2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサスを見てみよう! その4「栄養不足と妊娠中・出産中の出来事」
「2021年に世界ADHD連盟が示したコンセンサスを見てみよう!」シリーズの続きです。
ADHDの環境要因:栄養不足
46. 617人を対象にしたメタ分析を見てみると、ADHDの若者における血中の鉄分濃度に差は見られなかった。但し、2,100人以上を対象に調べてみると血中のフェリチン(鉄分を貯蔵するタンパク質)が小~中程度少なかった。1,700人以上を対象にした別のメタ分析でも血中の鉄分濃度に差はなかった。但し、6,000人以上を対象に血中のフェリチンをチェックしたら、こちらでも小~中程度少なかった。
47. 586人を対象にしたメタ分析によると、ADHDを持つ若者は、血中のオメガ3脂肪酸の濃度がやや低かった。
48. フィンランドの国民登録簿を使った大規模症例対照研究では、1998~1999年の間に生まれたADHDを持つ方1,067人と対照群1,067人を比較してみた。結果、母親のビタミンDレベルが低いと、子どものADHD発症リスクが約50%も高くなっていた。
ADHDの環境要因:妊娠中・出産中の出来事
49. 6,000人以上を対象にしたメタ分析によると、極めて早い早産児又は極めて低い低出生体重児は、ADHD率が3倍高かった。また460万人以上の出生に関するデータをまとめた2018年のメタ分析によると、低出生体重とADHDの間には小~中程度の相関関係が見られた。更にスウェーデンで行われた120万人の子どもを対象にした研究では、未熟児であればあるほどADHDリスクが高まっていた。因みにフィンランドで行われた10,000人以上のADHD患者と38,000人以上の対照群を比較した研究でも同じような結果が出ていた。
50. 140万人を対象にしたメタ分析によると、妊娠中に母親が高血圧症(妊娠中毒症・妊娠高血圧・妊娠高血圧腎症など)になった場合、子どものADHD発症率が25%高まっていた。
51. スウェーデンで行われた200万人以上の子ども(うち11万5000人がADHDを持つ)を対象にした大規模コホート研究によると、妊娠中の母親が妊娠高血圧症候群(旧、妊娠中毒症)になった場合、子どものADHD発症率が15%高まっていた。また、胎児が妊娠期間に対して小さく妊娠高血圧症候群に罹患していた場合、ADHD発症率が40%以上も高まっていた。これは遺伝要因や家族要因によるものではなかった。
52. 28,000人以上を対象にしたメタ分析・140万人以上を対象にしたメタ分析を見てみると、肥満の母親の子どもはADHD発症リスクが約60%高かった。8万組以上の母子を対象にしたデンマークの研究でも、肥満の母親の子どものADHD発症リスクは約50%も高まっており、重度の肥満の母親の子どもだとADHD発症リスクが2倍になっていた。
53. 310万人以上を対象にしたメタ分析を見てみると、妊娠中の母親の甲状腺機能亢進症(バセドウ病:甲状腺ホルモンが過剰に分泌される)と子どものADHDには、わずかだが有意な相関関係があった。また340万人以上を対象にしたメタ分析では、母親の甲状腺機能低下症と子どものADHDとの関係をチェックしてみたら、わずかだが有意な相関関係があった。
54. 2020年のデンマークの大規模コホート研究では、100万人以上の出生記録を調査して、過去に1回流産した母親・2回以上流産した母親の子どもと、流産歴のない母親の子どもを比較してみた。結果、流産歴のある母親の子どもは、流産歴のない母親の子どもよりもADHD発症リスクが9%高かった。また過去に2回以上流産した母親の子どもの場合、ADHD発症リスクが22%高かった。
最後にまとめてご紹介します。