなる…!
10代の若者に睡眠障害がないだけで、自殺未遂・希死念慮ともに10%減るのは大きいですねー。やっぱ睡眠は基本で超大事だと言えましょう。
【3番目に影響度が強いリスク要因:学校の欠席】
- 世界の研究では、学校の欠席の定義は様々。
- その中で最も問題のある学校の欠席として定義されているのは、無断欠席と登校拒否。
- 学校の欠席の一般的な定義は、学齢期の青少年が①少なくとも2週間、授業時間全体の25%以上を欠席している、②少なくとも2週間、授業に出席することが極めて困難で、子ども又は家族の日常生活に著しい支障をきたしている、③15週間の開校期間中、10日間以上学校を欠席している(=少なくとも15%の日数を欠席している)場合を指す。①と③はどちらも、少なくとも25%の日数を欠席している。
- ニュージーランドのデータによると、慢性的な学校の欠席(欠席日数が30%以上)と中程度の学校の欠席(欠席日数が20~30%)の両方を含めた希死念慮の人口寄与率(PAF)は4.5%だった…!
- 十分なデータがなく、自殺未遂の人口寄与率(PAF)はよく分からなかった。
学校、つまり子どもにとっての社会とのつながりが如何に大事かも考えさせられますね。
個人的考察
因みに研究者によれば、生徒がつながりを感じ、帰属意識と安心感を持てる学校環境を作るために、学校内の教室文化を競争から協力へと転換させる必要がある、教員はいじめの第一対応者となるため、メンタルヘルスリテラシースキルが必要だとしておりました。
また解決策として、いじめ防止を可能にするために生徒と教師の関係を再構築する、状況に合わせて複数の介入を実施する、状況に合わせて複数の個別戦略で対応するのが望ましいともおっしゃっております。
いずれも納得できますねー。